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2013年3月8日

【施 光恒】内観法

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From 施 光恒(せ・てるひさ)@九州大学

おはようございます(^_^)/

いつも、メルマガの原稿、締切ぎりぎりに書いています…。
ですが、今回は、めずらしく少し前に書いて提出しています。

というのは、このメルマガがお手元に配信される頃、私は「プチ出家」の最中です。
なかば研究、なかば個人的関心で、あるお寺にこもって「内観」(集中内観)の研修を受けています。

「内観」というのは、ご存知の方も多いと思いますが、日本独自の一種の心理療法です。

何をするのかといいますと、ごく簡単にいえば、約一週間の合宿をして、その間、ずっと朝から晩まで静かな部屋の、屏風で仕切った狭いスペースに一人で座り、両親や兄弟、恩師、友人などのかかわりの深い人々と自分との関係を思い出していきます。

具体的には、それぞれの人々に対して、自分が「してもらったこと」、「して返したこと」、「迷惑をかけたこと」について、期限を区切って回想するとのことです。
たとえば、母親から、小学校高学年の時には、「○○をしてもらったな」、「だけどあまりお返ししてないな」、「__のような迷惑をたくさんかけたな」という感じで、できるだけ具体的に場面を描きながら思い出していくのだそうです

こと細かく回想する作業を繰り返す中で、様々な気づきや発見があり、自分や他者の理解が深まり、他者に支えられて生きていることを実感し、より前向きに、いきいきと生活できるようになる、とのことです。

日本発の心理療法として、国際的にも高い評価を得ているそうです。

ウィキペディアにも「内観療法」で項目がありました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%85%E8%A6%B3%E7%99%82%E6%B3%95

私は、少し前から、「日本文化に根差した『共生』理念に関する政治理論的研究」というのを研究テーマの一つにしています。(「共生」という言葉、左派っぽいというか、ハトヤマさん的なイメージが浮かんであまり好きではないのですが、少々成り行きがありまして、この題目を使っています…)。

安倍首相の言うところの「瑞穂の国の資本主義」のような、日本人になじみやすい、文化に根差した社会制度像を描く理論的基礎を明らかにしようというテーマです。

このテーマの研究の一環として「内観」は大いに参考になりそうだと思っています。

よく指摘されますが、現在の社会科学の理論って、政治学も経済学も、やはり主流は欧米的な個人主義的人間観が根っこにあります。

また、こういう理論に影響されることもあるのか、実際のところ欧米の社会は、「各人は根本的に独立した存在である」、「独立した個人が集まって社会を形成しており、社会をまとめているのは法や政治権力である」という前提のもとで作られています。

ですが日本の社会は、こういうのとかなり違った前提のもと、できているように感じます。

それを一番強く思ったのは、2年前の東日本大震災直後の被災地の人々の規律ある行動でした。

日本以外の国でしたら、大災害の直後は、警察や軍が出勤して治安の維持にあたるのが普通だと聞きます。外国では大災害後の被災地は、一種の無法状態に陥り、大規模な略奪や暴動が起きることが多いらしいですね。

ですが、日本ではそういうことはまずないですよね。東日本大震災のあとも、被災地では、火事場泥棒的な事件は少々あったでしょうが、略奪や暴動と呼べるものはまったく起こりませんでした。海外のマスコミは、日本人の秩序感覚、規律意識を絶賛していました。

平時でも、日本の秩序は、やはり世界一といって差し支えないようです。
レジス・アルノー氏の『ニューズウィーク日本版』の最近のコラムも、フランスとの比較で日本の治安の良さを描いています。
http://www.newsweekjapan.jp/column/tokyoeye/2013/01/post-606.php

私も以前、英国に留学しているとき、空き巣に入られて、パソコンやカメラを盗られたことがあります(T△T)

英国の私のいた町では、自転車に乗っている人はあまりいませんでした。すぐ盗られてしまうから、ということでした。それでも自転車に乗っている人は、自転車を離れるときは、自転車をしっかり施錠したあと、サドルだけ車体から外して持ち歩くのが普通だったように記憶しています。

外国のそういう事例と比べると、日本の治安はいいですよね。
アルノー氏のコラムだと「共同体意識」という言葉を使っていますが、私も、日本の治安の良さは、警察や法、政治権力に基づくものではなく、むしろ「秩序感覚」「規律意識」といった日本人ひとりひとりの意識のあり方に求められるように思います。

日本人は、「他者との結びつきのなかでこそ自分がある」、「気持ちよく暮らしを営んでいくためには、他者に配慮しなければならない」ということを半ば無意識に前提しているんでしょうね。

「内観法」は、日本人のそういう自己意識のあり方に基づく心理療法だといえると思います。個人の存在は、他者に支えられて、他者との結びつきのなかにあるのだということを思い出させるわけですから。

他者との相互依存関係を実感したほうが、個人としてもいきいきと生きられるようになるはずだ、という内観法の前提は、一見逆説的ですが非常に興味深いです。

私は、理屈屋で頭でっかちの人間ですので、内観法についての本は事前にたくさん読みました。でも、実際に受けるのは初めてです。
うまく思い出せるかな、思い出す作業だけで何らかの気づきがホントに得られるもんなのかなと少々不安や疑念もあるのですが、なかなかない機会ですので、真面目に取り組んできます。
(`・ω・_)

どんな感じだったか、また、日本人にとってなじみやすい前提に根差した、あるべき社会像を考えるうえで参考になることが得られたかどうかも後日、ご報告しますね。

今回は、私事ばかりで失礼しますた<(_ _)>

PS
中野剛志氏と一緒に、こんな本を書いています。
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【施 光恒】内観法への2件のコメント

  1. hehehenohe より

    近代の超克というのがありますが、内観法もそれに連なるものでしょう。禅とか森田療法とかそれぞれ似ていて違うものも同様。3.11の秩序というのは縄文弥生にさかのぼる日本的感性が根っこにあるのではないかと思っています。近代の超克。日本は独自です。というか西洋的なものに対して独自です。TPP(西洋近代)をどのように超克するか。安倍さんはそのへんがどのくらい解っているか。

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  2. Yuriya Kaito より

    そうですね。諸外国から輸入した社会科学よりも、日本独自の社会科学がほしいですね。最近『僕が親日になった理由』という本を読みましたが、日本人は、アジア人西洋人と全然違うそうです。どうやら、世界の中で、日本人だけが違うようです。内観法、以前、私が本を読んでやってみたのは、「今の自分を次々と客観化する」という方法でした。すると、記憶の深部に到着して、生き生きと子供時代の街並みを体験しているのでした。その後一年くらい経って、横になっている時に、偶然のように、「これまで係りのあった人々に一人ひとり感謝を捧げる」というスピリチュアルな作業が始まりました。正式にやったものではありませんが、内観法は、肯定的な何かをもたらしている、と感じられます。

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