日本経済

2018年9月5日

【藤井聡】「高潮」の恐怖―――強靱化を「急がない」政治家・公務員は、即刻辞すべきである。

rom 藤井聡@京都大学大学院教授

台風21号が日本列島を襲いました。

各地で高潮による浸水被害が生じ、
https://news.biglobe.ne.jp/domestic/0904/wth_180904_6173542311.html

そのあおりを受けて関西空港が被災して
いつ再開できるか分からない状況になり、
http://newsplusalpha.net/archives/11770893.html

死者、負傷者が数多く報告されています。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20180904-OYT1T50027.html

・・・ただし、今回の台風は、
この被害の何十倍、何百倍になる可能性が
その前日の時点ではあった、
ということで、ここで改めて解説いたしたいと思います。

そもそも、今回の台風が神戸・大阪一帯に上陸したのは
午後2時頃。
https://mainichi.jp/articles/20180904/k00/00e/040/257000c

一方で、昨日4日の満潮時刻は午後5時10分。
https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/tide/suisan/suisan.php?stn=OS

もしも、台風がこの午後5時10分にちょうど
神戸・大阪を通過していたら、
さらに潮位が何十センチも高くなっていた筈です。

だから、もう少し遅く台風が上陸していたら、
被害は確実にさらに拡大していたのです。

しかも、今回の台風は、随分と早い速度でした。

これがもしも、さらにゆっくりと動いていたら
大阪湾上空に台風がもっと長時間滞在し、
高まった潮位がさらに数時間長く、
内陸に流れこんでいたことでしょう。

しかも、それだけゆっくり動いていれば、
さらに大量の雨が大阪・神戸に降り注ぎ、
「高潮」に加えて「洪水」の被害も重なり、
さらにさらに恐ろしい事態になっていた筈です。

しかも、より恐ろしいのが、
上陸時の気圧。

今回、神戸に上陸した時の気圧は、
955ヘクトパスカルでしたが、
https://mainichi.jp/articles/20180904/k00/00e/040/257000c
昭和36年の第二室戸台風は925ヘクトパスカル、
昭和34年の伊勢湾台風は929ヘクトパスカルで、
上陸していたのです!

つまり、今回の台風がさらに強く成長していれば、
さらに低い気圧で上陸していた可能性があったのです!

だからこそ、その前日の時点で筆者は、
さらに恐ろしい被害が大阪・神戸において
生じる可能性を、心底危惧していました。

さらに言うなら、次のような事も考えられます。

昨日4日の満潮潮位は141センチでしたが、
「大潮」の日であれば、満潮の潮位が、
さらにあと4,50センチは高かった筈です。

この要素が組み合わされば、
今回よりも数十センチどころか
さらに1メーター以上も高い潮位が、
大阪・神戸の沿岸域で何時間も継続していたかも
知れないのです。

その結果、今回の被害の何百倍、何千倍もの被害が、
大阪神戸に襲いかかっていた可能性が
リアルに考えられる訳です!

今回、「無傷」で済んだ、
大阪・神戸の方々はたくさんおられるわけですが、
そういう「最悪のケース」では、
それらの方々の中でも、
実際に被災し、家が浸水し、友人や知人や家族を無くし、
そして、自らの命を落としていた方々が、
たくさんおられることとなっていた―――
と、誠に遺憾ながら想定されてしまうです。

そしてもちろん、ルートが少しでも違っていれば、
名古屋や東京、あるいは、それ以外の地域の方々
同じように最悪の被害を受けていたかも知れないのです。

・・・つまり、今回、被災されなかった方々は、
ただ単に「ラッキーだった」だけなのです。

ロシアン・ルーレットの引き金を引いたものの、
たまたま、弾が飛ばなかっただけ、なのです。

・・・

ただし、防災を長年研究してきた研究者や技術者達は、
こうした事態が生ずることを、
そして、そうした事態が生じた場合に
どうなってしまうのかを、
科学技術的に明らかにしています。
http://ur0.biz/LOfL

土木学会の試算では、
「アンラッキー」が複数重なり合って生ずる、
最悪の高潮被害が大阪湾で生ずれば、
経済被害が65 兆円、
資産被害が56 兆円、
つまり合計で121兆円もの想像を絶する水準に
達すると計算されています。

そもそも大阪には広大な「ゼロメーター地帯」
(海水面よりも低い地帯)
が広がっている街ですから、
高潮の被害は超激甚化するのです。

そして今回の台風は、
そうした規模の被害をもたらす可能性があったのです!

