From 施 光恒(せ・てるひさ)@九州大学准教授
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※座談会のメンバーは、三橋貴明、さかき漣、平松禎史、古谷経衡。
新自由主義がもたらす恐ろしい悪夢ほか、縦横無尽にメッタ斬り。
本とは関係のないオフレコ話も、、、
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From 施 光恒(せ・てるひさ)@九州大学准教授——————————
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おはようございます(^_^)/
さかき蓮さんの『顔のない独裁者』、発売前に送っていただきました。
これ、非常に楽しみにしておりました。
私が三橋さんの愛読者に本格的になったのは、三橋さんの『新世紀のビッグブラザーへ』(PHP研究所、2009年)を読んでからなんですね。今回のさかきさんの『顔のない独裁者』は、『新世紀のビッグブラザーへ』の実質上の続編ということですので早く読みたい〜とだいぶ前から思っていました。
『顔のない独裁者』の話の前に、まずは、少々『ビッグブラザー』のほうの話を。
『新世紀のビッグブラザーへ』が出版されたころは、ちょうど民主党政権ができそうな時期でした。鳩山由紀夫氏などが「多文化共生」だとか、「これからの時代は東アジア共同体だ」とか、「日本列島は日本人だけのものではない」みたいな話をよくしていたんですね。民主党政権ができたあかつきには、外国人地方参政権が認められるのではないかとも言われていました。
私は当時、(いまも変わりませんが)自由民主主義の政治とナショナリティ(国民意識)との関係について関心を抱いていました。自由民主主義の政治がきちんと行われるためには、しっかりした国民意識がないとまずいのではないかと考え、そうした主張を行っている英米圏の政治理論などを研究していました。
「自由民主主義の政治がきちんと行われるためには国民意識が必要だ」ということは、裏を返せば、国境・国籍の重要性を考慮に入れない安易なグローバル化政策をとれば、自由民主主義の基礎が失われる危険があるということです。
国民意識、つまり社会における「同じ国民だ」という感覚から由来する仲間意識が失われ、人々が、ただ同じ地域に住む烏合の衆になってしまうと、その地域に秩序をもたらすのはとても難しくなります。
たとえば「多文化共生」などといって、国境を開放し、いろんな文化や宗教や考え方を持つ人々をまぜこぜにしてしまうと、当然ながら民族対立や宗教対立が起きやすくなります。それを起こさないようにするためには、表現の自由を厳しく制限し、罰則を重くし、むき出しの権力で強引に秩序を作り出さなければならなくなります。
つまり「多文化共生」策をとり、ボーダレス化を進めると、自由民主主義のような穏健な政治って、なかなか成り立ち難くなるんですね。秩序を作るために、権力に頼らなければならなくなります。
中国が民主化できない一因は、これでしょう。中国の歴史を振り返れば、多様な民族が入り乱れ、王朝を作っては壊し、作っては壊しという国ですので、広範囲で秩序を作る機能をもつ共通の文化や慣習は現在ではほとんど残っていません。中国は、対立を引き起こさずに秩序を作り出すのがとても難しい社会なのではないかと思います。こういうところで秩序を作り出せるのは、強力な権力だけでしょう。
国境線を取り払って、移民を自由化したり、外国人に永住権や参政権を与えたりすれば、よりリベラルで民主的な秩序ができるはずだと思う人が多いのかもしれません。
ですが実のところ、そうはいかないんですね。宗教や文化、慣習を異にする人々が、ひとところに暮らすようになれば、必ず軋轢が生じやすくなります。こういうところで安定した秩序を作るには、表現の自由を制限し、「人権擁護法案」のような人々の私生活まで統制しうる法律を作り、強権的な政治を行う必要が出てきます。「自由民主主義」などという甘っちょろいことは言っていられなくなるわけです。結局、国境線を取り払い、国籍を意識しなくなることをめざす類の「多文化共生政策」や「ボーダレス化政策」をとれば、逆説的ですが、管理国家・警察国家につながる危険性が高いわけです。
「中国的」社会を作り出してしまう可能性が大きいといってもいいかもしれません。
三橋さんの『新世紀のビッグブラザーへ』は、この辺りの事情をとてもあざやかに描いていました。「アジアとの共生」、「地球市民」、「友愛」、「人権擁護」などの一見、麗しい言葉が飛び交う中、東アジア共同体を模した「大アジア人権主義市民連邦」に日本が飲み込まれ、全体主義的政治が始まる近未来が舞台でした。
私は『新世紀のビッグブラザーへ』を読んだとき、
まだ三橋さんとは面識がなかったのですが、
私が理屈で考えていたようなことを、
エンターテイメント小説として非常に鮮やかに描き出しており、
すごい人がいるもんだなあと感嘆したのを覚えています。
(^_^)今回出版された、さかき蓮さんの『顔のない独裁者』は、
実質的に、『新世紀のビッグブラザーへ』
の続編だと事前に聞いていましたので、本当に楽しみでした。
『顔のない独裁者』の舞台は、『ビッグブラザー』で描かれた左翼的な全体主義的統治から解放されたあとの日本です。
主人公の「進」やヒロインの「みらい」らの献身のおかげで、近未来の日本は、左翼的な全体主義支配体制からは解き放たれます。しかし、その喜びもつかの間、新しく再建なった日本は、今度は、徐々に新自由主義の魔の手に落ちていきます。
ネタバレになってしまうと野暮ですので、話の筋には触れないようにします。ですが、この小説、細部に至るまでよく練りあげられています。ストーリーに引き込まれます。それに、作品中で展開される新自由主義的改革は、まさにいま現在、議論されている類のものばかりでリアリティが半端なものではありません。
たとえば、「電力自由化」「道州制」「公共事業のコンセッション方式の導入」「水道など既存の社会的インフラの民営化」「環太平洋地域の自由貿易協定」などです。
