日本経済

2016年8月24日

【三橋貴明】経済政策の短期と長期

From 三橋貴明@ブログ

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【PR】

2016年7月12日、
南シナ海に対する中国の領有権主張や人工島の建設などが国際法に反するとして、
フィリピンが中国を相手に提訴した裁判で、オランダのハーグにある常設仲裁裁判所は、
中国の主張に法的根拠がないとの判断を示した。

これに対して、中国は強く反発し、強硬な姿勢を崩していない。

また、8月6日には、日本の尖閣諸島周辺に中国の漁船約230隻が侵入し、
同日、中国の爆撃機が南シナ海を飛行するなど、挑発的な行為を続けている。

この先、中国の国際的立場はどうなっていくのか。それによって、日中関係はどうなるのか。

三橋貴明が、まずは現状を冷静に分析し、日本の強みと中国の弱点を炙り出し、日本が取るべき道を探っていく。

月刊三橋最新号
「日中冷戦〜誰が日本を追い詰めたのか?」
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_mag.php

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 ロイターで「経済政策は早期執行が必須、来年も10兆円の対策を」と語っていらっしゃる方がいて、
「何とまともな・・・」
 と、思ったら、藤井聡先生でした(^ ^;)

『経済政策は早期執行が必須、来年も10兆円の対策を=藤井内閣官房参与
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N1B43PP?il=0
 藤井聡内閣官房参与(京都大学大学院教授)は23日、ロイターのインタビューで、政府が今月決定した事業規模28兆円の経済対策について、15兆円と試算されるデフレギャップを埋めるためにはできるだけ早期に執行することが必須であり、来年度、再来年度も10兆円規模の対策を打つべきだと述べた。日銀に対しては、現在の金融政策を継続しつつ、マイナス金利について総合的に検証してほしいと要望した。 
 藤井氏は、安倍晋三首相の経済政策のブレーンの1人。
 同氏は今回の経済対策について、できるだけ早期に執行し、デフレギャップが完全に埋まるまでは財政支出をし続けることが重要であるとし「この2つが満たされれば、今回の経済対策はデフレ完全脱却に向けての重要な一歩となる」と述べた。これまでの経済政策では、支出の速度が十分ではなかったと指摘した。
 大規模な財政支出に財政規律の面から懸念の声があることに関し、「プライマリーバランス(PB、基礎的財政収支)については、2019年までは考慮せず、デフレ完全脱却を果たすための財政政策をしっかりやることが、2020年のPB黒字化にとって必要条件」だと述べた。(後略)』

 デフレギャップ15兆円の根拠は、先日の経済塾で取り上げましたが(インターネット受講の皆様、もう少々お待ちくださいませ)、ソシエテ・ジェネラル証券のチーフエコノミスト会田卓司氏が開発した「ネットの国内資金需要」に基づいているのだと思います。

 ネットの国内資金需要とは、企業貯蓄率と政府貯蓄率の合算で産出されます。現在の日本は企業貯蓄率がプラス化しており、それを政府の貯蓄率のマイナスではカバーできない状況になっています。その差が、対GDP比で約3%。

 現在の日本は、国内の資金需要が15兆円ほど不足している状況にあります。すなわち、デフレギャップ15兆円です。

 今回の経済対策は「事業規模」28.1兆円とされていますが、確実にGDPを生み出す政府支出(いわゆる真水)は、16年度に6兆円強でしかありません。普通に考えて、デフレギャップは埋まらないでしょう。

 もちろん、やらないよりはやった方が良いに決まっていますが、
「真水を可能な限り少なくしたい」
 という財務省の意向をはねのけることは、完全にはできなかったようです。

 そういえば、クルーグマン教授がNYTのコラム(Abenomics and the Single Arrow)で、
『Never mind the third arrow: what we need is the second.(決して三本の目の矢に注意を払ってはならない。我々が必要とするのは第二の矢(財政出動)である)』
 と、断言していました。

