日本経済

2017年8月29日

【藤井聡】政府が定義する「デフレ脱却四指標」からみて,日本は明確に「デフレ」です.

From 藤井聡@京都大学大学院教授

今の「景気」について,霞ヶ関,永田町の方々と意見交換をしていて驚くのが,「4-6月期の成長率が4%もあるんだから,今,景気はいい感じですよね.だからもう,補正予算なんて,景気刺激策としてやらなくてもいいでしょう」という論調が「支配的」であるという点です.

ですが,「前期比」の「実質成長率」が仮に良好な水準であっても,「前年同月比」で見れば,成長率はまだまだ不十分な水準にあり,かつ,「デフレータ」(物価)について言えば,前年同月比で「マイナス」の水準にあるわけですから,決して「良好」「好調」とは言えないというのが,「日本経済の真実の姿」です.

しかも,政府が正式に設置している,「デフレ脱却の四条件」に照らしてみれば,我が国はまだまだ「デフレ」中であることが,明々白々となります.

そもそも我が国政府は,2006年の3月28日に,「デフレ脱却」を「物価が持続的に下落する状況を脱し,再びそうした状況に戻る見込みがないこと」と定義し,この定義に基づき,以下の「デフレ脱却四条件」を定めています.

①CPI(消費者物価指数)
②デフレータ
③需給ギャップ
④単位労働コスト

この四指標がいずれも,デフレで「ない」ことを同時に指し示せばはじめて,デフレではないと判定することができる,ということになります.

「①CPI」は,消費者にとっての物価指数.この変化率がプラスとなり,上昇していく事を示せば,デフレで「ない」という判断を支持します.

「②デフレータ」も物価の尺度ですが,これは日本国内のあらゆる財とサービスの価格のトータルとしての物価を意味するもので,これももちろん,その変化率がプラスとなれば,デフレで「ない」という判断を支持します.

「③需給ギャップ」は,デフレギャップ,あるいはGDPギャップとも言われますが,需要と供給の格差を言うもので,需要が供給より少なければデフレ,その格差が解消すればデフレでは「ない」という判断を支持します.

「④単位労働コスト」は,要するに賃金(名目雇用者報酬を実質国内総生産(GDP)で割った値).これが上がらなければデフレ,あがってくればデフレで「ない」という判断を支持します.

では,この四尺度の最新動向を確認していきましょう.

まず,「①CPI」については,ここ最近マイナスで推移していましたが,直近では幾分「プラス」の水準(+0.1%)となっています.

ですが,+0.1%程度の上昇率では,力強い「プラス」だとは到底言えません.つまり,CPIは「デフレ脱却」の兆候を示しているわけではありません.

「②デフレ―タ」については前期比ではかろうじてプラス(+0.2%)になっていますが,前年同月比で言えば「-0.4%」という水準.つまり,デフレ―タは「デフレ脱却」の兆候を示してはいないどころか,未だ「デフレ継続中」であることを示しています.

「③需給ギャップ」については,マイナス(つまり,需要不足)の領域を推移していましたが,ようやく「ゼロ」になっています.これはつまり,デフレギャップが無くなった,と言うことを意味しています.

しかし,未だ「プラス」に転じているわけではありませんから,「デフレ脱却」の兆候を示しているわけではありません(しかも「平均概念」のギャップ値ですから,本来の「デフレギャップ」は,未だ存在することは間違いありません).

最後に「④単位労働コスト」については,下記グラフから明白なとおり,(前年同月比での)増加幅が,過去一年以降徐々に縮小し,本年第一四半期にはついに「マイナス」となっています.つまり,単位労働コストの視点から言えば,未だ「デフレ」状況であるという判断を支持しているのです.

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-05-31/OQR1UM6KLVR401#media-4

このように,「デフレ脱却四指標」に基づけば,デフレ脱却だと言うことを示す指標は一つもないのです.

むしろ,デフレータや単位労働コストの視点から言えば,「デフレ継続中」であることが示されているのです.つまり,マクロな視点からの物価(デフレ―タ)も賃金(単位労働コスト)も共に「下落」しつつあるのが,最新のマクロデータが示している,我が国経済の現状なのです.

日本国民,とりわけ,政府関係者は,自ら定義したこの「デフレ脱却四指標」の観点から,日本はまだまだデフレ中なのだということを,しっかりと認識することが,必要です.

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