日本経済

2023年7月17日

【三橋貴明】貨幣のプール論の間違い

【今週のNewsピックアップ】
アダムの罪
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12811869318.html
アリストテレスの罪
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12811994835.html

古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、
貨幣(硬貨)について、
 『例えば鉄とか銀とか
 或は何か他にそういうようなものがあれば、
 そのようなものを交換のためにやったり、
 取ったりしようということを
 相互の間に取りきめた。
 こうしたものの価値は初めのうちは
 単に大きさと重さによってはかられたが、
 しかしついに秤かる面倒を省くために、
 また刻印がその上に押されるに至った。
 何故なら刻印は
 「どれだけか」の印として押されたから。』
と、説明しました。

アリストテレスの説明を読んだ人は、
貨幣とは「物」であるとの印象を
植え付けられることになるでしょう。

また、経済学の始祖アダム・スミスは、
 『貨幣がすべての文明国で
 普遍的な商業用具となったのは
 このようにしてであり、
 この用具の媒介によってあらゆる
 種類の品物は売買され、
 相互に交換されているのである』
と、おカネを「用具」呼ばわりしています。
これが、「経済学の間違い」の
始まりとなりました。
(アダムの罪、と呼ばれています)

貨幣とは、物でもなければ、
商業用具でもありません。貸借関係です。
共同体内における「購買力の所有権」が、
「誰かの資産、誰かの負債」として
具現化したのが貨幣なのです。

もっとも、共同体の権力(政府、国王など)は、
「返済の必要がない自分の負債」として、
貨幣を発行し、支出することが可能です。

ちなみに、銀行は
「現金紙幣による返済が
必要な自分の負債」として、
貨幣(銀行預金)を発行します。
銀行発行の貨幣の場合は、
借り手が返済すると、貨幣が消えます。

未来永劫、残り続ける貨幣を
発行できるのは、政府のみです。
ここでいう貨幣発行は
「自らの純負債」を
永遠にバランスシート(貸借対照表)に
残し続ける、という意味になります。

ちなみに、日本銀行は、
「国債(政府の負債)を引き受け、
日銀当座預金(自らの負債)を発行している」
に過ぎないため、
純負債は増えませんし、残りません。
銀行にしても、
借用証書(銀行の資産)と引き換えに
銀行預金(銀行の負債)を発行しているため、
純負債は増えない。

社会全体に「自らの純負債」となるように、
貨幣(所有者の純資産)を発行できるのは、
共同体の権力のみなのです。

そして、変動為替相場制の独自通貨国
(いわゆる「主権通貨国」)にとって、
政府の貨幣創出(国債発行+政府支出)の
制約となるのは物価上昇率
(※ただし、デマンドプル型インフレにおける)
のみ。

つまりは、需要の問題です。
供給能力が需要を満たす限りにおいて、
国家の権力は「貸借関係」である
貨幣を発行し、支出して構わない。

ただ、それだけの話なのですが、
アリストテレスや
アダム・スミスの「罪」により、
人類に誤解が広まってしまった。

貨幣には物理的、量的な限界がある。
貨幣は物であり、
貨幣のプールを作ることができる
(貨幣のプール論)。

全て、嘘です。
貸借関係のプールなど、
作れるはずがないのです。

貨幣のプール論から脱却しよう。
落ち着いて考えてみれば、
誰にでも「貨幣のプール論」の間違い、
誤りが分かるはずなのです。

◆小学館から「日本経済 失敗の本質:
誤った貨幣観が国を滅ぼす」
が刊行になりました。
https://www.amazon.co.jp/dp/4093888973

◆経営科学出版から
「歴史教科書が教えてくれない
古代日本「帝国」の誕生」が刊行になりました。
https://in.38news.jp/38nike2_980_teika

◆メルマガ 週刊三橋貴明
Vol7341 経済成長と財政健全化の二兎
http://www.mag2.com/m/P0007991.html
経済成長(GDPの拡大)と
財政健全化(政府の黒字化)を
同時に実現する方法はありますよ。
もっとも、実際にそうなった場合、
国見経済が「○〇〇化」した
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◆メディア出演

財務省にとっての痛恨の一撃!
防衛費はなぜ増額されたのか?
[三橋TV第727回]三橋貴明・高家望愛
https://youtu.be/pC_JRTGb66Y

救われない世界 サラリーマンの皆さん、
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[三橋TV第728回]三橋貴明・高家望愛
https://youtu.be/4KVWNDhyta0

消費税の真相
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[三橋TV第729回]三橋貴明・高家望愛
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日本経済の成長に
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わたし、シンガーsayaと共に
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第二巻」です。
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「ゼロ」から学んで下さい。
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三橋貴明&saya
「シンガーsayaが三橋先生に
ひたすら聞いてみた 第一回」
の全編もご視聴いただけます。
https://keiseiron-kenkyujo.jp/economics/

◆三橋経済塾
7月15日、三橋経済塾第十二期
第七回対面講義が開催されました。
https://members12.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?page_id=75
ゲスト講師は森永康平先生でした。
インターネット受講の皆様は、
しばらくお待ちください。

◆チャンネルAJER
今週の更新はありません。

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