アーカイブス

2014年6月16日

【三橋貴明】新経済世界

From 三橋貴明

————————————————————

●●月刊三橋がCDで聴けるようになりました!
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38CDNEWS_C_2980/index.php

————————————————————

【今週のNewsピックアップ】
●新経済世界 シンガポールの反移民
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11876509875.html

●新経済世界 アメリカの反移民
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11877699050.html

アメリカとシンガポールといえば、ある意味で代表的な移民国家でございます。アメリカは純然たる移民国家、シンガポールはマレー系・中国系・インド系と、元々多民族国家であるところに、現在は外国人労働者が流入。移民の割合が40%に達しています。ちなみに、シンガポールの中国系住民は、主にイギリスの植民地時代に流入した、つまりは「移民」してきた人々です。

シンガポールも例に漏れず、実質賃金の問題を抱えています。2012年のシンガポールの実質賃金はマイナス0.2%。翌13年は2.9%上昇に転じたものの、シンガポールの一部の国民は「実質賃金が上がらないのは、外国人労働者が流入したため」と認識し、反移民の動きに出ているのです。

もっとも、シンガポールは失業率が2%台と、ほぼ完全雇用状態にあります(公表数値が正しいと仮定するならば)。移民や外国人労働者を「経済的」に考える場合、最低でも完全雇用を達成しているか否かがポイントになるように思えます。

無論、移民や外国人労働者の受け入れは「文化的」「価値観的」「言語的」な軋轢など、様々な社会的な問題が発生しますが、ここは「頭の体操」として、経済的影響にのみ話を絞ってみましょう。

そもそも、ドイツやフランス、スウェーデンが戦後に外国人労働者を大々的に受け入れたのは、国内が完全雇用状態で、真の意味で人手不足だったためです。結果的に、ドイツには欧州諸国やトルコ、フランスはマグレブ(北アフリカ)、スウェーデンにはフィンランド人などが外国人労働者として流入していきました。

ちなみに、同じ時期の日本は欧州諸国同様に人手不足状態だったのですが、外国人労働者ではなく「生産性向上」によりインフレギャップを埋めた結果、独仏などの二倍レベルの高度成長を達成しました。

この辺の話は、まもなく徳間書店から発売になる「移民亡国論」で詳しく書きましたが、それはともかく、外国人労働者を大々的に受け入れる「最低限の経済的な理由」は、国内が完全雇用状態であることだと考えるのです。
現在の日本は(アメリカも)、完全雇用ではありません。黒田日銀総裁は「構造的に完全雇用失業率に近づいている」と、例の「平均概念の潜在GDP」に基づくコメントを発していますが、過去のデータを見る限り、我が国の完全雇用失業率は2%台前半です。(宍戸先生は2.6%程度と仰っていました)

すなわち、3.6%の現状の失業率は、まだまだ1%は下がる余地があるわけです。

更に、日本の労働参加率は別に世界トップというわけではありません。今後、失業者が雇用され、非労働人口が労働市場に参入してくれば、「国内のリソース」で十分に現在の人手不足は解消されます。

それにもかかわらず、いきなり「外国人労働者受け入れ拡大」路線を走り始めた安倍政権は、やはり変です。結局のところ、「人手不足→実質賃金上昇」という国民所得が拡大する形での経済成長路線を拒否しているのではないか、との疑念を覚えざるを得ないわけです。

まあ、新古典派経済学的には「完全雇用は常に成立している」わけでございますので、三橋的に「完全雇用ではないため、外国人労働者受け入れの議論を始めるのはおかしい」というロジックは、彼らには通用しないのかも知れませんが。

PS
安倍政権の「給料崩壊」政策に関心のある方は、こちらが参考になります。
https://www.youtube.com/watch?v=IsJZZaD-rPQ

関連記事

アーカイブス

【上島嘉郎】安倍談話に望むこと(その十)

アーカイブス

[三橋実況中継]なぜ「教育無償化」?

アーカイブス

【三橋貴明】24年体制

アーカイブス

【東田剛】“アベコベ”ノミクス

アーカイブス

【三橋貴明】日本をギリシャ化するには

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です

名前

メールアドレス

ウェブサイト

コメント

メルマガ会員登録はこちら

週間ランキング

  1. 1

    1

    【藤井聡】大阪北部地震が導く「巨大地震」 〜速やかな対策に向...

  2. 2

    2

    【施光恒】園芸からみえる日本

  3. 3

    3

    【三橋貴明】歴史上最大の危機

  4. 4

    4

    【藤井聡】なぜ、南海トラフ地震の被害が1400兆円を超えるの...

  5. 5

    5

    【三橋貴明】どうでもいい目標が亡国をもたらす

  6. 6

    6

    【三橋貴明】有事に備える

  7. 7

    7

    【三橋貴明】日本国民は「想像力」を取り戻さなければならない

  8. 8

    8

    【藤井聡】「骨太の方針2018」で、デフレ脱却は出来るのか?

  9. 9

    9

    【平松禎史】「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」:第四十六...

  10. 10

    10

    【三橋貴明】イタリアの転舵と日本の「最悪の世代」

MORE

月間ランキング

  1. 1

    1

    【藤井聡】「骨太の方針2018」で、デフレ脱却は出来るのか?

  2. 2

    2

    【藤井聡】なぜ、南海トラフ地震の被害が1400兆円を超えるの...

  3. 3

    3

    【藤井聡】大阪北部地震が導く「巨大地震」 〜速やかな対策に向...

  4. 4

    4

    【藤井聡】「財政健全化投資」こそが、財政再建のために必要であ...

  5. 5

    5

    【藤井聡】「『歴史の謎はインフラで解ける』 〜政府投資こそが...

MORE

最新記事

  1. 日本経済

    【平松禎史】「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」:第...

  2. コラム

    【施光恒】園芸からみえる日本

  3. 日本経済

    【三橋貴明】有事に備える

  4. 政治

    【藤井聡】大阪北部地震が導く「巨大地震」 〜速やかな対...

  5. 日本経済

    【三橋貴明】日本国民は「想像力」を取り戻さなければなら...

  6. 日本経済

    【三橋貴明】どうでもいい目標が亡国をもたらす

  7. 日本経済

    【三橋貴明】歴史上最大の危機

  8. 日本経済

    【三橋貴明】凋落する科学技術力を食い止める

  9. 欧州

    【三橋貴明】イタリアの転舵と日本の「最悪の世代」

  10. 政治

    【小浜逸郎】所有者不明の土地対策は、爆買いを誘発する

MORE

タグクラウド