From 佐藤健志
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先週の記事でもご紹介したように、北朝鮮では10年以上前から
「これは全てアメリカのせいだ!」
というジョークが流行っています。
同国では長年、国際関係で複雑な問題が起きるたびに、党中央が条件反射よろしく「これはアメリカのせいで起こった事態だ」と言い張ってきた。
本当にアメリカが悪いかどうかとは、むろん関係なしに、です。
自分たちの主体性のなさを棚上げにしたまま、〈天下公認の悪玉〉(=いくら批判しても構わない相手)たるアメリカにあらゆる責任をなすりつけているわけですな。
北朝鮮の人々は、そのような無責任、かつデタラメな態度を
「これは全てアメリカのせいだ!」
というフレーズによって揶揄している次第。
台風で被害が出たのも全てアメリカのせい、農作物の増産が進まないのも全てアメリカのせい・・・
と、いった調子でやっているのでしょう。
このジョーク、今や国家安全保衛部(つまり秘密警察)が神経を尖らせるまでにいたったそうですが、
「自分たちの主体性のなさを棚上げにしたまま、〈天下公認の悪玉〉にあらゆる責任をなすりつける」
というのは、べつに北朝鮮の専売特許ではありません。
わが国の保守派と呼ばれる人々の一部にも、自分たちにとって都合の悪い出来事が起きるたび
「これは全てアメリカのせいだ!」
とか、
「これは全て反日勢力のせいだ!」
などと、大真面目に主張する傾向が見られます。
他方、左翼・リベラルと呼ばれる人々の一部にも、自分たちにとって都合の悪い出来事が起きるたびに
「これは全て自民党政治のせいだ!」
とか、
「これは全て安倍総理のせいだ!」
などと、やはり大真面目に主張する傾向が見られる。
言論統制で有名な国の政府と、行動パターンがまるで同じとは、何とも困った話ですが・・・
「これは全て○○のせいだ!」
には、双子の兄弟とも呼ぶべきフレーズがあります。
すなわち、
「これは全て○○のおかげだ!」
否定から肯定へと、評価の方向性は逆転しています。
しかし、根本をなす論理の構造はまったく同じ。
自分たちの主体性のなさは、例によって棚上げにしたまま、〈天下公認の善玉〉にあらゆる賞賛を集中させているのです。
論より証拠、何かにつけて「これは全てアメリカのせいだ!」と主張したがる北朝鮮は、同じく何かにつけて
「これは全て敬愛する指導者同志様のおかげだ!」
とか、
「これは全て主体思想の偉大さのおかげだ!」
などと連発することでも有名。
わが国の保守派に見られる「これは全てアメリカ(または反日勢力)のせいだ!」系の人々も、自分たちにとって都合が良いことになると
「これは全て日本人の底力のおかげだ!」
とか
「これは全て英霊のおかげだ!」
などと強調したがります。
左翼・リベラルなら、
「これは全て憲法九条のおかげだ!」
とか
「これは全て戦後の平和主義のおかげだ!」
となるだけの話。
「せい」と「おかげ」は表裏一体、ないし紙一重の間柄なのです。
しかるにここで気になるのが、憲法改正をめぐる論議。
ご存じのとおり、いわゆる護憲派(=左翼・リベラル)は、
いかなる形の憲法改正にも絶対反対!
と、長年叫んできました。
なぜ絶対反対なのか、簡単に整理すればこうなります。
1)憲法改正は必ず、ナショナリズムを強化する方向でなされる。
2)ナショナリズムの強化は、戦争を引き起こす「破局への道」である。
3)したがって改憲こそ、日本を亡国に追いやる決定的要因となる。
片や、いわゆる改憲派(=保守)は、
憲法改正こそわれらの悲願!
と、長年叫んできました。
なぜ悲願なのか、簡単に整理すればこうなります。
1)憲法改正は必ず、ナショナリズムを強化する方向でなされる。
2)ナショナリズムの強化は、戦後を脱却する「真の独立への道」である。
3)したがって改憲こそ、日本に救国をもたらす決定的要因となる。
・・・何か気づかれた点はないでしょうか?
