日本経済

2018年12月22日

【平松 禎史】「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」:第五十二話 

From 平松禎史@アニメーター/演出家

◯第五十二話:「Japan as Rollin’ stone」

イギリスには「Rolling stone」ということわざがあるそうです。直訳すれば「転がる石」ですが
コロコロと転がる石には苔もつかない。
転じて
「転々とさまよっていると手に職はつかずロクな人生にならないぞ。」
という意味になるそうだです。それとは別に、ブルースシンガー、マディ・ウォーターズに「Rolln’ stone」という曲がある。
https://youtu.be/4T2hygHu8CIああ おれは
なまずだったらよかったのにと思う
泳いでるんだ
深くて 青い海の底を
そしたら いい女たちがみんな
おれを釣りあげようとするだろう
そうさ 追っかけてくるだろう
そうよ 追っかけてくるだろう
ああ 言うことなしだな

(対訳はこのサイトからお借りしました。http://nagi1995.hatenablog.com/entry/2017/05/27/000313

2番で出てくる「Rollin’ stone」とは、「転がる石みたいな子になるよ」と言った母のことば。

黒人の歌手が歌っていることを考えれば、「転がる石」はネガティブな意味ではなく
どこへでも行ける「自由な意志」をアイロニカルに表しているのでしょう。
最後には「来た道」(アフリカ)に戻りたいと切実に歌っています。

深くて青い海ならば、追いかけてくる「美女(自由の女神)」に捕まることもない。
でも、淡水魚のナマズが海を泳ぐことはできません。
戻りたくても戻れない現実を自覚して、シニカルに表現することで抵抗しているのだと感じる。

奴隷の歴史を持つ黒人の悲しみを、陽気さに隠して表現したファッツ・ウォーラーや、熱くまっすぐに表現したボブ・マーリーなど、自由に対する切実さは、「戦後の平和」を安穏と暮らしてきた日本人には(ボクにも)実感できようがない。

ボクは門外漢だけども、この歌はロックバンドの「ローリング・ストーンズ」命名の由来として有名なのだそうだ。

白人の人たちはどういう思いでリスペクトしているんだろうか。
彼らの「来た道」とはどこなのか・・・。

それはともかく

デフレ転落以降、特にここ6年、日本の経済状況と、文化的な面を見ていると
「Rollin’ stone(ローリング・ストーン=転がる石)」ということばが思い浮かんでしまうのです。それで、調べてみたら興味深いつながりが見えてきた。

「石」「苔」と来れば、「君が代」を思い出しますよね。

さざれ石の巌となりて
苔のむすまで

現代の日本を表現すればこんな感じでしょう。

長年を経て作られた苔むした巌が
没落へと転がりつづけ
粉々に砕けて苔は剥ぎ取られ
無防備で
無機質な
石ころになってしまった。

注意すべきは、現代はもうとっくに粉々の石ころ集団へと没落しているってこと。

新自由主義の本質「今だけ・金だけ・自分だけ」は、確かに自由だ(sure’nough freedom)。
「国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」
「岩盤規制を改革で打ち破る」
「この道しかない」
グローバルビジネスにとって邪魔者になる伝統や文化、生活安全保障を次々と剥ぎ取っていく新自由主義の政治は、日本を「釣り堀」と化す。釣られるのは日本国民だ。

ナマズが自由を得た青くて深い海ではなく、釣り堀ですよ(笑)

自由の女神が糸を垂らす釣り堀に、日本政府はせっせとエサ(改革・規制緩和)を撒く。
なんか変だな、と思いながらも次々と釣り針を咥え込む日本人。

なんてバカなんでしょう。

100年後、日本人の末裔は世界のどこかで「Rollin’ stone」や「Redemption Song」を歌っているかもしれない。

いや、それもないでしょう。

◯エンディング

アルフレッド・ヒッチコック監督は映画づくりの鉄則をこう語っています。
「迷いが生じた時は、すぐ確実な地点に戻ってやり直す〈Run for cover〉ことだ。シナリオのことであろうと、主題のことであろうと、疑問が出てきたり、はっきり見定めがつかなくなったら、すぐ思い切ってまた確実な地点へ戻ってやり直すべきだ。」(『映画術』p185)

人の生き方として考えても至極まっとうな意見ですよね。

安倍政権ではこのような考え方がなされているように思えません。

「迷い」や「疑問」や「見定めがつかないこと」そのものを直視せず自覚できない。
自覚してこなかったから確実な地点がどこだったのかもわからない。
野党側にしても同様でしょう。

「日本の没落」は、さながらディストピア映画のようにくっきりと映しだされている。

◯コマーシャル

テレビシリーズ『ユーリ!!! on ICE』全国40館にて一挙上映!
2019年、1月18日より。
https://yurionice.com/series-marathon/

『ICE ADOLESCENCE ユーリ!!! ON ICE劇場版』
YouTube動画です→ https://youtu.be/-wjrCriMOO8
2019年公開予定!

