From 佐藤健志
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日本が途上国支援を続けられる訳
消費増税、高齢化、千兆円の政府債務
借金大国の日本が世界貢献できる訳とは・・・
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前回記事「ドナルド・トランプのファンタジー、または民意をめぐるパラドックス」でも述べましたが、世の中を上手に治め、人々が豊かで幸福に暮らせるようにすることこそ、あらゆる政治の目的です。
つまりは経世済民の達成。
豊かで幸福に暮らすなんてイヤだという人もいないでしょうから、これは民意を満たすことでもある。
ところが民意自体は、しばしば一貫性や整合性に欠けます。
要するにツジツマが合っていないのです。
ゆえに民意に従うだけでは、世の中を上手に治め、人々が豊かで幸福に暮らせるようにすることはできません。
上記のパラドックスにどう対処するか?
この点こそ、あらゆる政治家(とくに民主主義社会における政治家)の背負う課題であり、腕の見せどころです。
しかるに中には「強力なリーダーシップさえあれば、民意にひたすら従いつつ、経世済民が達成できるはずだ!」と構える者が出てくる。
当の人物は、民衆にたいして
「自分には強力なリーダーシップがあるから、権力を与えてくれさえすれば、君たちの夢や希望をどこまでも叶えよう!」
と説きます。
そんなうますぎる話、あるわけないだろう!!
・・・という良識が民衆の側にあれば問題はありません。
しかし世の中の状況が悪いと、うますぎる話につい乗りたくなる人が増える。
かくして経世済民をめぐるパラドックスを直視しようとしない人物が、「カリスマ的なリーダー」として人気を博しやすくなる次第。
ポピュリズムの台頭です。
すなわちポピュリズムとは、
1)民意は絶対だという前提のもと、
2)民意を体現すると目された(ないし、そう称する)人物が
3)政治権力を握ること
と規定できます。
ところが、お立ち会い。
ひとつここで、民意は本当に絶対だと仮定しましょう。
ついでに、ある特定の人物が、民意を本当に体現しているとも仮定しましょう。
すると、どういうことになるか?
「民意=絶対」にして
「ある特定の人物=民意」ですから
「ある特定の人物=絶対」となるのです!
ポピュリスト的なリーダーが、自己絶対化に陥りやすいうえ、支持者がそれを容認する傾向を見せてしまうのも、こう考えれば当然の話。
ところが、さらにお立ち会い。
ポピュリスト的リーダーが、本当に絶対だと仮定しましょう。
くだんのリーダーは、自分にたいする批判など聞き入れなくても構わないはず。
よしんば、それが民意であったとしても、です。
自分こそ絶対なんですから。
すなわちポピュリスト的リーダーの頭の中では、以下の四段論法が成立してしまう。
1)民意は絶対だ。
2)オレは民意だ。
3)だからオレは絶対だ。
4)したがって、気にくわない民意は否定してよい。
この四段論法が、『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する』で論じた「キッチュ」の構造と瓜二つなのは、むろん偶然ではありません。
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とはいえこうなると、自滅的な暴走が始まるのは避けられない。
民意を絶対視するところからスタートしたにもかかわらず、民意の否定にいたるわけですからね。
だからこそポピュリズムは危ないのですが・・・
歯止めをかけるにはどうすればいいか?
ここで注目したいのが、例のアメリカ大統領候補、ドナルド・トランプをめぐる最近の経緯。
ご存知のとおり、トランプはポピュリズム的な色彩の非常に強い人物です。
7月21日に行った共和党大会での候補指名受諾演説では、聴衆に向けて「私は君たちの声そのものだ!」と断言したほど。
ずばり、自分こそが民意だと見得を切ったのです。
https://www.youtube.com/watch?v=4CVTuOyZDI0&feature=youtu.be(全編収録)
けれどもその直後から、トランプは「列車でいえば大脱線」とまで評される状態に陥りました。
http://thehill.com/blogs/pundits-blog/presidential-campaign/290154-the-trump-train-flies-off-the-rails
引き金となったのは、7月28日、パキスタン系移民であり、イスラム教徒でもあるキズル・カーンという人物が、民主党大会でトランプを批判する演説を行ったこと。
彼の息子フマユーンさんはアメリカ陸軍の大尉だったのですが、2004年、派遣先のイラクで、自動車を使った自爆テロにより亡くなりました。
しかるにトランプは、何かにつけてイスラム教徒を「アメリカの敵」のごとく見なしたがる。
キズルさんはこれを踏まえ、トランプを偽善的な差別主義者と断じたのです。
いわく。
トランプ、ひとつ聞かせてくれ。あんたは合衆国憲法を読んだことすらないんじゃないか? 持っていないなら、喜んで貸してやろう!
