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2021年3月30日

【室伏謙一】採算性の概念が公共交通を破壊する

From 室伏謙一@政策コンサルタント/室伏政策研究室代表

 近年、と言っても北陸新幹線の東京―長野間開業以降、新たに新幹線を整備する場合、一部を除いて並行在来線がJR各社の管理・運営から切り離されて、第三セクター化されるようになりました。しかも細切れに第三セクター化されるので、例えば北陸新幹線の場合は4つの第三セクター鉄道会社が生まれました。東北本線も東北新幹線の八戸延伸に伴って、盛岡から先は第三セクター化され、岩手県内、青森県内の東北本線はそれぞれ別々の会社に移管されました。

 現在整備が進められている北陸新幹線の金沢―敦賀間や、北海道新幹線の新函館北斗から先、函館―小樽間の並行在来線も経営分離されることが決まっています。北海道新聞が沿線の首長を対象に行ったアンケート調査によると、存廃自体の判断を前倒しで行うべきとの回答や、一部廃止もやむなしとの回答もあったとのこと。背景としては交通まちづくりへの影響を考えてといったことがあるようですが、本音ベースでは、第三セクター化した場合、沿線の地公体は出資や財政支出が求められることになるので、それを懸念して、ということがあるように思います。

 さて、ではなぜ新幹線が整備されると並行在来線は経営が切り離されてしまうのかと言えば、新幹線にお客さんが流れて並行在来線の利用者は激減し、採算性が悪くなる可能性が高いから、つまり赤字になるか赤字の状態が更に進むことが明らかだからでしょう。民間企業となったJRからすれば、新幹線があればビジネスが成り立つのであれば、新幹線に集中的に投資をした方がビジネスとしての収益性が高いと判断し、ビジネスにならずお荷物にしかならない並行在来線は切り離したいと考えるのも当然でしょう。

 しかし、ここで考えなければいけないのは、公共交通インフラとは何かということです。端的に言えば、この国の社会経済を支えるもの、国民経済にとって必要不可欠なもの、国民の生活、地域住民の生活にとって必要不可欠なものです。つまり、儲かるか儲からないかという判断基準で、その存廃を決めてはいけないということです。別の言い方をすれば、赤字か黒字かという考え方を入れる余地がないということであり、採算性の概念を入れて考えてはいけないということです。

 採算性と言えば、宇都宮市で現在整備が進められているLRT、これは完全に新設なので海外からも注目を集め、フランスの車両メーカーが営業に来たほどです。ところが、総事業費が当初の想定を上回ることとなったために市議会等で大きな問題となっているようです。市民の中にも反対の声が大きいようですが、採算性が取れないことを理由に反対している人が多いようです。

 宇都宮のLRTはビジネスとして、収益を生むために宇都宮市が計画したものではなく、あくまでも市民の移動の利便性の向上や交通渋滞の解消等のために整備が進められているもの。ポイントはそうした社会的な目的がしっかりと実現されるかどうかであって、採算性ではありません。

 しかし、どうも公共交通と言えば条件反射的に「採算性は?」と考える癖が国民の間につけられてしまっているようで、儲からないのなら赤字経営を続けることにしかならないのだから、税金を投入しても垂れ流しにしかならない、廃止しろと、こちらも条件反射的に考えてしまう傾向があるようですね。

 その背景には、国鉄民営化議論の際に様々な場面で、まさに垂れ流された、赤字はけしからん、そこに税金投入はけしからん、赤字なら廃止しろといった見解、意見があり、それらが定着してしまったことがあるように思います。

 そもそも税は財源ではありません。必要不可欠なインフラなのですから、その維持・運営に必要十分な財政支出を国がすればいい、まして国民経済を支えるインフラであれば尚更国の財政支出によって支えるべき、それで終わりなのです。

 それに、災害や事故等が起きた場合を想定して、交通のリダンダンシーを確保しておくというのは、国土強靭化の基本中の基本であり、東日本大震災の大きな教訓の一つでもあるはずなのです。

