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2017年1月31日

【藤井聡】「介護問題」を解決するために、今、何が切実に求められているのか?

FROM 藤井聡@内閣官房参与(京都大学大学院教授)

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当方、かつてスウェーデンに住んでいた事があるのですが、その経験から言って、スウェーデンの福祉は本当に行き届いています。

ですが、その「福祉の充実」は、「医療介護の過剰サービスを徹底的に排除することではじめて実現できている」という実態を知る日本人は少ないのではないかと思います。

例えば、病院は完全予約制。よほどの事がなければ、病院で診てくれることはありません。「公民館でお茶のみ話をしに行くような感覚で病院に行く」――なんて時折日本で見られる様なケースは皆無です。

妊婦ですら、医療機関が要請するのは「自己管理」。病院に頻繁に通うということはまずありません(ちなみに我が家は、スウェーデン滞在中に出産を経験しましたが、担当のお医者さんには、2〜4カ月に一回くらいしか診てもらえませんでした。後は文字通り、自己管理をするように、という指導が基本だったのです)。

そして「介護」においても、そういう姿勢が貫かれています。

そもそも、スウェーデンは寝たきり老人がほとんどいない、「寝たきりゼロ社会」とのこと。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45510?page=3

その理由は以下の二つ。

第一に、寝たきりにならないように、徹底的に「訓練」をするように指導するのだそうです。要するに、(施設ではなく自宅での介護を基本とした)「自助」を重視するわけです。

そして第二に、寝たきりになる様な手術(例えば、新しい人工的な口を胃に直接つける『胃ろう』手術等)が徹底的に忌避されるそうです。そういう単なる延命のための手術は、

  「虐待」

と見なされるとのこと。結果、多くの人々が「寝たきり」になる前に、自然なかたちで死期を迎えるのです。

確かに、筆者も非常に近しい者が無くなった時――今から20年以上前――かなりの延命治療が病院で施されたのですが、その当の本人が本当に辛い時間を過ごしていた様子が、今でも脳裏に焼き付いています。

たくさんの管でつながれ、苦しみで埋め尽くされた終末期の生において、人間にとって何よりも大切な「人間の尊厳」は守られているのか―――それに思いを致せば、スウェーデンの方々が、それを「虐待」と見なすという感覚は、少なくとも当方としては個人的にとても納得のいく話のように思えます――。

この様に、スウェーデンには「寝たきり老人がいない」という日本からいえば夢のような状況が実現できているのは、徹底的に「過剰サービス」を排除しているからであり、かつ、国民が皆、そうした(医療における「過剰な公助」の回避と「自助の重視」という)方針を当たり前のこととして受け入れているからなのです。

逆に言うなら、「充実した医療」を徹底するには、国民側が「過剰サービス」を要求しないことが必要なのです。

そうでなければ、150万人から200万人の寝たきり老人を抱えた今の日本の様に、需給バランスが完全にくずれ、かえって介護水準が低下してしまうのです。

実際、スウェーデンの介護士のヨハンソンさんは次の様に語っています。

「スウェーデンでも’80年代までは無理な延命治療が行われていましたが、徐々に死に方に対する国民の意識が変わってきたのです。長期間の延命治療は本人、家族、社会にとってムダな負担を強いるだけだと気付いたのです。日本のような先進国で、いまだに無理な延命が行われているとは正直、驚きました」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45510?page=4

確かに今、日本の介護現場は「極限状況」をはるかに超えた、すさまじい状況に到達しています。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50297

そうである以上、今やもう我々もまた、「過剰サービスの回避」というスウェーデンの姿勢に学ぶべき時に至っているに違いありません。

そもそもこれから超高齢化社会が訪れようとしている中で、安倍内閣が掲げた「介護離職者ゼロ」の目標の実現を目指すのなら、「過剰サービスの回避」以外に現実的な道は残されていないように思えます。

そしてそのためにはもちろん、何が「過剰」なのかについての国民的コンセンサスが不可欠です。

だからこそ私たちは今、誰もが迎える終末期における「人間の尊厳」とは一体何かを考えねばなりません。

そしてそれと同時に、日本では今、身近な者の死を「当たり前」の事柄の一つのこととして受け止める力が、何よりも求められているのだと―――思います。

—発行者より—

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★★★★★:眞鍋千之様のレビュー
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54年前に経済を勉強しに大学に入って、
手応えのある講義はただの一度もなかった。

