日本経済

2024年7月15日

【三橋貴明】遠のくデフレ脱却宣言

【今週のNewsピックアップ】
国民の怨嗟の声を浴びながら
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12859232663.html
デフレーションと物価上昇
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12859347403.html

日本政府はデフレ脱却について
「消費者物価」、「GDPデフレータ」、
「需給ギャップ」、
「単位労働コスト」の四つを
指標として設定しています。
現時点で、
需給ギャップのマイナス
(デフレギャップ)
が続いている以上、
デフレ脱却宣言は不可能です。

図の通り、
直近の日本の需給ギャップは
対GDP比でマイナス1.4%。
すなわち、需要不足が続いているわけで、
デフレ脱却は果たせていません。

【日本の需給ギャップの推移
(対前年比%)】

http://mtdata.jp/data_91.html#GAP2

内閣府は需給ギャップを
「平均概念の潜在GDP」で見ています。
結果、デフレギャップが
小さく集計されてしまいます。
そもそも、需給ギャップが
「プラス化」している時期が
あるのがおかしい。
生産不可能な財やサービスが
「売れている」という話に
なってしまいますよね。

需給ギャップとは、本来は、
「日本国内のリソース
(労働、資本)が
100%稼働した際に
生産可能なGDPと、
現実のGDPとの乖離」
という指標なのですが
(最大概念の潜在GDP)、
内閣府は、
「日本国内のリソース(労働、資本)が
過去平均の稼働率の場合に
生産可能なGDPと、
現実のGDPとの乖離」
という定義に変えてしまいました
(平均概念の潜在GDP)。
誰が変えたのかといえば、
竹中平蔵です。

結果的に、
内閣府の需給ギャップ統計は
デフレギャップが小さくなる
という特徴を持っています。
その指標であっても、
デフレギャップは
拡大中なのでございます。

この状況で、
政府、岸田内閣は政局的に
「デフレ脱却宣言」をやりたい。
その上で、
総裁選挙に臨みたいのでしょうが、
もはや無理でしょう。

内閣府の甘々の指標で見ても、
需給ギャップはマイナス。
デフレ脱却宣言など
できるはずがないのです。

ちなみに、デフレギャップ拡大と
消費者物価の上昇は
普通に両立します。
何しろ、
現在の物価上昇は
「外国から輸入する
財・サービス価格の上昇」
によるもので、
国内の需要拡大が理由ではありません。

GDP三面等価の原則により、
「生産=支出=需要」になります。
とはいえ、
これは「地球規模」で成り立つ、
という話です。

外国の生産者が生産した財の価格が
上昇したところで、
我々は支出こそ増えるものの、
所得は増えない。
所得が増えるのは、
外国の生産者です。

結果的に、実質賃金は下落する。

同時に、国内に限れば需要不足。
輸入物価の影響を完全に排除した場合、
消費者物価指数の上昇率は
ゼロ近辺に落ちます。
例えば、
理美容サービスのコアコアCPIは
対前年比+1.4%ですが、
ここにエネルギーコスト上昇の影響が
入っていないはずがありません。

というわけで、現在の日本経済は
「需要不足(デフレーション)であり、
輸入物価高騰を受けた物価上昇」という、
ある意味、
最悪の状況に
置かれていることになります。

特に、実質賃金の下落は、
ついに戦後最長、
恐らくは「日本史上最長」に
至ってしまいました。

実質賃金は、
直近(24年5月)まで
26カ月連続のマイナスと、
惨憺たる状況に至っています。

解決策は、明らかです。
財政支出により、
物価上昇の悪影響を食い止める。
国民の実質賃金や可処分所得を
引き上げる。

8月から電気代・ガス代への支援は
再開されることになりましたが、
全く足りません。

岸田総理に限らず、
国会議員は今こそ、
消費税廃止や社会保険料減免の議論を
始めなければならないのです。
それすらやらないというのであれば、
日本の国会議員は
全員辞職するべきです。

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http://www.mag2.com/m/P0007991.html
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この基本を知らずに、
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[三橋TV第884回]三橋貴明・菅沢こゆき
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◆チャンネルAJER 
今週の更新はありません。

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【三橋貴明】遠のくデフレ脱却宣言への3件のコメント

  1. 利根川 より

     需要不足(デフレ)の状況が続くと、

    野党「景気対策はまだなのか!?与党は何をしている!」

    なんて言われてしまうので、計算式を変えてデフレギャップが小さく算出されるようにいじったわけですよね。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    平成13年版経済財政白書