 第三の矢とは、「structural reform」すなわち構造改革のことです。代表的な構造改革は、もちろん規制の緩和です。

 一昨日のエントリーでも書きましたが、
「需要が拡大しており、供給能力が不足しており、規制を緩和することで生産性向上のための民間の設備投資を誘引することができ、かつ安全保障に悪影響を与えない」
 のであれば、規制緩和は現在の日本にとって正しいソリューション(解決策)になります。

 経済産業省は、2030年までの技術の普及を念頭に、
■交通(自動運転やドローンの活用)
■健康(介護ロボットの普及)
■ものづくり(ITとロボットの活用)
■暮らし(家電の稼働状況に応じた発電)
 の四分野について、規制緩和について工程表を作るとのことです。

 逆に言えば、この手の新技術が普及し、国民生活に影響を与えるのは「2030年」という話です。例えば、運送業界の人手不足を受け、
「運送サービスは自動運転に担ってもらえばいいのでは」
 と、目の前の人手不足から目をそらすような反論をされることがあります。

 もちろん、将来的に運送サービスの人手不足が自動運転やドローンといった技術で補われることは否定しませんし、それを解説するためにわざわざ一冊(第四次産業革命)書いたくらいですが、問題になっているのは「将来の人手不足」ではなく「現在の人手不足」なのです。

 運送サービスの「現在の人手不足」は、サービス価格と賃金の引き上げで乗り切るしかありません。

 何を言いたいのかといえば、経済政策について「短期と長期をきちんと分けて考えましょう」という話です。藤井先生のインタビューにもありますが、例えばPBならば、
「長期(2020年)のPB黒字化を達成するため、短期(2019年)までのPBは無視しましょう」
 という考え方ですね。もちろん、PB目標などというナンセンスな目標は破棄するべきだと思いますが、政治的にできないのであれば、せめて「短期は無視する」必要があります。
 あるいは、財政政策の場合、やはり藤井先生が書かれている通り、
「直近のデフレギャップを埋める財政出動と、未来への投資として、新幹線、高速道路、港湾整備、想定される震災に対応する投資」
 は、やはりきちんと分ける必要があります。リニア新幹線建設のために財政投融資で資金をJR東海に貸し付け、名古屋−大阪開業を2037年まで前倒ししてもらったとしても、実際に工事(の前のアセスメント)が始まるのは2025年くらいでしょう。

 もちろん、それでもリニア新幹線は建設しなければなりませんが、少なくとも「2016年度のデフレギャップ」を埋める効果はないのです。

 現在の日本は、デフレによる需要不足と生産年齢人口比率低下による人手不足が「同時進行」するという、まことに珍しい状況にあります。だからこそ、国民そして政治家は、各政策の効果の「期間」について具体的に考え、推進していかなければならないと思います。まずは第一歩として、各種の経済政策について「短期と長期を切り分ける」から始めてみましょう。

ーーー発行者よりーーー

2016年7月12日、
南シナ海に対する中国の領有権主張や人工島の建設などが国際法に反するとして、
フィリピンが中国を相手に提訴した裁判で、オランダのハーグにある常設仲裁裁判所は、
中国の主張に法的根拠がないとの判断を示した。

これに対して、中国は強く反発し、強硬な姿勢を崩していない。

また、8月6日には、日本の尖閣諸島周辺に中国の漁船約230隻が侵入し、
同日、中国の爆撃機が南シナ海を飛行するなど、挑発的な行為を続けている。

この先、中国の国際的立場はどうなっていくのか。それによって、日中関係はどうなるのか。

三橋貴明が、まずは現状を冷静に分析し、日本の強みと中国の弱点を炙り出し、日本が取るべき道を探っていく。

月刊三橋最新号
「日中冷戦〜誰が日本を追い詰めたのか?」
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_mag.php

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【三橋貴明】経済政策の短期と長期への6件のコメント

  1. 拓三 より

    三橋氏が言う>サービス価格と賃金の引き上げで乗り切るしかありません。は、移民などの人口増加により価格、賃金上昇の妨げになるポンコツ政策をするな!と言うことであり、政府が援助する訳ではありません。

