From 三橋貴明@ブログ
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6月23日(木)にイギリスで行われたEU離脱を問う国民投票。
大多数の予測を覆し、離脱賛成派が51.9%、反対派が48.1%と離脱派が上回った。
多くのマスコミはイギリスのEU離脱の判断を
「愚かな衆愚政治」「イギリス人はこの選択を後悔することになる」などと批判した。
しかし、三橋貴明は「そうではない」と断言する。
月刊三橋最新号
「イギリス激震〜英国の没落から日本が学ぶべきこと」
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_mag3.php
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さて、巷で話題の「ヘリコプターマネー」ですが、タイミング良く青木先生が解説して下さっています。
【青木泰樹】ヘリマネとリフレ派
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2016/07/09/aoki-28/
マネタリズム。貨幣は中立である。などなど、金融政策を重視する「経済学」の元祖は、ご存じミルトン・フリードマンです。フリードマンは大恐慌を研究し、
「FRBがマネタリーベースを十分に増やしていたら、大恐慌は回避できた」
との結論をまとめました。
が、現実には貨幣は中立ではありませんし、マネタリーベースを増やしたところで、デフレを回避もしくは脱却できるとは限りません。と言いますか、今の日本の↓この惨状を見て、デフレは貨幣現象だの、MBを増やせばインフレになるだの、貨幣は物価に中立だの主張する人は、まさしく「思考停止」以外の何ものでもないです。
【日本のマネタリーベース(左軸)とインフレ率(右軸) 】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_53.html#MBCPI
MBが増えたとしても、銀行から民間への貸出が「十分に」増えなければ、物価は上昇しません。貸し出しが増えたとしても、モノやサービスが「十分に」購入されなければ、やはり物価は上昇しません。
何しろ、物価とはモノやサービスの価格であり、インフレとは物価が上昇することなのです。どれだけMBを拡大しようとも、モノやサービスが十分に買われなければ、物価が上昇するはずがないのです。
といった批判にさらされたフリードマンが、
「ヘリコプターで実体経済の上空から現金をばらまく」
といった寓話で、「モノやサービスの購入」にお金を回す屁理屈を思いついたわけですね。
もっとも、ヘリコプターからお金を撒こうが、国民一人一人に「給付金」としてお金を配ろうが、それが「モノやサービスの購入」に、十分に回らなければ、デフレ脱却は果たせません。
結局、デフレ脱却のためには「政府がモノやサービスを購入する」ことで総需要を創出する財政出動が最も確実なのですが、「お金を発行すればデフレ脱却できる」「給付金としてお金を配ればデフレ脱却できる」といった主張が後を絶ちません。
ちなみに、わたくしは「金融政策は無駄」、あるいは「給付金は無駄」と言いたいわけではありません。やればいいんですよ、大いに。とはいえ、主体となるのは「デフレ対策として確実」な、政府によるモノやサービスの購入、つまり財政出動による需要創出でしょ、と言いたいだけです。
7月13日の産経新聞に載った「ヘリコプターマネー検討 政府 日銀資金で財政出動」は、田村秀男先生の記事ですが、これは若田部氏の、
『若田部氏の場合は、先述の連載コラムの中で「貨幣を増やし、増えた貨幣が恒久的に残ること」をヘリマネと定義しています。
またヘリマネと量的緩和の違いについて、「量的緩和はインフレ目標を達成すれば貨幣を回収することを想定している。この将来の回収の有無が両者の相違である」と述べています。(青木先生のコラムから引用)』
を意味しているのだと思います。
要するに、増えに増えてしまったMBについて、将来的な回収(=国債売却)を否定し、日銀と政府が協定を結び、半永久的に保有する「国債買い切り宣言」をしてしまえば、政府の借金が名実ともに消える、という話なのです。
積み上がったMBの処理の話ですが、青木先生がご提案されている「長期無利子国債」と発想は同じですね。政府が長期無利子国債を発行し、日銀の保有する国債と交換してしまえば、やはり政府の借金が名実ともに消え、膨れ上がったMBを「調整」することができます。