そうです。
護憲派の主張と改憲派の主張は、まったく同じ論理構造の上に立脚している。
「憲法改正は必ず、ナショナリズムを強化する方向でなされる」という基本認識も同じなら、
「それは必ず、日本のあり方に決定的な変化をもたらす」という結論も同じです。
違う点と言えば、そのような決定的変化にたいする評価だけ。
「亡国」とマイナスに評価すれば護憲派となり、「救国」とプラスに評価すれば改憲派となるにすぎません。
けれどもこれって、
1)護憲派は憲法改正を〈天下公認の悪玉〉と見なして、日本の未来に関するあらゆる恐怖を押しつけ、
2)改憲派は憲法改正を〈天下公認の善玉〉と見なして、日本の未来に関するあらゆる希望を託している
ということじゃないでしょうか?
要するに護憲派は
「これは全て○○のせいだ!」
のバリエーションを展開しており、
たいする改憲派は
「これは全て○○のおかげだ!」
のバリエーションを展開している。
護憲論と改憲論は表裏一体、ないし紙一重の間柄なのです!
となると両者のうち、どちらか一方が正しくて、もう一方が間違っているということは、ちょっと考えられません。
まったく同じ基本認識から出発して、まったく同じ結論にいたっているのですからね。
しかし表面的な主張が正反対になっている以上、じつはどちらも正しいという可能性も、いささか考えにくい。
すると両者は、ともに間違っているのではないでしょうか?
改憲派はしばしば、護憲派の信奉する絶対平和主義が非現実的な観念論であることをもって(これはその通りです)、
「護憲の主張は妄論にすぎない!」と説きます。
けれども護憲の主張が妄論にすぎないことは、改憲の主張が妄論でないことを保証するものではありません。
否、両者の関係を思えば、それは改憲の主張もまた妄論であることを強く暗示しているのです。
先の参院選において、いわゆる「改憲勢力」が三分の二の議席を獲得したことを受け、わが国では改憲発議が現実味を帯びるにいたりました。
だとしても憲法を変えて国が良くなるかどうかは、ひとえに「どのような改憲をするか」にかかっています。
「せい」の主張のバリエーションか、「おかげ」の主張のバリエーションに終始してきた、今までの改憲論議のあり方を根本から見直すことこそ、現在の急務ではないでしょうか?
むろんそれは、「われわれは憲法を変えるだけの主体性を持っているのか?」という点を、シビアに問い直すことにほかなりません。
この見直しをすませないまま行われる改憲は、いかなる方向性のものであれ、国を良くするものとはなりえないだろう、と申し上げておきます。
ではでは♪
<佐藤健志からのお知らせ>
1)日本文化チャンネル桜「闘論! 倒論! 討論!」に出演します。
放送日時:10月1日(土)20:00〜23:00
テーマ:シン・ゴジラから見えてくる日本の現在(仮)
http://www.ch-sakura.jp/topix/1589.html
(※)本紙執筆者では、他に藤井聡さんも出演する予定です。
2)この本で提起した「キッチュ」の概念も、「これは全て○○のせいだ!」を発展させたものと見なせるでしょう。
『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する』(徳間書店)
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(紙版)
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3)保守と左翼・リベラルが、表裏一体、ないし紙一重の間柄にすぎない点について、体系的に論じた本です。
『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は終わった』(アスペクト)
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4)全ては「対米従属のせい」なのか、あるいは「対米協調のおかげ」なのか? 敗戦から70年あまり、主体性を欠いたままやってきた戦後日本の実情についてはこちらを。
『僕たちは戦後史を知らない 日本の「敗戦」は4回繰り返された』(祥伝社)
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5)「革命が起きるや、それまで政権にへつらっていた者たちが、同じ政権への批判を叫びだしたりするのだ」(157ページ)
エドマンド・バークも、「せい」と「おかげ」の関係を正しく見抜いています。
『新訳 フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)
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6)「貴重な教訓というものは、えてして敵の言動の中に見出される」(201ページ)
「せい」か「おかげ」かの二分法に陥った者は、この教訓を学ぶ機会を失ってしまうのです。
『コモン・センス完全版 アメリカを生んだ「過激な聖書」』(PHP研究所)
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7)そして、ブログとツイッターはこちらをどうぞ。
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ーーー発行者よりーーー
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