日本経済

2023年3月27日

【三橋貴明】邪馬台国はどこにあったのか?

【今週のNewsピックアップ】
もう一つの自虐史観
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12794864923.html
少子化対策のセンメルヴェイス反射
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12794997537.html

自虐史観の歴史家にしても、
財政破綻論者にしても、
あるいは「反・自虐史観」の保守(と自称する)
論客にしても、
「資料・データを無視する」
という点が共通しています。

正直、吃驚してしまったのですが、
田中英道は「日本国史」で、
「どうして『魏志倭人伝』 の信憑性を
疑ってみないのでしょうか。不思議です。」
と、それこそ不思議なことを書いています。
いや、史書の信憑性を否定してしまったら、
歴史について語ることは不可能になるでしょうが。

ちなみに、田中がなぜ魏志倭人伝を
否定しているかと言えば、
「その邪馬台国はどこにあったのか。
『魏志倭人伝』 には
倭に行くまでの行程がくわしく書かれています。
その行程を忠実にたどってみると、
日本から大きくはずれ、
とんでもない海洋上に出てしまいます。」

と説明していますが、そんなことはありません。
というか、「とんでもない海洋上」
に出るためには、交通インフラが
現在並に整っていなければ不可能です。

魏志倭人伝の主役は、あくまで女王の国、
つまり邪馬台国ですが、
奴国は女王の国に至る途上にあります。

というわけで、帯方郡、
今の北朝鮮西南部ですが、
帯方郡から女王の国までのルートを
改めて整理してみましょう。
「帯方郡(たいほうぐん)より
女王国に到着するまでには、
全部で一万二千里余りになる。」

北朝鮮南西部の帯方郡から邪馬台国まで、
12,000里ある、と。
その上で、邪馬台国に至るルートは、
魏志倭人伝によると、
「倭の北岸の狗邪韓国に到着するまでに7千里」
「千里余りの海を一つ渡ると、対馬国に到着する」
「そこからまた南に行って、
千里余りの海を一つ渡る。一大国に到着する」
「また一つ千里余りの海を渡ると、
末盧國に到着する」
現在の韓国南部である狗邪韓国まで、7千里。
そこから、千里で対馬。
さらに、千里で一大国、つまりは壱岐島。
さらに、千里の海を渡り、
ようやく九州北部の末盧國、
今の長崎県松浦市に到着。

ちなみに、昔の松浦の呼称は、
そのままずばり「まつら」でした。
帯方郡から松浦市に行き着くまでだけで、
7千里、足す1千里、
足す1千里、足す1千里で、
合計で1万里を消費し。
残り、2千里。

この時点で、邪馬台国が
「日本から大きく外れ」云々が、
妄想であることが分かります。

松浦までで、六分の五の距離を
使ってしまっているのです。
さらに、松浦以降は、
「東南に陸地を行くこと五百里で、
伊都国に到着する」
「東南に行って奴国に到着するまで百里ある」
伊都国は、邪馬台国の女王が北に「一大率」
を設置して、諸国を点検・監察させている、糸島市。

奴国の位置が志賀島もしくは福岡市で確定し、
「まつら」ならぬ松浦市と、
志賀島の間の「いと」となると、
糸島市以外に候補はありません。

ちなみに、松浦市と糸島市の間は、
伊万里市、唐津市経由で約60km。
糸島市から志賀島までは、
能古島経由で約12km。

魏志倭人伝の記述と同じく、
ちょうど五分の一。
奴国の位置は、金印が発見された志賀島ではなく、
向かいの九州本土の博多湾近辺の可能性もありますが、
いずれにせよ奴国の「次の国」ということで、
不弥国が紹介されています。

「東に行って不弥国に到着するまで百里ある」
不弥国。現在の福岡県糟屋郡宇美町。

松浦市までで一万里、伊都国まで500里、
奴国まで100里、不弥国まで100里であるため、
合計で1万700里。
帯方郡から女王の国まで1万2000里なので、
残り僅か1300里。