『ヘリコプター・マネー「政府、検討せず」
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20160714-OYT1T50005.html
菅官房長官は13日の記者会見で、金融政策と財政政策を一体的に進める「ヘリコプター・マネー」政策について、「政府が検討しているという事実はない」と述べた。
政府・日本銀行が「ヘリコプター・マネー導入を検討しているのではないか」との市場の臆測を否定したものだ。
ヘリコプター・マネーに明確な定義はないが、政府が景気刺激のために、ヘリコプターからばらまくようにお金を配る政策を指す。具体的には、中央銀行が国債を政府から直接引き受ける案などがあるが、通貨の信認が失われて極端なインフレを招くとして政府・日銀内では慎重論が根強い。
ただ、28日からの日銀の金融政策決定会合を控え、市場は日銀の「次の一手」を注視している。ヘリコプター・マネーを巡る議論は今後もくすぶり続けそうだ。』
読売の記事にもある通り、ヘリコプターマネーに「明確な定義」はありません。定義が不明確な「ヘリコプターマネー」という言葉で煽るのは、これは問題だと思います。一般の方が「ヘリコプターマネー」と聞くと、どう考えても、
「ヘリコプターからお金を撒く」
と、受け取ってしまうでしょう。普通に「国債買い切り宣言」とか、誤解のしようがない用語を使うべきだと思うのです。
ちなみに、わたくしは「国債買い切り宣言」も「長期無利子国債」も否定する気はないのですが、いずれにせよ「政府の財政出動による需要創出」がなければ、デフレ脱却できないことに変わりはありません。
果たして、新聞紙上で「ヘリコプターマネー」という言葉を読んだ方は、上記で解説した通り「正しく」認識することができたでしょうか。
ーーー発行者よりーーー
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6月23日(木)にイギリスで行われたEU離脱を問う国民投票。
大多数の予測を覆し、離脱賛成派が51.9%、反対派が48.1%と離脱派が上回った。
多くのマスコミはイギリスのEU離脱の判断を
「愚かな衆愚政治」「イギリス人はこの選択を後悔することになる」などと批判した。
しかし、三橋貴明は「そうではない」と断言する。
月刊三橋最新号
「イギリス激震〜英国の没落から日本が学ぶべきこと」
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_mag3.php
【三橋貴明】ヘリコプターマネーへの2件のコメント
2016年7月17日 5:19 PM
ヘリマネの定義はともかく、私は実情によってはヘリマネも前提として必要な場合もあると思います。でも学問が道理を追求する者であるなら、お金と同等、道具である刀は何の為に使うのかという人間の動機と言うか?それがまず大事だという考えですね。善く生きるとは私利私欲の追求なのか?社会や世の中の発展の追求なのか?古代の賢者たちは当然後者だと語りましたが、今では皆の為に何をなしたかではなく、己が私利私欲を追求した事を周囲に自慢する公私の分別すらない、人の在り方がおかしい、こざかしいばかりの小市民の多い事か。自分が自分のために頑張った事を人に自慢するのは卑しい事とまともな育ち方をしたら解るはずのですがね。公共投資、或は事業とは本当につくづく凄いネーミングですね。要するに財政政策とは公共で私利私欲では成り立たない。まさに動機の問題であり、人間そのものの部分が根底にある。だから、藤井先生の言われるように心理学や民俗学などいってしまう。ともかく保守だと宣うなら、伝統、文化。歴史が大事だと言うのだから、それらはまず人間の在り方を問うものであって、原発など道具の在り方を偏って問うのは著しく、おかしいのは確かでしょうね。まあ、口うるさくって理屈ぽい隠者の意見など今は誰も聞き耳を持ちはしませんが、砂漠を放浪する者の愚痴であります。
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2016年7月19日 3:39 AM
ヘリマネの定義 理解できました。しかし青木先生のTV出演は本当少ないですね。というか見たことが無い、地上波では困ることでも有るのでしょうか。
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