From 古谷経衡(著述家&『月刊三橋』ナビゲーター)
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●韓国大崩壊 ただ1つの理由
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最近、「日本が右傾化している」、「若者が右傾化している」と騒がしい昨今(今に始まったことではないですが)でありますが、この度、特に「若者が右傾化している!」という素っ頓狂な意見(レッテル?)に対し、統計データで以って反論しようという本を上梓いたしました。4月25日発売の『若者は本当に右傾化しているのか』(アスペクト)であります。
今回は、この本の全面紹介を、というとやや商売ッ気がありすぎます故、若者に限らず巷間騒がしい「日本が右傾化している」論の嘘を、少し論じてみようと思います。
まず「日本の右傾化」を語るのであれば、「右傾化」という言葉の定義を明確にしなければなりません。余談ですが、「反天皇制運動連絡会」(反天連)というと在る市民団体の集会では、「村山談話」や「社会民主党」が「右翼勢力」と断罪されていました。立場によって「右」「左」の定義とはこれほどまでに変わるものです。
さて「日本の右傾化が心配だ」という様な、大新聞の社説等々で言われる現代用語の基礎知識としての「右傾化」の定義とは、例えば「憲法(9条)改正」「靖国神社公式参拝への賛同」「国を愛する気持ちの涵養と発展」「集団的自衛権行使への賛同」「いわゆる“東京裁判史観”への批判的な歴史観」などであり、総じてこれらを「保守的課題」と私は呼称します。
「日本の右傾化」とは、これら「保守的課題」に賛同している人々が多い、或いは近年増えているというもので、それを警戒的に論じるものです。
「保守的課題への賛同」は、果たして近年増加しているのでしょうか。確かに、出版不況と言われる中、「保守的課題」を肯定的に捉えた論壇誌の売上は、かなり頑張っていると感じられる昨今ではあります。しかし、それだけを以てして、「保守的課題」への賛同が国民の間で広がっている、と決め付けるのは早計でしょう。
内閣府が毎年実施している「国を愛する気持ちの程度」という世論調査(社会意識に関する世論調査)では、1970年代後半からの総合的なデータを紐解くことができます。「国を愛する気持ちの程度」は前述した「保守的課題」の最たるもので、この「程度」の増減で、「右傾化」の有無の傾向がおおおよそつかめると考えます。それによると、1977年の調査開始時点で、「国を愛する気持ち」が「強い」と答えたのは「46.2%」、一方「弱い」と答えたのは「12.5%」、「どちらでもない」は「41.3%」でした。
1977年といえば、もちろんインターネットは無く、福田赳夫内閣の時代で角福戦争(田中角栄と福田赳夫)のまっただ中の時代でした。その時代に約半数の人が「国を愛する気持ちが強い」と答えたのは、多いと感じますか。それとも、少ないと感じるでしょうか。
では時代を現在に移して、2014年の最新のデータです。それによると「国を愛する気持ち」が「強い」と答えたのは「55.3%」、一方「弱い」と答えたのは「6.6%」、「どちらでもない」は「38.1%」でした。約40年前の1977年と比べて愛国心の「強い」程度は+9%、「弱い」は−6%、「どちらでもない」は−3%の増減をしました。強いがやや増加し、弱いが半減したとは言え、「どちらでもない」と答えている中間層には、目立った変化を見つけることが出来ません。
インターネットが普及し、「ネット保守」と呼ばれる人々が台頭していると言われるものの、約40年もの時間が経過して日本人の中にある愛国心は、「右傾化」と呼べるほど、激しい増加を見せたのか、疑問に思えてなりません。
このような「ビッグ・データ」から判明するのは、「戦後、日本人は特に愛国心が薄かった」などと言われてきた時代の中にも、実は結構「そこそこ、国を愛する気持ちが強かった」という厳然たる事実です。
「自虐史観」「戦後民主主義」に染められ、「反日史観」で染め上げられていた「ように」見える戦後の日本人は、割りと昔から「常識的」な判断をしていたのではないか、という解釈が、こういった公のデータから読み解くことができます。
逆に言おうと、これだけ普及しているインターネット空間の力は、そのすべてが「愛国心」に寄与したと仮定しても、40年で9%程度の増加でしか無い事になります。「インターネットで真実を知った」として「愛国心に目覚めた」という事を言う人々が一部に居ますが、戦後の日本人はそんなに単純ではなく、かなり以前から常識と皮膚感覚で「愛国心」を涵養していた、という事になるのかもしれません。