『平松禎史 アニメーション画集』発売中。
『エヴァンゲリオン』シリーズや『彼氏彼女の事情』などカラーイラストを多数収載。
http://amzn.asia/hetpEPD

画集第二弾『平松禎史 Sketch Book』発売中。
キャラクターデザインのラフや楽描き、国民の祝日の絵「ハタビちゃん」シリーズなど収載。
http://amzn.asia/hUQoCkv

ボクのブログです。
http://ameblo.jp/tadashi-hiramatz/

関連記事

日本経済

【藤井聡】「高潮」の恐怖―――強靱化を「急がない」政治家・公務員は、即刻辞すべきである。

日本経済

【三橋貴明】ルサンチマン国民(前編)

日本経済

【三橋貴明】国を家計に例えるのはやめよう

日本経済

【藤井聡】「プライマリー・バランス黒字化」という「悪行」

日本経済

【藤井聡】「骨太の方針2018」で、デフレ脱却は出来るのか?

【平松 禎史】「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」:第五十二話 への1件のコメント

  1. たかゆき より

    A rolling stone gathers no moss

    犬も歩けば棒にあたる

    このての格言には プラスとマイナス

    二種類の解釈が 存在しますね、、

    全ての事は 最善のために 起こる

    とも 、、、

    高転がりに転がり落ちる 晋ちゃん や

    選挙で ボコボコにされる 方々を 拝見するのも 一興

    Nippon will be back
    で ございます ♪

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です

名前

メールアドレス

ウェブサイト

コメント

メルマガ会員登録はこちら

週間ランキング

  1. 1

    1

    【藤井聡】大蔵省から「財務省」に転換した時、平成デフレーショ...

  2. 2

    2

    【三橋貴明】日本復活の鍵を握るMMT

  3. 3

    3

    【藤井聡】「財務省設置法」は「憲法13条違反」である。

  4. 4

    4

    【三橋貴明】フィリップス曲線の崩壊

  5. 5

    5

    【小浜逸郎】日経記事に見る思考停止のパターン

  6. 6

    6

    【saya】我が故郷 横浜が日本から独立 ?!

  7. 7

    7

    【藤井聡】大阪都構想:知っていてほしい7つの事実

  8. 8

    8

    【藤井聡】財務省は今、安倍内閣下で増えた「自由に使える血税」...

  9. 9

    9

    【三橋貴明】秋篠宮殿下はなぜ「皇嗣殿下」なのか?

  10. 10

    10

    【上島嘉郎】改めて思う、人が生きて働く意味

MORE

月間ランキング

  1. 1

    1

    【藤井聡】「アベノミクス」は、結局、やられてなかった。

  2. 2

    2

    【藤井聡】財務省は今、安倍内閣下で増えた「自由に使える血税」...

  3. 3

    3

    【藤井聡】「財務省設置法」は「憲法13条違反」である。

  4. 4

    4

    【三橋貴明】秋篠宮殿下はなぜ「皇嗣殿下」なのか?

  5. 5

    5

    【三橋貴明】二人の教授

MORE

最新記事

  1. 日本経済

    【小浜逸郎】日経記事に見る思考停止のパターン

  2. 日本経済

    【藤井聡】大蔵省から「財務省」に転換した時、平成デフレ...

  3. 日本経済

    【三橋貴明】日本復活の鍵を握るMMT

  4. 日本経済

    【三橋貴明】フィリップス曲線の崩壊

  5. 日本経済

    【藤井聡】「財務省設置法」は「憲法13条違反」である。

  6. 政治

    日本経済

    【saya】我が故郷 横浜が日本から独立 ?!

  7. 日本経済

    【三橋貴明】大平正芳の呪縛

  8. 政治

    【三橋貴明】秋篠宮殿下はなぜ「皇嗣殿下」なのか?

  9. 未分類

    【竹村公太郎】気象の狂暴化に対する方策はあるか?   ...

  10. コラム

    【上島嘉郎】改めて思う、人が生きて働く意味

MORE

タグクラウド