(背広の内ポケットから、憲法の小冊子を取り出して掲げる。聴衆の大喝采)
「自由」と「法の下の平等な保護」について、なんと書いてあるか調べてみることだ。
あんたはアーリントン国立墓地に行ったことがあるか? どの墓標にも、アメリカを守るべく命を捧げた勇敢な愛国者の名が刻まれている。そこに信仰、性別、人種の違いは存在しない。ひきかえあんたは、国のために犠牲を払ったことなどないし、まして家族を失ったこともない!
http://edition.cnn.com/videos/politics/2016/07/29/dnc-convention-khizr-khan-father-of-us-muslim-soldier-entire-speech-sot.cnn(全編収録)
トランプは、7月29日に収録されたABCテレビのインタビューで、これに真っ向から文句をつけました。
キズル演説について、ヒラリー・クリントン陣営が原稿を用意したのではないかとほのめかしたあと、こう述べたのです。
オレは(注:アメリカのために)たくさん犠牲を払ってきたと思うね。本当に一生懸命に働いてきたし、数千もの雇用を生み出した。いや、万単位だよ。立派なビルもいっぱい建てた。オレは大変な成功を収めてきたんだ。
インタビュアーのジョージ・ステファノポロスは、「それが犠牲ということになるのか?」とツッコミを入れましたが、トランプは動じません。
もちろん、犠牲だと思うよ。数千もの人々を雇って、教育やら何やら、いろいろ面倒を見たんだから。
https://www.youtube.com/watch?v=hhy-xQbQ14s(全編収録)
http://abcnews.go.com/Politics/donald-trump-father-fallen-soldier-ive-made-lot/story?id=41015051(ハイライト)
さらに7月30日、トランプ陣営は声明を発表。
いわく。
フマユーン・カーン大尉はわが国の英雄だった。アメリカを安全に保つため、命を犠牲にした人々には、すべて敬意が払われるべきだ。
カーン氏がご子息を失ったことには、心からお悔やみを述べたい。しかしカーン氏は、私と直接会ったこともない人物だ。あのような形で私を批判する権利はない。数百万の人々が見ているところで、私が合衆国憲法を読んだことがない(これは嘘だ)とか、あれこれデタラメを並べ立てる権利はないのだ。
(カッコは原文)
7月31日には、ツイッターでこう主張しました。
民主党大会で、カーン氏はオレにたいする悪意に満ちた攻撃を行った。反論の自由はないのか? イラク戦争に賛成したのはヒラリーだ、オレじゃない!
https://twitter.com/realDonaldTrump/status/759743648573435905
この一連の反応が「大脱線」を引き起こすのですが・・・
長くなりましたので、続きは次回にしましょう。
ちなみに。
ドナルド・トランプ関連のツイッターには、本物のほか、そっくりに作られたパロディ版アカウントが存在します。
こちらも「ドナルド・トランプ」を名乗っているうえ、URLまで一文字違い。ご注意ください。
本物 https://twitter.com/realDonaldTrump
パロディ版 https://twitter.com/realDenaldTrump
「ドナルド・ドランプ」という別のパロディ版アカウントもありますが、これは一目でパロディと分かるようになっていました。
ではでは♪
<佐藤健志からのお知らせ>
1)8月20日(土)、「表現者シンポジウム」の第一部に登壇します。
・時間 19:00〜21:30(18:30開場)
(※)これはシンポジウム全体の時間です。
・場所 四谷区民ホール
・会費 2000円
参加ご希望の方は、郵送ないしファックスで下記宛にお申し込み下さい。
西部邁事務所
〒157-0072 東京都世田谷区祖師谷3-17-22-303
03-5490-7576
お申し込みの際は、お名前、ご住所、電話番号、参加人数を記入していただきたいとのことです。
2)8月16日発売の『表現者』68号に、評論「少女と戦後の精神構造」が掲載されます。
3)いわゆる「保守(派)」にしたところで、経世済民をめぐるパラドックスや、ポピュリズムに陥る危険から無縁ではないという点に関する体系的分析です。
『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は終わった』(アスペクト)
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4)いや、戦後日本そのものが、壮大なポピュリズム的ファンタジーのうえに成り立っていたのかも知れません。
『僕たちは戦後史を知らない 日本の「敗戦」は4回繰り返された』(祥伝社)
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5)「民衆の行動は、世論によって必ず支持される。世論とは民衆の意見なのだから、これは当然であろう。完璧な民主主義こそ、もっとも恥知らずな政治形態なのだ」(128ページ)
おかげさまで5刷となりました!
『新訳 フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)
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6)「アメリカ人の中には、こういう経験をした者がいるのだ! そんな目にあったこともなく、安穏と暮らしてきた者が、彼らの怒りや憎しみについて何を意見するというのか」(138ページ)
キズル・カーン演説の原点も、この本の中にあるようです。
『コモン・センス完全版 アメリカを生んだ「過激な聖書」』(PHP研究所)
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7)そして、ブログとツイッターはこちらをどうぞ。
ブログ http://kenjisato1966.com
ツイッター http://twitter.com/kenjisato1966
ーーー発行者よりーーー
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財政赤字国のどこにそんな大金が?
TVが放送を自粛する意外な真実とは
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