日本経済

2017年3月20日

【三橋貴明】「経世済民」の意味

From 三橋貴明

【今週のNewsピックアップ】
経済発展には「国家」が必要だ
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12256511392.html
農業の市場開放で第一の標的は日本だ
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12257125269.html

この世界に存在する財やサービスは、大きく二つに分類できます。
すなわち、消費者側が「選択可能な財・サービス」と、「選択不可能な財・サービス」です。

選択可能とは、何のことかと言えば、
「別に、今、買わなくても構わない」
と、消費者側が判断できる財やサービスです。

例えば、衣料品や家電、自動車などは、
「今、買わなければ死んでしまう!」
といった類の財ではありません。

衣服が一枚しかない! という人はいないでしょうし、
家電や自動車は、買わなくても何とかなります。
公共交通機関を利用し、テレビを観るのを我慢すればいいのです。

とはいえ、例えば「食料」「水」や「医療サービス」は、そうはいきません。
人間は、定期的に食料を食べ、水を飲まなければ生きていけない生物なのです。

さらには、特定の病気にかかり、「この治療を受ければ、
命が助かる。受けなければ、助からない」といった状況に
なったとき、命を捨てる選択をする人は、まずいないわけです。

食料、水、医療について、我々国民は「買わない」という
選択ができません。だからこそ、政府が一定の規制をかけ、
国民が良い品質、かつ安価な食料、水、医療サービスを
購入可能としなければならないのです。

逆側から見ると、食料、水、医療は、消費者側に選択肢が
ないからこそ、美味しい「ビジネス」になります。何しろ、
少々値段が高かったとしても、消費者は買わないわけにはいきません。

安倍政権は、日本の食料安定供給を実現し、
食料安全保障を担保している農協、全農のパワーを削ぎ、
「新規参入」を増やそうとしています。新規参入する
企業には、もちろん外国企業が含まれます。

さらに、現在の通常国会で、国家戦略特区の農業において
「外国人労働者」の受け入れを可能としようとしています。
外国人技能実習生は、曲がりなりにも「期限」があります。
三年ないし五年という「実習期間」が終われば、
実習生は帰国しなければなりません。

それに対し、「外国人労働者」の場合は期限がありません。
我が国は、寄りにもよって農業分野から、
移民国家化を本格的に始めることになってしまいます。

また、安倍政権は、水道事業の民間事業者への「委託」を
可能とする「水道法の一部を改正する法律案」を閣議決定しました。
さらに、自由診療を増やす「患者申出療養(事実上の混合診療)」が、
昨年4月から始まっています。

何しろ、日本国民の多くは「日本は財政破綻」を信じている
でしょうから、保険診療を増やさない患者申し出療養は、
むしろ支持を得てしまうでしょう。

結果、日本の医療サービスでは自由診療が一方的に拡大し、
日本国は「お金があれば、生命が助かる。お金がなければ、
助からない」アメリカ型の社会に変貌を遂げることになります。
本当に情けないのですが、上記の日本社会を壊す構造改革の
数々は、別に「日本国を亡国に追いやってやる!」といった、
厨二病的な発想で推進されているわけではないのです。

全ては、単なるビジネスです。

結局、ビジネスと経済(経世済民)は異なるという、
基本中の基本を日本の国民や政治家が忘れてしまった
からこそ、現在の事態が引き起こされているように思えます。

経済とは、経営(ビジネス)とは異なる。国民が豊かに、
安全に暮らせる政治を実現することこそが、経済。

日本国の将来は、国民や政治家が「経世済民」の意味を
正しく知ることができるか否かにかかっているのです。

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【三橋貴明】「経世済民」の意味への2件のコメント

  1. 通りすがり より

    デヴィット・イーストンは、政治とは「社会に対する価値の権威的配分」であると言っています。

    つまり集めた税金を、軍(人)に振り分けるのか、医療(従事者)に振り分けるのか、農業(従事者)に振り分けるのか…を考えるのが政治家の仕事でしょう。

    日本の政治家はどう見ても、「その仕事を自分がしなければならない」とは思っていないように見られます。
    何故そうなのかと言えば、単純に政治家に教養が足りないからです。
    これは当然、民進党や共産党にも当てはまると思います。

    さて、ここで無教養スリーアウトを考えてみたいと思います。
    1.グローバル化は正しい。人物金を国境を超えて自由に行き来させると、世界経済は良くなる。
    2.財政健全化は、早めに達成すべきである。日本には多額の借金が存在するため、無駄使いは控えるべきである。また増税は良いことである。
    3.公営機関の民営化は正しい。政府は小さいほど、国民経済は良くなる。自由化を規制緩和を推進し、市場原理に任せれば経済はベストの状態になる。

    これが揃うとスリーアウト、チェンジという感じです。
    ではこの3項目について、1アウトもつかないという政治家を探してみようとすると、相当少ないんじゃないの?という感じがするのですが…与党野党問わず。

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  2. 神奈川県skatou より

    三橋先生のご活躍を熱く熱く応援しております。

    >結局、ビジネスと経済(経世済民)は異なるという、
    >基本中の基本を日本の国民や政治家が忘れてしまった
    >からこそ、現在の事態が引き起こされているように思えます。

    まったく完全に同感であります。
    経世済民、また国家のなせること(非合理含め)を知らない、頭に入ってないのではとすら、思われます。
    というのも、これらに確固とした認識があれば、政治的取捨選択で、もっと違う形になるはず、と思われるのです。

    走っている間のシステム更新は難しいものであり、支持率も好調な今、現政権の補修パッチはどう可能なのか。難題かもしれませんです。

    ただ、政治家というのは風を感じられる生き物だとすれば、人々の語る言葉が変われば変わるのではと、思います。

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