From 荒波レイ@三橋経済塾
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アベノミクスの目的は、日本経済をデフレから脱却させ、成長路線に戻すことだったはずです。そのために多くの有権者が自民党や安倍政権を支持してきたと思います。しかし、最近になってどうもデフレ脱却が危うくなってきました。4月の消費税増税といい供給サイドを偏重する「成長戦略」といい、デフレを悪化させる政策ばかりが目立ちます。このままでいくと、97年の消費税増税より日本経済への悪影響が大きいと予想されます。アベノミクスは一体、どこで狂ったのでしょうか。
産経新聞の田村秀男氏が「安倍晋三内閣の新成長戦略の最大の狙いは株価の底上げである」と言っています。アベノミクスがいつの間にか「カブノミクス」となってしまいました。
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20140627/ecn1406271140002-n1.htm
東田剛氏も同じことに注目して、「アベノミクスのバロメーターは、失業率でもコアコアCPIでも実質賃金でも国民所得でもなく、成長率ですらなく、なにより株価なんだそうです」と、いかに安倍政権の政策が本末転倒だということを指摘しています。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/06/11/korekiyo-100/
「株高を目指してなにが悪い」と聞かれたら、三橋経済塾の塾生なら答えは分かるでしょう。
そもそもデフレ脱却が目的だったはずのアベノミクスは、「金融政策+財政政策」という「正しいデフレ対策」パッケージだったのです。
「ケインズ的」に考えると、デフレの原因は総需要不足であり、解決策は、適切な金融政策とともに財政出動によりデフレギャップを埋めることです。
しかしアベノミクスは、「黒田バズーカ」といって金融緩和を実施しているものの、財政出動は小出しになっています。
結果、マネタリーベースが増加したものの、その大半が銀行の貸し出しに回っていません。
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11878883813.html
日銀が貨幣を支給しても需要が創出されなければデフレ脱却は夢のまた夢になってしまいます。尚、ここでいう「総需要」はあくまでも「実体経済」の話であり、株式投資などを行う「金融経済」の話ではありません。
日銀がいくら金融緩和をしても、その資金が実体経済へと流れなければ、デフレギャップが埋まりません。そして、財政出動こそが、金融緩和によって支給された貨幣を実体経済へ流すメカニズムなのです。
株式投資は、金融経済の話であり、株の売買をしてもモノやサービスの売買が直接行われるわけではなく、資産が投資家から別の投資家へと渡り、所有者が変わるだけです。株取引の大半は、キャピタル・ゲインといって、株価の値上がりによる利益が目的なのです。
もちろん、株で儲かった人はモノやサービスを購入するかもしれませんが、そういう「資産効果」はやはり限定的であることは現実です。
尚、キャピタル・ゲインを目的とした取引は「投機」と言います。株の売買などの取引により株価が上昇したりするものの、上記で述べたように新たなモノやサービスが生産・購入されるわけではありません。モノやサービスの消費がないというのは、国民の所得が生まれないということです。つまり、「投機的取引」により、社会が豊かになるわけではありません。株の売買で儲かった投資家が豊かになった気分になるでしょうが、新たな付加価値が生産されたのではなく、国民所得が増えたわけではありません。
ケインズは「一般理論」で、「消費」および「投資」が雇用・所得を生み出すのだと主張しました。
ケインズがいう「投資」とは、設備投資やインフラ整備などのことです。この消費と投資の合計が「総需要」なのです。
総需要が不足すると景気が悪くなり、国民経済にデフレ圧力がかかります。日本経済は80年代のバブル崩壊後、消費および投資が冷え込み、1997年の消費税増税後、本格的なデフレ不況に突入しました。総需要を増やす政策こそがもっとも必要なのですが、残念ながら政策担当者はケインジアンとは限りません。
つまり、政治家も官僚も有識者も、デフレ不況の原因が総需要の不足だと認めているとは限りません。
アベノミクスは、「金融政策+財政政策」という、「ケインズ的」なデフレ対策が盛り込まれています。これでやっと、日本経済がデフレを脱却し国民所得が再び増えることになるかと思いきや、いつの間にか「第二の矢」による「投資」が軽視され「第三の矢」による「投機」が偏重されるようになってしまいました。ケインズが「一般理論」の第12章で、下記のように述べています。
「事業の安定した流れがあれば、その上のあぶくとして投機家がいても害はありません。でも事業のほうが投機の大渦におけるあぶくになってしまうと、その立場は深刻なものです。ある国の資本発展がカジノ活動の副産物になってしまったら、その仕事はたぶんまずい出来となるでしょう。」(http://genpaku.org/generaltheory/general12.html)
安倍政権の「成長戦略」は、株価の値上がりが狙いなのであれば、日本の経済成長をまるで「カジノ」に託したようなことになるのです。株価があがるかもしれません。そしてそれで政権の支持率も上がるかもしれません。しかし、それによって日本経済が本当に回復し、成長路線に戻り、国民が豊かになるわけではありません。政策担当者に是非、ケインズの言葉に耳を傾けていただきたいと切に願っております。
PS
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【荒波レイ】投資と投機の違いへの3件のコメント
2014年7月25日 4:46 AM
本当にその通りだと思います。異論は全くありません。私も、政策担当者の方々に判って頂きたいと、同じ願いを持ちます。
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2014年7月25日 9:16 AM
「株上がれー」というと故小渕元首相を思い出しますが、本当に株価だけしか見ていない安倍はNISAの対象年齢引き下げを考えているとのこと。未成年までも賭博に巻き込もうとする安倍は胴元からみれば正にかもねぎ。名誉欲のためだけに国民を犠牲にする総理の姿はみっともないですね。
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2014年7月26日 6:17 AM
荒波レイ氏の主張は、まっとうな正論だと考えます。★敵はエゴ丸出しの強欲な新自由主義者です。★左翼本と感じるかもしれませんが、岩波書店、ナオミ・クライン著『ショック・ドクトリン』は、新自由主義と対峙するときに、非常に広く、また本質的な視界を与えてくれる良書です。日本派の保守の対新自由主義的な理論武装になります。 2674.7.24
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