From 三橋貴明
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【今週のNewsピックアップ】
●新経済世界 シンガポールの反移民
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11876509875.html
●新経済世界 アメリカの反移民
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11877699050.html
アメリカとシンガポールといえば、ある意味で代表的な移民国家でございます。アメリカは純然たる移民国家、シンガポールはマレー系・中国系・インド系と、元々多民族国家であるところに、現在は外国人労働者が流入。移民の割合が40%に達しています。ちなみに、シンガポールの中国系住民は、主にイギリスの植民地時代に流入した、つまりは「移民」してきた人々です。
シンガポールも例に漏れず、実質賃金の問題を抱えています。2012年のシンガポールの実質賃金はマイナス0.2%。翌13年は2.9%上昇に転じたものの、シンガポールの一部の国民は「実質賃金が上がらないのは、外国人労働者が流入したため」と認識し、反移民の動きに出ているのです。
もっとも、シンガポールは失業率が2%台と、ほぼ完全雇用状態にあります(公表数値が正しいと仮定するならば)。移民や外国人労働者を「経済的」に考える場合、最低でも完全雇用を達成しているか否かがポイントになるように思えます。
無論、移民や外国人労働者の受け入れは「文化的」「価値観的」「言語的」な軋轢など、様々な社会的な問題が発生しますが、ここは「頭の体操」として、経済的影響にのみ話を絞ってみましょう。
そもそも、ドイツやフランス、スウェーデンが戦後に外国人労働者を大々的に受け入れたのは、国内が完全雇用状態で、真の意味で人手不足だったためです。結果的に、ドイツには欧州諸国やトルコ、フランスはマグレブ(北アフリカ)、スウェーデンにはフィンランド人などが外国人労働者として流入していきました。
ちなみに、同じ時期の日本は欧州諸国同様に人手不足状態だったのですが、外国人労働者ではなく「生産性向上」によりインフレギャップを埋めた結果、独仏などの二倍レベルの高度成長を達成しました。
この辺の話は、まもなく徳間書店から発売になる「移民亡国論」で詳しく書きましたが、それはともかく、外国人労働者を大々的に受け入れる「最低限の経済的な理由」は、国内が完全雇用状態であることだと考えるのです。
現在の日本は(アメリカも)、完全雇用ではありません。黒田日銀総裁は「構造的に完全雇用失業率に近づいている」と、例の「平均概念の潜在GDP」に基づくコメントを発していますが、過去のデータを見る限り、我が国の完全雇用失業率は2%台前半です。(宍戸先生は2.6%程度と仰っていました)
すなわち、3.6%の現状の失業率は、まだまだ1%は下がる余地があるわけです。
更に、日本の労働参加率は別に世界トップというわけではありません。今後、失業者が雇用され、非労働人口が労働市場に参入してくれば、「国内のリソース」で十分に現在の人手不足は解消されます。
それにもかかわらず、いきなり「外国人労働者受け入れ拡大」路線を走り始めた安倍政権は、やはり変です。結局のところ、「人手不足→実質賃金上昇」という国民所得が拡大する形での経済成長路線を拒否しているのではないか、との疑念を覚えざるを得ないわけです。
まあ、新古典派経済学的には「完全雇用は常に成立している」わけでございますので、三橋的に「完全雇用ではないため、外国人労働者受け入れの議論を始めるのはおかしい」というロジックは、彼らには通用しないのかも知れませんが。
PS
安倍政権の「給料崩壊」政策に関心のある方は、こちらが参考になります。
https://www.youtube.com/watch?v=IsJZZaD-rPQ
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