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2013年12月2日

【三橋貴明】中国の防空識別圏設定について

FROM 三橋貴明

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●韓国経済の悲惨すぎる現実とは?
http://keieikagakupub.com/lp/mitsuhashi/38NEWS_video.php?ts=sidebar

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【今週のNewsピックアップ】
●中国の防空識別圏設定について
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11712376850.html

●続 中国の防空識別圏設定について
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11713017374.html

11月23日に、中国が尖閣諸島上空、つまりは石垣市の上空を防空識別圏に設定し、それを公表しました。防空識別圏とは、国際法で定められた「領海」「領空」とは違います。特定の国が防空上の理由から、自国の空域に設定するものであり「領空」ではありません。
中国側が防空識別圏を拡大したとしても、日本の航空機が同空域を飛ぶ際に、中国当局に飛行計画を提出する必要など全くないわけです。とはいえ、中国側は新たに設定した防空識別圏を飛ぶ航空機に対し、飛行計画を提出するべし、と息巻いています。
尖閣諸島を巡る日中問題(尖閣諸島は領土問題ではない)は、再び一歩、危機深刻化の方向に歩みを進めたことになります。進めたのはもちろん中国側であり、日本側ではありません。
中国国防省が出した公告では、識別圏内を飛ぶ各国の航空機に対し(多くが日本の航空機でしょうが)、中国国防省の指令に従うこと、さらには飛行計画の提出を求めています。従わない航空機に対しては、
「防御的緊急措置を講じる」
つまりは、スクランブルをかけると宣言したわけだから、尋常ではなありません。
これで日本側が臆してしまい、中国側の要求に従ってしまうと、
「お分かりだろう。釣魚島(尖閣諸島)は我が国の領土である。日本が文句を言うならば、領土問題として話し合おう」
と、やってくるわけです。結果的に、尖閣諸島問題はめでたく「領土問題」に格上げされてしまうという筋書きなのでしょう。
というわけで、日本の航空会社の対応に注目していたわけですが、素直に飛行計画を中国航空当局に提出していたわけだから、あまりの平和ボケに慄然としてしまいました。
JALやANAは「国から明確な 指示がなく、乗客の安全が第一だ」と、24日以降に中国当局へ飛行計画を提出したのです。これに対し、菅義偉官房長官が26午前に記者会見し、「25日に国土交通省から航空会社に対して、中国側の措置はわが国に対して何ら効力有するものではなく、これまでのルール通りの運用を行っていくという政府の方針を伝えている」と、発言。最終的には、飛行計画提出は「中止」ということになりました。
JALやANAは、中国航空当局に飛行計画を提出することで、日本の領空である尖閣諸島上空について、中国の施政権を認める形になってしまうことに考えが及ばなかったのでしょうか。日本の航空会社が尖閣上空で中国当局の指示に従うとは、すなわち中国が同空域を実効支配していると認めることになりかねないわけです。
戦後の我が国は、国家の安全保障について国民が「見ない、聞かない、考えない」時期が数十年続きました。結果的に、日本企業、特に「日の丸」を背負った航空会社ですら、自らの判断が自国の安全保障を害する可能性があることを考えないようになってしまったようです。
国境を越えたモノ、サービス、ヒト、カネの流れを「自由にする」グローバル化、あるいはグローバリズムは、各国の「安全保障」や「非常事態への対処」について考慮していません。すなわち、各国が「まとも」で、あまり無体なことはせず、さらに金融バブルの崩壊や大規模自然災害といった非常事態も起き得ないという、いわば性善説(?)に基づいているように思えるわけです。
現実には非常事態は起きますし、安全保障を脅かす「外敵」は歴と存在しています。
真の意味におけるグローバリストたち、すなわちグローバル投資家たちは、自分たちの国で非常事態が発生する、あるいは安全保障の危機が生じた際には、
「じゃあ、別の国に移ればいいや」
と、さっさと自国を捨て、別の国に本拠地を移してしまうのかも知れません。とはいえ、多くの「国民」はそんなことはできないわけです。
そして、グローバルに事業を展開する企業、すなわち「グローバル企業」はどうでしょうか。日本の安全保障の危機が深刻化したことを受け、JALやANAは「じゃあ、他国に行くよ」とできるのでしょうか。とてもそうは思えません。JALにせよ、ANAにせよ、「日本の企業」であることは間違いないわけです。
アメリカの経済学者ハジュン・チャンは、自著「世界経済を破綻させる23の嘘」において、
「資本にはもはや国籍はない」
はウソであり、「資本にはいまなお国籍がある」と説いています。結局のところ、グローバル企業であってすら「ホーム・ビアス(本国偏向)」があると断言しているわけです。
JALやANAが本国(日本)を捨て、「無国籍企業」になるということは、「いずれの国の保護も受けない」という話であり、現実的には不可能でしょう。JALやANAは今後も「日本企業」であり続けざるを得ません。
というわけで、結局はグローバル企業であっても「国籍」を意識し、自国の安全保障についても考えなければ、結局は自らも打撃を受けることになりかねないという話です。JALやANAに限らず、日本企業は、さらにはわたくし達日本国民もにとって、「国家の安全保障とは何なのか」について、今一度、真剣に考え直さなければならない時期が訪れたのです。