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  2. 神奈川県skatou より

    政府により脱デフレが終わったあとになって、脱デフレビジネスへの4投資を考える経営者は遅すぎ、間抜けすぎのはずですから・・

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  3. 學天測 より

    訂正>久野の存亡を分ける部分があるといっていい。国家の存亡を分ける部分であるといっていい。>カトリックをはじめとし千年以上も脈々と組織としていこ残り、カトリックをはじめとし千年以上も脈々と組織として生き残り、すみません。まあ、とにかく、東の果ての島国で特殊な一時代にすぎない矮小で狭量な小市民な価値観を出来うる限り早急に改めないと話にならない。常に世は戦場で力勝負の大陸の価値観を理解できない連中が生き残れる時代ではないでしょう。

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  4. 學天測 より

    >運送サービスの「現在の人手不足」は、サービス価格と賃金の引き上げで乗り切るしかありません。顧客がそれを認めるのであれば、やればいいし問題はなぜ政府がやるべき公共投資の様な問題と特定の産業の労働者の賃金の問題を並べるのか?憲法で保障された個人や自治についてどう考えるのかですね。己で利益を確保できない連中はそれを得る資格もない。己で得る事が出来ないのに管理が出来るわけもない。得られないのは力がないからで道理で常識でしょう。力無きものが無理に所有すれば自分だけでなく、周囲を巻き込んで返って余計な不幸を招くだけ。そうやって歪な労働環境がバブル崩壊後、その様な政治介入で形成され、失敗破綻し、大手企業は潰れ、今後大量の貧困層を支える我々はそれが金銭で済めばいいが、多大なコストを支払わされる事になる。所有(権利)について、政府に与えられて当然と勘違いした駄目な連中を優遇した結果、国土の守りですら危うくなるかもしれない。只でさえUNICEFに世襲国家だと指摘されてカーストのインドと並んでる不名誉があるのだから嘘の話が本当になる生き馬の目を抜く国際社会で最も不名誉になる人道的な配慮は配慮しすぎても悪い物ではないでしょう。只でさえ我々は東京裁判で人道に対する罪を戦犯がかぶり、大量の人間を虐殺した国家にされている実情をお忘れなく。短期、長期とかいう話ではなく、ひょっこりひょうたん島の様に国際社会に生きているというリアリティというか国際政治的な配慮がどうにも乱暴すぎると感じますね。そして、2030年なんてすぐだ、人材不足を言うなら、それこそ長期的にどうなるかわからん産業に人を極力、廻すべきではないでしょう。さらに言えば短期と整合性の合わない、おかしな長期ヴィジョンは藤井先生の言う様に否定されて無視されてもいいが、それは長期ヴィジョンが短期の成果から中期、長期へとつながってない不整合から起こるのであって、長期ビジョンを無視していいと考え方はちょっと理解不足だと思われますな。あくまで短気は長期ヴィジョンが実現可能な準備期間としてとらえねばならないし、その両者が衝突するなど有り得ない話。全体の目的がおかしいからそうなるのでしょう。実務上、手段が目的化していると大抵そうなる事が多かったですね。少なくとも家なんて物であり道具でしかないし実現のための手段なのだから、それを所有するだけで幸福が完成して終わってしまうような、ポリス政治以来の人間としての定義が成立してない手段が目的化した自分の家の周りの近所しか目に入らないような矮小な私的事柄とワイドショーネタしか関心がない小市民の集まりでは成り立たないでしょう。今後、国家を本気でやる気があるならね。けれども賃金を見てくる人材が定着するかは別次元の話でしょうし、だいたい人事はそんな単純ではないでしょう。結局、この話は特定産業の賃金を上げる話ありき、その先には悪しき公務員、サラリーマンといった中間層を優遇する、失われた2度と来ない楽園へのノスタルジーが垣間見えますな。国内で人手不足であろうが、ボーダーレスな時代で有る事は変わりようがなく、最終的な製品やサービス価格においそれと転嫁できる環境になる事はないでしょう。今や人類の有り余る供給能力とそれに反比例する水や食料、資源の希少性や価格の高騰はいうまでもなく、だからこその需要政策とその弊害のそれらのインフレが世界的に台頭するセンシティブな部分がある。賃金の問題はやはり企業や産業の戦略的な優位性が齎すものであり、その様な社会は公務員、サラリーマンといった中間層を無理に優遇する様な横並び主義のステレオタイプで無難な右へならえの全体主義的な価値観の社会では実現しない。只でさえ人不足になるのなら尚更、その様に堕落しない様に徹底した配慮が社会的に求められるでしょう。やはり己が起業し、自らで切り開いていくのを当然とした社会で公務員、サラリーマンは卑怯であると言う価値観がないとというか、そんなの当たり前だ。そう言う自治の精神がないから組織内に居ても事なかれ主義で積極的な経営参画もしない処かアパシーで学ぶ事もしないで邪魔になり癌になる給料泥棒になり、さらに売れば借金しか残らない住宅ローンを抱えれば尚更それに拍車をかけるでしょう。その合法的な泥棒を今後も政府が支援するなどもはや悪夢としかいいようがない。さらに言えば今後は会社だけでなく地域でも自治が求められる時代。自由民主主義は多様な価値観を前提に成り立つ物。本当にこの国は配慮してはいけない連中に配慮しすぎて精神的にとことん腐り果ててしまったと思いますね。政府の配慮や支援は独立して自助、自律しようとする人社会の先頭を担おうという気概を失わない人々、しようとしても出来ない弱者への人道的な配慮これに絞るべきで、兆戦から逃げている不良資産の中間層にそれこそ投機すべきではないでしょう。そんな余裕はもうないですよ。四半世紀前と違って、BRICSみたいな新興国だけでなくNEXT11が勃興して競合するライバルが増える壮絶な時代だ。戦略的優位を確保するなら彼らとバッティングしないような知的創造的な独立独歩の価値観が大事だ。久野の存亡を分ける部分があるといっていい。天才は独創的であり、クライセヴィッツは戦場を決するのは天才だといるはず。ノスタルジーは捨てて、歴史から学ぶリアリティのある価値観を持たねばならないでしょう。日本人は聖書を読んで、それが宗教書ではなく、論理の塊である事を理解するぐらいの構造転換が必要でしょう。カトリックをはじめとし千年以上も脈々と組織としていこ残り、ある意味で東の果てで孤立して地勢的な優位で生き残って来た我々以上に安定し続いている存在を決して侮らない事だ。

