From 藤井聡@京都大学大学院教授
こんにちは、京都大学の藤井聡です。
突然ですが今月1日、当方の下記の二つの書籍が、同時出版となりました。
『神なき時代の日本蘇生プラン』(宮台真司・ 藤井 聡 著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4828424253
『人を動かす「正論」の伝え方』(藤井 聡 著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4295407364
同時出版となったのは、あくまでも「たまたま」だったのですが、両者はとても深く関連する書籍ですので、本日はあわせてこの二つの本を紹介したいと思います。
まず、『神なき時代の日本蘇生プラン』について。
https://www.amazon.co.jp/dp/4828424253
この書籍は、社会学者の宮台真司さんとの四回にわたる対談をとりまとめたもの。
宮台さんは、師匠の西部邁氏とよくご一緒されていたのを存じ上げていたものの、ずっと直接お付き合いする機会は無かったのですが、今回、テレビや雑誌の企画で対談したのをきっかけに、さらにじっくりと対談する機会を設け、本書を出す事となりました。
最初に対談したのは、東京MXでのコチラ(↓)の企画だったのですが、その時の印象は、驚く程に話ができる、というもの。
https://www.youtube.com/watch?v=vo_wrOGX-_w&t=650s
日本が如何に腐敗しているのかという現状認識についてはほぼ完全に共通しており、そこからの処方箋については、やはりよりミクロな社会学的アプローチを強調する一方、当方の方がマクロ経済を強調するといった相違はあるものの、今の日本人の「正しい事」(真善美)に対する無気力感を乗り越えることが何よりも大切だという点では完全に一致。
この対談では
『コロナにおける「過剰自粛」が若者の未来を奪っている』(第一章)
という問題を皮切りに
『日本人の”クズ化”を防ぐには、共同体の活性化が鍵である』(第二章)
『近代的な無機質な都市計画が、日本を荒廃させた。』(第三章)
等を論じた上で、
『「天皇」を参照することこそ、日本蘇生の鍵である』(第四章)
『メタバース、という恐怖にどう立ち向かうのか?』(第五章)
という問題について議論しましたが、
各所で意見が対立する場面がありますが、それはいずれも、日本はどうすれば蘇生できるのか、地獄に落ちつつある日本人の精神を如何にすれば救い出す事ができるのか、という共通の問題意識の下での対立であり、いずれも「必要な」対立となっています。
本書をお読み頂ければ、日本が如何に「絶望的」状況にあるかをより深くご認識頂くと同時に、そこから如何にすれば脱却でき得るのかの道筋についての一定の「希望」を見いだして頂くことができるのではないかと思います。
ところで、この本の中で両者が明白に同意する、ほぼ議論の必要の無い「当たり前」というべき議論がありました。例えば、
「現状の日本のコロナ自粛対策は過剰であり、適正化が必要」
「デフレ脱却には積極財政が必須」
といった具体的議論から、
「思考停止に陥った人間はクズである」
「日本の再生・蘇生には、宗教性の回復が必要である」
といった抽象的な次元のものまで、「議論の前提」にすることはできても、当たり前すぎて「議論の対象」とする必要すらない、と同意する事項が多数ありました。
こうした議論は、いわば「正論」というべきものです。
ですが、こうした正論はまったく世間には届きません。
そうなれば必然的に、その正論が通らないという状況は、日本を衰退させる深刻な事態をもたらすことになります。
したがって、本書は結局、「正論とは何か」を明らかにしつつ、「その正論が如何に今、日本で通らなくなっているのか」を宮台氏と様々な論点について議論していく書籍となっているわけです。
そして、その上で、「正論を如何に通すべきか」について、二人でああでもない、こうでもないと議論したわけです。
ただし、この最後の論点である「正論を如何に通すべきか」という点については、この宮台さんとの対談の中で、詳しい所まで十分にお話することができませんでした。
ついては、その当方が考え、そしてこれまで様々な現場で実践してきた「正論を如何に通すべきか」という点を、徹底的に詳しく論じるもう一冊の本を出すことにしたわけです。
それが、もう一冊の書籍、
『人を動かす「正論」の伝え方』
https://www.amazon.co.jp/dp/4295407364
だったわけです。まずこの書籍、ざっとご紹介すると、次の様な目次となっています。
