アーカイブス

2013年4月22日

【三橋貴明】正論

FROM 三橋貴明

————————————————————

●「いいね!」をくれた方には、三橋貴明の音声ファイルを
無料プレゼント。世界を読むための3つの原則とは。

三橋貴明の「新」日本経済新聞 公式Facebookページ
⇒ http://www.facebook.com/mitsuhashipress/app_109770245765922

————————————————————

【今週のNewsピックアップ】

●非対称な交渉 前編
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11512926911.html

●非対称な交渉 後編
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11513591485.html

●続・非対称な交渉−日米構造協議 再!−
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11514772781.html

アメリカというか、アメリカの外交担当者たちは本当に凄いというか、したたかというか・・・・。

TPP交渉にかこつけ、「並行協議」という名目で、いつの間にかアメリカから日本への
「構造改革要求」、すなわち日米構造協議が再び始まろうとしています。

元々、日米構造協議とは、日米の貿易不均衡(アメリカの対日貿易赤字)の是正を目的とし、
1989年に始まったものです。

プラザ合意以降の円高を受けてさえ、アメリカの対日貿易赤字は膨らみ続け、その理由を
「日本市場の閉鎖性」と決めつけ、アメリカは日本の「非関税障壁」撤廃を求め始めたのです。

非関税障壁とはアメリカ側の言い分で、実際には単に日本の商慣習、文化、伝統、流通など、
各種経済構造が「独特である」という話に過ぎません。

例えば、自動車のメーカーごとの販売ディーラー網です。新車を販売する際に、各メーカーが
個別の販売ネットワークを構築していること。これが
「外国車に対する非関税障壁だ」
と、アメリカ側は主張しています。

とはいえ、別に日本型ディーラー網は、日系自動車会社のみが整備しているわけではありません。

ドイツのBMWは、1981年にBMWジャパンを設立し、90年代にはメルセデス・ベンツや
フォルクスワーゲンも日本法人を設立することで、日本市場における販売体制を整えて行きました。

すなわち、外国企業であっても「その気になれば」日系自動車会社同様の販売ディーラー網を
日本国内で構築することは可能なのです。

別に、日本政府は「販売ディーラー網は日系企業に限定する」などと
「規制」をかけているわけではありません。

2012年度の日本の輸入車比率は7.5%でしたが、内、フォルクスワーゲン、BMW、
そしてメルセデス・ベンツの三社で75%を占めています。

事実上、日本において「外国車≒ドイツ車」になっているわけです。

その気になれば、アメリカのビッグスリー(GM、フォード、クライスラー)にしても、
日本市場において販売ディーラー網を整備し、日本の消費者のニーズを満たす商品開発、
サービス提供を行うことで、ドイツ車並みにシェアを高めることはできるはずです。

逆に言えば、現在のビッグスリーの「ガソリンがぶ飲み」の大型車中心のラインナップでは、
日本市場で販売を拡大することは不可能です。

そもそも、ビッグスリーは右ハンドル車を作っていません。

左側通行の日本市場において、左ハンドル車のシェアが高まる日は永遠に訪れないでしょう。

ビッグスリーは「企業の本分」として、日本市場のニーズを満たす自動車を開発し、
販売網を整備するべきなのです。

とはいえ、それが面倒くさい(おカネもかかる)ため、
「日本市場でアメリカ産自動車が売れないのは、日本の市場が閉鎖的だからだ。
独特の販売ディーラー網や軽自動車への税制優遇がいけないのだ。
しかも、日本は政策的に為替安に誘導し(注:していません)、アメリカ車を締め出している」
と、言いがかりをつけ、
アメリカの自動車企業⇒アメリカ政府⇒日本政府、というルートで、
日本国内の「構造改革」を求めるわけです。

ビッグスリーが商品開発やマーケティングの努力を放棄し、「政府」を動かし、
市場のルールを変更することで市場シェアを拡大しようとする限り
彼らの競争力が戻ることはないでしょう。

というよりも、そもそも「政府を動かし、市場ルールを変えさせる」ことに手を染め始めたからこそ、
ビッグスリーの凋落が止まらなくなってしまったわけです。

「企業の都合で、政府が市場ルールを変える」アメリカのやり方こそが、企業の進化を止めてしまったのです。

いずれにせよ、今後のTPP交渉やアメリカとの並行協議において、日本国民は政府に対し、
一体いつからTPPは日米構造協議にすり替わってしまったんだ!
そもそも、なぜアメリカ企業の我儘を聞き、日本が文化や伝統、
慣習に根差した経済構造、社会構造を変えなければならないんだ」
と、「正論」をぶつけていかなければならないと考えます。

PS
月刊三橋4月号のテーマは「TPP徹底解説」です。
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_1980/index.php

関連記事

アーカイブス

【三橋貴明】政府は利益を追求する独立事業体ではない

アーカイブス

【三橋貴明】地球人類総貧困化

アーカイブス

【三橋貴明】黄金の氏族の婿たち

アーカイブス

【三橋貴明】時速603キロメートル!

アーカイブス

【青木泰樹】「骨太の方針」の破壊力

【三橋貴明】正論への2件のコメント

  1. 古事記 より

    自然に感謝し、歴史と伝統、先祖に感謝が日本人の本質。アメリカや他国は権力や力に感謝では無く媚を売る。日本の隣国は特に神様では無くて露骨に力に媚を売る。

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

  2. gcp より

    狩猟民族と農耕民族の差というかなんというか。良い悪いという話は置いておいて。たとえば、一般的に、 彼らは、神様に感謝してから食事をします。 僕らは、食べ物に感謝してから食事をします。することは同じでも、意識の差はそれこそ天と地ほどのあるわけで。僕らにとっては「正論」でも、相手にとっては違うかもしれない。だから、本気で「主張」しなければ伝わらないでしょうね。

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です

名前

メールアドレス

ウェブサイト

コメント

メルマガ会員登録はこちら

最新記事

  1. 日本経済

    【三橋貴明】手取りを増やさないのは自民党

  2. 日本経済

    【三橋貴明】人の意見を変える方法

  3. 日本経済

    【三橋貴明】最強の野党

  4. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】如何にすれば私達は「日本を滅ぼす売国石破政権...

  5. 日本経済

    【三橋貴明】人間万事塞翁が馬

  6. 日本経済

    【三橋貴明】手取りを増やす

  7. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】MMTの提唱者・ビルミッチェル教授をお招きし...

  8. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】【大胆予想】これからの日本の政治はどうなって...

  9. 日本経済

    【三橋貴明】キャスティングボート

  10. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】三沢カヅチカ京都拾得ライブ2024は満席の大...

MORE

タグクラウド