日本経済

2022年2月7日

【三橋貴明】緊縮財政とエリート主義

【今週のNewsピックアップ】
土居丈朗教授の着地点
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12724405007.html

伊藤元重教授の正しい転換
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12724601941.html

最近、財政破綻論を主張していた
学者たちが転向し、「着地点」を探る
動きが始まっています。

先陣を切ったのは、浜田宏一教授。
続けて伊藤元重教授。
土居丈郎教授、小林慶一郎教授も
「動き出して」います。

それにしても、そもそもなぜ経済学者の多くは
緊縮財政を主張していたのか。

理由は、もちろんアメリカで勃興した
シカゴ学派に代表される主流派経済学が
「財政均衡主義」だからです。

それでは、なぜ主流派経済学は
財政均衡主義なのか。

底流には、「民主制への不審」と
「エリート主義」があります。

すなわち、ミルトン・フリードマンではなく
ジェームズ・ブキャナンの思想です。

ジェームズ・M・ブキャナン。
アメリカの経済学者・財政学者。
1986年にノーベル経済学賞を受賞。

『アメリカの独立宣言の年(1776年)に、
アダム・スミスは「すべての個人家庭の
管理にみられる思慮分別が、
大帝国の管理運営にとって
愚行であるはずがない」ことをみてとった。

今世紀中頃の「ケインズ革命」の到来までは、
アメリカ共和国の財政運営は、
このようなスミス流の財政責任原則によって
特徴づけられていた。

すなわち政府は、
課税せずに支出してはならないし、
また一時的で短命な便益の供給を
もくろむ公共支出を赤字財政によって
賄い将来の世代を束縛してはならない、
とされた。
(「赤字財政の政治経済学
―ケインズの政治的遺産」文眞堂)』

『政府の肥大化を阻止するためには、
有権者の拡大的な要求を拒否するように、
政治家を束縛する必要がある。

そのために、
ケインズ主義によって取り払われた
「均衡財政」の予算原則を憲法に明記し、
現行の利害を根本から正す
立憲的な改革が必要である。(同)』

実際には、
すべての個人家庭の管理にみられる
思慮分別は、大帝国はもちろん、
供給能力が十分にある国家にとって
愚行の極みです。

政府が「課税せずに支出」した日には、
ネットの資金需要がマイナス化し、
経済はデフレ化します。

というか、97年以降の日本は、
実際にそういう政策(緊縮財政)を採り、
経済がデフレ化しました。

そして、「一時的で短命な便益の供給を
もくろむ公共支出」など、存在しません。

理由は、全ての公共支出は
(別に公共事業に限りません)
民間の投資を呼び込み、
供給能力を引き上げるためです。

単純な社会保障支出、
あるいは給付金の支給でさえ、
「需要」を拡大する効果があります。

結果的に、投資は確実に増え、
供給能力が高まる。

「社会保障等はムダな政府支出だ」

と、主張する人は、
年金や給付金を受け取った国民が
消費する際に、財やサービスが
「何にもしなくても生産される」
と思っているのでしょう。

あらゆる需要は、供給能力の拡大に
つながる可能性があります。

もちろん、どの需要が、
どの供給能力をいくら増やすのか、
など、事前に分かるわけがありません。

とはいえ、需要拡大が
供給能力向上につながることは疑いなく、
だからこそ(特にデフレ期の)
政府は貨幣を発行し、
十分な需要を国民経済に
提供しなければならないのです。

ところが、
「需要拡大が生産性向上をもたらす」
といった当たり前の話が
理解できない愚かな学者たちは、
「政府の財政支出は経済を成長させない」
「政府の財政支出は
生産性向上に結び付く分野に限るべき」
といった、
奇想天外なことを主張し始めたのです。

政府の財政支出は「政府最終消費支出」
「公的固定資本形成」といった
GDPの需要項目です。

政府が需要を拡大すれば、
GDPは嫌でも成長します。

さらには、
事前に「生産性向上に結び付く分野」など、
人間に分かるわけがありません。
それが分かるならば、
倒産する企業はなくなります。

結局、緊縮財政を主張する学者の頭の中には、
「俺は何でも分かる。
財政支出拡大は必要だが、俺が決めた
生産性向上に結び付く分野に限るべきだ」
などと、頭のおかしいエリート主義的な
妄想を言い出すわけです。

