日本経済

2018年3月2日

【三橋貴明】若年層失業率から考える日本の分岐点

From 三橋貴明@ブログ

暦の上では、本日(3月1日)から「春」
ということになるのですが、
3月1日は2019年卒業する
大学生の採用活動解禁日でございます。

以前、高崎の
「中小企業の新卒に対する有効求人倍率」
が6倍(!)に達していることを
ご紹介致しましたが、超売り手市場
であることは間違いありません。

『1日、就活解禁 売り手市場で短期決戦に、メガバンク動向が影響も
http://www.sankei.com/economy/news/180228/ecn1802280074-n1.html

平成31年卒業の大学生を対象にした
就職・採用に関する会社説明会の開催などが
1日に解禁され、企業の採用活動が本格化する。

ただし景況感改善と人手不足が続く中、
解禁前に動き出す企業も目立ち、
説明会は4月中旬までには一段落する見通し。

各社は人材獲得に向けた短期決戦を想定している。

また今年の採用活動では銀行の人気低下や、
各社が打ち出す新しい採用活動にも
注目が集まっている。(後略)』

昨年の就活の際に、業界としての人気トップが
「銀行」だっため、思わずクラクラしてしまった
(AIにより職を奪われる可能性が高いため)
のですが、今年は四位とのことです。

みずほ銀行が2026年度末までに、
約1万9千人を人員削減する大規模リストラ策を
公表したことが影響しているのでしょう。

OECD直近データで見ると、
日本の若年層失業率は5.1%。

もちろん、OECD諸国最低です。

アメリカ、中国、韓国、台湾、イギリスなど、
主要国が軒並み二桁である中、
日本の数値は光っています。

ちなみに、ギリシャは47%、
スペイン45%、イタリア38%と、
南欧諸国は相変わらず「国が亡ぶ」
レベルに悪化した状況が続いています。
(ポルトガルは28%)

何しろ、人材は「働くこと」なしでは育ちません。

南欧諸国は、このままでは十年後、
二十年後に、社会の中核を
なすべき人々の半数近くが、
「働いた経験を持たない」
という有様になりかねないのです。

普通に発展途上国化すると思います。

さて、折角ですので、我が国の
高度成長期末期(1970年)から
直近までの若年層失業率をグラフ化しました。

【日本の若年層(15歳-24歳)失業率の推移】

http://mtdata.jp/data_59.html#jakusitu

高度成長期は2%(!)程度で推移したのが、
その後は上昇。

80年代からバブル崩壊までの好況期は、
4%から6%で推移しています。

その後、橋本緊縮財政による経済のデフレ化、
そしてリーマンショックと、我が国の
若年層失業率は「二度」の
上昇期があったのが分かります。

わたくしの少し後ろの世代が、
第一次就職氷河期。

今の20代後半の世代が、
第二次就職氷河期というわけです。

リーマンショックで10%を超すところまで
悪化した若年層失業率が、その後は
民主党政権期、安倍政権期と、
ほぼ同じペースで下がってきており、
直近(17年12月)では4.6%と、
5%を下回っています。

17年11月は4.1%でした。

少子化が継続する限り、我が国の
若年層失業率は下がり続け、
3%台が普通になっていくと予想しています。

特に、中小企業の新卒に対する
有効求人倍率は、6倍どころではない
ところまで上昇していくでしょう。

深刻化する一方の人手不足を少しでも
緩和するため、政府は二度の氷河期で
キャリアに乗り損ねた人々に対する
支援も強化するべきだと思います(あるのかな?)。

さて、低下していく若年層失業率、
深刻化する一方の人手不足を受け、
どのように考えるのか?

「儲け時が来た」「経済成長のチャンスだ」

と捉えるのか、あるいは、

「人手不足でもう駄目だ」

と、マスコミ的な悲観論を叫ぶのか。

多くの日本国民、経営者、政治家が
「儲け時=経済成長のチャンスが来た」と考え、
「日本人」の人材をフル活用し、
生産性向上のための投資を蓄積していけば、
我が国は「経済大国」に戻れるでしょう。

そうではなく、「人手不足なら移民」といった
短絡的な選択をしてしまうと、
生産性向上が抑制される上に、
将来世代に「移民国家」という負担を
押し付けることになってしまいます。

まさに、日本が今「分岐点」に立っていることが、
若年層失業率の一方的な低下から読み取れるのです。

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