    「なお、GDPギャップの推計値の解釈は、GDPギャップの定義や前提条件の違いがあるので注意が必要である。この推計では、潜在GDPを計算する際の稼働率について、過去の平均的な水準に近い概念を用いているが、他の推計では、過去の最大の稼働率を用いて、経済がその時点で達成できる最大限のGDPを推計し、それを潜在GDPと考え、ここでの推計より大きなGDPギャップを計測するものもある」
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    まあ、財務省は平然と公文書偽造をするような組織ですし、数字をいじるくらいのことはするんでしょうね。(赤木ファイル参照)
     計算式を変えて数字をいじった上でもなお需要不足な状態というのは相当深刻なことだと思います。残念なことに現在の総理大臣は状況を理解していないらしく、サラッと電気代ガス代の補助を打ち切りましたけどね。日本もアメリカみたいなことにならないことを祈ります。というのも、都知事選の最中にちょいちょい聞こえてきたのが

    有権者「きれいごとで政治が変わるか!」

    これなんですよ。テロリストと言っていることが一緒じゃないですか。日本の未来が心配です。
     アメリカでは大統領候補者が銃撃される事件が起きてしまいましたが、今一度、民主制とは何かをしっかり確認した方がいいように思います。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    ナショナリズムの美徳 著:ヨラム・ハゾニー(日本語翻訳版)

     民主主義とは何であろうか。それを子供に聞けば

    「みんなで話し合って物事を決める政治」

    だと答えるだろう。確かに、そのとおりだ。しかし、子供でも分かる簡単な問題だなどと片付けてはならない。というのも、政治には、どうしても話し合いでは決められない物事というものがあるからだ。
     それは「みんな」の範囲である。
     「みんなで話し合って物事を決める政治」においては、「みんな」に含まれるのが誰かが決まらなければ、話し合いは始まらない。だから、「みんな」に誰が含まれ、誰が含まれないのかを、「みんな」で話し合って決めることはできないのだ。
     「みんな」の範囲が決まっていることは、民主政治の前提なのであって、したがって、民主的には決められない。ということは、「みんな」の範囲は、非民主的なやり方で決めるしかないということになる。
     「政府の哲学」は、「みんな」の範囲がどう決まるのかについて答えられない。これに対して、「みんな」の範囲を探求する政治哲学に該当するのが、「政治秩序の哲学」なのである。
     「みんな」とは、要するに「集団」のことである。人間は、家族、氏族、地域共同体、クラブ、組合、企業、宗教、そして国家など、何らかの集団に所属することで存在しうる。その集団のうち、「国家」は政治秩序である。なかでも、「国民国家」は、「国民」という集団を基礎にした政治秩序(=国家)である。
     したがって、「政治秩序の哲学」は、国家(現代であれば国民国家)を探求の目的とする政治哲学だということができる。
     では、そもそも、人間は、なぜ、あるいはどのようにして「集団」を形成し、所属するのか。これが「政治秩序の哲学」の出発点となる。
     「政治秩序の哲学」は、人間というものは、その本性からして、集団を形成し所属する存在であるという現実を直視し、そのゆえんを探求する。その探求は、いわば社会学や社会人類学的な性格を帯びるだろうし、歴史学的な知見も参照されるだろう。
     ここで重要なのは、「政治秩序の哲学」が問うのは、

    「人間はどうあるべきか」

    という「理想」ではなく、

    「人間はどういうものか」

    という「現実」だということである。
     「政治秩序の哲学」はリアリズムだということもできる。これに対して、「政府の哲学」は、「最良の統治形態とは何か」という「理想」を探求する。リベラリズムは、理想を探求する「政府の哲学」である。

    ~中略~

    なお、ハゾニーは保守主義者でもあるが、保守主義もまた、「政治秩序の哲学」である。「リベラル派」対「保守派」という通俗的な分類にみられるように、リベラリズムと保守主義は対立する思想とみなされている。しかし、政治哲学的な観点から言えば、両社は対立するものというよりは、むしろ、カテゴリーが違うものなのである。すなわち、リベラリズムは「政府の哲学」であり、保守主義は「政治秩序の哲学」なのだ。
     読者に特に注意を促したいのは、ハゾニーが批判的なのは、リベラリズムそれじたいというよりは、リベラリズムを「政治秩序の哲学」に適用することだということである。もっと言えば、ハゾニーはリベラルな統治形態を尊重しているからこそ、そのリベラルな統治形態の基礎にある「国民国家」という非リベラルな政治秩序というものを重視しているのだ。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    「『みんなで話し合って物事を決める政治』においては、『みんな』に含まれるのが誰かが決まらなければ、話し合いは始まらない」