1960年安保、1970年安保が華やかりし頃、政府が行った世論調査では「日米安保条約海底に反対ですか賛成ですか」という問に対して、実に約7割の人々が「興味がない」と答えているという公的なデータがあります。70年安保などというと、「当時の若者はみな、ゲバ棒をもって米帝打倒などという学生運動に傾倒していた」というイメージが強いのですが、この世論調査からは、当時の大多数の日本人はそういった「躁的」な騒擾や運動に対して、極めて冷静な見方をしていたことがわかります。
私が大好きな漫画家の一人に、つげ義春先生がいまして、彼の作品の中に自伝的な小編「隣の女」という話があります。この中で主人公は、「アンポって知っている?」とある男に聞かれます。舞台は1960年、60年安保の真っ最中で、学生らが国会議事堂を取り囲み、安保改定反対を叫んで警官隊と大激突し、当時の岸信介首相が安保延長と引換に内閣総辞職する、という大変な混乱の世相であったのです。
「アンポって知っている?」と聞かれた主人公は、「アンポってなんですか?」と問い返します。すると質問者の男は「俺も知らないんだよね」といって笑うシーンでこの作品は終わります。当時の日本人の多くが、「躁的」な社会のノリからは一歩離れた所で、堅実な生活を送っていたことを証明する、貴重な歴史的漫画だと私は思います。
翻って、現在の日本はどうでしょうか。「55.3%」という半数を超える日本人は、「愛国心が強い」と答える一方で、それが「保守的課題への賛同」とイコールなのかどうかは分かりません。過半数の日本人が「保守的課題」に賛成していたのだとしたら、2009年の民主党政権誕生は何だったのでしょうか。「保守的課題への賛同」は必ずしも愛国心とイコールではないのです。
日本人の多くは、「愛国心」という概念を、左右のイデオロギーの枠の中から離れた位置で、皮膚感覚で捉えようとしているように私は思います。つまり、「愛国心」という概念は、既に「保守」とか「右」の範疇では収まらなくなっている、それが現在の日本の潮流だとおもいます。
朝日新聞が2013年末に20代の若者3,000人を対象として大規模な世論調査を行った処、「愛国心が強い」と答えた若者は7割に迫り、「安倍首相の靖国神社参拝」を支持するとする回答も6割を超えました。一方、「戦争になったら国のために命を捧げるか」には「NO」とする回答が圧倒的多数を占めています。このような「保守的課題」を基軸とすると、一見アンビバレントな若者や日本人の感覚の多くが、もはや「右」「左」というイデオロギーで括れるものではない事を示しています。
考えてみたら当たり前ですが、「愛国心が強い」=「保守」という図式が、そもそも異常なことです。日本という共同体に暮らす構成員なら、国家に愛着を持つのは当たり前で、「右」「左」の関係なく、素直な感性で愛国心を謳う日本人や若者が増えてきました。それを以って「日本の右傾化」というのは間違いですし、一方「保守的課題への賛同」とイコールで観るのもまた間違っています。
もはや旧来の「右」「左」という価値観が形骸化しているのでしょう。冷戦時代まで続いたイデオロギーの世界観が、通用しなくなっています。それは日本が“普通の国”“普通の姿”になっている過程の中で、大変喜ばしいことだと私は考えます。「日本は右傾化しているのか」と聞かれれば、私は自信を持ってNOと答えます。日本は右傾化していないし、その質問自体が前提として「イデオロギー」の虜になっている、と。
このようなことを、もっと詳細に、統計データで論じたのが、冒頭の『若者は本当に右傾化しているのか』(アスペクト)です。右や左の溜飲を下げるために書いた本ではありません。双方に対して、ときとして厳しい提言を行なっています。私の初の新書にして、自信作に仕上がりました。よろしければ是非。
PS
三橋貴明の無料Video「雇用破壊」
日本人を貧民化させるのは国益なのか?
http://youtu.be/IsJZZaD-rPQ
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【古谷経衡】日本右傾化論の嘘への1件のコメント
2014年4月25日 7:54 AM
なんだか御託並べてるけど、あんた右寄りだよ。どう見ても中立には見えないよ。いやしくも経済評論家と自称するなら中立に物事を見て語ってほしい。一投資家として言わせてもらうと、あなたはエコノミカルナショナリストだよ。
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