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月刊三橋で経済は経世済民だと知ったのだ。
そりゃそうだろう、経済学のための経済で
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世の中、世界の見方が完全に変わった。

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【藤井聡】「介護問題」を解決するために、今、何が切実に求められているのか?への9件のコメント

  1. 日本晴れ より

    今回の藤井先生の意見には個人的には異論があります。何故なら終末期医療も普通の国民皆保険医療もそうですがそういうこと問題視する人は国の財政赤字いわゆる国の借金がこんなに多いからそういう無駄な医療はするな論で語ってるからです。結局は緊縮財政思考や国の借金論からそういう論述べる人が多いので年金のカットもそうですが国の借金がこんなに多いという論で医療とか年金も論じるのは凄い違和感があります。

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  2. Akisute より

    そもそも日本の方が寝たきり老人が顕著に多いという根拠はあるのですかね?日本の方がスウェーデンより多いのは事実かもしれませんが、それは介護の需給に支障が出るほどの違いなのかただ日本の方が高齢化率がずっと高くなっているだけでは?統計上いわゆる「健康寿命」と「平均寿命」の差は日本もスウェーデンも差がありません日本 健康寿命 75歳 平均寿命 84歳スウェーデン 健康寿命 72歳 平均寿命 82歳top10.sakura.ne.jp/WHO-WHOSIS-000002R.html

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  3. 天鳥船 より

    難しい問題ですね。確かに今日の日本の医療・介護現場は課題が山積しています。しかし、スウェーデン型が必ずしも日本人に合うとも思えません。そこには「死生観」というものが絡んでくるからです。特に終末期医療では、しばしば「尊厳死」が問題になります。確かにベッドの上で医療チューブだらけで寝たきりの状態になっている姿を見ると、治る見込みも無いのに、こんな状態で無理矢理生かすのは忍びない、いっそ楽にしてやってくれ、というのは親族としての一つの率直な感想だと思います。しかし一方で、どんな形でも良いから一日でも長生きして欲しい、一日でも長く一緒に居たい、というのもまた、親族の素直な感想だと思います。どちらが正しいというのでは無く、死生観は人によって違い、それぞれに尊重されるべきだと思います。スウェーデンのような割り切り方は、キリスト教的宗教観の根付いた国だからこそ可能なのかも知れません。人は神の意志によって生かされており、死は神によって与えられた安息である、という死生観であれば、加齢や病によって衰弱し、自力で立ち上がることもできなくなって来れば、復活の日まで眠りにつく時がそろそろ近づいて来た、と前向きにとらえることも可能でしょう。しかし、多くの日本人にとっては、それは難しいのではないでしょうか。もちろん、日本が現状のままで良いとは全く思っておりませんし、命とは、人間の尊厳とは何か、という国民的議論は必要でしょう。このままでは、介護現場の崩壊は時間の問題でしょうから(というより、もう始まっている?)。藤井先生が貼っていたリンク先の別のページも見ましたが、スウェーデンでは介護士は公務員なのですね。安定雇用により必要な人材の量と質を確保するのはアリだと思います。もっとも、小泉改革以降、我が国では民間は善で公務員は悪であるとする空気が蔓延しており、公務員の数を増やすというだけで親の敵のように怒り出すルサンチマンが溢れておりますから、無理かも知れませんが。しかし、私は自分が介護が必要になった時、移民の介護士に世話をしてもらいたいとは思いません(それならAIの介護士の方がまだマシです。実用化が間に合えば、ですが)。

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  4. robin より

    https://www.youtube.com/watch?v=CY9KIEX_bOM 欧米に寝たきり老人はいない Part1無理に食事を与えずに、徐々に衰弱していくのが一番楽で自然な死に方かな、点滴やら胃ろうで中途半端に無理やり延命させるのは苦しみを長引かせて不自然な死に方だがそもそも消費社会では日常から徹底して死を隠すからそのまま生活してると死に方すらわからないのが普通になってしまうのか、お金で交換する、お金で対象を支配する、に慣れると末期患者を延命させることはその人間を支配することに繋がる、生かすも殺すも自分次第だと、こんな痛快なことがあるか(超不謹慎だが)、マスコミ的には患者は最後まで病苦と戦い続けましたと涙ながらのストーリーを語るのだろうが、いや楽に死なせてやれよと思う、とりあえず生物は生きてるのだから必ず死ぬし、死と生は表裏一体だから片方だけ都合良く取り上げて語るのは嘘だと当たり前の死生観が必要なのだろうか。過去先人達に感謝し未来の子達に願いを託し我々は皆何れ必ず逝く、遅いか早いかの違いがあるだけ。「私は一寸一足先に逝くけど、皆は急がず後からゆっくり来てね」とこれから逝く人を励ますような老人になれるだろうか、一人孤独に死ぬくらいなら精々周りに迷惑をかけてやろうと思うだろうか。消費社会では死を隠すから死ぬ間際にそれまでのツケを払うことになるのか、中々死なせて貰えないで「可哀そう」だと患者も家族も共に不幸になるのか、少なくとも消費社会とは別の価値観が必要になるのでは。

