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2014年8月13日

【佐藤健志】驚異! 九条せんべい

From 佐藤健志@評論家・作家

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●韓国の不都合な真実とは?
https://www.youtube.com/watch?v=BX2vC35PCFQ&list=UUza7gpgd6heRb8rH4oEBZfA

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「VOICE」誌9月号に掲載された、中野剛志さんとの対談「日米関係のコモン・センス」には、九条せんべいというものが出てまいります。

一体、いかなる代物か。

瓦せんべい5枚をワンセットにして、日本国憲法九条の条文を焼き込んであるのです。
十年ほど前、実際に食べてみました。

九条せんべいを作ったのは、仙台市の瀬川光夫さんという人。
瀬川満夫さんと表記されることもあります。
ネットに掲載されていた紹介文には、こう記されていました。

九条の条文を誇りとして伝えたく、日本の伝統的保存食である「せんべい」に1枚1枚、手で焼印を捺しました。(中略)
平和への味として噛みしめて食べていただくと幸いです。
(表記を一部変更)

中野さんからは、「護憲派は割って食べてはならない」という秀逸なツッコミが入ったのですが・・・
なんと九条せんべい、もう一種類あることが判明しました!

こちらは和歌山で作られており、玉子せんべい12枚に、やはり九条の条文を焼き込んであります。
仙台のほうが先だったのか、正式名称は「紀州九条せんべい」。

「紀州九条せんべいの会」という支援組織まであります。
この会の事務局長である中北幸次さんは、ネットに掲載された紹介文でこう語りました。

ぐっと噛みしめていただきたい。
甘さが口の中に広がります。
目を閉じて、思いをめぐらせて下さい。
かつて、甘さに飢えた時代がありました。
甘さは平和の文化であることを感じていただきたいと思います。
(表記を一部変更)

驚くなかれ、「紀州九条せんべい」にはテーマソングまで存在します。
いわく、

♪よい子のおやつに 九条
ばあちゃん お茶うけ 九条
父さんも母さんも 九条
日本の名物 紀州九条せんべい
(おいしいよ〜!!)

九条せんべいについては、私の公式サイト「DANCING WRITER」で目下、特集中です。
ご自分の目が信じられずにいる方は、http://kenjisato1966.comにアクセスして関連記事をご覧下さい。
脳がメルトダウン、ないし水素爆発を起こすかも知れませんが・・

話を元へ。

日本国憲法の第十九条には、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」と明記されている。
つづく第二十一条には「一切の表現の自由は、これを保障する」とあります。
九条をせんべいにしようと、クッキーにしようと、はたまたショートケーキにしようと、そのこと自体は構わない。

だとしても、九条を文字通り自分の中に取り込んで一体化したいという、宗教的とも形容すべき情熱は、何に支えられているのでありましょうか?

宗教的という表現は、ダテではありません。
カソリックなどでは「聖体」という、キリストの肉をあらわすウェハースを口にする慣わしがありますが、九条せんべいの根底にある発想も、これとそっくり同じなのです。

なにせ紀州九条せんべいの宣伝チラシによれば、これを三口ぶん食べただけで、平和を守る力がモリモリわいてくる(らしい)んですからね。

これを理解するには、拙著『僕たちは戦後史を知らない』をご覧いただかねばなりません。

降伏した日本に乗り込んだ占領軍は、戦争を放棄し、軍事力を持たないという方針を押しつけました。
ふつうに考えれば、これは「二度と連合国相手に戦争を始めたりしないよう、国家として去勢しておく」ということにほかならない。

けれども日本人は、その事実に直面したがらなかった。
「みんなでイヤな現実から目をそむければ、イヤな現実そのものが存在しなくなるだろう」とばかり、なりふりかまわぬ(屁)理屈をこねまわして、国家的去勢を美化しようとしたのです。

当のメンタリティ、何が何でも現政権を擁護したがる人々にしっかり受け継がれているようですが、それは脇に置きましょう。

で、日本人はいかなる理屈に救いを見出したか。

これからの時代は、国連主導によって地球規模で紛争が管理される「世界新秩序」ともいうべきものが実現する。
ゆえに日本のみならず、すべての国家がいずれは戦争を放棄、軍事力を持たなくなるのである!

「戦後日本の姿勢も、こうなると『世界新秩序における国家のあり方を、いち早く身をもって示した』という話になろう。憲法九条は、『負けて降伏しようと、正義は日本の側にある』ことを証拠立てており、ゆえに日本国憲法の中核をなす条文なのである」
(『僕たちは戦後史を知らない』、112ページ)

まさか、と思われるかも知れません。
しかし1947年、文部省(現・文部科学省)が作成した教科書『あたらしい憲法のはなし』には、こう書いてあったのです。

「みなさんは、(日本が軍事力を持たないからといって)けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの国よりさきに行なったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません」
(同、113ページ)

これが何を意味するか、分かりますか?
論点を整理してみましょう。
1)戦争の放棄、および軍事力の不保持は正しいことである。
2)日本はこの正しいことを、世界で一番早く実行した。
3)世の中、正しいことほど強いことはない。

となれば、結論は以下の通り。
負けて降伏した後でも、日本は世界で最も強い国である!