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西田昌司本部長です。

◆チャンネルAJER 
「国家の礎は供給能力」(前半)
三橋貴明 AJER2022.2.1
https://youtu.be/r5Z0n4PXbUU

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【三橋貴明】緊縮財政とエリート主義への2件のコメント

  1. この世は既にあの世 より

    私はケインズとかマルクスとか詳しく知りませんけど、無能な経営者は人を低賃金で集める事により対処して来たので、やはり今の高齢経営者は無能だと思います。化石やミイラや馬にいくら念仏を唱えても無駄でしょう。

    無能の頭の中にあるのは「人件費削減」「経費削減」のこればっかりです。

    また日本全国至る所で工事現場を見かけたりしますが、そこに私個人の意思が働いた事など一度もありませんから、私個人の意思とは無関係に行われている公共事業に賛成反対を問われる事にあまり意味があるとは思えません。

    やはりことの発端は低賃金化で内需が縮小したことで、低賃金化すると貯蓄ができませんから転職する時に下手をするとホームレスか生活保護受給者か犯罪者になりかねません。

    なので雇用の流動性という現代社会にそくしたベーシックインカムが必要だと思います。やっぱ賃金が安いと燃えないですよね。

    一部界隈の労働にこだわり過ぎる人の意見は「何を言ってるのだろう?」にしか映りません。そんなことを言い出すと専業主婦は無賃労働か、1人暮らしニートも家事をやっているから労働してますよね。となって、年金暮らしの老人は?と労働にこだわる意味が見出せません。

    賃金と引き換えを労働と呼ぶならば専業主婦や年金は廃止になります。

    家族手当も廃止です。

    なんでしょうねぇ、僕ら一般人ってあまり深く考える必要ないと思うんですよね。自分の仕事や用事があるわけだし。ただ感性を磨いて過去から今がどの様に変わったか?を自覚すれば良いだけでして。

    今の値上げはコストプッシュといわれてはいますが、ならば一旦値下げして値上げをやり直せば正しい値上げになるということですかね?

    コストプッシュ値上げにデフレ脱却値上げが加わると生活が苦しいと思います。

    私個人の対処法は議論や説得ではなくて、やはりケツバットや体罰至上主義ですかね。言っても分からない人間にはそれしかないと思ってます。金の絡む労働によるシバキではなく、体罰や徴兵制によって心身共に鍛え直すことにより人は素直になると思われます。

    政治家は政治ゲームばかりやって日本を滅ぼすつもりなのでしょうか?馬鹿ばかりなので期待感はまるで無いですね。顔論で行くと岸田より世耕が嫌いですかね。あの顔見ると腹が立って来てビンタしたくなりますね。

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  2. この世は既にあの世 より

    コロナで騒いでいますが自粛すると会社が申請を断るという「小学校休業等対応助成金制度」が問題になっています。

    「申請したらクビ」とかもあるようでして、

    やはりベーシックインカム導入ですね。

    さあどうする?コロナを恐れて休園しても親が自宅にいませんwさあ、さあ、さあ、

    ベーシックインカムですね。ベーシックインカムがあればいちいち会社を気にすることはない。

    万が一、コロナで死ぬか?自粛して餓死するか?の二択です。

    相当額のベーシックインカムがあれば?少なくとも餓死はありません。

    ウイルスは永久に変異しますから、永久的な給付金政策のベーシックインカムが必要です。

    子育て世代が板挟みになるのは私とは関係ありません。子持ちの世帯は会社を辞めるか、子供を自宅に1人にして会社行くか?の二択です。

    さあ?さあ?さあ?

    今こそベーシックインカム導入の時期です。

    ワクチンも特に効果がないようですから、さあ?さあ?さあ?どうする?

    一番手取り早いのは「コロナは風邪」と「ベーシックインカム導入」ですね。

    ロックダウンは餓死の観点から不可能ですし、自粛も補償が無いから不可能。子供の行く場所がありません。高齢者は孫から移されると子殺しを断行する。

    こうなって来ると、身内であろうとアホは相手にしない個人主義社会にそくしたベーシックインカム導入でしょうな。

    年金制度は廃止されるでしょう。未来の現役世代が給料から年金5万円も6万円も支払うのは不可能ですから、年金支給開始年齢は80歳とかにするか金額を減らすかしかないでしょうから、年金制度は廃止ですね。

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