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2014年5月31日

【三橋貴明】仁義なき世界経済の不都合な真実

From 三橋貴明@ブログ

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渡邉哲也氏との対談本、「〈ぶっちゃけ話だからよくわかる! 〉仁義なき世界経済の不都合な真実」が発売になりました。

「〈ぶっちゃけ話だからよくわかる! 〉仁義なき世界経済の不都合な真実」
http://amzn.to/1myPPMe

本書は、グローバリズム、アメリカ、ユーロ、ロシア、ウクライナ、中国、韓国、そして我が国と、世界中で発生している「グローバリズム」と「ナショナリズム」の衝突に焦点を当てたものです。

典型はユーロですが、今後、日本でもこの「衝突」が激しくなってくるでしょう。といいますか、わたくしは「言論戦という衝突」の真っただ中にいるわけでございます。日本だけではないですが、「グローバリズム」の問題は、結局のところ一部の企業の利益ばかりが優先される政策が採られ、「国民のマジョリティ」が蔑ろにされてしまうことです。

現在の日本は、別に難しいことをする必要はなく、淡々と「金融政策&財政政策」のパッケージという正しいデフレ対策を打つ「のみ」で構わないにも関わらず、「デフレ対策ではない」各種構造改革が推進されていっています。竹中平蔵氏ですら、「第三の矢」はデフレ対策ではないと認めました(先日のテレビ愛知「激論コロシアム」で)。

需要が拡大していないところに、規制緩和をして新規参入を促しても、既存の所得のパイの奪い合いになるだけです。しかも、これを「国境を越えて」やってこようとするわけで、厄介です。

日本がTPPに加盟して、アメリカの畜産業が日本市場のシェアを広げたとき、必ず日本の畜産業が痛手を受けます。日本の畜産業が需要を満たしている状況で、何で今、そんなことをしなければならないのでしょうか。

アメリカの畜産業と、日本の畜産業と、どちらに味方をするのかと聞かれれば、わたくしは間髪入れず「日本の畜産業者」と答えます。などと書くと、
「既得権益の味方して〜!」
と、言われてしまうのですが、あのですね。既得権益とはただのビジネスのネタで、誰でも何らかの既得権益を持っています。日本の畜産業の生産性が低く、国内の需要を満たせていないならば問題ですが、需給の問題を無視し、市場に新規参入したい企業や外国を批判すると、「既得権益が〜」などとレッテルで攻撃してくるのは、極めて不誠実だと思うわけでございます。

結局のところ、デフレで日本国民が荒んでしまい、やたらルサンチマンを煽ってくる人々に乗せられているに過ぎない、という話なのかも知れません。そもそも、既得権益云々言うならば、日本国民であること、これが最強の既得権益です。既得権益云々と批判する人は、まずは国籍を離脱し、無国籍者となり、国家の庇護を一切受けないで一人で生き延びてみてください。

現時点で、日本は国民主権国家(一応)です。わたくしは日本国の主権という既得権益は、手放しませんからね。

国民が主権の一部を手放してしまったのが、まさにユーロでございます。ロイターに非常にポイントをついた欧州議会選挙のコラムが載っていましたので、ご紹介。

『コラム:欧州議会選で激震、EUは「死の淵」に
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0E80H020140528?sp=true

5月22─25日に実施された欧州議会選挙の投票結果を受け、欧州全域に激震が走った。英国、フランス、スペインなどでは、欧州連合(EU)懐疑派が大躍進を遂げたからだ。
今回の選挙結果は、加盟する28カ国の統合深化を掲げるEUに重傷を負わせたに等しい。EUは死の淵にあると言ってもいいかもしれない。以下にその理由を述べたいと思う。

1.英国はEUを脱退するかもしれない。キャメロン首相は、次期総選挙で自身が率いる保守党が勝利すれば、EU残留か離脱を問う国民投票を実施すると公約している。首相は、EUの持つ権限を可能な限り加盟国に戻すべきとするEU改革案を掲げているが、その実現性が怪しくなれば、英国の有権者は残留より脱退を選択するだろう。

政治的権限を加盟国に戻すという案は、反EU派が台頭している国々では、「統合深化」より魅力のある選択肢となり得る。しかし、もしキャメロン首相の改革案が欧州議会で受け入れられず、低成長にあえぐ欧州が弱体化したままでいるなら、EU脱退という答えが選ばれる公算が大きい。

