日本経済

2018年2月23日

【上島嘉郎】「移民立国」こそ時代に逆行

From 上島嘉郎@ジャーナリスト(『正論』元編集長)

安倍晋三首相は20日の経済財政諮問会議で、
専門的な技能を持つ外国人労働者の受け入れ拡大に
向け検討を始めるよう関係閣僚に指示しました。

〈人手不足の深刻な介護、農業などの
業種を中心に即戦力となる人材を招き、
少子化で低迷する日本経済の生産性向上につなげる。
検討結果は6月ごろまとめる経済財政運営の指針
「骨太方針」に盛り込む。(後略)〉
(平成30年2月20日 Web産経ニュース)。
http://www.sankei.com/politics/news/180220/plt1802200050-n1.html

産経の記事にもあるように、

〈国籍取得を前提とする「移民」につながらないよう、
在留期間を制限し、家族の帯同も基本的に認めない〉

方針であることが示されていますが、

〈既に外国人労働者数は120万人を超え10年で2倍以上。
なし崩し的に受け入れを拡大すれば、肝心の若者の
雇用機会が失われ〉

かねず、日本人の雇用を増やす環境整備に
優先して取り組むべきことではないと考えます。

三橋貴明さんが再々指摘しているように、
外国人労働者の受け入れ拡大の前に、
日本人の雇用を増やすこと、とくに建設、介護といった
人手不足の業界における待遇改善が先決です。

外国人労働者の受け入れ拡大の議論に
決定的に欠けているのは、日本の「国柄」を
いかに守っていくのかという観点です。

現実に外国人を受け入れるということは、
それをいくら「移民化」しないと言い張っても、
異なる文化や価値観が日本社会に
否応なく入ってくるわけで、その先には
「多文化共生」などという綺麗事の言葉では
済まない現実が待っています。

ただ安価で使い勝手のいい労働力が
確保できるということにはけっしてならない。

思い返せば福田康夫政権時代、
自民党国家戦略本部が
「日本型移民国家への道プロジェクトチーム」(木村義雄座長)
という組織を設け、日本の総人口の一割に当たる
一千万人の移民受け入れをめざすという
政策提言をまとめたことがありました。

中川秀直氏(元自民党幹事長)が旗振り役をつとめ、
50年後の日本の人口が九千万人を下回る
という人口推計をもとに移民受け入れによって
活性化を図る「移民立国」への転換の必要性を
強調したもので、提言には、移民政策の基本方針を
定めた「移民基本法」や「民族差別禁止法」の制定、
「移民庁」創設などが盛り込まれていました。

これに比べれば、安倍首相はまだしも
「踏み止まっている」と言えるのかも知れません。

外国人を労働力としては受け入れるが、
「移民」としては受け入れないという姿勢を貫くには、
今日的な人権や人道を普遍的な価値として
説くヒューマニストたちからの批判を覚悟せねばなりません。

筆者は、人が生きる現実の世の中には
「してはならない約束」があると考えます。

「それはできない場合がある」とはっきり告げるほうが、
「できる」と確約するよりも善なる態度であるということです。

移民や難民に対し、国家としてとり得る態度というものは、
個人の善意や正義では決められないものです。

そこで、日本という国で働きたい外国人がいるのなら、
彼らに日本の文化伝統を尊重し、法を守り、
「良き在留者」として振る舞うことを求めるのは当然で、
そのうえで私たちは「良き在留者」の権利を守らねばなりません。

さらに「帰化」して日本人になることを望むのであれば、
日本への忠誠を誓う、その歴史伝統に敬愛の念を持つ、
新たに良き同胞たらんと努める決意を問うのが当然で、
これを前提としない「移民立国」など亡国への階梯にすぎません。

