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2013年8月19日

【三橋貴明】構造改革論者が言うべきこと

FROM 三橋貴明

【今週のNewsピックアップ】

●日本の独立を考える
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11592909332.html

●安全保障産業 前編
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11594129717.html

●安全保障産業 後編
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11594135446.html

日本には、我が国の安全保障を弱体化させる「政府の規制」がいくつもあります。代表的なものが、武器の外国への輸出を禁止する「武器輸出三原則等」になります。

と、その前に、扶桑社「新国富論」で大々的に取り上げた究極の「ザ・レント・シーキング」であるFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)も同じです。これほどまでに「市場原理」に反した施策は有りません。何しろ、太陽光や風力発電の事業者は、市場における需要とは無関係に、発電した電気を「固定価格(しかも、高い)」で最長20年間、買取を続けてもらえるのです。極端なことをいえば、日本国民が電気を一切使わなくなり、電力需要がゼロに近づいても、再生可能エネルギーの発電事業者は、発電した電気を電力会社に買い取ってもらえます。

もっとも、FITの買取代金を最終的に支払うのは、一般の日本国民や企業です。皆さんの手元に送られてくる電気料金の領収書を見て下さい。そこにバッチリ「再エネ賦課金等」という名目で、FITの買取価格が加算されているでしょう。

上記の通り、明らかに「市場原理」に反しているFITではありますが、なぜか常日頃は「市場競争! 市場競争!」と言っている人達が、一切批判しようとしません。何しろ、需要と無関係に「無制限に固定価格で長期間」買い取ってもらうわけで、これほど市場競争とかけ離れた制度はないでしょうに・・・・。

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「アメリカ格差社会〜グローバル資本主義の悪夢」。

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ボロボロに搾取されるアメリカ国民たちの哀れで悲しい現実。
日本人が今、やるべきこととは・・・・

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話を「武器輸出三原則等」に戻します。日本の防衛産業は、武器輸出三原則等により、共産圏や国連決議で武器輸出が禁じられている国、さらに国際紛争の当事国又はその恐れのある国向けはもちろんのこと、全ての国に対し、

「憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」の輸出を慎むものとする」

「武器製造関連設備の輸出については「武器」に準じて取り扱うものとする」

と、事実上、武器の輸出を禁止されています。すなわち「輸出規制」です。

我が国の防衛産業が「世界市場」に武器を売り込めないとなると、これは我が国の安全保障を弱体化します(弱体化しています)。何しろ、現在の日本の防衛産業にとって、顧客は「自衛隊」しかないのです。しかも、これまた奇妙なルールである「防衛費対GDP比1%枠」があるため、デフレで名目GDPが成長しない時期は、防衛予算は容赦なく削減されてしまいます。日本の防衛産業にとって、デフレ期は「唯一の顧客」である自衛隊の市場が縮小しているにも関わらず、武器輸出三原則等により「世界に市場を求める」ことすら不可能ということになります。

こうなると、中小の防衛企業は倒産、廃業していき、大企業(三菱重工など)は順次、撤退していかざるを得ないでしょう。最終的には、日本国は「自国を防衛する兵器を、自国では全く調達できない」国に落ちぶれます。

これも一種の「発展途上国化」でございます。

しかも怖いことに、構造改革主義者の皆様お好みの「TPP(環太平洋経済連携協定)」には、「政府調達」という分野があります。この中身は次第に明らかになっていくでしょうが、WTO政府調達協定(GPA)並の「規制緩和」になる可能性が濃厚です。WTO・GPAでは、外国人と自国民に対し、同等(無差別)の待遇を与えること、すなわち「内国民待遇」を原則としているのです。

自衛隊の装備品調達において、アメリカ企業を内国民待遇し、さらに武器輸出三原則等が現状通りだった場合・・・。

「アメリカ企業は日本の自衛隊に兵器を売りまくり、日本企業は外国に売れない」

という、恐ろしく不平等な「競争環境」が実現してしまうことになります。結果的に、我が国は防衛装備品について、まさに「発展途上国化」し、安全保障は弱体化します。

というわけで、常日頃「市場原理! 市場原理!」と叫んでいる構造改革主義者の皆様は、

「武器輸出三原則等は、明らかに市場原理に反した規制だ(実際にそうですが)。即刻、撤廃すべき!」

という声を上げるべきだと思うのですが、不思議なことにこの種の議論を三橋は、これまでに一度も聞いたことがないのです。

PS
三橋貴明の無料音声を公開中。テーマは「アメリカ格差社会」です。
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【三橋貴明】構造改革論者が言うべきことへの2件のコメント

  1. 伊藤修 より

    国内で武器を作れないから輸入に頼るしかなく、必然的に国防費が上がるんだっけ?↑その逆と、両方じゃね 国内のみで消化しなきゃいけないから単価が跳ね上がる 国内で生産できない製品は足元見られた価格で輸入するしかない ↑輸出出来ないからバカ高い開発費の回収が一切出来なくて単価が高く付く

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  2. デストロイの狂争馬 より

     先生ぇー。「やっぱり三橋氏は自由社会に反する(デフレ現象でスパイラりった)ネオコンのスパイだった。」なんて週刊誌にすっぱ抜かれて、獄長や塾長にスパイ扱いされたりして。そんなゆるゆるフリップでフィリップス曲線を描く、“ゴラムの時間”に利用されたりしないでしょうね。 こんなギャグ。を何処の誰が理解してくれると言うのだぁっ。○○な悔しみ○○な不条理、日本経済新聞他諸々反日及びネオリベラルスパイ汚染報道メディアに、ぶつけさせてもらうっ。バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャ「お味はどぉう?」不味ぅーい。もう一杯っ。(By悪役商会) 支離滅裂なのは認めますが、もう富んでもない世界の様相を呈してきているので許してほしい手記でした。

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