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2013年12月29日

【三橋経済塾】イスラムの金融

FROM 土方翔(ひじかた かける)@三橋経済塾

初めまして。三橋経済塾生の土方翔と申します。
三橋貴明事務所の狩野さん、経済塾塾生の言問吾妻(こととい あづま)さんに続き、この度「号外」を書かせて頂くことになりました。
私は三橋経済塾の第二期から参加しており、これまで国民経済について学んできた事を仕事でも携わっているサウジアラビア(イスラム圏)の話と絡めて、今回お伝えできればと考えております。
慣れない文章の為、お見苦しい点多々あるかと思いますが、何卒最後までお見通し頂ければ幸いです。

早速ですが皆さん、サウジアラビアと聞いて何をイメージされますか??
豚肉がだめ?? そうです! トンカツ、餃子、豚骨ラーメン、全てNGです。
(でも、魚介系ラーメンはいいのかも。チャーシュー抜きですが。
お酒がだめ?? そうです!! 打ち上げはノンアルコール・ビールです。自宅で作ってもダメ!
(但し、隣国のバーレーンではアルコールOK)
なんだか、これだけでも日本のサラリーマンはもうやっていけなくなりそうですね…。

サウジアラビアは、イスラム教の聖地メッカとメディナを抱えている国でもあるので戒律がとても厳しい国なのです。一日約20分x5回のお祈りがあり、Prayer Time中は飲食店が閉まってしまいます。
他には…、そうそう映画館がないです。自由恋愛できないので、デートっていう発想がそもそもないのかも。女性は夫以外には肌を見せてはいけませんし、結婚式場は入り口から既に男女別々に用意されています。女性用会場はもちろん男子禁制。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%90%E3%83%A4 (目ヂカラが大事??)

つらつら挙げましたが、私は一年前から仕事でサウジアラビア案件を担当してはいるものの、未だに分からない事が多いです。宗教警察が存在し、公開処刑も行われていたりするのもサウジアラビアです。
・・・おっと、いけない。
このままでは、本メルマガがただのサウジコラムになってしまいます。

何を言いたかったのかと申しますと、日本とイスラム(中東)圏というのは物理的距離もそうですが、文化的にも非常に遠いということです。
それじゃ、何かイスラム圏って経済的にも日本と発想なり思想なり違うのか??
もし違うとすれば何が違うのか?? という問いが本メルマガの趣旨です。

それでは、まずは日本のお話。

最近のニュースを見聞きする限り、「あれ?? 一体アベノミクスって何がしたいんだっけ??」と思う事が多々あります。まさに東田剛先生のご指摘の通り、「目的の転移」が起きているということでしょうか。
【東田剛】“アベコベ”ノミクス http://www.mitsuhashitakaaki.net/2013/09/18/korekiyo-62/
【東田剛】予想通り不幸な展開 http://www.mitsuhashitakaaki.net/2013/11/20/korekiyo-71/
【参考書籍】プラグマティズムの作法(目的の転移について) http://www.amazon.co.jp/dp/4774150231

アベノミクスの目的とは「デフレ脱却」であり、3本の矢である「金融政策」「財政政策」「成長戦略」はその手段であったわけです。
中でも日・米・欧の中央銀行が推進している金融の量的緩和政策については、前回言問吾妻さんが取り上げたように「本当に雇用改善へ繋がるのか??」「また金融バブルを起こすだけでは??」と、私もその実効性に懐疑的な立場です。
デフレ脱却の為には、貯蓄過剰状態にある銀行のおカネをどのように使い、実態経済へ反映させるか(名目GDPに影響を与えるか)が重要な点になります。

国民経済における貨幣の流通については、青木泰樹先生が以下二つに分類されており、非常に参考になります。
【参考書籍】経済学とは何だろうか http://www.amazon.co.jp/dp/4842915609

1)「産業的流通(活動貨幣量)」: 国民が労働により生み出した財やサービスの購入に使用される貨幣 = 名目GDPに影響を与える
2)「金融的流通(不活動貨幣量)」: 土地、株式、為替取引、さらには先物取引など金融商品購入のために使われる貨幣 =名目GDPに影響を与えない

つまり、総需要(名目GDP)の不足を埋める為には、量的緩和政策よる貨幣発行は当たり前として、そのおカネが「活動貨幣」として「消費 and/or 投資」として実態経済に向かう様に使われなければならないということですね。

