From 佐藤健志
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【期間限定プレゼンテーション】
マスコミの言わない不都合な真実
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前回の話の続きです。
というわけで、記事の内容をおさらいしておきましょう。
まずは基本となるテーゼから。
1)人間は正義感や使命感に駆られると、とかく自己陶酔に陥る。そして自己陶酔は、とかく自己欺瞞へと発展する。
「世の中を良くするために立ち上がるんだ!」と意気込んでいたはずが、いつの間にか「世の中を良くするために立ち上がったんだから、自分(たち)は注目されて当然だ!」と信じこむにいたる次第。
2)ところが世の中が本当に良くなったら、「世の中を良くするために立ち上がった人々」は用済みとなってしまう。
「世の中を良くするために立ち上がったんだから、自分(たち)は注目されて当然だ!」と信じこんでいる人々にとり、これは由々しき事態である。
3)ゆえにこれらの人々は、表面的な主張とは裏腹に、「世の中が良くならないこと」、あるいは「世の中がもっと悪くなること」をひそかに望みはじめる。そのほうが自分たちが注目されるからである。
その具体例として、安保法制をはじめとした現政権の政策に反対する学生組織「SEALDs」のメンバーが、渋谷で開いた集会において「この国には、子どもの学費のために裏で自分の内臓を売り、生活をくいつなぐ母親がいます」と発言したことを取り上げました。
くだんの発言は事実無根。
SEALDsも公式ツイッターアカウントを通じてその点を認め、発言を撤回・謝罪するにいたりました。
「臓器売買発言」をしたメンバーは、あるシンポジウムで聞いた話を勘違いしたあげく、事実確認をせずにしゃべってしまったのだそうです。
とはいえ、なぜ勘違いしたのかを考えるとき、「このメンバーは〈子供の学費のために自分の臓器を売る母親〉に存在してほしかったに違いない」という点が浮かび上がる。
そんな事例があるとすれば、それは現政権がいかに悪いかの証拠となり、政権を倒そうと活動している自分たちがいかに素晴らしいかの証明となるからです。
自己欺瞞のせいで、事実と嘘の区別がつかなくなってしまったわけですね。
し・か・し。
この手のポカは、決して特定の立場の人々の専売特許ではない。
安保法制反対デモを批判する側も、みごとに同じことをやらかしています。
以下の記事をどうぞ。
「安保法案反対デモで孫が死んだ」とツイッターに嘘の投稿→発信者の情報開示命令
ツイッターに1歳の娘の写真を無断で転用されたうえ、「安保法案反対デモで孫が死んだ」と嘘の書き込みをされたとして、新潟市の30代の夫婦が、ツイッター社に対して発信者の情報開示を求め、認められた。東京地裁はIPアドレスなどの開示を命じたという。10月14日、産経ニュースなどが報じた。
NHKニュースによると、申し立てをしていたのは新潟市に住む大嶋陽さんとその妻。7月にツイッターに、大嶋さんの娘の写真が無断で添付された下記のような投稿がなされていた。
「【拡散希望】安保反対国会前デモに連れていかれた、我が孫、聖羅が熱中症で還らぬ人になってしまいました。あの嫁はゆるせません。わたしたちは何度も聖羅を置いてくように話したのですが…。聖羅は何度も何度も帰りたい、と母に泣いてたそうです。」
http://www.huffingtonpost.jp/2015/10/14/twitter_n_8291606.html?ncid=tweetlnkjphpmg00000001
(表記を一部変更)
「デモに連れて行かれた孫が死んだ」という内容自体が事実無根のうえ、他人の子供の写真まで勝手に使ったときては、どうにも弁明の余地はありません。
ただしSEALDsの公式ツイッターアカウントふうに言えば、このツイート主も「聞いた話を勘違いした」可能性が高い。
今年の7月26日、「安保関連法案に反対するママの会」が、渋谷をはじめ、各地で集会を開いたのですが、その際、幼稚園ぐらいの女の子や、ベビーカーに乗った男の子が、会場に連れて来られている様子が紹介されました。
たとえば、こちらの記事の画像のように。
http://blogos.com/article/124721/
これにたいし、高須クリニックの高須克弥院長が、ツイッターでこうコメントしたのです。
「イデオロギーの定まらない子供をデモに利用するな! 猛暑日に炎天下を子供に歩かせるな! 熱中症になる!」
「赤ん坊まで猛暑日炎天下のデモに連れてくる馬鹿母! 父親は何してる? 制止しろよ」
そして別のユーザーからは、こんなツイートが。
「ベビーカーに乗せられている子供がぐったりしている、子供の命を危険に晒(さら)しているのはどっちだ!」
(脱字を1字追加)
http://news.livedoor.com/article/detail/10397171/
「子供の命を危険に」うんぬんのくだりは、「安保関連法案に反対するママの会」が「誰の子供も殺させない」と謳ったことへの言及と思われます。
それはともかく、「安保法制に反対するような連中と違って、自分は日本の安全保障を真剣に考えている」という自己陶酔、ないし自己欺瞞に陥った人が、このやりとりを読んだとしましょう。
当該の人物が、
「デモに連れて行かれた幼児の中に、熱中症で死んだ子がいるに違いない」
と信じこむのは、十分ありうることではないでしょうか?