本書は、これら新自由主義的改革が、本来、市場的競争のなかに投げ入れられてはならない生活の社会的土台まで市場化してしまい、人々が安心して暮らしを営むことができなくなってしまうという恐怖をあますところなく描いていきます。
なかでも印象に残ったのが「道州制」の恐ろしさです。作品中の近未来の日本では、日本は、北海道、奥羽州、東京州、越陸州、東海州、中央日本州、瀬戸州、伊予州、筑紫琉球州の九つに分かれる道州制を導入しています。
そして、各道州に財源が移譲されるかわりに、各々の道州は独立採算性が義務付けられています。
しかし道州制導入の結果、財政的にやっていけるのは東京州、東海州、中央日本州(関西ですよね)の三つだけです。他は、赤字になります。
赤字に陥った六つの道州は、道路などの社会的インフラの補修や整備もうまくできなくなります。福祉など社会保障のほうでも、各道州の間に格差がでてきます。
財政状態の芳しくない道州は、「貧すれば鈍する」で財政悪化を緩和するために、無茶な政策も厭わなくなります。たとえば、作品中で描かれているように、社会的インフラや公共サービスの運営・管理の権利を、グローバル企業に売りさばいていくようなことは、現実にも十分起こりうると思います。他にも、外資を呼び込んできやすくするように、要不要にかかわらず各種の社会的規制を取っ払うなどの政策がとられる恐れもあります。
加えて、道州制に関し作品中で懸念されているのは、「国民」としての連帯意識が薄れ、道州間で助け合ったり譲り合ったりする精神がなくなってしまうのではないかということです。この懸念も、杞憂とはいえないでしょう。社会的インフラや社会保障の整備の度合いで大きな差が生じてくれば、また各道州の「自己責任」が強調されるようになれば、国民としての一体感が徐々に喪失されていくことは大いにあり得ると思います。
(_・ω・`)『顔のない独裁者』ではこういう具合に、新自由主義的改革の行く末がわかりやすく描かれています。
多くの人に読んでいただき、ストーリーを堪能すると同時に、「改革」「規制緩和」「グローバル化」の行く末の悲惨さを実感していただければと思います。
いつもにもましてまとまらない話で失礼しますた<(_ _)>
PS
「顔のない独裁者」の発売記念キャンペーンがスタート。
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【施 光恒】予言の書…への4件のコメント
2013年11月15日 8:23 PM
>多文化だの多民族共生だの、現場を知らないお花畑頭の妄想であり、他人の作った環境に寄生する口実化していますね。まあ、アメリカはそれ(多文化だの多民族共生)にちょっと近い形でいままで繁栄してきたようですがね。高い犯罪率とかいろいろ問題はあるようだが、結構アメリカに住みたがる人間も多い。なんでもいいことずくめというのはちょっとありえない。
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2013年11月16日 10:57 AM
アパルトヘイトの本来の意味は、「分離した状態」です。南アフリカの白人は言うのです。「違う人種、民族を一箇所に混住させると、人間は愚かだから、必ず争いごとになってしまう。それを回避するために、分離する必要がある。」と。同じ白人、黒人同士で、民族間の対立を続けてきた南アフリカは、人種、民族を地域別に住み分けしようとしたのです。土台、異なる宗教、価値観、道徳基準、常識意識の違いを持つ人種、民族が集まれば、摩擦や軋轢が生じるのは当然で、最悪の場合戦争へと発展しますから、共存のため住み分けさせようという考え方自体は、正しかったと思います。「アパルトヘイトは失敗はしたが、間違った政策ではなかった」と私は考えますね。間違っていたのはやり方であって、分離状態(アパルトヘイト)を作り出すのは、間違っていません。多文化だの多民族共生だの、現場を知らないお花畑頭の妄想であり、他人の作った環境に寄生する口実化していますね。昔の人は、わかっていたのですね。「良き隣人は、垣根の向こうにすんでいる」
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2013年11月17日 8:44 PM
アパルトヘイトも、自由を制限して治安を維持するという方針に則っていた。これは初耳でした。確かに、そういう一面もあったのでしょう。 アラブの春も、欧米メディアや日本のメディアはこぞって礼賛していましたが、強権的な支配が逆に人々の生活を守っていたという事実もあった。下手に民主化を進めても、混沌をもたらしてしまうだけなんですね。 結局、エジプトは軍事独裁が復活しましたし、リビアなんてもはや何が起きてるのか報道すらされませんし、シリアもアルカイダを封じ込めていたはずなのにアメリカからミサイル攻撃されそうになってましたね。
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2013年11月19日 10:08 AM
イラクなど、サダム・フセインの恐怖政治でもっていたようなものですよ。で、フセインを排除した途端に、民族対立、宗教対立が激化して、しっちゃかめっちゃか。南アフリカは、多種多様な民族、人種、宗教の集合体だったものだから、白人政権がアパルトヘイト体制を敷いて、警察国家で治安と秩序を維持してきたのに、実情を国際世論に押されて強引に民主化したために、治安が崩壊。現在、わが国において、多文化共生社会が実現している場所が一つだけあります。刑務所。多様な人間が、同じ場所で生活することが可能なのは、刑務所のように、自由を制限し、規則で強引に縛りつけているからであって(刑務官は、大変ですが)、国自体を刑務所のようにしなければ、多種多様な人間が、共存できないことを示唆していると思いますね。
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