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  5. たかゆき より

    デフレギャップは 旨い♪デフレギャップが継続すればするほど己の財布が重くなる、、そんな方々が 大勢を占めるかぎり ギャップは埋まらない(たぶん) と推察します。。。ちなみに 総理、、彼の 「言」と「動」は雪と炭ほどにも 異なるとぼくは 認識しているのだ ♪ 

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  6. 神奈川県skatou より

    三橋先生のご活躍を益々応援しております。企業経営者はコストカットと利益主義、キャッシュフローは大事だと思いますが、それだけ、というわけでもないようで、本当に洞察力のある、あるいは嗅覚のある方々はビジネスの陳腐化を避けるため常に新しい挑戦をしなけらばならず、その挑戦はつねに不確かであり、理屈でなく、数字でもないと知っていると思います。合理的に会議で決まるような答えではなく、だれかの強い想いやこだわりを勇気をもって採用する、それは無駄かもしれないのですが、元某H社の小林三郎氏の言葉を借りれば、「役員は若いひと(の提案)の中身でなく態度を見ろ。」と。そしてなんども来るやつには「騙されてやれ」という性質のものだと思います。15兆円の不足のところ、政府がぜんぶ頑張る必要があるかは、もしかすると風向きに敏感な方々がデフレ継続で座して死を待つよりもと、動く可能性も無くはない。せめて7割ぐらい政府が頑張ればもしや、と、自分は感じます。

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