ただ、これらの話を全く経済に興味のない人に話しても、結局は拒否反応を示されてしまうのがオチ、というのが最近の悩みだったりします…。

そこで!!
何か周りの人の関心を引くネタがないかなぁと考えていたところ、前述したイスラム圏の話に至ったわけです。イスラム圏って日本ではあまり馴染みのないため、話のきっかけ作りとしては有用かなと思い、今回は、その独自の金融システムである「イスラム金融」について皆さんにご紹介する次第です。(ようやく本題に入れました。ホッ。)

イスラム金融の発端は比較的新しく、1973年の石油ショック後に世界中のイスラム諸国への経済援助と支援を目的とした「イスラム開発銀行」が設立されたことをきっかけとしています。
イスラム金融というとドバイに代表される中東諸国を思い浮かべる方も多いかと思いますが、その他にもアジア圏では、マレーシアやインドネシアがイスラム圏の代表国になります。
資産総額 が100兆ドルを超える伝統的な金融業に比べれば、イスラム金融は小さな規模(1.2兆〜1.3兆ドル)ですが、過去3年間に年16%という驚異的なペースで拡大しています。

【焦点:イスラム金融センターめぐりロンドンなど三つ巴の争い】
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE9AC04920131113?pageNumber=1&virtualBrandChannel=0

このイスラム金融。その大きな特徴は、教典コーランが利子(リバーと呼ばれ、アラビア語で「増加する」という意味)の受け取りを禁じていることから、「金利の概念がない」ということです。
イスラムの教えでは、利益はそれに見合った労働や努力の結果得られるものであり、労せずして得られた利子の取得(=不労所得)は禁止されています。(投機家たちは発狂ものですね)

ここだけを切り取ってしまうと、不労所得の禁止= 金持ちの否定= 左翼的思想?? とも受け取られかねませんが、違います。
「利潤の追求」はむしろ推奨されています。

労働の価値という点で、現代とコーランが編纂された648年(日本では大化の改新=645年と同時期です)では、当時はもちろん「資本移動の自由」や「コンピューターを使ったビジネス」もなかったわけですから、皆さん様々な意見があると思います。
事実、「利子」の解釈については、今でもイスラム法学者たちの中で見解が分かれているようです。
ただ、今から約1,300年前に「利子を禁じる」という思想がイスラム圏に存在していたことは確かであり、当時も汗水垂らして働いている人がいる一方で、値上げ利益を期待し、「投機(スペキュレーション)」に興じる人たちがいたということかもしれません。
利子を禁じているイスラム銀行は、別名「無利子銀行」とも呼ばれています。

そして、ここで気になるのが、「無利子銀行がどうやって利潤を上げているのか??」ですね。
答えとしては、「融資はダメだが、投資は良いため、ちゃんと利潤を上げることができる。」となります。

・・・いまいちピンときませんね。
ここで一度、「融資」と「投資」の違いについて以下整理してみます。

「融資」: 銀行が企業にお金を貸すこと=元金に利息を付けて返してもらえる
「投資」: 貸すものではなく提供するもの=提供した分の代価を利益から払ってもらえる

つまり、実態経済へいかに影響を与えるかということなのですが、イスラムの教えでは、「形のある商品を仲介させた商品売買で利潤を上げたり(ムラバハ)、事業出資することで配当を得ること(ムダラバ)」は禁止されていません。
この「融資」と「投資」を分けて考えるという点が、イスラム金融ならではの独自システムであり、結果としてマネーゲームが起きづらい仕組みが出来上がっています
あるグローバル資本家が投機目的でイスラム銀行からおカネを借りようにも、彼らは代わりに現物を渡してくるので、過度なレバレッジによる資金膨張ができないわけです。

では、一方で私たちの生きる資本主義世界はどうでしょうか。

金融経済と実態経済がどんどん乖離してしまった結果、日・米・欧がそれぞれ量的緩和政策を行っているものの、行き場を失った資金が溢れかえっており、失業率が思うように低下しない中で、新たなバブル発生が懸念されています。
また、アメリカのボルカ─・ルール金融規制(適用は2015年7月まで延期)によって、これまで新興国に流れていた資金の逆回転が起こり、結果として新興国の景気後退や1997年のような通貨危機が発生するのではないかとも言われています。

【ボルカー・ルールについて】 2013/12/13付け「新世紀のビッグブラザー」http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/page-6.html#main

