日本経済

2025年9月1日

【三橋貴明】財務省の狂気

【今週のNewsピックアップ】
「国民の財産を減らせ!」と叫ぶ政府
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12925359915.html
国家を亡ぼす乖離
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12926071975.html

プライマリーバランス
(基礎的財政収支、以下PB)
黒字化目標は、
「PBを黒字化すること」が
政策目的ではありません。
目的はあくまで、
政府の債務対GDP比率の引下げです。

そして、政府の債務対GDP比率は
下がり始めている。

【政府の債務対GDP比率(%)】

http://mtdata.jp/data_95.html#saimutai

そもそも、
政府の債務対GDP比率自体に
意味はありません。
より具体的に書けば、
政府の債務が
「自国通貨建て国債」の場合には、
意味がありません。

外貨建て、共通通貨建て、
固定為替相場制の場合は、
政府の債務対GDP比率が低くても
財政破綻(政府の債務不履行)します。
ギリシャ、ロシア、アルゼンチン、
レバノンなどなど、
全て上記の条件の「どれか」に
当てはまっています。

日本は自国通貨建て国債しか
発行していない変動為替相場制の国なので、
政府の債務対GDP比率と無関係に破綻しません。

その上で、二十一世紀初頭に、
日本の政府債務対GDP比率の上昇が
問題視されました。

政府の債務対GDP比率は、
「=政府債務÷名目GDP」で計算されます。
当時の(その後も)日本は、
デフレで名目GDPが成長しませんでした。

それでも、
強引に政府の債務対GDP比率を
引き下げるとなると、
政府債務を「減らす」必要があります。
だからこそ、
PB黒字化目標が設定されたのです。

つまりは、
PB黒字化目標自体は
「政策目的」でも何でもないのです。
ところが、
いつの間にかPB黒字化目標が
政策目的になってしまった。

また、一般会計歳出の国債費として、
日本は「債務償還費+粗(グロス)利払費」で、
アメリカは国債償還費がなくて
(というか、日本以外の全ての国でない)
「純(ネット)利払費」のみを計上している。

なぜ、日本以外の国が
債務償還費を計上していないのかといえば、
国債とは借り換えされるものだからです。
そもそも、日本にしても国債は借り換えです。

それにもかかわらず、
財務省が国債「償還費」なるものを
計上する理由は、
「あくまで公債政策に関する
政府の節度ある姿勢を示すために
導入されたものであり、
文字どおりの減債、
すなわち国債発行残高の減少を
目指すものではなかったことを確認している」
(2023年6月 
自民党の防衛費増額財源検討特命委員会)
と、説明しています。

要するに、ノリです、
と、財務官僚がぶっちゃけているのです。

また、利払費。
アメリカはネット。日本はグロス。

なぜ、アメリカがネットなのか。
それは、ネットの利払費でなければ
実質的な負担が分からないからです。

理由は、
もちろん財務省
(というか財務官僚の出世)
のためには、
そちらの方が都合がいいからです。

2025年度の日本の一般会計歳出における
国債費は、
償還費が15.3%、利払費が9.2%、
合わせて24.5%に達しています。
金額では、28.2兆円。

これを、アメリカ方式
(というかグローバルスタンダード)
に変更すると、
どうなるでしょうか?

アメリカの国債費は、
ネットの利払費のみです。
日本のネットの利払費は、
財務省の資料によると、
対GDP比で0.3%程度です。

コンサバティブに0.5%としましょうか。
日本のGDPが600兆円。
ということは、
アメリカ方式で国債費を計上すると、
3兆円。
日本は、本来であれば
国債費として3兆円だけ計上すればいいのです。
それが、28兆円!

この差たるや、国家を亡ぼす乖離です。

しかも、財務省は26年度予算で、
さらに国債費を積み増してきます。

PB目標にせよ、
債務償還費計上にせよ、
利払費のグロス計上にせよ、
日本の財務省が
いかに狂っているかが分かるでしょう。

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「家計の金融資産の日米比較」
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[三橋TV第1058回]三橋貴明・浅野久美
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[三橋TV第1059回]三橋貴明・菅沢こゆき
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【速報】日本政府が
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お申込み受付を
開始しました。
https://members14.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?p=2462
ゲスト講師は吉田敏浩先生です。

十四期のゲスト講師が全て決定いたしました。
https://members14.mitsuhashi-keizaijuku.jp/

 第十回 10月18日 峯村健司先生
(一般財団法人キヤノングローバル戦略研究所 主任研究員)

 第十一回 11月15日 大場一央先生
(早稲田大学非常勤講師)

 第十二回 12月20日 堀茂樹先生
(慶應義塾大学名誉教授・仏文学者)<New!

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