PS
『月刊三橋』会員限定QAと12月の号で中国の防空識別圏設定の問題を解説しています。
http://keieikagakupub.com/lp/mitsuhashi/38NEWS_video.php?ts=sidebar

PPS
最新号は「アベノミクス再検証」(12/10まで)、12月の「2014年の世界と日本」がテーマです。

PPPS
メインのコンテンツとは別に配信しているQAもかなり面白いです

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【三橋貴明】中国の防空識別圏設定についてへの5件のコメント

  1. ろんどなー より

    以前内田樹氏のブログを時々読んでおりましたが、彼の「グローバル企業批判」に関する記述は、三橋さんの言説に酷似していると感じました。都合よく無断引用しているのかどうかは私には分かりませんが。けれども三橋さんと内田氏の決定的な違いは中国・韓国に対する態度です。内田氏は「隣国とは仲良くしよう」というスタンスを保っておられます。もっとも内田氏のブログによると、彼の複数の著書が韓国語訳され、かの国では尊敬され高評価で待遇されているそうですから、そうい事情も考慮に入れなくては、とは思いますが。

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  2. 一筆 より

    叩き方に次元が違う、ChinaとKoreaに対して、扱い方に次元が違う、親米派と知米派に対し、味噌も糞も一緒にする三橋氏と、それを盲信する貴殿等に、「少しは考えろ」と問うているのですが。

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  3. 名前はまだ無い より

    『安倍政権の経済政策「アベノミクス」と多国籍企業やナショナリズムについて、神戸女学院大学名誉教授の内田樹(うちだたつる)さんに聞きました。』という記事に以下の記述があります。『安倍自民党がことさらに中国・韓国との対立感情を煽(あお)っているのは、無国籍産業がそれを要請しているからです。国同士の経済戦争で命がけでたたかっているのだという「ストーリー」を信じ込ませれば、国民は低賃金に耐え、消費税増税に耐え、TPP(環太平洋連携協定)による第1次産業の崩壊に耐え、原発のリスクに耐えるからです。』しかし三橋氏の今回の記事には『尖閣諸島を巡る日中問題(尖閣諸島は領土問題ではない)は、再び一歩、危機深刻化の方向に歩みを進めたことになります。進めたのはもちろん中国側であり、日本側ではありません。』この二人の認識は企業のグローバリズム批判の一点では一致しても日中の対立関係と日本のナショナリズムに対する認識が全く異なります。ただ一点の認識を持って「三橋は共産党と一緒だ」と言いたげな輩は一体誰に何を訴えたいのでしょうか?この人たちはまるで中国の走狗である。アメポチは最終的に中国との決定的対立を避けようとするアメリカの意向を受けてシナポチ化する。今こそ冷静に日中戦争の可能性が否定できない事を論じるべきなのです。

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  4. 塚口 均 より

    政権交代から始まった中韓の横紙破りの行動には辟易する毎日だ。尖閣、防空識別圏、竹島、慰安婦、安重根問題と懲りもせず次々と繰り出す手前勝手な論理。もし今、民主党政権だとしたら一体この日本はどうなっていたことか。背筋が凍る思いです。現在の周辺事態を目の前に突きつけられても集団的自衛権、秘密保護法、憲法改正に今なお平和ボケした意見を吐き続ける一部の野党の見識には目を覆うばかりである。自虐史観に基づく左寄りの意見を全面否定するものではないが、一方で中韓朝の今の主張や行動が行き着く先の結果を冷静に見通す国家戦略が今こそ日本に求められる。国内議論があらゆる階層で活発に議論されることは大いに歓迎するがしっかりと政治家に国民をひっぱていくリーダシップを望みます。とともに我々国民も決まった結果は素直に認める識見が必要でしょう。いずれの国も国益の最大化に向けてグローバル環境でしのぎを削る現在小田原評定に汲々とする日本に残されている時間はそんなに多くはありません。

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  5. 一筆 より

    三橋さんは、ありもしない「無国籍企業」なるものを引き合いに出し、誰に何を訴えたいのでしょうか。一時流行った、課税回避地(俗にいうタックスヘイブン)に本社のある企業を標的にし、本国偏向があるとは認めつつも、それらをグローバル企業と定義なされたいのかも知れません。しかし、これら地域の大多数は、王室領であったりする私有地です。まさか三橋さんは、世界各国の王室を敵視されてはいませんよね。昔は、共産主義国のダミー会社に対し、無国籍企業的なイメージを持った時期もありましたね。そういえば、赤旗にも、今回の三橋さんと同じような記事が載っていました。ここでは他サイトをリンクで飛ばす事が出来ないようなので、『安倍政権の経済政策「アベノミクス」と多国籍企業やナショナリズムについて、神戸女学院大学名誉教授の内田樹(うちだたつる)さんに聞きました。』でググってみて下さい。ご参考までに。

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