私は現在の金融問題について、金融取引が「現物」や「事業」の為という本質を忘れたことにあると考えています。
本当は欲しいものがあったり、したいことがあったりするからこそおカネが必要だったはずなのに、「何が欲しいのか(現物)」「何がしたいのか(事業)」が分からなくなれば、その不安を鎮める為に、「マネーゲーム」に走ってしまうのかもしれません。
マネーゲームに走る人の特徴は、「価値観を持っていない」というのが私の持論です。(素直に生きていない、自分自信何が好きか分かっていない、人間関係が築けていない人たちに多い傾向に思えます)

投資ネタということで投資家のウォーレン・バフェットの言葉を借りれば、「どういう訳か、人々は行動のキッカケを、価値ではなく価格に求める。価格とは貴方が支払うものであり、価値とは貴方が受け取るものである。」です。

価格は目に見えるものの、価値は目に見えないので、尚更人間は価格に流されてしまうのでしょうが、人間でない政府までもが価値(国民の豊かさ)について考えないで、価格で判断している(ように目に映る)今の状況は、仮に政府を擬人化したとしても、いわゆる「嫌なヤツ」です。
日本から遠く離れたイスラム圏では、石油に代表される資源こそありますが、周囲を砂漠に囲まれた過酷な条件下のため資産の蓄積が難しく、そのことがおカネとモノの価値について現実的に考える文化の醸成に繋がったのかもしれません。
資本主義の危機とも言われる時代において、実体経済を重視するイスラム金融から私たちが学べるものはないか。2014年を迎えるにあたって、本コラムが皆さんにとって少しでも何か考えるきっかけになれば幸いです。

…ただ、何とも皮肉なのですが、マネーゲームの発端は、イスラム諸国のオイル・マネーが欧州の銀行に流れ込んだことに起因していたりします。それぞれが影響し合ってるのですね。

PS
本当に豊かな日本を目指すためのコミュニティ、三橋経済塾2014が間もなく開講
http://members.mitsuhashi-keizaijuku.jp/

PPS
月刊三橋会員は三橋経済塾の受講料が7000円割引されます。
http://keieikagakupub.com/lp/mitsuhashi/38NEWS_video.php?ts=sidebar

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【三橋経済塾】イスラムの金融への6件のコメント

  1. widelogic より

    >人間でない政府までもが価値(国民の豊かさ)について考えないで、価格で判断している(ように目に映る)今の状況は、仮に政府を擬人化したとしても、いわゆる「嫌なヤツ」です。正に同じことを考えておりました。財務省にしても自民税調にしても(或いは米国保守党、ティーパーティー、独のメルケル他にしても)何故、借金だの将来への負担だのを「額面」で考えているのかさっぱり理解できないです。景気変動、人口動態、海外景気、経済政策の成否の影響を何故考慮しないんでしょうか。政府が全力で財政金融あるいは税制や規制、分配政策を用いてマクロ経済状況を不完全ながらも整えないない限りどこの国民もなにも返してくれないでしょう。行き着く先は政治(統治)の混乱と社会不安からくる衰退と破滅のみです。

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  2. マーシー より

    中東経済、という変わった視点で大変興味深く、面白かったです!次回(続編?)も楽しみにしております。

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  3. 名無し より

    う〜んどうも株式投資自体を敵視しているようにしか思えませんね。バフェットは長期的に持っていてファンダを見てるから「投機」ではなく「投資」ですか?はっきり言ってどれもこれも「マネーゲーム」であることには変わりありませんよ。そもそも述べられた投資と融資の図式からはやっぱり株式投資を投資とはみなせないわけですが。どの程度「バフェット的投資」をしていれば投機じゃないのかその分岐点を具体的に書いてもらいたいですね。気に入らない投資を恣意的に投機とみなして連呼したり、しまいには「マネーゲームやってるのなんてこんな奴らなんだ〜」と勝手な妄想でレッテル貼りしてみたり(苦笑)。結局これでは「高学歴なんてこんな奴らだろ、ケッ!」のような、「俺たちゃ汗水たらして働いてんのによ!」というルサンチマンから発する自慰的な愚痴でしかありません。

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  4. radice62 より

    大変興味深いです。イメージとしては、信販ローンとかリースのような感じですねかね。モノは、減価償却するのか、リース料分の経費扱いにするのか・・また設備資金はそれでいいとしても、事業上の運転資金はどういう扱いなのか・・これは続編に期待してしまいます。

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