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2025年12月12日

“インフレだから緊縮”の大誤解──「責任ある積極財政」が今、必要な決定的理由 

今週発売の週刊文春が、元参与の浜田宏一先生が「サナエノミクスで日本は不況になる」と題した記事をトップで大々的に掲載しています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/beca2ada1a989f16ce8881c029fc5aa87ceddd4b

この記事タイトルを見て驚いて中身を確認しますと、要は、

「インフレの今、積極財政を進めればインフレが加速し、不況になる(例えば、ガソリン税減税すれば自動車利用者が増え、かえってガソリン税が値上がりする)。だから、いまは緊縮財政が必要だ」

というもの。

もちろん、この浜田氏の「議論」は経済学的にあり得る話ではあります。

ですが、そうした「議論」は、「今の日本」において実際に成立するか否かは、経済学的にあり得るかどうかという「理論的」な話とは全く別問題。

誠に残念ながら、今の日本には、この浜田氏の議論は、今の日本では全く成立しないのです。

簡潔に記載しますと、以下の様になります

1.浜田さんはインフレが激しいというがそれは食料品(+エネルギー)だけの話。賃金に連動するコアコアCPIは僅か+1.6%。激しいインフレではない。だから、浜田さんの指摘は、今の日本にはあたらない。
(例えば、https://x.com/YoichiTakahashi/status/1998885213452271910

2.浜田さんは今積極財政すれば、インフレが加速するというが、21.3兆ならデフレギャップを埋めるだけなので、インフレにならない。
(例えば、https://x.com/YoichiTakahashi/status/1998885213452271910

3.しかも、食料品・エネルギーの値下げのための積極財政はインフレを抑止する(したがって、浜田さんの批判は、高市補正には全くあたらない)。
(例えば、https://the-criterion.jp/mail-magazine/231023/?utm_source=chatgpt.com

4.浜田さんは、今、財政・金融を緩和すれば円安が進行し庶民は苦しむというが、財政・金融を緩和すれば、内需拡大期待が生まれ、むしろ「円高」圧力がかかる。
(例えば、https://x.com/SF_SatoshiFujii/status/1998909225691656662、あるいは、https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2025-11-20/T60VKNT96OSG00?utm_source=chatgpt.com

5.浜田さんは、財政拡大でインフレ加速と言うが、現下の高市補正では、「供給力を上げる投資」が多く含まれているので、少し遅れて供給力が拡大し、確実にインフレを長期的に抑止する。

したがって、浜田さんの高市批判はあくまでも一般論に基づくもので、今の日本には全く該当しないご指摘だったわけです。

なお、浜田さんは「円安抑止→インフレ抑止のために今すぐ日銀は利上げをすべき」とも論じていますが、これも残念ながら正当ではありません。

簡潔に纏めると、以下がその理由です。

1.直近のGDPが6四半期ぶりのマイナス成長(―2.3%)、設備投資も大きく減少、個人消費もー3%で「利上げ」状況では全くない。
(例えば、https://www.youtube.com/watch?v=VdzRrSmh_pU

2.浜田さんは円安対策で利上げすべきというが、そもそも日本の利上げの円高効果は限定的(日本が僅かな利上げをしても、米国の金利が高いままなら金利格差は殆ど変わらず、円高圧力はさしてかからない)
(例えば、https://www.youtube.com/watch?v=MOdj-fjglHEhttps://finance.yahoo.co.jp/news/detail/2c3d2409daf279f992b1bf9738d8240efb0aa769

なお、以上に加えて、「円安そのものは悪くない。輸出金額を拡大させ、日本経済にプラス。だから円安をとりわけ問題視する必要はない」ということもしばしば指摘される旨も、ここに付言しておきたいと思います。
(例えば、https://x.com/YoichiTakahashi/status/1998885213452271910

ちなみに、上記の浜田批判に加えて、メディア上で「高市補正で、金利やCDSが上がっているぞ!」という批判がありますが、これも該当しません。

・金利について:今の金利上昇は、要するに(高市財政でなく)植田日銀総裁の政策判断の必然的帰結。それは下記グラフを見れば明白です。


(例えば、https://x.com/SF_SatoshiFujii/status/1998904186864546273

なお、勿論、国債の需給関係で金利は変動しますが、現在の金利の「趨勢」に支配的影響を与えているのは、このグラフからも明白名通り、金利政策の転換なのです。そしてより長期的には、金利は、経済が低迷か成長かという点に重大な影響を受けるもの。だから、金利を上げたいのなら、今は積極財政と利下げを通して、成長経済を導くことが何よりも大切なのです。

・CDSについて:CDSの長期グラフを見るとまだまだ超低水準。安倍政権下でももっと高い時があった程。これで政府の積極財政を批判するのは完全に無理筋です。


(例えば、https://x.com/SF_SatoshiFujii/status/1999007374821195819

…ということで、高市総理の「責任ある積極財政」路線については、様々な批判がネット上、メディア上では散見されますが、正当とは言い難いものが実にたくさんある…ということを、しっかりとご理解頂くことが重要と考えます。

是非、本記事読者だけでもしっかりと、事実に基づいて、各種情報にお触れいただきたいと思います。

 

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