日本経済

2016年4月12日

【藤井聡】今こそ、日本を救う「国土学」が求められています。

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授 

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かつて日本は「一億総中流」などと言われ、比較的、経済格差の少ない国だとされていた。その「一億総中流」の経済力によって、大きな経済成長を遂げてきた国だった。

しかし、それも「今は昔」。デフレが深刻化するとともに、経済格差の拡大が問題視されるようになっている。

三橋貴明はその原因を政府が「デフレを甘く見ていること」と「実質賃金を軽視していること」と指摘する。特に「実質賃金」は重要なキーワードであるという。

実質賃金とは物価変動の影響を除いた賃金のことだが、要するにモノやサービスを「買う力」を表している。

この実質賃金が、日本では1997年をピークに下がり続けているという。株価が上昇していたアベノミクス初期ですら、実質賃金(=買う力)は下がり続けていたのだ。

なぜ、日本国民の「買う力」は低下し続けているのか。また、この事実はデフレや格差拡大とどのように関係しているのか。

三橋貴明が、デフレの正体やその脱出法とともに詳しく解説する。

『月刊三橋』最新号
「日本経済格差拡大のカラクリ–実質賃金の軽視が招いた大災害」
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_mag.php

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ホントに日本のデフレは終わりません。それはもう二度と終わらないのじゃないか――と思えるほどです。

実際、内閣府の調査によりますと、今の日本人は6割以上が日本の将来は暗いと感じており、明るくなると予期しているのは一部に限られているようです。
http://survey.gov-online.go.jp/h26/h26-shourai/2-1.html

つまり、今、日本人は、これから日本はよくなることなどなく、状況は悪くなる一方だろうと感じているという次第です。

ご案内の通り、多くの一般の人々は今、そんな日本の暗い見通しの原因を例えば「少子高齢化」に求めたり、日本社会が「先進国として成熟したこと」それ自身に、成長できなくなった原因を見出しているようです。

ですが、こうした認識は単なる思い過ごしに過ぎません。

事実、世界の「高齢化」を迎えた「先進国」は未だに成長し続けている一方、20年にも及ぶ「長期停滞」にあえいでいるのはわが国一国だけです。

つまり、少子高齢化や先進国としての成熟化は、今日の停滞の原因にはなり得ないのは、本メルマガが読者の皆様は、既によくご存じなのではないかと思います。

ではなぜ我が国日本だけが長期停滞に苛まれているのか――その根源的な答えは、日本人がここ数十年、「国土」を蔑にしてきたという事実に求めざるを得ません。

もちろんなぜ「求めざるを得ない」とまで言えるのだ、と訝る読者も多いかもしれません――ついては、筆者はこの度、そんな疑問に答えるべく、

  「国土学」

という書籍を、叢書新文明学の第四弾の書籍として出版することといたしました。
http://www.amazon.co.jp/dp/4779305004

本書は、元建設省の技監・道路局長を歴任された大石久和先生との共著。そしてここで論ずる「国土学」とは、

  「国家の存続と繁栄のために国土の在り方を考える学問」

です。

「国土」とは、私たち国民が住まい続けるための

  「住処」。

言うまでも無く「住処」が不適当であれば、どのような生物も繁栄することなどできません。

それどころか、その存続すら危ぶまれることとなります。なぜなら私たちが暮らす環境、あるいは世界の中には、実に様々な「危機」――自然、外敵、そして崩壊の危機――が内包されているのであり、適切な住処を作り損えば、私たちの繁栄も存続も、瞬く間に損なわれてしまうからです。

知性、理性を携えた我々人間には、だからこそ、自らの存続と繁栄を導く住処=国土の形を「意図的」に考える「国土学」が必然的に求められているのです。

しかも、「感情」を持ち「価値」や「意味」から片時も独立には居られない我々人間にとって、その「住処」は単なる物理的環境以上の意味を持っています。

私たちが生まれた「生家」「故郷」「祖国」――それらはいずれも生涯にわたって重大な意味を持っています。故郷や祖国から遠く離れた地であっても、そこに住み続ければ「住めば都」、特別な意味を帯びてきます。

とはいえもちろん、いつまでたっても自分にとって「よそよそしい」土地もあれば、わずかな月日でしっくりと「馴染む」土地もあります。

つまり私たちは物理的生物であるのみでなく、精神的存在でもあるのであります。そしてそれと同時に、土地そのものも我々にとって物理的な意味を越えた「精神的存在」でもあります。

そして私たちは物理的にのみならず精神的にも、その土地に「根」をはることでようやくあらゆる意味での「安寧」と「安泰」を手に入れることができるのです。

そしてそんな安寧、安泰の帰結としてはじめて真の「繁栄」がもたらされるのです。

つまり繁栄と存続に資する「あるべき国土」を考えるためには、国民国家という一つの巨大な「現象」のすべての側面を包括的総合的に捉え、解釈すること、すなわち「国民国家の現象学」が要請されているのです。

だから本書では、第一部で「国民国家の現象学」としての「国土学」の構図を改めて描写した上で、「国土」(インフラ)とその国土の上で織りなされるあらゆる国民国家の諸活動(スープラ)との間の巨大な循環現象を包括的に「解釈」することを目指しています。

そしてそれを通して、その繁栄と存続のための国土の在り方を考える「思想」とその「実践」を論じます。

特に本書第二部では、わが国日本を対象として、日本の存続と繁栄を企図した国土学を詳らかに展開します。

わが国にはどのような災害の危機に直面しており、そのためには何が不足しており何が必要なのか、この世界的大不況の時代に二十年にわたるデフレに苛まれ続けたわが国に、如何なるインフラがどのように求められているのか――そういった論点を、一つ一つ詳らかに論じていきます。