 緊縮脳に加えてこんなお粗末な状況なので、新型コロナ感染拡大の影響をもろに受けている交通事業者に対する支援も行われず、規模の大小を問わず、多くの交通事業者が窮地に立たされるという結果を産んでしまっているのです。

 今こそ国鉄民営化議論に起因する、誤った「公共交通に採算性の概念を入れる」という考え方を払拭していきましょう。

 公共交通に採算性の概念は不要、です。

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【室伏謙一】採算性の概念が公共交通を破壊するへの3件のコメント

  1. たかゆき より

    無駄の削減

    行き着く先は 己の消去

    すなわち

    自分が生きてる事が 最大の無駄 

    と 落語のサゲにも ございます。。

    無駄の削減を

    声高に叫ぶ方々に申し上げたいことは

    たった 一言

    ジブンの存在こそが 一番の無駄だ♪ 

    (自戒を込めて)

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  2. 大和魂 より

    これ本当に無駄の削減と称して保健所等の削減を単なる思いつきで断行して、その挙げ句にコロナ禍に遭遇したバカ丸出しで間抜け面した吉村洋文や松井一郎らのクズさが際立ちますよね!

    それで結局、自分たちが都合悪くなれば国に蔓延防止対策を要請するバカさぶりに寝ぼけるなと言いたい!

    ところでだ、正論やwillやhanadaの関係者は現在、冬眠してんのか?寝ぼけてんのか?ハァ~お前らこそが、日本を貧困に導く間抜けの元凶なんだよバカたれが!!

    つまりこれらが三島由紀夫の自決の本質なんですよ。

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  3. 直美 より

    室伏先生はふだん「運輸と経済」をお読みですか。旧聞ですけど18年8月号に面白い調査報告が載ってますね(法人の公式サイトからも読めます)。

    ヨーロッパでは公共交通に多額の公金を入れるのが当たり前とは聞いてましたけど、その当たり前がどれくらい当たり前として通用して合意形成なされてるのか、独立採算を一応の建て前として染みついてるわたしらには、いまいちよう掴めへん。

    ところが、このドイツ語圏主要3都市の例を読むと、まあ当局も市民も、多額補助金投入のなにが悪いんやと言わんばかりで、読んで感心してしまいます。

    ベルリン(2013年の輸送分担率27%、コストカバー率99%。99%は補助金算入後の数字で、実際はこれよりかなり低い)。「国民の多くは支出の事実そのものを認識せず、担当者ですら補助金の詳細を把握していない」「(支出に対して)市民から特に異論はない」「(赤字補填は)市民生活の保障の一環」「公共交通拡充は渋滞緩和策でもあるから(多額の補助金投入は)自動車ユーザーの便益にも適うことである」

    ウィーン(2014年の輸送分担率は39%、コストカバー率60%)。「目標のサービス水準を設定したうえで必要な補助金を得ている(日本とは逆か)」「サービス向上を求める声はあるが支出に反対する声はない」「駅に改札がなく誰でも自由に出入りできる公共交通は、病院や学校と同じ公共空間である」「(多額の補助によって)公共交通を確保維持し輸送需要に応じるほかない(ある一定の需要と現状がウィーンには存在する)」

    チューリッヒ(2015年の輸送分担率32%、コストカバー率65%)。「補助金の投入は長年行なってきたことで、市民もそれが当たり前だと思っている」「運賃を気にする人はいても補助金の額を気にする人なんていない」「公共交通が不採算であることは軍隊が不採算であることと大差ない」「コストカバー率の改善を求める声は折に触れて上がるけれども、道路も利用者負担で整備費用を賄いきれていないから、全輸送機関で利用者負担を高めるべきではないか、との議論に至ると、コストカバー率を改善すべきという声は沈静化する」

    もうなんか、すごく健康やわあ。

    この30年余り、サッチャー大先生座右の書スマイルズ『自助論』を読めとか、欧米の個人主義に学べとか、わたしらやわたしらの先輩たちが得意になって言うてきたけど、自助や個人主義が何らの拠り所もない荒れ野みたいなところから出てるもんでは決してないことが、先生の記事読ませてもろてもわかる気がする。MMT以前の基礎的な知的健康の問題かも知れへん。

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