魏志倭人伝の一里は、
中国史で一般的な400メートルよりも、
はるかに短い、100メートル以内になります。
中国の古代数学所「周髀算経」によると、
一里は約76mと計算されています。

というわけで、女王の国の位置は、
糟屋郡宇美町から半径100km前後。
もちろん、高速道路が整備されている
わけではないので、
直線距離で測っても意味がありません。
山々を縫って進まざるを得なかったでしょうから、
実際には、糟屋郡宇美町から
半径100km「以内」の地に、
女王の国はありました。

半径100kmとは言っても、
北に行ったら海に突っ込んでしまう。
しかも、女王の国は糸島市に一大率を置き、
「北の国々」を監察させていました。

さらに、女王の国の南には「狗奴国」があった。
「女王の国の、そのさらに南に、狗奴国がある。
この国では男子が王となっている。
その長官には、狗古智卑狗がいる。
女王には服属していない。」

狗奴国は、もちろん熊襲国。
狗古智卑狗は、菊池。
三橋の生まれ故郷の山鹿市の南が菊池市です。
なぜ、菊池市なのかといえば、
もちろん古代から菊池彦、
菊池一族に領有されていたためです。
そのまんまなのですよ、

糸島市に監察官を置き、
北の国々を監督させていた。
南には熊襲国があり、
菊池一族が長官だった。
かつ、糟屋郡宇美町から
「南」に100km以内。
女王の国ならぬ邪馬台国の位置は、
現在のみやま市を中心とする
筑紫平野の一帯。旧・山門郡で確定でしょう。

この地域は、元々「山門郡」なのです。
田中は不弥国から邪馬台国に到達するまで
十数日かかっていることを受け、
「日本 から大きくはずれ、
とんでもない海洋上に出てしまいます」
と、書いているのですが、
距離は合っているのですよ。
不弥国から邪馬台国に到る100kmを、
十数日かけて旅をしたと、
魏志倭人伝に書かれている。

それはまあ、各地で接待を
受けつつ南下するわけですから、
十数日かかることもあるでしょう。
ただ、それだけの話。

というわけで、自虐史観でも、
あるいは「もう一つの自虐史観」である
反・自虐史観でもなく、
淡々と史書と考古学的遺跡に基づき
歴史を語るのが「経世史論」です。

これを機に、
是非とも年間割引キャンペーンで
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【三橋貴明】邪馬台国はどこにあったのか?への1件のコメント

  1. 利根川 より

     三橋TV第682回視聴しました。
     
    その国の貨幣はその国でしか使えないので、

    「日本の円が海外に流出して日本に存在する円の総額が減ってしまう!」

    などということは起きない。”日本国内で”外国人が保有する円と日本人が保有する円の割合が変わるだけ。輸出入がどれだけされても、日本国内に存在する円もドルもユーロもその総額は変わらない。

    貨幣の所有者が変わるだけ

    日本国内で外国人が保有する円の割合が増えても、結局は日本国内で使う以外に日本円の使い道などないので、国内の総合的な需要(購買力)が変わることはない。というお話で合っているでしょうか。

     財務省の公開資料「本邦対外資産負債残高の概要」(最新版は2022年5月発表の2021年末分)によると

    <主要国対外純資産>

    1位 日本 +411.2兆円
    2位 ドイツ +315.7兆円
    3位 香港 +242.7兆円
    4位 中国 +226.5兆円
    5位 カナダ +152.3兆円
    6位 ロシア +55.2兆円
    7位 イタリア +17.1兆円

    ワースト3位 フランス -110.3兆円
    ワースト2位 イギリス -113.7兆円
    ワースト1位 アメリカ -2067.3兆円

    ”貨幣とは特殊な形式の負債である”

    なぜアメリカが強いのか。アメリカ国民の需要が世界中から物を買うほど旺盛で、アメリカの負債が世界の貨幣と化しているから。こういった話と理解しました。

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