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2018年3月1日

【小浜逸郎】日本に言論の自由はあるか

From 小浜逸郎@評論家/国士舘大学客員教授

日本に言論の自由はあるか。
これは相対的な問題です。
一般的に言って、
社会的立場上、言いたいことが言えないというケースは、
山ほどあります。

しかし北朝鮮や中共に比べればずっとましでしょう。
また、かつてに比べれば、
ITの発達普及によって、
より多くの人がSNSなどを利用して、
言論を発信できるようになりました。
マスメディアの流すウソ情報も、
以前より少しは見抜かれるようになったと思います。

しかし果たしてそれで、
言論が社会をよりよくするのに貢献したかと言えば、
首をかしげざるを得ません。

膨大な情報が超スピードで乱れ飛ぶので、
受け手は何を信じてよいやら。
疑心暗鬼にかられることが多くなったのではないか。
また、この情報インフレの状態は、
真に価値ある情報の重みを相対的に軽くしてしまいます。

そもそも私たちは何が真に価値ある情報なのかを
判定する価値尺度を見失っているのではないか。
いくら精魂込めてオリジナルな発信を繰り返しても、
どれもみな同じというように受け取られてしまう。
初めから「ワンノブゼム」という先入観で受け取られるのです。
要するに「暖簾に腕押し」の状態が支配しています。

もちろん、だからといって、
闘いをやめるわけにはいきません。
取り上げる問題の軽重、調査能力や思考能力の卓越性、
これらによって、
ゴミ情報の山から脱け出す戦略が必要です。

また、今の日本では、
露骨な言論弾圧が行なわれているわけではありません。
しかし、
マスメディアの洗脳などは一種の間接的な言論弾圧です。
金銭の力と既得のネットワークの力、
時間帯の支配と情報入手の安直さ、
それらを利用する特定の権力集団の執拗な意思、
これらによって、
ウソを真実と思いこまされ、
理路をいくら尽しても、
聞く耳を持たない人々が大多数を占めているからです。

こうした権力集団は、自分たちの意思を通すためなら、
多少とも邪魔と思える情報に対して、
できることを何でもやってきます。
さらにサイバー攻撃という、
ITの素人では防ぎようのない武器も、
最近では頻繁に使われています。

筆者が少し前に経験した例をお話ししましょう。
筆者は水道の民営化に反対しています。
それで、反民営化論を自分のブログに掲載し、
それをFB画面上で公告しました。
https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/17802bf252decb3fac028a02d88c051b
あわせて、概略同じ趣旨の論考をある媒体に投稿しました。
すると、ほぼ同時期に次のような三つの反応が現われました。

(1)FBのコメント欄にある人からの反論が載りました。
これは、筆者の論点にまともに答えていず、恐ろしく煩瑣な行政資料を駆使して、
結論としてはただ、水道の自由化は心配ないというものでした。
筆者は論点をいくつか絞ってブログ上とFBコメント上で反論しました。
https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/7c294b8c9958967f03113a05b02c0c9b
するとさらに膨大な資料を積み上げて、コメントを寄せてきました。
資料には論点と関係のないものも多数ありました。
結論はただ、自分はこの政策を、憲法に規定された生存権を保証するものとして信ずるというものでした。

(2)他の媒体への投稿は、大幅に改竄され、
日本語として論旨が通らない形になっていました。

(3)ブログ記事は残されましたが、
なんとワードで書いた草稿がそっくり消されていました
ちなみに他の保存データには何ら損傷はありません。

(1)の書き手は、筆者の想像に過ぎませんが、
普通の市民ではなく、
行政官僚に何らかのかかわりのある人の手になるものでしょう。
(2)についてはしかるべく対処して解決しましたが、
(3)については、だれが操作したのか、
何の証拠もありませんからどうしようもありません。

陰謀論にハマるのは好きではないのですが、
これらは偶然に起きた反応とはどうしても思えません。
もし何らかの統一的な意図がはたらいているのだとしたら、
自分も特定の権力から危険視されるようになったのかと、
苦笑を禁じえないわけですが、
筆者自身の小さな「災難」の有無にかかわらず、
何となく不気味な空気の流れを感じずにはおれません。

日本に言論の自由はあるか。
高度情報社会はますます互いの疑心暗鬼を高めていくでしょう。
当たり障りのないことだけを言っている自由は保障されていますが、
事と次第によっては、
言いたいことが言えない状態、
言っても何の効果もない状態、
が深まっていくことが懸念されます。
警戒しつつ、
しかしけっしてビビらず、
発信のための言葉を磨きましょう。

【小浜逸郎からのお知らせ】
●『福沢諭吉 しなやかな日本精神』(仮)を脱稿しました。
出版社の都合により、刊行は5月になります。
中身については自信を持っていますので(笑)、どうぞご期待ください。
●『表現者』連載「誤解された思想家たち第28回──吉田松陰」
●「同第29回──福沢諭吉」
●月刊誌『正論』2月号「日本メーカー不祥事は企業だけが悪いか」
●月刊誌『Voice』3月号「西部邁氏追悼」
●ブログ「小浜逸郎・ことばの闘い」
http://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo

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【小浜逸郎】日本に言論の自由はあるかへの7件のコメント

  1. ホワホ より

    資料をパーッと貼るっていうのは2chで良く見る論法ですね
    適当に検索して出た長い資料を貼って相手に読ませる。
    (無論自分は碌に読んでいない)
    というのが横行してます。

    返信

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  2. 神奈川県skatou より

    >普通の市民ではなく、行政官僚に何らかのかかわりのある人の手になるものでしょう。

    その推測に自分も支持いたします。
    ものごとの説明の仕方というのは、意外と習慣化すると考えますので。

    膨大な「参考」資料をもとに、ステレオタイプな価値基準を盾とし、結論として自分の思い込みや個人的こだわりを、尊大確固たるものに見せるという姿を、現役官僚、その候補生から見て、辟易としたことがあります。

    かれらにとって、資料は?客観性は?という攻撃に敏感ですが、なんのために?ほんとうに価値があるのか?(そして真実は?)、という点については、学生なみに(社会経験が少なく視野が限定される、という意味で)チープだったりします。
    (真実への軽視は彼らの自己神格化からかな?)

