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2013年7月15日

【三橋貴明】悲惨な国

From 三橋貴明

【今週のNewsピックアップ】

●強い経済が強い日本をつくる
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11568655234.html

●FITの恐怖
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11569206289.html

三橋はマクロ経済あるいは国民経済において、「ある法則」(国際金融のトリレンマみたいなの)を発見してしまいました。というわけで、現在、書いているミャンマー本が終わったら、マガジンハウス「瑞穂の国の資本主義(仮)」の中で大々的に本法則を取り上げ、セイの法則やリカードの比較優位論の如く、「三橋貴明の法則」という感じで名前を残したいと思います(冗談です)。

それはともかく、近々出版される扶桑社「国家の階層−ザ・レント・シーキング(仮)」のテーマは、文字通り「国家の階層」になっています。国家とは国土があり、その上にハード的なインフラストラクチャーがあり、その上にソフト的なインフラストラクチャーがあります。この全てが安定していない限り、上位層で一般企業や国民がビジネスや生業に精を出すことはできません。

ソフト的なインフラストラクチャーの代表的なものが「国防サービス」であり、「電力サービス」になります。国防にせよ、電力にせよ、日本国民の安全保障にとっては不可欠です。それぞれが「国土の安全保障」「エネルギー安全保障」を提供してくれるものなのです。

ところが、いわゆる新古典派経済学に染まった「市場原理主義」「新自由主義」「構造改革主義」の方々にとっては、上記の「安全保障のためのソフト的インフラ」は「ビジネスの種」にしか見えないようでございます。軍隊だろうが、ライフラインサービスだろうが、とにかく民営化し、株式を取得し、「自らの所得を増やす」ために運用したい。「彼ら」は常に望み、実際にそれを実現するための手を「着々と」打ってきます。

怖い話ですが、すでにアメリカでは軍事の民営化が相当に進んでしまっています。イラク戦争ではブラックウォーターなどのPMC(プライベートミリタリーカンパニー)が要人警護や建物警備に「活躍」し、実際にマフディー軍と戦闘したりしています。というか、それって「傭兵」って言うんじゃないの? 傭兵がイラク人を殺した場合、単なる「殺人」じゃないの? などなど、色々な疑問がわき出てしまうわけでございます。

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●月刊三橋最新号のテーマは、
「中国大炎上〜破壊し尽くされた大国の断末魔」。

http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980_2013_07/index.php

※中国の金融問題については、月末配信のQ&Aで取り上げます。

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ところで、軍事の民営化の最大の理由は「財政問題」です。政府の財政赤字が膨らんでおり、

「このままでは財政を維持できない!」

と、自国通貨建ての国債しか発行していない国(日本、アメリカなど)で大騒ぎになり、本来は「中央銀行が国債を買い取ってしまえば終わる」はずの財政問題を大袈裟に騒ぎ立て、軍隊のリストラクチャリングに励むわけです。
とはいえ、現実に軍隊の「機能」を削減するのは、国家の安全保障上、望ましくありません。というわけで、軍隊のリストラとは、一部の軍事的機能の「アウトソーシング」を意味しているわけです。基地の設営、ロジスティック、兵士たちへの食事提供、軍事的訓練、「警備」と称する戦闘行為など、各軍事的機能が民間企業のアウトソースされ、受注したPMCの経営者や株主たちの懐に「ちゃり〜ん」「ちゃり〜ん」と、政府からおカネが振り込まれることになります。政府が払うとは言っても、元々は国民の税金であることは言うまでもありません。

興味深いことに、

「政府は我々納税者の税金を無駄遣いしている!」

と、声高に叫ぶ人々が主張する解決策の多くは、政府機能の民営化や規制緩和です。民営化されても、別に政府が提供していた公的サービスそのものが消えるわけではありません。政府の代わりに民間企業がサービスを供給することになります。そして、「政府は我々納税者の税金を無駄遣いしている!」と叫んでいた人たちと関係がある企業が、政府の公的サービスのアウトソース先になったとしたら・・・?

まあ、そういう話なのでございます。ちなみに、この世界には「刑務所」や「少年院」までをも民営化し、住民たちが悲惨な状況に陥っている国があります。別に言うまでもない気がしますが、もちろんアメリカです。

PS
月刊三橋7月のテーマは「中国大炎上」、8月は「アメリカ格差社会」。
1%による搾取が国民生活をいかにボロボロにするかを解説しています
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980_2013_07/index.php

PS
三橋の新刊が大好評発売中です。

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【三橋貴明】日米安保条約の罠

【三橋貴明】悲惨な国への2件のコメント

  1. 赤鉛筆 より

     (いつもバクリ放題すみません。でも現世で完全にオリジナルが存在することは不可能だと思います。米中訴訟社会より大寛容な社会を望みます)艦長の゜赤鉛筆゜は唯チェックすることだけが目的と化してしまった時から歯車が狂いだしたキャラだったのかもしれない。===================本文。 無意識にセイの法則やリカードの比較優位論に汚染されてしまった著名人、企業家、多国籍人に支配されたメディアの世界で、「瑞穂」の本来の意味が見出だせない筆者は、3つの矢の次は、3つの橋(って何?。知らない。)が掛かる未来に希望と願望を願いつつ‥‥。(とは思うものの、野望、粗暴で火が暴暴の未来もありうることも覚悟します。…三波春夫&植木等さんの歌詞。パクり引用)話題はぶっ飛び。 デッドロイド?シティがゴーストタウン化していたとは知りませんでした。巨大産業が地場に固定化し人々が流動し過ぎたのかな。日本でもミクロ的には人の流動は激しい気がしますが。過疎〜都市へ。日本の話題に戻し。 ねじれが解消された後は、不穏分子を引き千切りまくりハッキリスッキリ解りやすいように党内の頭内を整理していただきたいものですけど、それこそ至難の技であり、このサイトの視読者数が一桁あがる事態になるまで不可能なんでしょうね。 ぶっ壊れた頭による支離滅裂抽象妄想理解不可能手記でした。すみません。付録。(地方CMパクり)「○○っ、また暴言してきたっちゃろっ。はよ謝ってきんしゃいっ」ごめんっ。

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  2. 航海長 より

     国定公園まで民営化しろと言っていた、ミルトン・フリードマンが思い出されます。 政府の経済への介入を減らせば減らすほど、競争を激化させればさせるほど、経済は発展するという教義の宗教は何とかせにゃなりませんね。

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