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2014年6月11日

【東田剛】すべては株価のため、そして支持率のため

From 東田剛

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●月刊三橋最新号のテーマは『中国暴走』。日本は国家存亡の危機を回避できるのか?
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index.php

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前回、スマートワーク構想は株価を上げるためだったという記事を紹介しましたが、同じような記事が文藝春秋にも出ていました。

そこに、こんな恐ろしいことが書いてあります。

「「アベノミクスのバロメーターは、なにより株価だ」3月11日、首相官邸。安倍は居並ぶ経済関係閣僚を前に漏らした。」

http://gekkan.bunshun.jp/articles/-/1007

アベノミクスのバロメーターは、失業率でもコアコアCPIでも実質賃金でも国民所得でもなく、成長率ですらなく、なにより株価なんだそうです。

こんなことも書いてあります。

「危機感を強めるのは官房長官の菅だ。菅は安倍に「とにかく経済優先で」と説き、靖国参拝にも最後まで反対の立場をとった。それだけに、株価の下落傾向が定着してしまえば自らの立場は揺らぎ、政権の勢いも失われる。」

「法人減税以外に、アベノミクス効果を維持する手段はみあたらないというのが「経済優先」を唱える菅、そして経産省出身の首相政務秘書官・今井尚哉の共通認識。」

法人税減税で、外資を呼び込むというのは、株価を上げて、政権支持率を上げるためなんですね。

成長戦略の目的は、国民所得の向上でも、デフレ脱却でも、雇用でもなく、単なる「株価の上昇」、そして、それによる「政権支持率の上昇」ですか。

なんという浅ましさ・・・。
政府が目先の株価や支持率のために動くなんて、経世済民のかけらもありません。

でも、そう考えると、一連の成長戦略のメニューの意味がクリアに分かります。

例えば、GPIF(年金積立金管理運用法人)の運用で、株式投資の比重を上げさせるのも、株価を上げるため。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N6OXBX6JTSF201.html

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39279

<参考>
http://toyokeizai.net/articles/-/36350

http://www.news-postseven.com/archives/20140608_260048.html

企業統治改革も、外資マネーを呼び込んで、株価を上げるため。

企業統治改革については、「周りを見ればネオリベの取り巻きたち」の一人、柴山昌彦衆院議員が頑張っているそうです。
いかにも、この先生が好きそうな話です。

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL3N0NY08620140515

企業統治改革というのは、要するに、社外取締役を入れて、株主の意見を強めて、ROE(自己資本利益率)を上げるという米国型の企業経営にするという話です。

で、90年代半ばに、これをやって、ダメになったのがソニー。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38460

それから、以下の論文は、2002年から2007年の景気拡大期に、なぜ賃金が上がらなかったのかを分析したものですが、株主の意見を強くする米国型の企業統治の導入が、賃金を抑制していたとの結果が出ています。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2009/data/wp09j05.pdf

そりゃ、そうでしょう。
企業が、利益を上げて、株主への配当を増やすには、人件費のカットが一番手っ取り早いわけですから、当然、こうなる。

アメリカが1980年代から実質賃金が上がらなくなってしまったのも、同じ理由でしょう。

この企業統治改革が目指しているのは、まさに「ウォール街から世間を席巻した、強欲を原動力とするような資本主義」(要出典)に他なりません。

株価の上昇を目的とした成長戦略とは、賃金と雇用の抑制につながる成長戦略になるに決まっているのです

政権支持率を上げるため、株価を上げ、そのためには、賃金と雇用を引き下げるという戦略が、官邸主導で実行されているのです。

だから、経産省のスマート局長も、スマート・ワーク構想をブチ上げた。

内閣人事局も出来たことだし、出世のためには、官邸の意向に従って、賃金の引き下げにいそしむのが、スマート官僚!というわけ。

http://www.j-cast.com/2014/05/05203780.html

でも、株価なんて、一時的に上がっても、すぐまた下がりますよね。
だいたい、この成長戦略、デフレ促進策なんだから。

でも、そしたら、また株価を上げるために、新たな成長戦略が策定されて、残りの岩盤規制もドリルで破壊することとなるでしょう。

こうして、外国人労働者とか混合診療とかの規制緩和は、今後、さらに緩和されていく予定というわけです。

全ては株価のため、そして政権支持率のため。

でも、安倍さんしかいないそうですから、これが永遠に繰り返されることになります。

おや、空耳が聞こえてきた・・・。

実質賃金下がれ!
アハハハ
構造改革繰り返す〜

こうして、最後には、超格差社会ニッポンとか移民大国ニッポンとかができあがるというわけ。

「そのとき社会はあたかもリセット・ボタンを押したようになって、日本の景色は一変するでしょう。」

ごきげんよう、さようなら。

PS
月刊三橋最新号のテーマは『中国暴走』。日本は国家存亡の危機を回避できるのか?
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<東田剛からのお知らせ>
中西輝政先生に対する批判です。
http://chokumaga.com/author/124/

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【東田剛】すべては株価のため、そして支持率のためへの13件のコメント

  1. とも より

    株価なんて実体経済を良くする政策をすればあとからついてくるものでしょうに株価を吊り上げてもなんの意味もない、もとの木阿弥何の反省もない自民党安倍政権

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  2. プー太郎 より

    株価とかをやたら気にしている政治家や官僚たちは、最近みんながハマっているスマホゲームをやっているような感覚ではないでしょうか。無心で単純作業をやってれいれば、どんどんコインとか経験値が上がって、「やったー◯◯レベルになった!」って喜んでいるのと同じ感覚だと思います。政治まで官僚制化している世の中で、実態ではなく目先の数値ばかり注目しているところを見ると、そんな気がします。

