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2014年8月19日

【藤井聡】国土の重大な問題

From 藤井聡@京都大学大学院教授

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●韓国の不都合な真実とは?
https://www.youtube.com/watch?v=BX2vC35PCFQ&list=UUza7gpgd6heRb8rH4oEBZfA

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普通に生活していると「国土」という言葉を目にすることは、ほとんどありません。

ですが言わずもがなですが、わたしたちは皆、この日本の「国土」の上に住んでいます。いわば、この「国土」は、わたしたち日本人の「家」(住まい)そのものです。

どんな人でも、自分の「家」がボロボロでは、まともな仕事も生活もできなくなります。だから、国土を守るのは、日本の国家、そして国民が安寧の内に、真っ当に暮らしていくための絶対条件です。

そんな思いで進められているのが「国土強靭化」です。

・・・

今、政府では、国土強靭化に向けて、自然災害による国土破壊、各種社会基盤の老朽化に伴う国土の荒廃、さらには、過疎化に伴う日本の国土の大半を占める農地・山林の荒廃を回避するための各種の取組が進められています。

ですが、広い意味において「国土を守る」ためには、さらに異なる次元の取り組みもまた、強く求められていることも「事実」です。

例えば、今、「重要国土の外国人購入」の問題は、深刻な状況に至りつつあります。

例えば、東京財団( _http://www.tkfd.or.jp/  )は、下記のようなレポートをまとめています。
http://www.tkfd.or.jp/files/doc/2013-06.pdf

「重要国土」とは、例えば、国境離島、です。

尖閣諸島の土地の所有者、竹島の土地の所有者問題が、日本の国にとって重要であることは論を待ちません。

「防衛施設周辺」もまた、重要国土です。

例えば、対馬の海上自衛隊の対馬防備隊本部の近接地は、外国人によって購入されていますが、これが日本の国益に対してどのような影響については、いい加減に考えていい問題であるようには、思えません。
http://blogos.com/article/91438/

さらには、「水源地」もまた、日本の国民、国家にとって、極めて重要な国土です。

21世紀は水の時代だ、ともしばしばいわれますが、その中で、豊富な日本の水資源が、外国人投資家たちによって狙われているのではないか、ともしばしば指摘されています。

実際、林野庁が調べるところでも、外国人によって「水源地」が買収されていることが示されています。
http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/keikaku/130412_1.html

こうした問題が、単なる杞憂であるなら、それはそれで結構ではありますが、そうでなければ、これらは極めて深刻な問題です。

ですが、我が国の土地の所有は、こうした問題に「対処」できるようなものではなく、様々な改善の余地が残されていることが、先の東京財団のレポート等でも指摘されています。

あるいはそもそも「国土」には、最も広く定義した場合には、いわゆる「排他的経済水域」(EEZ)もまた、含まれます。

例えば、一般に政治学では、国家といえば国民と政府と国土(領土)の三つと言われますが、こう定義した場合には、日本の統治が及ぶ排他的経済水域もまた「国土」となります。

そう考えますと、「国土」を守るためには、海洋を守ること、さらには、その下の「海底」を守ることもまた求められることになります。

おりしも今、海洋技術の発展故に、レアアースやメタンハイドレート等の海底資源の問題もまた、大きく認識されるようになってまいりましたが、これもまた「国土問題」です。

・・・・

つまり、今や、「国土」については、

都市や地方の発展、都市と地方の格差問題是正を見据えた「国土軸」や「国土計画」の視点は言うにおよばず、

災害対策、老朽化対策といった「国土保全」や「国土強靭化」の視点に加えて、

「国境問題」「資源問題」「安全保障問題」といった、新たな視点からも、真面目に考えていく必要性が、急速に高まっているのです。

もちろん、「国土」の問題は、現在は、(海上保安庁による)海洋の保安も含めて「国土交通省」が所管するものではありますが、

「国土強靭化」にしても、
「国境問題」にしても、
「資源問題」にしても、
「安全保障問題」にしても、

これまでの国土に関わる取組の概念を大幅に超越する次元の問題となっているように思われます。

それもこれも、我が国はこれまで、「国土」に対して、必ずしも真面目に取り組んできたとは言い難い….ことの裏返しなのではないかと思います。

そもそも地続きの国境を持たない日本では、伝統的に国境問題にナイーブであったでしょうし、戦後日本は安全保障問題を語ることは「タブー」であるかのように扱われてきましたし、「巨大災害」や「資源・エネルギー危機」に対する安全保障の概念も希薄であったことは否めません。

しかも、東京をはじめとした都市部の人々は、地方を軽視する傾向を年々強め、その結果として、国土計画や国土軸といった「ナショナル・プロジェクト」を求める国民意識も、大いに冷めてしまい、国土計画をめぐる議論も、低調を極めているのが現状です。