これを不問にして

「出入国を管理するという思想そのものが
排他的で多文化共生に逆行する」

などという国会議員やマスメディアの論調は、
いかにも日本が能天気にすぎる例証というほかないでしょう。

日本人の特質の一つは、島国での農業共同体という
長い暮らしのなかで「他者を疑う」という感覚に乏しいことです。

労働者であれ、移民であれ、他所からやってくる中に、
「日本を自分たちに都合よく変えてやろうという意図を持っている」
人々のいる可能性を考えない。

彼らはみな「平和を愛する諸国民」なのか。

こうしたことを考えること自体が差別的、排他的であると
非難する人は「結果的にできない約束」をする
偽善性を自らに疑ったことがない。

したがって、「良き同胞」たらんと誓い、努めるのなら、
これは肌色や人種に関係なくフルメンバーとして
遇さなければなりません。

これは受け入れる側として「守らなければならない約束」です。

そもそも言葉も歴史も習慣も文化もまったく異なる
他民族を国内に積極誘致して永続した
国家は歴史に存在するでしょうか。

古代において大版図を誇った「帝国」が
緩やかな統治をした場合それらしきものが
存在したかも知れませんが、
いまの日本にそんな所与はありません。

日本人が二千数百年守ってきた歴史伝統、
価値観を基調にした社会を今後も営みたいと考えるなら、
進むべきは「移民立国」ではなく、日本人の
再活性化であるべきでしょう。

そしてそのための国内投資であるはずです。

移民による活性化は幻想であって、
それを推し進めれば、最終的に日本は
根底から溶解していく気がします。

日本国ではなく、ただの「レットウ」になってしまう。

そういえば、ドイツ在住の作家クライン孝子氏が
産経新聞「正論」欄(平成20[2008]年6月24日付)に
ドイツの移民政策の失敗について書かれ、
いち早く警鐘を鳴らしていました。

ドイツは戦後復興後の経済成長期、労働力不足を
補うため1950年代にイタリア、スペインなど
南欧やユーゴスラビア、旧東独から多くの出稼ぎ
労働者を誘致し、1961年のベルリンの壁構築による
旧東独との国交断絶後は、主としてトルコから
「出稼ぎ」という名の移民を続々と受け入れました。

2005年のドイツの移民者総計は
一千万人あまりで総人口の12~13%を占め、
何より問題なのは彼らの多くが、

〈ひたすら独自の文化を持ち込むのに熱心で、
ドイツのアイデンティティーをかたくなに拒む〉

ことにあるとクラインさんは述べています。

そこでドイツでは従来の寛大な無制限移民策に
ブレーキをかけ、国籍取得条件を緩和(継続滞在8年)
する代わりに、ドイツ語やドイツの憲法に当たる「基本法」、
歴史や政治、社会の仕組み、文化など基礎知識の
テストを導入し義務付け、一部の州で実施に
踏み切り始めたという論述でしたが、クラインさんが
これを書かれて約十年経過したドイツ、さらには
「域内のヒトの移動の自由化」を進めた欧州が
どのような状況に立ち至っているか
いまさら述べるまでもないでしょう。

クラインさんの論考で興味深いのは、

〈時代に逆行するかのように遮二無二「移民立国」構築に邁進する…
そのリスクがいかに大なるものか…移民推進で避けて通れないのは、
国家の根幹にかかわる治安および安全保障にあり、場合によっては
反国家的活動が懸念されることも考えざるを得ない〉

とそれを推進しようとする政権に強い疑念を示し、

〈もしかするとこの「移民立国」とは、ここ数年浮いては消え、
消えては浮かびあがる「外国人地方参政権付与」法案と
妙に連動していて、この法案への世間の風当たりを避ける
肩代わり案として、急遽提案されたのではないか、
と勘操ってしまう〉

と述べていることです。

(クラインさんはすでにこの時点で、
移民推進を「時代に逆行」と書かれている!)