あとは死んだ(はずの)子を「聖羅」と名づけ、「祖母と嫁の対立」という昼メロ調の脚色を施せば、問題の虚偽ツイートができあがります。
けれども、これが意味するところは重大。
臓器売買発言をしたSEALDsメンバーが、「子供の学費のために自分の臓器を売る母親」に存在してほしかったのと同様、このツイート主は「安保法制反対デモに連れて行かれて死んだ幼児」に存在してほしかったことになる。
なぜか?
そんな事例があるということは、安保法制に反対している人々がいかに悪質(ないし、少なくとも致命的に軽率)であるかの証拠であり、同法制が望ましいことの証明となるからです!
何せツイートの論法にしたがうかぎり、かりに「安保関連法案に反対するママの会」が、子供を家族に預けたうえで集会を開いたり、会場での熱中症対策に万全を期したりしていたら、どうなるか?
そうです。
同会のスローガン「誰の子供も殺させない」にも、説得力があるという話になりかねない。
「聖羅ちゃん」が炎天下、熱中症対策が考慮されない状態で集会に連れてこられ、死なないことには都合が悪いのです。
安保法制が成立するためなら、幼い子供が犠牲になってもいい。いや、犠牲になってもらわなければ困る!
これこそ、「聖羅ちゃんツイート」にひそむホンネ。
とんでもありませんね。
おまけに自分たちの娘の写真を(死んだものとして!)無断で使われた大嶋さん夫妻が、どんな気持ちになるかも考えていない。
肖像権の侵害という自覚もなかったことでしょう。
だから自己欺瞞はよろしくないと言うのですよ。
ではでは♪
—メルマガ発行者よりおすすめ—
【期間限定プレゼンテーション】
マスコミの言わない不都合な真実
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〈佐藤健志からのお知らせ〉
1)イデオロギーの左右を問わず、自己陶酔や自己欺瞞が正義感をどう歪めるかについては、この本でさらに詳しく論じました。
「愛国のパラドックス 『右か左か』の時代は終わった」(アスペクト)
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2)国家が全体として自己欺瞞に陥ると、どういう破滅的な事態が生じるかという警告です。
「〈新訳〉フランス革命の省察 『保守主義の父』かく語りき」(PHP研究所)
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3)戦後日本の歴史にも、自己欺瞞はひそんでいます。
「僕たちは戦後史を知らない 日本の『敗戦』は4回繰り返された」(祥伝社)
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4)いや、近代日本そのものが自己欺瞞を抱えているのです。
「夢見られた近代」(NTT出版)
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5)アメリカがいかなる自己陶酔のもとに生まれたか、そのマニフェストがこちら。
「コモン・センス完全版 アメリカを生んだ『過激な聖書』」(PHP研究所)
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6)そして、ブログとツイッターは以下の通りです。
ブログ http://kenjisato1966.com
ツイッター http://twitter.com/kenjisato1966