だから本書は、わが国の「閉塞感」を打ち破るために、今、求められる国土への働きかる実践の在り方がさまざまに指し示すものとなっています。

同時に第三部ではそうした実践が日本の存続と繁栄に資する思想的構図を示していきます。それ故、これら第二部と第三部の議論を双方「同時」に十全に理解することで、思想に裏打ちされた効果的な実践を「日本を救う」ために展開可能となるものと考えています。そしてそれと同時に、その具体の実践によって「思想」の輪郭がより鮮明にかつより深く認識せられ展開されることが可能となる――と、筆者は考えています。

本書がそうした国土学を大きく展開させ、日本国家の活力とあらゆる日本国民の生がますます旺盛とならんこと、そしてあらゆる国民国家の循環現象における思想と哲学が深化される契機を与えんことを、心から祈念したいと思います。

そして、一人でも多くの心ある日本国民の皆様方に、デフレ脱却のための必読の書となるべく著者等がものした本書、是非、お手にしていただきたいと念じております。
http://www.amazon.co.jp/dp/4779305004

どうぞ、よろしくお願いいたします。

PS1 本書出版を記念しまして、大石先生と当方で、ジュンク堂でトークイベントをすることになりました。是非、ご参加ください。
http://honto.jp/store/news/detail_041000018302.html?shgcd=HB300&extSiteId=junkudo&cid=eu_hb_jtoh_0411

PS2 本書「国土学」の「帯」には、本メルマガ執筆陣の施さんと柴山さんからメッセージを頂きました。両先生、ありがとうございました!
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=777815165652762&set=a.236228089811475.38834.100002728571669&type=3&theater

ーーー発行者よりーーー

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かつて日本は「一億総中流」などと言われ、比較的、経済格差の少ない国だとされていた。その「一億総中流」の経済力によって、大きな経済成長を遂げてきた国だった。

しかし、それも「今は昔」。デフレが深刻化するとともに、経済格差の拡大が問題視されるようになっている。

三橋貴明はその原因を政府が「デフレを甘く見ていること」と「実質賃金を軽視していること」と指摘する。特に「実質賃金」は重要なキーワードであるという。

実質賃金とは物価変動の影響を除いた賃金のことだが、要するにモノやサービスを「買う力」を表している。

この実質賃金が、日本では1997年をピークに下がり続けているという。株価が上昇していたアベノミクス初期ですら、実質賃金(=買う力)は下がり続けていたのだ。

なぜ、日本国民の「買う力」は低下し続けているのか。また、この事実はデフレや格差拡大とどのように関係しているのか。

三橋貴明が、デフレの正体やその脱出法とともに詳しく解説する。

『月刊三橋』最新号
「日本経済格差拡大のカラクリ–実質賃金の軽視が招いた大災害」
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  1. ねこ より

    藤井先生、東京ばかりでなく、また大阪でも講演お願いします♪・・大阪民は、W選挙、失敗したなア、と思っているんじゃないでしょうか。

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  2. 拓三 より

    安寧、安泰の住居、土地、国土がなければ『道理』は生まれません。道理とは共同体であり、その共同体で何か大切なものを守る心。いわゆる保守の心であります。そしてその心に直結するのが『母性』であります。どんな悪党でも安寧、安泰の住居の経験があれば(例えば故郷、妻子がいる所など)その土地だけには道理が生まれます。しかし己の行動が道理から外れていることを自覚していればその土地に足を運ばなくなります。なぜ足が遠のくのか、そこに道理があるからです。なんか宗教的でありますが簡単に言えば、浮気したら家に帰りづらいのと一緒です。この感覚は経済と国土の関係にも似ています。金を儲ける『だけ』なら簡単に稼げます。それは『道理』と言うリミッターを外し『法律だけ』で生きれば金は稼げます。例えば薬物です。依存性の高い中毒性がある薬物でも法律に引っ_からなければ合法なのです。何が言いたいかと言うと法律を重視しすぎると法律を守る事が普通で道理を守る事が素晴らしい事になるからです。法律とは共同体における『最低限』のルールであり、それを超えると人間失格と言う意味です。懲役とはそうゆうものです。(その期間人間失格)つまり法律とは最低ラインであり道理とは素晴らしい事ではなく、普通の事なのです。経済と道理は水と油の関係です。経済『だけ』を考えれば自ずと国土(道理)から目を背けます。国土から目を背けると道理はなくなります。残るのは法律と言う最低ラインの秩序であり伝統文化歴史が造り上げた日本の『道理』が一瞬に失われるのです。道理の無くなった社会が政治家を作りその政治家が法律を作りその法律の中で経済活動をする世の中に国土を考える事は不可能でしょう。

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  4. 稲美弥彦 より

    国土学や地政学は何れも重要なものである事は確かに大事だと思う。余談ではありますが、アメリカは現在、落ち目の大国として知られています。それ故にTPPやらAIIBやらパナマ文書で自分達の覇権を牛耳りたいアホな行動を取っているのではないかと思います。そう言えば、日本の貿易の75%がユーラシア大陸だと下斗米信夫先生が言っていました。つまり、残り25%の内、アメリカの貿易は日本の貿易の1割もないと思います。何故なら25%の内、豪州やNZを入れれば15%位は入るからです。そのような考えを持てば、間違いなくアメリカの時代は終わりを迎えると考えられるのです。なので、反米経済が脱景気回復の要因ではないかと思います。

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  5. たかゆき より

    水と 安全と 国土 ♪上記3個は 不断の努力をせずとも日本国民に 担保されているので上記を獲得維持するために国費を投じることは 愚かなことだ と日本国憲法には 記されているのだ (たぶん)そういえば、、PBは 常に黒くなければならない という条文を憲法に記すべきであるという 愚かな方々も いらっしゃいましたっけ。。。

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