たしかに今でも「外国人地方参政権付与」を
画策する人たちは少なくありません。

外国人への地方参政権付与は憲法上も難しい、
では、「多文化共生」というスローガンのもと
「外国人労働者」の大量受け入れや「移民」から
なし崩し的に…という方法はどうだ、というわけです。

中国から日本に帰化した評論家の石平氏に、
自らが帰化する手続きにのぞんだときの
ことを伺ったことがあります。

「手続きは驚くほど簡素なものになっていて、
問われたのは提出書類が整っているかどうかだけ。
日本への忠誠と国防義務を問われることもなく、
何か宣誓を求められることもない。
きわめて抽象的に”良き市民”であることを
望まれただけで、この日本の現状はとても心配だ」

石平氏はこう語って、国を守るという意識を失うことが
いかに恐ろしいかを戦後の日本人は
わからなくなっていると強調しました。

外国人労働者の受け入れ、とくにその対象が
中国人である場合、中国の国防動員法との
関係を日本政府はどれほど承知しているか。

「できない約束」をして非難を浴びないためにも、
「国柄」の維持と安全保障の観点なき
「移民国家論」の危うさを、私たちはしっかり
認識する必要があると思います。

〈上島嘉郎からのお知らせ〉
●慰安婦問題、徴用工問題、日韓併合、竹島…日本人としてこれだけは知っておきたい
『韓国には言うべきことをキッチリ言おう!』(ワニブックスPLUS新書)
http://www.amazon.co.jp/dp/484706092X

●大東亜戦争は無謀な戦争だったのか。定説や既成概念とは異なる発想、視点から再考する
『優位戦思考に学ぶ─大東亜戦争「失敗の本質」』(PHP研究所)
http://www.amazon.co.jp/dp/4569827268

●日本文化チャンネル桜【Front Japan 桜】に出演しました。
(2月16日〈米中露 新冷戦時代の幕開け/『遠くの声を探して』特別版~「構造改革」は必要ない日本〉)
https://www.youtube.com/watch?v=37dbXYyknZQ

(2月21日〈朝日新聞に見る思想改造の完成形 / 日本は観光立国になれるのか?中国マネーに頼ると…〉)
https://www.youtube.com/watch?v=jkBKrl4K84Y

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【上島嘉郎】「移民立国」こそ時代に逆行への2件のコメント

  1. たかゆき より

    がん細胞

    現行憲法という「免疫抑制剤」を注入され
    「アメリカサマ」という無菌室から
    出られないように されたのが 日本

    無菌室から出なければ 感染症には
    ならないかも知れませんが、、

    政府も後室も 中枢部が 
    アメリカヒトモドキという 
    がん細胞に侵されて 
    まともな 判断が不可能

    そのためか 憲法違反の やり放題

    現行憲法という 免疫抑制剤と
    じゃれ付いているかぎり
    改憲派でも 護憲派でも 根っこは 一緒

    現行の免疫抑制剤を 断ち
    「明治」の 「製品」に戻すしか
    日本の生きる道は ない かと。。。

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  2. 天鳥船 より

    長年我が国で続いていた、年間自殺者3万人超の時代に終止符を打って暫く経ちますが、依然として若年層の自殺率は先進国中最悪レベルにあります。そして、その原因の多くは、経済的な困窮であろうと言われています。にも関わらず、安倍政権は派遣法を改悪し、若者の不安定雇用を更に増やす政策を行いました。そして、今国会で審議されているのは、これまた安倍政権の悲願である残業代0法案。働き方(働かせ方)改革の名の下、裁量労働制とオブラートに包んだ表現で、まるでスマホの料金プランのごとく労働者を定額使い放題で酷使しようとしています。
    そして、移民受け入れ政策・・・
    ここまで来ると、安倍政権は日本人をドンドン殺して、この国を外国人のものにしようとしている、そう思えてなりません。
    以前、別の方の記事のコメントに書きましたが、民主党政権と現安倍政権の違いは、売り渡し先が中国か米国かの違いだけで、どちらも売国奴という点においては、本質的に同じである、と。
    残念ながら、当時の私の危惧は次々と的中しつつあります・・・

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