2.欧州議会選で議席を獲得したEU懐疑派を詳しく見ると、反ユーロ政策を掲げる「ドイツのための選択肢」といった比較的穏健な政党から、ハンガリーの「ヨッビク」やギリシャの「黄金の夜明け」といった極右政党まで幅広い。ただ彼らは、欧州議会で何らかの急進的行動を起こすという方向性では一致している。

多くの国では、欧州議会での議席は、引退間近の政治家や自国の議会で議席を得られなかった政治家のためにある閑職とも言える。欧州議会には仕事熱心な議員も多いが、そうでない議員もたくさんいる。議論は往々にして退屈で、24の言語に通訳されるため進行が遅く、言葉は空席の列にむなしく響き渡る。

しかし、今回の議会選で様相は一変する。「解体業者」のグループが乗り込み、EU統合推進派は彼らと戦わなくてはならなくなる。もし統合推進派に戦う勇気が足りず、反EU派のメッセージが目立ち続けるなら、EUは苦境に陥るだろう。

3.2000年のユーロ導入は時期尚早だった。欧州の社会民主主義国家に肯定的なポール・クルーグマン氏でさえ、ユーロ導入は早計だったと考えている。ユーロは危機を脱したが、まだ完全に助かったわけではない。緊縮財政反対派はドイツを攻撃することで、債務危機で最も打撃を受けたPIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)をデフォルトさせず、ユーロ圏にとどめておくという合意をひっくり返そうとするだろう

ドイツはEUの要だ。メルケル首相はこれまでのところ、不本意ながらも、ユーロ圏の脆弱(ぜいじゃく)な安定性を保証するには十分な役割を果たしてきた。ギリシャやスペインの左派などはドイツが「宗主国化」していると主張するが、もしドイツがこうした国々の経済を持続させる意思を失えば、ユーロ圏は再び危機に陥る。そしておそらく、今回は命取りとなる。

欧州議会選の結果がもたらす変化の全貌は、これから明らかになってくる。「より大きな欧州」をモットーとし、熾烈(しれつ)で寝技を必要とするような政争とは無縁だった伝統的なEUの政治家には試練が待っている。』

欧州の現状を見ると、国家とは特に「非常事態」発生時に価値が高まることが分かります。各国で不動産バブルが崩壊し、経済がデフレ化。失業率が極端にまで上昇してしまった欧州(特に南欧)の国民は、国家に救済を求めても「無駄」というのが現状です。

そうである以上、今回の欧州議会選挙の結果は、先日も書きましたが「歴史の必然」であり、EUもユーロも方向転換を強いられることになると思います。さもなければ、近い将来、解体されることになってしまうでしょう。何しろ、ロイターの記事にもあるように、各国の国民は「EU解体業者」をEU議会に送り込んだわけです。

欧州の事例は、各国の国民が主権を喪失した結果、民主主義が機能しなくなった典型例です。とはいえ、あくまで世界的な「グローバリズムとナショナリズムの衝突」の一戦線に過ぎません。他の戦線はどうなっているのか。日本の戦線は?

是非とも、「〈ぶっちゃけ話だからよくわかる! 〉仁義なき世界経済の不都合な真実 _」をお読みいただき、日本の「国民」として何をするべきなのかを今こそ考えて欲しいのです。

PS
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PPS
日本も他人ごとではない! 韓国大崩壊ただ1つの理由
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【三橋貴明】仁義なき世界経済の不都合な真実への1件のコメント

  1. 匿各希望 より

    > そもそも、既得権益云々言うならば、日本国民であること、これが最強の既得権益です。既得権益云々と批判する人は、まずは国籍を離脱し、無国籍者となり、国家の庇護を一切受けないで一人で生き延びてみてください。↑言いたいことは分かるのですが、こんな論調(理詰めの極論で追い込む姿勢)だと態度を硬くする人(主にマニア以外の一般読者)もいるでしょうに。まあ、目的達成に適ってると考えるなら構わないのですが、少なくとも馬鹿で情弱な私は「あー、過激で極端な論調だなぁ。印象的にはちょっと引くかな」と感じました。

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