はじめに 正しいことほど伝え方が難しい
第1章 正論とは弱者が強者に立ち向かう唯一無二の武器
第2章 人を動かすために必要な「方便」の使い方
第3章 正論の「組み立て方」と「通し方」
第4章 「敵」を説得する前に「味方」を増やすことが大事
第5章 人を動かすには「諦め」「意地」「媚び」が必要
詳しくは本書を是非、ご一読頂ければと思いますが、要するに本書では、
正論の「つくり方」
正論の「伝え方」
正論による「人の動かし方」
の三点を、「大阪都構想」「国土強靱化」「アベノミクス」等の事例に基づいて、詳しく論じています。
この書籍は、一見「ハウ・トゥ本」の形式となっていますし、実際、そのように活用頂くことも出来るのですが、当方がこの書籍とりまとめにおいて意識したのが、経営学の祖であるピーター・ドラッカーの「マネジメント」論です。
つまり本書は一種の「経営学」の本となっているのです。
もちろん、一般的な経営学は、一個の会社を対象とするものですが、ここでの経営学は「世論」や「霞ヶ関・永田町」といった政治的現場を対象とする経営学となっています。
つまりこの本は「政治における経営学」と位置づけることもできるわけです。
この本にはいくつかのポイントがありますが、当方が特に強調したのは、
第一に、「正論」は、人様に公表する前に、あらゆる反論を想定し、徹底的に練り上げておくことが(したがって、その作業が終わるまでは公表しないことが)肝要であり、
第二に、(そもそも正論が必要な時点で、四面楚歌からの出発となるのだから)「正論」を拡げるには「論敵を説得・論破する」ことを目指すのは単なる無駄であって、それよりもむしろ「仲間を増やしていくこと」が大切であり、
第三に、そのためには、無理矢理押し込む「説得」ではなく、自ずと染みこむような「納得」を引き出すことが肝要であり、
第四に、そのためには、説得対象者に、まるで「最初から、私はそう思っていたんだ」「それは私が決めたんだ」と思わせることが重要であり、
第五に、特にそう思わせるべき対象は、権力を握った「上司」(あるいは、政治権力者)だ、という事を知ることが必須だ、
といった五つのポイントです。
ただしもちろん、この五つのポイントを忠実に実践したとしても、敗れ去るリスクの方が圧倒的に高いのが現実です。
なぜなら―――先にも少し触れた様に―――、正論を語らねばと思った瞬間というのは常に、四面楚歌の状況にあるからです。
四面楚歌、つまり、四方八方、敵に囲まれ、基本的にこちらが討ち死にする寸前……という状況にあるからこそ、正論を言わねばと認識するにいたっているのであり、したがって、最初から敗北することがほぼ決まってしまっているわけです。
だから本書は、「ほぼほぼ敗北し、討ち死にすることが決まっている状況下で、如何にして、起死回生の一発逆転ができるのか?」を考えるものなのです。
大阪都構想はそれが成功した事例で、国土強靱化や積極財政論については、未だ敗色が濃厚ですが、最悪の状況よりは、戦局が幾分持ち直したかに見える、という事例です。
いずれにしても、今、どう考えても「正論」にしか思えない当たり前のことが職場や学校、組織内で通らず、苦虫をかみつぶすような思いでおられる方は、日本中のあらゆる場所で溢れているのではないかと思います。
本書はそういう方々に対する、応援の書籍、です。
是非ご関心の方はこの機会に、『正論の通し方』、ご一読頂ければ幸いです。
https://www.amazon.co.jp/dp/4295407364
……以上、今回は、当方が出版した二つの本を紹介いたしました。
より具体的な政策論や状況認識論にご関心の方は、宮台さんとの共著、
『神なき時代の日本蘇生プラン』
https://www.amazon.co.jp/dp/4828424253
を、その具体的な実践論にご関心の方は、
『人を動かす「正論」の伝え方』
https://www.amazon.co.jp/dp/4295407364
を、そしてもちろん、双方にご関心の方はこの両書、ご一読ください。
では、また来週!
追伸:上記二冊を纏めてからも、今、様々な出版企画を進めています。その中でも今、書き終わったのが、日本は、如何にして滅び去るのか……についてまとめた一冊。そのさわりを下記にて紹介しています。ご関心の方は是非、下記もご一読ください!
『中国は今、アメリカに次ぐもう一つの「日本の宗主国」になりつつある。その実態を解説します。』
https://foomii.com/00178/2022082919431598748
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