政治

日本経済

2021年3月11日

【藤井聡】東日本大震災から10年の国土強靱化は、誠に遺憾ながら甚だ不十分であった。

From 藤井聡@京都大学大学院教授

東日本大震災から本日でちょうど10年。

当方は10年前のあの日、次々と報道される激甚被害の様子を見ながら、政府が「インフラ政策」を蔑ろにし続けたことで、その被害が圧倒的に拡大してしまっているとの認識を刻々と深めていきました。

そして、三橋貴明氏にお願いして、
『「人」が死ぬことを防ぐ「コンクリート」は不要なのか』
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-10828147809.html
と題した記事を、3月11日の深夜にブログ掲載頂きました。

この記事の中で、その巨大災害について『「政府」にとっては、それは想像することが不可能なものなのでは、決してなかった』事を指摘。その上で、具体的な当時の政権(民主党政権)の政策判断を下記のように批判しました。

「小中学校については、その耐震強化に、平成21年度には約2800億円の補正予算が予定されていた。そしてその予算で、全国の小中学校の、約5000棟の耐震化工事を行うことが計画されていた。しかし、政府のいわゆる「事業仕分け」によって、その予算が3分の1程度の1000億円にまで削減されてしまった。このために、耐震化が遅れる小中学校の建物が、2800棟程度に上る。」

「また、都市を支える運輸施設である都市高速道路についても、平成21年度の補正予算で、首都高速道路、阪神高速道路を対象として1211億円をかけて耐震化することが予定されていたのだが、同じく民主党政権成立直後に、とりやめとなってしまった。」

筆者は、この記事を皮切りとして、二度とこうした激甚被害を繰り返してはならないと決意し、最後に次の様に主張しました。

『残念ながらこの巨大地震と同規模のM9にも及び、かつ、原発施設を含めた多様な施設が設置されている太平洋ベルトを襲うと言われている「東海・南海・東南海地震」が、30年以内に起こる確率が50%~87%にも上るという事が、知られています。

 私たち国民は決して、こうした事実から目を背けてはなりません。そしてそれと共に、その事実から目を背けない人たちを見極め、我が国の命運を左右する政権の座に着く人々として、選択していかなければなりません。

 私たち日本人が、そうした未来に向かって確実に進んでいくことができるのか否か───、それは今、目の前で、あるいは、テレビを通して私たちの目前で起こっている東北太平洋沿岸地震の現実の一つ一つの意味を、きちんと受け止めることができるのか否かにかかっているに違いありません。』

当方はこうした認識の下、

「強靱化」

という概念/コンセプトを提案し、「徹底的な防災投資の拡大」を主張し続けました。それと共に当方が特に強調したのが、(民間の強靱化投資を促す)「デフレ脱却」、そして、「東京一極集中の緩和」でした。

したがって、強靱化というものは政策論的に言うなら、防災投資、デフレ脱却、東京一極集中の緩和の三本柱から構成されるものだったのです(思想的には反構造改革、反グローバリズム、脱ニヒリズムなどの全てが強靱化には含まれますが、それについてはまた別の機会に論じましょう)。

そして、この三本柱を、10年間で200兆円程度の予算をかけて徹底的に推進し、10年後、すなわちまさに10年後の2021年3月11日の正に本日時点では、基本的な強靱化を「完全に完了」しておくべきだと主張したわけです。

しかし……この内「デフレ脱却」については完全な失敗に終わっていることは周知の通りです。二度の消費増税とコロナ自粛によって、10年前よりも後退してしまっているのが実情です。

では、「防災投資」「東京一極集中の緩和」についてはどうなのかというと―――結論から申し上げて、惨憺たる状況なのです。

まずは、こちらの表をご覧下さい。

https://twitter.com/SF_SatoshiFujii/status/1369848828086513667/photo/1
この表は、防災投資の中でも特に重要な4項目について、公表値に基づいて藤井個人が2011年と今年2021年の各重要項目の強靱化のレベルの推計値を纏め、日本の強靱化の進捗を個人的に評価したものです。

「河川の堤防」は、台風・大雨などによる大洪水を防ぐための最重要項目、
「海岸の堤防」は、津波や高潮を防ぐ為の最重要項目、
「住宅耐震率」は、大地震の被害を軽減するための最重要項目の一つ
、そして、
「首都圏一極集中率」は、首都直下地震や荒川・利根川決壊、東京湾巨大高潮などの超巨大被害を軽減するための重要項目です。

ご覧の様に、安倍内閣も菅内閣も、国土強靱化を政権の中枢政策の一つと位置づけ、徹底的に推進してきたと言ってきた筈、なのですが、これら最重要項目のどれ一つとして、十分には進められてはいなかったのです。

海岸堤防と住宅の強靱化は、一定進捗してはいますが、まだまだ不十分な状況。一方で、河川の堤防整備等は驚く程進捗が遅く、全く不十分な状況。さらには、国土強靱化の最重要項目として当方が掲げている一極集中度は改善するどころか悪化していることが示されました。

こんな「脆弱」な国土ままでは、巨大地震や巨大台風で、日本は破壊されてしまうことは必至―――幸いにも、この10年の間、当方が危惧していた首都直下地震や南海トラフ地震は発生しませんでした。しかし、それがいつ起こるか分からない状況であることは変わりありません。

だから、今、国土強靱化の抜本的な加速が、必要なのです。

もうこうなれば誰が総理でもどこが与党でも構わないので兎に角、日本を巨大災害から本気で守ろうとする強靱化行政を展開していただきたいと、心から祈念する他有りません。

さもなければ、10年前のあの悲劇を、私達はさらに繰り返し続ける事にならざるを得ません。国民の力で何としてでも、デフレの脱却と国土の強靱化を成し遂げねばならないのです。

