日本経済

2017年6月9日

【三橋貴明】デフレーションと生産性

From 三橋貴明@ブログ

生産性向上とは、生産者一人当たりの生産量(GDP)を増やすことです。マクロ面から言えば、日本はデフレ経済下でGDPが伸び悩み、生産性が相対的に低迷していました。

ミクロ面では、供給能力に対し需要が不足しているため、そもそも「生産性を高める必要がない」状況だったのが、過去のデフレ期の日本だったのです。需要=仕事が不足している以上、ヒトが余ります。ヒトが余るのであれば、「わざわざリスクがある生産性向上のための投資をしなくても、ヒトを安く使い倒せばいい」という話になってしまいます。

今にして思えば「謎」なのですが、これだけ宅配サービスが普及しているにも関わらず、なぜ我が国は「一軒家」に宅配ボックスがないのか?

デフレでヒト余りになり、再配達による非効率が何となく容認され、一軒家に宅配ボックスを設置する社会的な動機が低かったとしか考えられません。

『宅配ボックス設置で再配達率49%→8% パナソニック、福井で実証実験
http://www.sankei.com/west/news/170608/wst1706080090-n1.html

パナソニックは8日、福井県あわら市内の共働き世帯に一戸建て用宅配ボックスを設置した実証実験で、再配達率が設置前(昨年10月)の49%から8%へ減少したと発表した。実験は、共働きの106世帯に同社の一戸建て用宅配ボックス「COMBO」を設置し、昨年12月から今年3月まで実施。日本郵便とヤマト運輸が協力した。

その結果、期間中に再配達が計1013回減り、配達員の労働時間を222・9時間、車両の二酸化炭素排出量を465・9キロ分削減できたとしているパナソニックは8日、福井県あわら市内の共働き世帯に一戸建て用宅配ボックスを設置した実証実験で、再配達率が設置前(昨年10月)の49%から8%へ減少したと発表した。

実験は、共働きの106世帯に同社の一戸建て用宅配ボックス「COMBO」を設置し、昨年12月から今年3月まで実施。日本郵便とヤマト運輸が協力した。

その結果、期間中に再配達が計1013回減り、配達員の労働時間を222・9時間、車両の二酸化炭素排出量を465・9キロ分削減できたとしている。(後略)』

もちろん、大きな荷物や冷凍・冷蔵品、さらには「ボックスの位置が分からなかった」ために、宅配ボックスが使われなかったケースがあったようですが、それにしても再配達率を49%から8%へと激減することができたのは、大きな成果だと思います。

そもそも、再配達率49%というのが異常に高い水準です。

宅配業の付加価値は、「顧客に荷物を届けること」になります。顧客に荷物が届かない「再配達」は、宅配業の生産者が何の付加価値も生み出していないという話になってしまうのです。繰り返しますが、デフレ期には「ヒト余り」になるため、高い再配達率=低生産性が容認されていたのかも知れません。とはいえ、これからは違います。

インターネットの普及により、ネットショッピングが激増。国土交通省が実施したトラック輸送に関する実態調査によると、昨年度のトラック輸送による宅配便の取扱個数は、前年度比7.3%増の39億5689万個。

航空等利用運送を合算した宅配便の取扱個数は、何と40億(!)個を超える可能性が高いのです。

需要が激増すると同時に、生産年齢人口比率の低下に端を発する人手不足が襲来。このままでは、現在の日本が誇る世界最高の宅配サービスは維持不可能になるでしょう。

ですが、逆に考えると、「このままでは人手不足により、サービス品質が維持できない」状況こそが、生産性を高め、経済成長を達成する機会でもあります。宅配サービスに限らず、人手不足に陥った産業にこそ、「経済成長の種」が埋まっているともいえます。

もちろん、生産性向上のためには企業や政府の技術投資、設備投資も必要です。同時に「社会全体」で生産性を高めていくという意識が、今後の我が国の経済成長のためには「必須」となるのだと思います。分かりやすい例が、上記の「一軒家の宅配ボックス設置」になります。

既存のサービスを「常に存在するもの」と考えず、汗水垂らして働く同じ国民(生産者)によって維持されているという基本を思い出し、社会全体で生産性を高める努力が行われて初めて、我が国は真のデフレ脱却に近づくのだと信じます。

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  1. 網走のじいちゃん より

    疑問に思う事が二つあります。
    ひとつは、実質的な物価上昇は歓迎してよいものか、です。
    ポテチの値段は変わらないけど、中身が減っているので実質物価が上がっているやつです。
    中身を減らすので、ポテチ一袋を製造するのにかかる費用は減らせるでしょうが、その分浮いたお金が労働者に還元されるわけないですよね?なんたって名目の物価が上がってないんですから。費用が下がって企業の利益は増えても、売上の伸びがない以上、内部留保に消えてしまうのでは?利益を増やすための投資ではなく、最低限生産力を維持できるだけの投資、であれば、わざわざ高い金で雇う必要もないし。事態が好転するまでにどれだけ時間がかかるのでしょう。

    もうひとつは、技術革新による労働者一人当たりの生産性向上による賃金の上昇です。三橋さんは「技術革新があって、本来10人でやってた仕事が1人でできれば、その人は10人分の給料をもらっていい理屈になる」とおっしゃっていたと思いますが、
    新技術の導入をするかを決めるのは経営者であり、導入した技術によって労働者一人当たりの生産性が向上したとなれば、その取り分は経営者が主張する事も可能ですよね?というかそうなっているのが今のアメリカであり日本ではないでしょうか。会社の利益は経営者の采配によるもので、そこに価値がある。だからこそ従業員の500倍の給料を持っていくのは正当な報酬である。というような、ふざけた理屈ができているのでは。

    すみません、まとまりがないコメントでした。

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  2. 反孫・フォード より

    >生産性向上とは、生産者一人当たりの生産量(GDP)を増やすことです。マクロ面から言えば、日本はデフレ経済下でGDPが伸び悩み、生産性が相対的に低迷していました。

     藤井教授も書かれていた記憶があるのですが(私の無理解による誤解でありましたら御許しください)、

    “生産性向上とは、生産者一人当たりの生産額(GDP)且つ所得額(GDP)を増やすことです。マクロ面から言えば、日本はデフレ経済下でGDPが伸び悩み、生産性が相対的に低迷していました。”
    と言っては駄目なのでしょうか。
    インフレに戻れば自ずと生産性の指標も向上してしまう面もあるのではないでしょうか。

     安倍総理は底上げと言いつつデフレ脱却とは言い難い政策ばかりがデフレ脱却出来ると考えている節があるように思えてなりません。
    所得格差拡大が拡がらず過剰な消費抑制に向かわないようにするための政策を打ち出し、庶民や企業全体が安物(粗悪)指向に向かわないような底上げにするべきなのでしょうが・・・・。
    安倍総理他誰も彼もネオリベ的なパラドックスに落ちたまんまな気がしてなりません。

     まとまりもなく書き込んでしまい、ツマラナキネシスなコメント失礼しました。

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  3. 入野守雄 より

    人手不足は生産性の向上が必要であることが良く分かりました。宅配便の再配達が約半分を占め、過酷な労働に従事する配達員の労働を軽減し、トラックの走行回数を劇的に少なくし、CO2の排出量が半減するなどに宅配ボックスを設置するのは必要です。しかしその設置費用は何処が負担するのでしょうか?更に人手不足なのに何故契約社員が依然として増加しているのでしょうか?

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