日本経済

2018年8月6日

【三橋貴明】日本が「技術立国」を志向するならば

From 三橋貴明

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ILCの経済効果と「未来への効果」
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ヒッグス粒子は「質量を与える粒子」
と呼ばれています。

リンゴを動かすのは容易ですが、
車を人力で移動させるのは大変です。

なぜか、質量が違うためです。

その質量を生じさせているのが
「ヒッグス粒子」なのです。

元々、存在が予言されていた
ヒッグス粒子が、スイスとフランスの
国境をまたいで建設された
CERN(欧州原子核研究機構)の
LHC(ラージハドロンコライダー)
により発見されました。

もっとも、LHCは
回転型の加速器であるため、
電子と陽電子という質量が小さい
素粒子を流すことはできません。

回転型加速器で
電子や陽電子を回転させると、
放射光を出してしまい、
実験がうまくいきません。

LHCでは陽子を回転させ、
衝突させています。

陽子同士が衝突すると、
様々な素粒子が飛び散ります。

結果、ヒッグス粒子の観測が
不可能になってしまいます。

というわけで、直線型で
電子と陽電子を衝突させる加速器が
「人類」に必要なのです。

電子と陽電子を衝突させる
ILCは、何しろ粒子双方共に
中身がほぼありません。

衝突させたとしても、
対消滅しエネルギーに変わるだけで、
余計な粒子は発生しないのです。

物質が一度消滅し、
純粋なエネルギーから
再び物質が生まれることになります。

全くノイズがない状況で、
エネルギーから物質が生成される
状況を観測することで、
ヒッグス粒子の正体に迫るのが
ILCなのでございます。

チャンネル桜のILC番組
でも語りましたが、
ILCによりヒッグス粒子の研究が進むと、
最終的に人類は「重力の仕組み」
を解き明かす日が訪れることでしょう。

すると、どこでもドアは無理でしょうが、
「タケコプター」は実現するかも
知れないのです。

無論、現時点では人類は重力を
制御できるかも知れません。

とはいえ、将来的には分かりません。

分かりませんが、一つだけ確かなのは、
ILCに代表される技術投資を積み重ね、
研究開発を続けない限り、
人類が重力を超える日は
訪れないということです。

無論、究極的な目的が
達成できなかったとしても、
ILC建設というプロジェクト
からは様々な派生技術が生まれます。

CERNの回転型加速器建設に際し
生まれたWEB、
グリッドコンピューティングのように、
人類の文明を変える技術が
ILC建設から誕生するでしょう。

さらには、ILC建設自体が、
20kmの超電導トンネルの中を
収束したビームを飛ばし、
電子と陽電子を高精度で衝突させるという、
人類が経験したことがない
高度なプロジェクトになります。

現存する技術では、
20kmのILCを
建設することはできない。

ILC建設という
「需要」があって初めて、
長距離超電導トンネルを
「精密」に建設するための
技術が開発されるのです。

日本が「技術立国」を志向するならば、
ILC誘致を辞退するなどという
選択肢はあり得ないのです。

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