    そして「日本を背負っている自負」のせいか上から目線だったりするので、話をする気にもならなかったです。
    (自分は戦わないのでダメですね)

    (2)(3)についても、同様なチープな正義感から、正義の鉄槌のつもりでやったのではないでしょうか。

    民主主義が多数決でなく、それ至る前の議論が肝だと考えれば、情報過多と「価値観の多様化という逃げ」で却って会話が成立しなくなる、ひとの話を聞かなくなる。民主主義の後退、ということが進行しているのかな、と思います。

    「問答無用」の次にくるのは暴力なので、なかなか剣呑な時代になりそうです。
    極左極右?が釘バット好きなのも自己神格化かな。。

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      1. 神奈川県skatouさんへ

        いつも好意的なコメント、ありがとうございます。

        今回は、ことに的確なご理解をいただき、とてもうれしく思いました。

        官僚的な人というのは、資料の山を積み上げることが客観的な権威につながるのだと思い込んでいるのですね。それは、自分固有の判断力を持たない空虚な頭の持ち主であることの証左でもあります。
        やはり同じようなご苦労をなさっているのですね。

        もちろんある判断を下すのに、一定の裏取りは必要ですが、初めに結論ありきで、それを資料の山でごまかすのはよくありません。「客観性」という仮面の後ろに自分を隠すことですから。

        こういう面でも、今後、コミュニケーションの混乱が増大しそうですね。釘バットの流行なども、資料の山によるコケ脅かしと同じで、健全な言論への参加意欲を放棄していることを表していますから、感情的内圧が相当高まっているのだと思います。まさに「剣呑な時代」を予想させます。

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        1. 神奈川県skatou より

          小浜先生、レス大変ありがとうございます。

          もしかすると価値判断をしないのが最も官僚的所以であり、世間なり民意(あるいはステレオタイプ)に従順というのは、褒め言葉なのかもしれない、と、陽気のなか歩きながらふと自問いたしました。

          世の中が「経世済民である。カネより価値である、モノより物語である」となったら、彼らはそれに合致するような資料をあつめて、それの枠内で精力的に仕事をするのかもしれない。なので本丸は彼らというより、言論の中心どころということかもしれませんです。

          ただ先生のおっしゃる通り、言いたいことが言えない状態、言いたいことが何の効果もない状態が深まる昨今の状況は、その打開も骨が折れそうです。

          新しい言葉を創る、に答えがありそうだと自分は思うのですが、そのためには大量の材料、つまり(社会科学系では)人の話を聞く、とくに現場の人から現実の話を、というふうに思いました。

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  3. 赤城 より

    スパイ天国の日本ですしその上に今の日本は政府も官僚も新自由主義勢力に飲み込まれていますから、それこそ隣国の日本弱体化工作員も政府工作員もグローバル売国企業工作員も水道民営化反対論に敏感に反応、工作するのでしょうね。
    しかし元の草稿まで消されたとなるとかなりあからさまに過ぎますから、これは本当に分かりやすいネット工作員の仕事でさらにそういうことをよくやるシナ系の工作かもしれませんね。日本のどこでもそんな工作員は浸透しています。
    そんなことをされたら身の危険も感じるでしょうしスパイ天国日本国内の怖ろしさを感じざるを得ません。なにしろ日本政府も警察も国内で工作員から日本人を守ってくれませんので。
    これからも無理をせずそのような被害があれば公表されるほうがよいでしょう。それが出来なくなるほど脅されれば本当に言論できなくなるでしょうから。

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      1. 赤城さんへ

        ご親切な示唆、ありがとうございます。

        アドバイスに従って、今後これに類することがあれば、なるべく公表することにいたしましょう。

        ただ、「敵」がはっきりと見えない状況では、あまり自分が危険視されていると思いこむのも、夜郎自大な感じがして、慎重を期すべきだという思いもあります。

        あの本多勝一が、自分を大した人物だと思い込み、一種の被害妄想癖から、一時、奇天烈な仮面をかぶっていた時期がありました(笑)。彼は一生ブタ箱に身を隠すべき存在ですが、ああいうふうにはなりたくないものです。

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        1. 赤城 より

          返信ありがとうございます。
          見えないもの相手なのでそのとおりですね。
          工作員やその組織を何とかできるのは同じような工作員とその組織だけですし、そうでなくてもネットでは個人のハッカーまがいの輩やアンチや荒らしがいくらでも活動してますし。
          無力な一人で騒いでいても頭のおかしい病気のような人になるだけですから仕方ないです。

          言論の自由とはそれを保証する国家とその国での言論という主権を守ることのできる力を有している場合にのみ成立するものでしょう。
          外国スパイに一方的にやられ放題で、軍事的に完全な属国状態の外国様の慈悲で生かされることを強制する憲法を奴隷として戴いている国家で言論の主権を守る力があったならまさにそれは神の国ですね。

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