日本経済

2019年11月5日

【添田勝彦】[特別寄稿]川を見ておもうこと

From 添田勝彦@三橋経済塾塾生

去る10月12日、台風19号が東海、関東、
東北を通過し多大なる被害を与えました。
私が住んでいる須賀川市でも阿武隈川、
釈迦堂川流域を中心に大多数の浸水被害が
発生し、死亡者も出ています。
私の家は岩瀬地区で阿武隈川や釈迦堂川
からは距離があり、
特に大きな被害も無かったので
報道されている被害状況を見て驚きました。

私は平成10年に8.27水害を経験しています。

「平成10年8月末および9月に
 福島県内を襲った豪雨・台風は
 阿武隈川の氾濫をもたらし、
 流域に多大な被害をもたらしました。
 8月26日夜から東北地方に停滞していた
 前線が活発化し、福島県南部と栃木県北部に
 局地的な豪雨が長期的にわたり降り続き、
 福島県西郷村の真船観測所では、
 降り始めからの雨量は1267mmに達し、
 一時間当たりの雨量も90mm
 (26日17~18時の同観測所)を
 記録しました。
 この豪雨は僅か6日間で年間総雨量の75%、
 8月の福島県白河地方の平均月雨量の
 6.3倍にも相当する観測史上類のない
 ものとなりました。」

国土交通省東北地方整備局
福島河川国道事務所ホームページより
www.thr.mlit.go.jp/Bumon/J77101/homepage/typhoon/index.html

当時は消防団員を務めていました。
土嚢袋に土を詰め、浸水しそうな家に
運んだりエンジンポンプで排水を
行ったりしました。
地元の土木建設業者も重機を稼働させ、
崩れた河川の堤内にフレコン袋を
設置するなど復旧作業を行っていました。
合羽越しに伝わる雨の冷たさと炊き出しの
ありがたさを今でも覚えています。

あれから20年以上経過しました。
当時重機を稼働させた土木建設業者は
無くなってしまいました。

今回の台風19号が通過する夜、
被害の予想に8.27水害での経験と
比較して思いました。

「あの時よりは雨の降り方も弱いし、
 台風なんて東北に来る頃には速度が
 上がっているから降る時間も短いだろうし、
 どうしても低くて水が溜まる場所は
 あるけども被害も限定的だろう」

雨脚が強くなり家の周りは水で溢れ、
前の道路は川となり、
田んぼは湖になりました。

「ああ想定内想定内、
 あの時もそうだったし」

実際、次の日には天候も回復し
徐々に水も引いていきました。
そして県内の被害状況を確認しようと
ネットを見て驚きました。

広範囲で警戒レベル5、
避難指示が出されていたのです。
命を守る為の行動をと
繰り返し繰り返しわめくラジオ。
堤防決壊を伝えるニュース速報、
その個所は段々増えていく。
そして被害状況を中継するテレビからは
信じられない映像が・・。
なぜここまで被害が拡大して
しまったのでしょう。

ある放送局では阿武隈川が限界を超えるほど
増水した原因を次のように解説した番組を
放送しています。
多数の阿武隈川水系河川が同時に増水し、
同時に一気に阿武隈川に流れた為と。

NHK NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191018/k10012138921000.html
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191016/k10012133601000.html

確かにそうでしょう。
ですが、私は今回の水害を拡大させた
河川増水の原因は他にもあると考えています。

私の家の近くには阿武隈川水系の県一級河川、
滑川が流れています。
年々、土砂が堆積していき見るからに
川底が浅くなっています。
挙句に木が生えたりしています。
まるで、河川の中に川が流れている
ような状態です。
「そのうちここ溢れるな」
常々そう思っていました。

10月19日、東京行の新幹線の窓から
阿武隈川を見てあっと思いました。
そしてある仮説を考えました、今回の
洪水被害を増大させた原因は何なのかを。
それを確かめるべく次の日に須賀川市に帰り、
阿武隈川と支流の複数個所に足を運び、
様子を見てきました。

河川整備の不備だと思いました。
阿武隈川も阿武隈川水系の支流の河川も
土砂の堆積や樹木等あり、
明らかに川の容積が少なくなっています。
かつ水の流れの妨げとなっています。

これ等の堆積土砂と樹木は除去すべきです。
そして土砂の流入を少しでも防ぐべく、
上流に砂防ダムを建設すべきなのです。
これ等の事業は20年ぐらい前までは
定期的に行われていたと記憶しています。
いつの間にか
行われなくなってしまったのです。
つまり水害被害増大の原因は
緊縮財政政策による公共事業の削減で、
土砂堆積を防ぐ対策を行ってこなかった。
土砂堆積を防ぐ対策は無駄
(溜まったらまたやり直しだから
 永遠に続けなくてはならない)
だからと行わないという姿勢を感じました。

でも、これは基本的な
メンテナンスだと思います。
保有している資産のメンテナンスも
出来ない行政組織ってどうなのでしょうか。
自分の物をメンテナンスする気力もない
行政組織ってどうなのでしょうか。

それでもう一つの原因、それは平成の
大合併、市町村合併に代表される
行政執行窓口の削減、なぜなら当選する
市議会議員が中央に集中します。
そうなれば郊外に予算配分が渡らなくなり、
郊外の建設業者は仕事を失う事になります。
結果、郊外の整備事業が削減されて
河川の治水、保水機能が低下します。

分かりやすく言うと阿武隈川ばかりに
メンテナンスが集中し
(実際のところ分かりませんが)
支流は荒れ放題なので負荷が阿武隈川に
集中しパンクするという事なのです。
これがどれほど危険なのかは、
地方の衰退と東京一極集中のような
インフラ整備の地域間格差を見れば
分るでしょう。

誰かが唱えていた集中と選択は幻想なのです。
それらを証明したのが今回の
台風19号による水害被害と考えます。

今回の台風19号による水害に被災され、
犠牲になられた方のご冥福をお祈りします。
また、
一刻も早く被災による苦しみが
消えますように、
健やかな日々が訪れますように
強く祈念します。

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【添田勝彦】[特別寄稿]川を見ておもうことへの1件のコメント

  1. たかっきー より

    >土砂の堆積や樹木等あり、明らかに川の容積が少なくなっています。
    主たる原因はこれですね。(*@_@) 目からうろこです

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