From 三橋貴明
【今週のNewsピックアップ】
●日本のエネルギー安全保障を考える
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11521131917.html
●続 日本のエネルギー安全保障を考える
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11521713360.html
現在の日本は、エネルギー安全保障が危機に直面しています。菅政権が原発を停止し、未だに再稼働できていないため、電力供給を過度に火力発電に依存し、中東(特にカタール)からの天然ガスの輸入が増えています。中東で騒乱や戦争が発生し、ホルムズ海峡をタンカーが通行できなくなった場合、日本の電力供給は数か月でストップします。もちろん、その場合は間違いなく原発再稼働の決定がなされるでしょうが、停止した原発を動かすには一か月以上の時間が必要になります。
また、「活断層狩り」に明け暮れている原子力規制委員会は、再稼働を妨害するべく国民の不安を煽ってくるでしょう。
「ならば日本海のメタンハイドレートを掘ればいい」
と、思われた方がいるかも知れませんが、それは無理というものです。別に、太平洋や日本海のメタンハイドレート採掘に反対はしていませんが、メタンハイドレートが採算ベースに載るのは、まだまだ先のことなのです。経産省は、メタンハイドレートの商用化の時期として2018年を予定しています。早くても五年後の話なのです。
————————————————————–
●『月刊三橋』4月号のテーマは『TPP徹底解説』。5/10申込分まで。
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_1980/index.php
※今、申し込んだ方には、創刊号『アベノミクス』を無料プレゼント。
※創刊号『アベノミクス』の無料プレゼントも5/10で終了します。
————————————————————–
それに対し、エネルギー危機は「今」の問題です。十年後の日本がメタンハイドレートの「資源輸出大国」になっている可能性は否定しませんが、三橋が語っている「危機」は「今、目の前にある」わけでございます。
結局のところ、日本はエネルギー危機を解消するために、原発を再稼働するしかないでしょう。ところが、「活断層狩り」に夢中の原子力規制委員会は、今年の7月に安全基準を決め、その後の審査に三年かかると主張しています。一部の原発を除き、日本の原子力発電が本格的に再開されるのは2016年夏以降ということになってしまいます。
色々な意味で原子力規制委員会は滅茶苦茶なのですが、特に酷いのが活断層の調査です。12月の規制委員会の敦賀での「活断層狩り」では、学者五名が二日間だけ現地調査をして、二時間審議して「直下に活断層が走る可能性が高い」と結論付けました。日本原電側は、「12万年前以降には動いておらず、活断層ではない」と反論しましたが、原子力規制委員会の有識者側は「40万年まで遡れば活断層に入る」と抗議を受け付けませんでした。
「40万年前に遡り、断層が動いたなら活断層」という意味不明な論拠に基づき、原子力発電所を稼働できず、エネルギー安全保障の危機が続く。現在の日本の電力周辺の空気は異常です。
異常と言えば、異様に高い再生可能エネルギーの固定買取制度(再生可能エネルギー特別措置法)により、事実上の仮想敵国(中国)の企業までもが日本のメガソーラ─の市場に参入しようとしています。さらに、産業競争力会議はエネルギー安全保障の危機の最中であるにも関わらず、アメリカ(カルフォルニアなど)で失敗した発送電分離を懸命に推進しようとしているわけです。
現在の日本のエネルギー環境には、様々な種類の「異常」があります。好意的に考えるならば、現在の異常な環境は、国民や政治家がきちんと「エネルギー安全保障」を考える契機になり得ます。とはいえ、このまま異常な路線を突っ走ると、日本のエネルギー安全保障は近い将来、崩壊してしまい、我々は「普通に電気を使う」ことすら困難になり、経済活動が極端に低迷するでしょう。
エネルギー安全保障の面においても、現在の日本は分岐路に立っているのです。
PS
「アベノミクス」の無料プレゼントは5/10で終了します。
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_1980/index.php
PPS
「TPP徹底解説」の配信も、5/10で終了です。
【三橋貴明】異常事態への2件のコメント
2013年5月7日 8:19 PM
問題点の指摘は良く解りました。国家として、国民としての今後の懸念も良く解りました。今、目前の異常状態も良く解りました。しかし問題点の指摘、糾弾で終わっているのでは負け犬の遠吠えでしかありません。それに、この指摘と言う段階でも何故?と疑問が残ります。それは追求が甘いと言う事です。3.11以降、世界の相場の8倍とまで言われる、異常な、LPG、LNG輸入価格ですが、担当省庁や購入担当勝者などの担当者レベルに確認を取るべきですが、その価格は幾らで、何故、価格交渉が高額で妥協したのかと言う経緯説明と共に、発電コストに反映される、具体的な数字を開示、明示すべきです。また、異常な光発電料金買取り制度の解明です。光パネルは安価な中国製などを使ってメガソーラを建設し、日本メーカーは潤っていないと言うが本当か?メガソーラ発電企業は中国や韓国で、高い買取り料金は、日本国民の電気料金の値上げと税金で補填し、光発電儲けは、結局、中韓に吸い取られると言われている。こんな程度の事は、当該電力行政に関わっている諸官庁や協会が実データを保有している。これを開示すれば、一目瞭然ではないだろうか?隠れ蓑を使って居るであろうが、メガソーラー企業が日本企業でないと言うのは重大な国防上の危機でもある。民主党政権ならやりそうな事だから、尚更、究明が急がれる。要するに、データを淡々と示せば、良し悪しは、国民が判断する。定量把握と言う事が日本人は不得手ですね。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
2013年5月9日 6:33 AM
現時点でもアラブ情勢などでエネルギー問題は頭の痛い問題ですが、10年、20年、というオーダーで見た場合にはさらに深刻ですね。エネルギー資源だけでなく、広く農業・漁業・鉱工業一般について資源・環境の限界は一般で考えられているより遥かに差し迫っています。シェールガスやメタンハイドレードなどの非在来型資源はブラフには使えますが在来型の石油にとってかわるには問題が多いようです。また、温暖化などの問題から「あっても使えない」資源になるかもしれません。太陽光発電や風力などの代替エネルギーはまだまだ力不足です。おそらく、今後数十年は「資源・環境が枯渇し、代替物がまだ出ない」という端境期で世界は苦しみます。日本は事実に基づいて最善の道・スケジュールを採らなければなりません。なお、私は「アジアの成長」について上記の観点から懐疑的です。乱暴な話であることを承知の上で、ごく単純化していえば、「中国の環境破壊・資源浪費を他の国でも繰り返すのか?」ということです。もちろん、資源利用の効率化、環境の保全や改善は可能でしょうし、日本の技術の強みはそこにあると思われるのですが・・・それを実現する政治力や、目前の「経済の立て直し」との優先順位の問題があります。非常に難しい問題ですが、経済と資源・環境、そして人倫を両立させる道を私なりに考える上で、こちらでも勉強させていただきたいと考えております。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
コメントを残す
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です