人々はそれより、改革や増税、等の「制度」の議論にばかり関心を示しているやに思えます。そしてそれらの制度や仕組みが展開される、都市、地域、そして、国土といった「空間」に対する関心を、徹底的に軽視しているように見えます。

さらに言いますと、どうやら日本の政治学や経済学、社会学といった政策に関わる諸科学はいずれも、地域や都市も、そして「国土」といった、政治や経済や社会が織りなされる「空間」を切り捨てて考える傾向を色濃く持っています。

言うまでもありませんが、政治も経済も社会も、その土地や空間がどのようなものであるかに甚大な影響を受けます。にもかかわらず、土地や空間を切り捨てて政治や経済や社会を論ずるとなれば、結局その議論は、何か本質的なところで大きく間違ってしまうことは避けられないでしょう。

だからこそ、世界的な社会科学においては、「空間の復権」が様々になされようとしているのですが、残念ながら、日本ではそうした流れは微弱なものにしかすぎません。

そしてそれを反映するように、我が国の政府の取り組みにおいても、空間を取り扱う行政が、どんどん軽視されていき、挙げ句の果てに、「国土庁」は解体され、国土を包括的に取り扱う取り組みが、極限にまで弱体化させられてしまったわけです。

いま、ようやく「国土強靭化」の取組が始められ、改めて「国土」が見直される流れが生まれるに至ったわけですが、その流れはまだまだ、十分なものだとは言い難いのが実情です。

例えば、これまでとは異なる形で包括的に「国土」を捉え、資源管理、土地の所有管理、安全保障、国境問題といった諸問題も見据えながら「国土」を守るための新しい「部局」、あるいは「省庁」(例えば、国土海洋管理庁、など)を設置する等を通して、これまでの国土をめぐる様々な取り組みを、さらに拡大していくことが必要なのではないかと思います。

いずれにしても……..

第二次大戦後、わたしたちはあらゆる意味で「国土」を軽視してきました。その結果、様々な問題が蓄積し、今それが、一気に噴出しています。わたしたちはこうしてため続けてきた国土をめぐる様々な「ツケ」を、そろそろ払い戻さなければならない時期に立ち至っています。

今、にわかにその認識が生まれ始めているのだとするなら、わたしたちはその流れをさらに加速させていくことが必要です。

政治的な資源には限りある以上、こうした「重大な問題」については、是非とも高い優先順位を付与されることが、国家の安泰、国民の安寧にとっては、極めて必要なのではないかと、筆者は考えています。

是非とも、本メルマガ読者の皆様も、一度、「国土」の問題についても、じっくりと考えて頂けますと幸いです。

PS
「国土」については、是非、こちらを(特に,大石先生の「国土学」の議論は素晴らしい視点です!)。
http://www.shobunsha.co.jp/?p=3225

PPS
「国土強靭化」については、是非,こちらを!
http://amzn.to/18vPiGN

PPPS
行き過ぎた構造改革がたどり着いた先は・・・
https://www.youtube.com/watch?v=lvJ52DpgTGE&list=UUza7gpgd6heRb8rH4oEBZfA

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【藤井聡】国土の重大な問題への6件のコメント

  1. 東北の母 より

    確かにこれまでの経済学は「国土」を軽視したものだったと思います。東北の県庁所在地の周辺も、道路が通ると、それなりに商業地に変わっていっています。コンビニや全国チェーンの飲食店、予備校、そして新興住宅が建ち並びます。このように変わっていく町を眺めて、何かが違うと感じました。消費するだけの町、産み出し、育て、継承していくもののない町、そういった危うさを感じました。田畑をつぶし、特にしっかりした産業基盤もなく、ただ金を払って生活するだけの町。その危うさから脱却するには「国土」をもっと大切に次の世代に継承しようという意志と、食、水、資源を含めた安全保障の意識を高めることが必要だと思います。その上で、もっと一般国民も都市計画について勉強したり、考えたりしなくてはいけないと思いました。メタンハイドレートの採掘技術に関しては、土木学会の方々と、日本で最初にメタンハイドレートの理学的な研究をなさった独立総合研究所さんとの間で、建設的な意見交換がなされているそうです。しかし、その他の例えば、産総研などでは、「採掘技術研究はなかなか難しい」という声が圧倒的に多いように感じます。この違いはどこからくるのか?国民はチェックする必要があるのではないでしょうか?独立総合研究所さんは、2002年頃から自己資金で研究をしていらしているようですので、その実績に敬意をもち、耳を傾けるべきだと思います。民間の取り組みを無視する国家であってはならないです。民間を馬鹿にすると国はいずれ滅びます。官、学、民の建設的な連携を期待します。東大閥だけがすべてを決定し運営するという意識があるのであれば、それは国民を馬鹿にしていることになると思います。