     近年、世界のポンコツエリートたちは、自身の配当金upのため、コスト削減(人件費削減)を狙って大量の外国人労働者を自国に引き入れるという乱暴なことを行ってきました。

    カール・ポランニー「悪魔の碾き臼」

    結果、誰が「みんな」に含まれて、誰が「みんな」に含まれないのかがあいまいになり、その線引きをめぐってキリングフィールド・サップーケイな末法の世が形成されるに至りました。話し合いが始まる前の段階に逆戻りさせてしまったわけだ。
     それだけではない。人間は「群れ」を形成する「生き物」だが、近年の有識者は、

    有識者「日本人は欧米の人達と違って個が確立されていないからダメなんだ!自立した強い個人を目指せ!」

    有識者「組合は既得権益!組合を解体せよ!」

    こんなことまで言っていたわけでね。「群れ」を形成する生き物に「群れ」を形成するなってさぁ…無茶が過ぎる(笑
     こうして「群れ」の形成を政治的に抑制され、バラバラにされてしまったわけですが、強大な権力に「個人」で対抗することは不可能です。なので、バラバラにされた個人は権力に屈っしやすくなります。その段階も過ぎるとどうなるのかというと、「社会防衛」がはじまります。

    カール・ポランニー「市場経済による社会の破壊があまりにも激しくなると、社会はこれに対抗して自らを防衛しようとし、過剰に結束し、暴走する。それが、イタリアのファシズムやドイツのナチズムとなってあらわれた」

    近年、自称保守界隈からもリベラル派からも過激な言動が目立つようになってきていますが、要するに、どちらも「過剰に結束し、暴走する」全体主義に向かっているということだと思います。

    自称保守「人はいつか死ぬ。老人なんぞ死んでもいいのだ」(コロナ禍の際に私が保守派から聞いたセリフ)

    リベラル派「老人ばかりで先のない能登半島など復興する必要なし」(能登半島地震の際の某立憲民主党議員のセリフ)

    言ってること完全に一致。完全に全体主義です。超仲良しじゃんね(笑
     こんな状況ですので、日本もアメリカの状況を対岸の火事と見てボ~っとしてられないんじゃなかろうかと思うわけです。
     とはいえ、「老人は死ね」とか不穏なことを平然と言っている輩(右も左も)とよろしくやれる自信ははっきり言って私にはないわけでして、彼らと親しく付き合って信頼を勝ち得て、集団で権力と対峙するのだと言われても…全くもって気が進まない。
     むしろ、そういうのはそれで食ってる政治家とか有識者の仕事なんじゃなかろうかと。今回の都知事選でもTVメディアの影響力がすさまじいことが実証されていますし、TVに出演するような有識者にハゾニーさんやポランニーさんの知識をしっかり仕入れて頂いて、本物の有識者になって頂くのがいいんじゃないかなと…まあ、財務省関係者(メディア関係者)は、わりと三橋さんの記事をチェックしているようですし、2024年1月9日「ザ!世界仰天ニュース」で財務省の公文書改ざん問題を取り上げているところを見るに、良心というものがないわけではないらしい。
     10年かけてここまで来たのだから、さらに10年かけて軌道修正を試みるのもいいんじゃないでしょうか。幸い、森永康平さんのように、批判的な方々からも注目されている本物の有識者もいるわけで、昔よりは「外の人」にも情報はいきわたりやすくなっていると思います。

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  2. 個人商店潰しまくって商店街、デパート潰しまくって増えたのは質屋 より

    コンビニも同じ運命、岡●君とこの英会話モグラもやがて轍を踏むだろう。
    一見さんお断りで入口に見張り立つRO●●Xとルイルイは上手くやってヤガルな、
    客選ぶ店❗

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      1. アホアへ より

        アホウが言ってましたよ、
        最早デフレでは無いが
        未だ完全脱却には道半ばだと
        アホ、オマエの地獄への道は完全到達だろうが
        コクソウのカネ返せ、野郎❗

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