このトンデモ論理について、さらに知りたい方はこちらをどうぞ。
http://amzn.to/1lXtYQM

九条を崇拝する人々の心の奥底には、日本の正義や力を世界に誇示したいという、昭和前半期の熱狂的なナショナリズムが残っているのです。
今度は『震災ゴジラ!』から抜粋しましょう。

「敗戦当時の変節(=戦前を否定し、アメリカにすり寄ったこと)にもかかわらず、あるいは、それゆえにこそ、戦後の平和主義の根底には、戦前の熱烈なナショナリズム、いわゆる国粋主義が形を変えて息づいているのだ。さしずめ『憲法九条も、異なる手段による八紘一宇の継続にすぎない』となろう」

「皮肉な言い方をすれば、『憲法九条』の九とは、『八紘一宇』の八と一を足したものなのである」
(260ページ。読みやすさを考え、表記を一部変更)

八紘一宇(はっこういちう)とは、日本主導で全世界を一つにまとめ上げるという戦時中のスローガンです。
念のため。

この倒錯した構造について、いっそう追求したい方はこちらをどうぞ。
http://www.vnc-ebook.com

──平和主義者もけっこう愛国的、いや戦闘的じゃないか!
と、感心したくなるところですが。

九条を武器に世界制覇をなしとげようという発想には、残念ながら大きな欠陥があります。

「この理屈にしたがうかぎり、再軍備を始めたら最後、日本はせっかくの正義を失うばかりか、軍事力を持っていなかったときよりも弱い国に転落してしまう」
(『僕たちは戦後史を知らない』、113ページ)

弱さこそが強さだと強弁してしまった日には、
強くなることは、むしろ弱くなることだと言わざるをえなくなる。

これが敗戦の現実に直面しようとしなかったことのツケであり、九条を崇拝する人々の陥った、悲劇的、ないし喜劇的な顛末(てんまつ)なのです。

ただし「みんなでイヤな現実から目をそむければ、イヤな現実そのものが存在しなくなるだろう」というメンタリティが、いわゆる保守派(の一部)にも見られるのを思えば、このような悲喜劇も、決して九条崇拝に特有のものではない。

なにせ現政権擁護論者は、
「国境や国籍にこだわらないことこそ、日本を取り戻すことである」
と言いかねないところまで来ている。

ならば遅かれ早かれ、日本を真に取り戻そうとする動きについて、
「それは日本を喪失させるものだ!」
と言わざるをえなくなるのは明らか。

そのうち九条と、宮城(つまり皇居)の区別までつかなくなったりして。
戦後日本の堂々めぐりは、永遠に終わらないのでありました。

最後にメディア出演情報などを。
1) _ _ _8月18日(月)22:00〜23:00
BS日テレ「深層NEWS」に出演します。
安倍政権と戦後日本について、白井聡さんと語る予定です。

2) _ _ _8月20日(水)6:10〜7:00
文化放送「おはよう寺ちゃん 活動中」に出演します。

ではでは♪(^_^)♪

PS
マスコミが言わない韓国の正体とは?
https://www.youtube.com/watch?v=lvJ52DpgTGE&list=UUza7gpgd6heRb8rH4oEBZfA

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【佐藤健志】驚異! 九条せんべいへの4件のコメント

  1. 日本財布論、改め、日本連帯保証人論 より

    >そのうち九条と、宮城(つまり皇居)の区別までつかなくなった>りして。日本の非武装化は天皇の免責とバーターだったということですね。それならわかります。

  2. poti より

    親米ホシュには九条と宮城と球場の区別がつかない何故ならどれも有難いものであるからだ尚、通常白黒の区別がつかない人間の事を馬鹿と申しますがそれは脇に置いておきましょう

  3. あまき より

    日本人の中に日本の敵がいて、それが例えば9条の会、護憲反日のような連中だ、彼らは日本人ではないという声に半分同感、しかし半分考えてしまう。いくさや核(原子力)を一切遠ざけて良しとする考え方、どこか、穢れを忌む神道と重ならないだろうか。出自のはっきりしない筋金入りはともかく、無自覚反日もまた、すべてとは言わないが、いかにも日本人的だという印象を抱くことがある。大作家サマーセット・モームが養父の牧師から幼少期に虐めを受け、英国人であることを恥じキリスト教を恨んでおとなになったことは有名だ。本人は注意深くふるまっていたらしいが、米国人作家や米国人米国的なるものに対する態度は典型的英国人そのものだったし、長年書斎の入口に魔除けとして掲げていたモロッコ・トゥワレグ族の表象は、唾棄すべきキリスト教徒に由来するものだった。9条の会に名を連ねる、いかにも良心的な顔つきを眺めていると、不可知論者モームが死ぬまで自分で気づかなかった皮肉のかずかずを思い起す。

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