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  2. poti より

    どうも都市部の人間にとっては地方というものは発見したり、一から設計して創生するものであるらしい随分と思いあがった連中だというよりも、彼らはそもそも都市部の、それもごく一部の層以外の日本人を同胞とは思っていないのではないか。そういう疑念がある個人的には、彼らが震災等の災厄で滅んだとしてもそれは完全に自業自得であって、同情するにも値しないしまして彼らが助けを乞うても黙殺すべきではないかとすら思う天の鞭は傲慢な人間に容赦なく振り下ろされるべきだろう

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  3. 拓三 より

    国土も大事、経済も大事、なのに国土を守る為に何かやろうとすると、為替が〜、金利が〜、借金が〜、均衡が〜。ほんで、最近よく土砂崩れ、河川氾濫など災害がおきると「……….。」何か言えや。何のために税金取っとんねん。何のための経済やねん。国民の命、財産、水に流れとるやんけ。これこそ「本末転倒」やろ。カネの計算は経理の仕事や。国土、経済、さまざまな大事なものを複合的に考えて答えを出すのが実用的経済学であり、政治やろ。(国土強靭化)一兆歩譲って、公共事業の波及効果が1としてもやらなあかん。目先の損得ばかり考えとったら田舎の土地、他国民に取られ、一生返ってこんで。都市部の一等地みたいに。一秒でも早く有効的対策とらな。

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  4. Etsuko Ueda より

    真っ当なことを真っ当に考え主張する人間を疎む社会、知的誠実さに欠けた人間の主張が通る社会。三島由紀夫が警告したことの意味がいよいよはっきりしてきたようですね。もっとも、三島由紀夫はそれでも物質的な豊かさは達成できると考えていたようですが、世の中そんな甘いものではないということも明らかになったようですね。最高の知恵を結集し、最高の人材を集めてことを進めなければ、国の繁栄はもとより存続さえもおぼつかない。ここで兜の緒を締めなおさなければ、後がない。。。藤井先生のご活躍に希望をつないでいます。

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  5. 海外助教 より

    エネルギーや物流などが有機的に組み合わさって思いもよらなかった「急所」が生まれているかもしれませんね。先日の台湾の高雄のガス爆発では「住宅地になぜ工業用ガスラインが」と問題になりました。(多くの人にとって)「事故が起こって」ようやく気が付いたことです。(台湾の専門家は「日本ではこうなっているのに…」とコメントしてましたが)事前に「ガスの臭いがする」と通報もあり、無臭のプロピレンの他に何か原因があったのかもしれず、今後はガスラインに限らず電力やその他のインフラの見直し・都市計画が進むと思われます。日本でも人災や天災が増える上で個々の災害が複合化し、「桶屋が儲かる」的な新たな被害をもたらすことが心配です。「こういう災害が今起きたらどうなる」という包括的なシミュレーションが「急所」をあぶりだす上で重要だと思うのですが、学問的には研究は進んでいるのでしょうか?「この町は、この橋が落ちたら全滅」「富士がダメなら東京と大阪が分断」等等の複雑性や階層構造をどう処理していくのか、膨大な情報とその処理が必要だと思われますが…政治的には強力な司令塔が必要で、それを支える総合的な研究所(自然災害だけでなく安全保障面でも)と、その成果を政策に吸い上げる仕組みも充実させるべきですね。

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  6. 神奈川県skatou より

    国土計画の構成要素のひとつ、都市計画と言えば、自分はデビッド・マコーレイの絵本(書名は申すまい・・・)を年少より楽しんでおりまして、思うには、豊かなくらし、経済の振興発展に都市という計画された器は重大としても、本当に大事なのは「そこに集まりたい」「そこで働き暮らしたい」という夢、あるいは吸引力かもしれないと思っています。東京が常に人を誘惑し栄え、また最近は大洗町がちょっと元気なように。規制緩和やイノベーションを血眼に叫ぶ人たちは、たぶんそうした夢の原動力がインフラではなく制度改革や市場開放なのだと、固く固く信じているのかもしれません。ストレスフルで強者有利の都市、未来を感じる場所のない田舎、日本はいま、あたらしい夢を、あたらしいビジョンを国土で語れる時期、まさしく、なのかもと思いました。「もう十分すぎるほど日本は豊かで、もっと貧しくなるべき」とかいう高学歴老人らの特権的に恵まれた己の暮らしの不感症を、まるで日本の未来の虚無だとすりかえるような主張に、まだ若い自分たちが迎合してよいはずはないと、思っております。

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