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2025年12月9日

【なぜ、巨大地震『注意報』が出たのか?】20万人規模の死者もあり得る「日本海溝・千島海溝地震」という“確実な将来リスク”【藤井聡】

昨夜、午後11時15分ごろ青森県東方沖で地震が発生しました。沿岸域には津波も観測されました。残念ながら負傷者が出てしまったようですが、今のところ死者は報告されていません。今後の余震の発生なども含めて、事態の推移を注視する必要があります。

そんな中、気象庁が「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表しました。
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014998281000

この「北海道・三陸沖後発地震」というのは、いわゆる千島海溝や日本海溝において発生する巨大地震です。これらの巨大地震の発生する可能性がふだんと比べ相対的に高まっているということで、気象庁から「注意報」が発令されたという次第です。

この情報が発表されるのは、2022年12月に運用が始まって以来、初めてのこと。

さて、今回の地震を契機として危惧されている「北海道・三陸沖後発地震」あるいは、「千島海溝地震・日本海溝地震」とは、下記のエリアで生ずることが危惧されているもの。

出典:『日本海溝・千島海溝地震が起きれば東日本大震災を超す被害規模に』(鎌田浩毅)、エコノミストon-line、2022年2月28日
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20220308/se1/00m/020/063000c

それは、プレートとプレートの接触部分(それは深く沈み込む「海溝」となります)で、定期的に100年~数百年毎に生ずる海洋型の巨大地震。

ここ最近では、今から14年前の2011年東日本大震災が東北の三陸沖の「中南部」で巨大地震が起こりました。

これはつまり、プレートとプレートの境目にたまった「歪みエネルギー」が、一気に解放された事を意味しています。

例えば、下の図は、地震で地盤がどれだけ動いたかを示していますが、これはそのまま「開放された歪みの大きさ」を意味しています。ご覧の様に東北沖の「中南部」は、歪みが一気に解放されていますが、その北側は全く何も起こっていないのです。

https://www.researchgate.net/figure/The-2011-Tohoku-earthquake-Coseismic-slip-distribution-model-from-17_fig2_331780361

つまり、東北北部から北海道にかけては、その、プレートとプレートの間で長年海溝部にて蓄積された「歪みエネルギー」が全く解放されず、たまりにたまった状況になっているのです。

このたまりにたまった歪みエネルギーが一気に解放されるのが、「日本海溝地震」であり「千島海溝地震」であって、その「注意報」が今発出されたと言う次第なのです。

これらが起これば、上記のようにマグニチュードは最悪それぞれ9以上となり、死者数も最悪10万人から20万人に達することもありうると想定されています!

誠にもって恐ろしい話しなのですが…今回の地震は日本海溝地震で「破壊」することが想定されている数十キロ、数百キロ四方にも及ぶ巨大な岩盤と(力学的に関連する)「周辺」域の岩盤が、「小規模に破壊される」ことによって生じたものなのです。

12月8日から9日にかけての地震の震源域
https://weathernews.jp/news/202512/090096/images/?n=001

今のところ、気象庁は今回の地震が、日本海溝地震・千島海溝地震の明確な「予兆」だと捉えているわけではありませんが、巨大地震で破壊することが想定される巨大岩盤の周辺域の岩盤が割れたという事実が観測された以上(それが観測されない状況より)、割れることが想定されている巨大岩盤が実際に破壊する(=日本海溝地震・千島海溝地震が実際に起こる)確率が上昇した可能性を否定できません。このため気象庁は、防災上の観点から「注意報」を発出したのです。

いずれにしても、日本海溝・千島海溝地震は、遅かれ早かれ発生することは確実、です。それは今日起こるかもしれませんし、これから10年、20年は起こらず、10年後、20年後に突然に起こるかもしれません。

したがって、今回の地震が起ころうが起こらなかろうが、我々は常に、巨大地震があるというリスクを想定しながら生き続けなければならないわけです。

ついてはこの地震を契機に是非、10万人から20万人の方が犠牲になり得る日本海溝・千島海溝地震の恐ろしさとリスクをしっかりとご認識いただき、是非とも個人的、地域的、行政的に備えをなされんことを、祈念申し上げたいと思います。

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