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  5. たかゆき より

    死は 敗北ではない。。そして良く生きるということは良く死ぬことだ(たぶん)ぼくは(私事で失礼)健康診断など受けないから 病気にされることはないし治る病気は(癌を含む) 何もしなくても 治るし治らない病気は 何をしても 治らない と確信しているので 不治の病と 解ったら無駄な治療など おこなわない。。。くそ 面白くもない この世からさっさと おさらば出来るだけで 幸せなのだ ♪

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  6. 神奈川県skatou より

    「人間の」尊厳がよく分からないという意図は、人間共通の尊厳が定義できない、そもそも価値というものに普遍性はない、そうでなければとっくに自然科学が料理しているのでは、という見解からであります。文明ローカルに尊厳は定義できるかもしれません。なので、物語という話にしたいなと思った次第です。

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  7. 通りすがり より

    人間の尊厳の話はよく分かりますし、それが経済とか私腹と言ったカネの問題と対立していて、うまい解決が図られていないという話も何度も聞いたことがあります。私が気になったのは最後の一文、>そしてそれと同時に、日本では今、身近な者の死を「当たり前」の事柄の一つのこととして受け止める力が、何よりも求められているのだと―――思います。です。何故日本人は長生きをしたがるのか。長生きであることを無条件に善いことだと思っているのは何故なのか。これが重要だと思います。誰でも死ぬのは怖い、死んだ先のことを知っている人は誰もいない。しかし死を避ける方法は無い。この辺の問題をどうするのか。私は、どう考えても、この問題は「宗教」にお願いするしかないように思うのです。無学なもので「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」という言葉の意味をよく知りませんが、こういうことを論じる「場」が必要でありながら、失われてしまっているように思うのです。何故失われてしまったかと言えば、一つは経済合理性の追求、もう一つは敗戦による政教分離でしょう。従って、70年前からやり直さざるを得ないように思え、ちょっと無理難題なんじゃないかなあ…と思うわけであります。

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  8. 拓三 より

    まず、この話は経済面(借金が〜)から語るバカが多いのですが、今回の藤井氏の提言は人間の尊厳からの話だと理解させて頂きました。これは需要側、供給側問わず個々ないし身内の価値観なので難しい選択だと思います。個人的には過剰サービス(薬など)や延命処置には反対なのですが、この価値観を押し付けていいのかどうかであります。ただし判断するに至っては適切な情報での自由な選択が原則です。例えば、その人の温もりがあるだけで周りの誰かしらが生きる活力を生み出す原動力になる事も時に存在します。これは死をどこに置くかの時の価値観で変わる事でもあり又、共同体を重んじる民族にとって生命=個人ではない論理に微妙ですが通じるかと思います。しかしながら残念な事にそれを逆手に取り延命を利用し私腹を肥やす悪党も存在します…うむ〜又、『死』の判断が法律、医学、共同体(身内など)、個人、立場によりそれぞれでありどれを尊重すべきか…又その問題によるベット数などの問題で救われる命が救われない事になれば又問題…うむ〜..阿弥陀くじ..失礼やはり、家族の判断でしか解決できないような….でも死を受け入れるのと死を判断するのは違うしなぁ。難し〜い…退散!

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  9. 神奈川県skatou より

    >してそのためにはもちろん、何が「過剰」なのかについての>国民的コンセンサスが不可欠です。>だからこそ私たちは今、誰もが迎える終末期における>「人間の尊厳」とは一体何かを考えねばなりません。人間の尊厳というのはよく分かりませんが、たしかに過剰か否かは共有する物差しがある前提だと思います。でも、戦後日本人に大切なものとは、生きる事そのものであり、生き方に見いだしにくい社会になっていないか、常日頃自分は思います。生き方とは振り返れば物語です。物語が成立しにくくなっていないか、いや、共有しにくくなっていないか。上下左右に。そのあたりに本質的な出口があるように思われました。

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