だから、今回被災されなかった方々は、
ロシアンルーレットで生き残ったラッキーな方だった訳です。

・・・・

だとすれば、
今回こうした経験をした我々日本人が、
今、為さねばならないことは明らかだと
言わねばならないでしょう。

それは、躊躇無く国債を発行することで進める、
可及的速やかな「国土強靱化」です。

実際、大阪湾では、
約5000億円の高潮対策を施しておけば、
その被害を35兆円減らし、
「半分以下」に減災できることが、
定量的計算から明らかにされています。
http://ur0.biz/LOfL

この経験をしてもなお、
「国債に基づく速やかな国土強靱化の必要性」
が分からない政治家や公務員は、
一刻も早く、その職を辞して頂きたいと、
筆者は心から強く祈念いたします。

さもなければ、
多くの国民が財産と家族と生命を失うことに
なってしまうからです―――。

国民を守る国土強靱化を徹底的に進める事を決意しつつ、
まずは、今回の台風で
亡くなられた方の冥福を、心よりお祈り申し上げ、
そして、被災された方々にお見舞い申し上げたいと思います―――

追伸:
今の日本人の最大の問題は、「危機と対峙しようとしないこと」です。そんな状況を何とか脱し、「危機と対峙」するためにも是非をじっくりとお読み頂きたいと思います。
https://www.amazon.co.jp/dp/B07FVFQ7L2/
https://the-criterion.jp/subscription/

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【藤井聡】「高潮」の恐怖―――強靱化を「急がない」政治家・公務員は、即刻辞すべきである。への5件のコメント

  1. たかゆき より

    右からも左からも

    教条主義の波、、

    現行憲法も財政規律も

    どんな犠牲を払おうとも守り通さねばならぬ。。。

    その強い決意は素敵

    そして日本国中が BIG WAVEで賛同の意思表示

    いい波が来たら そろってPIPE LINEでも 楽しみませう ♪

    返信

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  2. たけちゃん より

    最近の気象庁の仕事は素晴らしい。
    予算付けを大幅に増やして欲しい、無論財源は気象庁が警報出していた時に宴会にうつつを抜かしていたアベシンゾー以下のクソ議員歳費だ!!!!!

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  3. 拓三 より

    藤井氏が仰る通りもし今回の台風21号が秋雨前線と重なり、また満潮時が1時間ずれていれば被害は何倍も膨れていた事でしょう。

    ただ…..怖かったw 初めてや、風に恐怖感じたのわ。

    ただこの恐怖。個で生きているのか他の繋がりで生きているのかで感じ方が変わってきます。論ずると長くなるので控えますが結論的には他の繋がりで生きて要る方が圧倒的に恐怖を感じます。恐怖を大きく感じる事の出来る人間はそれだけ強くなれる幅を持っている事になります。強くなるには備えが大事になります。当たり前の事です。

    つまり強靭化を考えれない人間は個人主義のヘタレ ! で御座います。

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  4. 日本晴れ より

    今朝も北海道で大きな地震がありましたけど。災害対策インフラ整備を急がないと大変な事になるよという天からの警告だと思います

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  5. 博史 より

    藤井先生のご見解はもっともです。
    しかしながら、オルテガ・イ・ガセットの大衆論を踏まえ、かつ現在の日本が「大衆化」してしまった状態とするならば、残念ならが「甚大な災害が生じ、かつ自身が財産と家族と生命を失う」という経験をしない限り、危機と対峙するようになることは期待できないと思います。酷い場合には、「財産と家族を失って」なお、危機と対峙することを避ける(例:「被害を受けたが、国債を増発させて国に迷惑をかける訳にはいかない」と諦める)ことすら考えられます。
    だからこそ、藤井先生のように、「危機を自覚せよ・危機と対峙せよ」と訴え続ける人がどうしても必要なのですが

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