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  3. 次郎 より

    規制緩和構造改革系のむちゃくちゃな経済政策に突っ走る一方で、中共の軍事的脅威を必要以上に煽るようなニュースが増えてきたように思います(※くれぐれも中共は軍事的脅威でないという意味ではありません)。南シナ海問題で集団的自衛権で騒いでみたり、公海上空のニアミスにムキになるくらいなら、領海侵犯船を撃沈してさっさと尖閣を実効支配すべきではありませんか。国内で高まる不満を外に向けるまさに中共のお株を奪うやりかた。この政権このまま放っておくといいかげんヤバい気がしてきました

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  4. tukizinomaguro より

    文章読みました?株価の高いことが悪いとかっていうお話じゃなくて、安部総理の改革の目的が国民の賃金上昇だとか豊かさ増大ではなく、株価そのものだってこと。株価が高まれば後は知ったこっちゃねーっていう態度だから、改革の方向性が規制緩和になる。まぁ、日本を賭博場にしようという考えですな。株価が維持できていれば国民に対しても「ちゃんと景気はよくなってますよー、我々政府は頑張ってますよー、給料が上がらないのは自己責任ですよー」っと言い訳は建つ。日本人はアホだから株価維持できてりゃ、騙せるだろうっていう考えってこと。単純化すればこういう話。 

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  5. 太郎 より

    世界を俯瞰すれば、日本ほど光り輝いてる国はないのに中韓に鎖で縛られたアメリカの属国にワザワザ自ら進んでるような気がします。中韓アメリカこの三カ国と縁を切り内需拡大を目指すほうが大多数の日本人とって幸せではないでしょうか?

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  6. mxpbh より

    安倍ちゃん、って言うの頼むからやめてください。かつての純ちゃんより幻滅します。みなどこも、安倍真浄宗の方が多いから、ここくらいしか怖くて書けないですし。ゲリじゃなく、精神疾患で首相放り投げたことなんて。

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  7. 大門まさはる より

    あなたには以前に暴言を吐いてしまったことがありますが、一言。株価が上がったから支持率があがり、株価が下がったら支持率が下がるという日本の民主主義の未熟度も憂いの対象ですね。これも金融自由化の悪弊なのかもしれません。例えば以前であれば日銀総裁に誰になるかなどは注目の対象にはならなかったでしょう。でも、今は、国民がかなりの数金融市場に参入できるようになっていて、金融政策の直接的利害関係者になってしまってるんです。これを利用して金で国民を釣って、不正義を通す政治を実践してるのが安倍ですね。さすがは戦国最強の謀将毛利元就の末裔の長州政治家ではある。

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  8. imadoki64 より

    企業が株主を大切にする為に、株主優待制度を充実させたり、配当性向を上げたりと言ったことをずっとやって来ているのですが、中々元の様に戻りません。余程羹に懲りて膾を吹いているのでしょう。私は、第一次安倍政権の時に保守層の株嫌いによる直接金融叩きが景気低迷の原因だと見てます。所謂ホリエモンフィーバーへの嫉妬ですね。東京地検特捜部に全てを潰されました。日本の潜在成長力が削がれたのはあの時だと疑っているのです。

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  9. 神奈川県skatou より

    株価イコール支持率とは、なんとも見下された、いや、なさけない有権者ということになりそうですね。でも、政権としてそんなに株価が大事ならば、株価を高値安定する方策を考えればいいわけで、それって外国人株主は投機屋だから安定するはずもなく、国内投資家(トレーダーじゃない)をどう育成し増やすかっていう発想にならないものでしょうか。万策尽きてるんでしょうか。不思議です。たとえば社員持ち株制度に優遇策を設けるとか。

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  11. poti より

    そして実態と一致しない株価はバブルと称され、バブルは必ずはじけてデフレを引き起こし経済を破壊する、と。日本破綻論を現実化してしまうとか実は安倍政権は日本破綻論者の手先だったのではないか単に思考回路が破綻しているだけかもしれませんが

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  12. とーんどーん より

    集団的自衛権もそうですね。時の政権の判断で「歯止めになる」って、まさに人間の理性は常に正しいってことを信じようってことですよね。でもそれって、共産主義国家の概念じゃないですか!?

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  13. imadoki64 より

    株価上昇を願っている人間は、何も強欲な資本主義者だけとは限りませんよ。なけなしの退職金を所謂資産株と呼ばれていた銘柄に、注ぎ込んだ一般サラリーマンだった人が物凄く多い事にもっと配慮すべきでは?株価が5分の1になった人からすれば、そりゃナンピンでもしていれば、直近で底から2倍になればそこそこ儲けを計算できるでしょうが、兎に角高値で掴んだ後は市場を見る気も起きない様な一般人からすれば、底から2倍でも買値の5分の2です。そういう方々が安心して財布の紐を緩めるには、日経平均が後ここから2倍強になる必要があると考えます。そこ迄上がっても、今の日本経済の実力からしたらバブルとは言えません。今でも安すぎると考えます。あなたの論法だと、まるで株式相場そのものが日本の敵の様に曲解する人も出て来ますよ。株式市場が企業のインキュベーション機能を持っている訳ですから、そこを無視して全て貧富の格差かくだいに繋がるからダメ!と受け取られ兼ねない論法は謹んで戴きたく存じます。塩漬け一般人投資家より

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