追伸:
しかし、2011年の民主党政権が「コンクリートから人へ」という理不尽なタテマエを叫び続けたことで多くの命が失われたように、2021年の菅政権はタテマエすらかなぐり捨てて「腐敗」を深め、多くの国民の命が危険にさらされる事態に至っています。つまり日本の「強靱化」は今や、この腐敗を日本の中枢から取り除く所から始めねばならないのです。そのためにもまずは是非、ご一読ください。
『政府の腐敗は国民が「怒り」を忘れた事の必然的な帰結である ~日本人は「怒るべき時に怒る感覚」を思い起こさねばならない~』
https://foomii.com/00178/2021030613503777437

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【藤井聡】東日本大震災から10年の国土強靱化は、誠に遺憾ながら甚だ不十分であった。への4件のコメント

  1. 大和魂 より

    藤井先生も国の役人に匹敵するほどの、時間に追われた慌ただしい環境ですから、何卒お体にお気を配られますように。
    何故なら、藤井先生の目前にはコロナの変異株やコロナワクチンの、途方もない現実が控えているからです。

    ところで東北の震災に遭遇された方々の、血の滲むような十年間を想像すると言葉になりません。

    しかし昨今、永田町で展開されている不毛な男女比率の議論を目の当たりにすれば、実にバカバカしく思いますよね。

    何故なら、いつも思うのですが食料の農林水産業や社会インフラ構築全般や緊急レスキューや災害派遣などを考慮した時に、男女の差は比較にすらならないほどに歴然としているのに永田町では【バカごっこ】ですからね。

    それに現状では現実的なインフラ整備は漸進的で被害が大きく出る場所からしか進めなれないと考えているところです。

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  2. 麦粒 より

    コロナは、自粛のため、ではなく、経済的な手当てが不十分なため、ですね。

    防災は、1は、やればいいだけ。2は、関係ない。

    3は、都心から約50kmの所に、東京都心に住みたいと思うような人たちが魅力を感じるような1000万都市を新設する・・・のが一番だけど、簡単で難しい問題だな(笑)。それ以外の方法は不可能に近いんじゃないかな。

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  3. 藤井教授 貴殿の仕事はこれが本筋、それにスカよりも糞安倍を叩く回顧禄でも書いて下さい ベストセラーになりますよ。 より

    もうコロナ追及やめましょう 専門外でしょ
    国土強靭化とそれを阻む緊縮予算批判に専念してください
    あのバカ前首相みたいに森羅万象司るとでも?
    対決すべきは貴殿が官房参与した憲法無視 皇族侮辱軽蔑蔑ろ超国賊、
    売国奴 でアホ マザコン 税金着服横領 公務員人事恫喝 子分化
    警察力強化 夜景国家化によるテロ特措法等人権蹂躙
    国会虚偽答弁 南スーダン陸自隊員殺しの公文書改竄
    ヤクザ騙して手榴弾ぶちこまれた
    ヤクザ政治屋 安倍晋三でしょうが。
    敵は貴殿自身が仕えたA級永久売国奴クソバカ三世アホ政治屋安倍晋三だ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

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  4. この世は既にあの世 より

    被災地のことについて私は言葉が見当たらずあまり軽々しく述べたくありませんが、復興の声は僅か3年で報道からは消え、その後は脱原発だの反原発だのと、原発が政治家の為にスケープゴートされただけでした。

    今も尚、小泉、鳩山、菅の三馬鹿がしぶとく生き返って来て「脱原発党」などとやってますが、スターリン毛沢東主義者政党も含め、その様な政治家を私が支持することはこれから先にありません。

    また正直、各地方の事情は他の地域に住む人々には分かりません。

    お金の問題もあるでしょうが、我が町、我が村を守るという意味では、地元住民置き去りの国土強靭化スローガンはそんなには支持されないと思います。

    村の真ん中に道路通して村を分断させたり、ダムを造るから村を水の中に沈める為に、村人達に立ち退きを迫ったりというのは私の中にはありません。

    他人の共同体、コミニティに土足で上がり込み、破壊しようという意識は私にはありはしませんから、その地域の人々の意思が私の中では優先されます。

    それでも今現在も新しい道路の開通や舗装のやり直し工事などを目にするので、賛成反対にかかわらず、長い時間をかけて国土は少しずつ変わって行くのでしょう。高速道路も造られてはいますが、トラックドライバーなどでも、節約の為に高速道路を使えないのでは本末転倒です。

    なので、私は一概に国土強靭化に賛成も反対もありません。軍事の事ならイメージがわくのですが、国土強靭化という言葉は漠然としていて、私にはあまりイメージがわきません。

    私はデフレ脱却にもあまり興味が無くて、賃上げに興味があります。物価が下がり続ければ賃金も下がるというのも解りますが、私の目的はデフレ脱却ではなくて賃上げです。100均のモノは100円だから売れるのだと思います。

    子供の頃にラーメン一杯300円が今は700円前後、タバコ一箱200円が550円、缶コーヒー1本が100円が130円。車は安全装備のモデルチェンジで割高に。

    物が高くなった印象がありますが、高いモノやサービスを先に置いても富裕層しか買いません。それより先にサービスカットと賃金げが必要だと思います。また私は経団連の面々を見てれば判るように、資本家を信用してはいませんので、資本家の利益が上がれば必ずしも労働者に分配されるとは考えておりません。

    また国土強靭化は経済対策というよりも防災対策であると思っていますが、決して防災対策が必要ないとは思っていません。

    結局私は私が生きてる間に、政治や日本経済が良い方向にはさほど変わることはないと思ってます。変えられるのは自分自身だけだと思います。

    IF YOU WANT

    道なき未知を進め
    コンパスは My Soul

    ですね。

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