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2014年1月14日

【藤井聡】幼児虐待の潜在意識

From 藤井聡@京都大学大学院教授————————————————————

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過日ご紹介差し上げた、佐藤健志さんの「震災ゴジラ!」の中に、宮崎駿監督の「崖の上のポニョ」が、結局は、「大人による子殺しの思想」に裏打ちされた、メチャクチャにおぞましい物語だ、という解釈を拝見し、「なるほどなぁ。。。マジで、そうだよなぁ。。。」なんて思っておりました今日この頃・・・・

大衆受けするいろんな物語の背後にある潜在意識を分析するのが楽しくなっちゃって、今まで気にも留めなかったジャンクなカルチャーを意識するようになったところ、あるヒット曲に下記のような下りがあり、「あちゃーー、こりゃもうメチャクチャだ。。。」と感じました。

この問題は、現代の日本社会が、根底から既に腐敗してしまっている、という深い病理状況を垣間見させる恐ろしい問題ですので、今週はこの問題を取り上げたいと思います。

で、その歌詞というのは、次の様なものです。

「(赤ちゃん達は)みんな、決めたミッション(使命)をもっているよ。
その未来のふたり(パパとママ)を守るために来た。」
#( )内は、前後の文脈に基づいて筆者加筆

一番最初にこの歌詞を耳にした時、「えっ?」と一瞬耳を疑いました。

「そんなバカな・・・、そんなエグイ歌詞があるわきゃないだろう。。。」

と思いましたが、何度聞き返しても同じ風にしか聞こえません。仕方ないので、ネットでその歌詞を確認しても、やっぱり聞き間違えじゃない。。。という事が判明してしまいました。で、これがヒット曲になってるなんて、世も末じゃぁ。。。と愕然といたした次第です。

_この日本語はどこをどう読み返しても、生まれてきた赤ちゃんは、自分のパパとママを守るという「使命」を持って、生まれてきた、という事を主張しています。
つまり、生まれてきた赤ちゃんは、自分のパパとママが困っている時に、そのパパとママを助けるのが、「義務」であるという事を意味しています。ということは万一、パパとママが、その赤ちゃんのせいで困っているとしたら(例えば、夜中ぐずるとか、おねしょが直らないとか、わがままを言うとしたら)、その赤ちゃんは、「義務違反」を犯しているという事になります。

通常、義務を果たさない人間には、処罰が与えられます。

そうなると、パパとママは、自分たちを困らせるという義務違反をしている赤ちゃんに対しては、一定の処罰を与える「権利」が発生してしまうということになるでしょう。

つまり、上記の歌詞は、両親には、「子供を虐待する権利」を付与する効果を持つと言うことが(もう、何回考えても!)、考えられてしまうわけです。

じゃぁ、子供はパパとママを「守る」としたら、どういう仕事ができるのか、考えてみましょう。

第一に考えられるのが、「老後の介護」ですね。

つまりこの歌詞は、一面に於いて「赤ちゃんは介護するために生まれてきた」と言っているわけです。

第二に考えられるのが、「パパとママにとってのペット」ですね。

パパとママが喧嘩したり、家の外でイヤな事があったときに、カワイイ赤ちゃんを見て「癒やされる」という効果が期待されます。

実際、上記の歌には、

「どんなときもふたりの味方になるよ
その未来の たぶんいちばんのともだち」

とも歌われていますから、こりゃもう、ペットそのものですよね。

あと、子供達には、

第三に、パパとママが二人で旅行に行きたくなったたら家の中で一人で、2,3日、食パンでもかじりながら待ってなきゃいけない義務もあり得るでしょうし、

第四に、パパとママがむしゃくしゃしてたら虐待されて差し上げる義務もあり得るでしょうし、

第五に、ある程度の年齢に達したときには、パパとママがカネが無くなったら無制限にカネを貸さないと行けない義務もあり得るでしょうね。

何と言っても、赤ちゃんは、「どんなときもふたりの味方」だし、「(パパとママ)を守るというミッションを持って生まれてきた」わけですから、もう「何でもあり」です。

(※ その何でもありさ加減ときたら、そりゃぁもう、真面目なバーリトゥードやってるヒクソングレイシー級どころか、火を放って割ったビール瓶で腕を突き刺しちゃうザ・シーク級、はては、ドレッシングルームで前からムカツイテいたインテリジェンスモンスターをナイフで刺しちゃうホセ・ゴンザレス級にまで到達しています ← この下りは、コアなプロレスファンの方以外は適宜スルーしてくださ。)

・・・・って事で、この歌詞に忠実に振る舞うパパとママが出てきたら、その子供達の人生はメチャクチャになって、挙げ句にはぼろぞうきんの様にされて、生ゴミとして捨てられてしまう。。。。ってことになるのは必定です。

・・・・以上、いかがでしょうか?

ちなみにこの問題、普通考えれば論理構造が逆ですよね。

パパとママは、将来守ってもらえるかどうかなんてことはさておき、その赤ちゃんを「守る」使命を持っている。。。。なんてのは、口にするのも当たり前すぎて恥ずかしいくらいの、当たり前の事です。

まぁ、そんな事を言い出したら、「何、たかだか歌謡曲くらいで目くじらたててんですか、軽い気持ちで楽しみゃいいんですよ、ポップソングなんて」っていう声が直ぐに聞こえてきそうです。

実際、この歌は、Basies are popstarsというタイトルです。つまり、「赤ちゃんは、ポップアートのアーティストだ」というタイトルなわけで、この現実社会そのものを「ポップアートの世界」と見立て、赤ちゃんを、そのポップアートの世界を作るアーティストだと見立てている訳ですから、まぁ、所詮この歌詞の世界は、「夢の世界」を描いているにしか過ぎません。

じゃぁ、この「夢」を見ているのが誰かと言えば。。。。そりゃもう、子供側にしてみりゃ、この夢は文字通りの「悪夢」ですから、「パパとママ=親」が見ているとしか言いようがないですよね。

つまり!

この歌詞は、現代社会のパパとママ達の、

「子供が単なるペットみたいなもんで、こっちの思い通りに出てきたり消えたりするような存在で、しかも最終的には介護までちゃんと面倒みてもらえんだったらいいのになぁ」

なんていう、心密かに潜在意識の中に持っている、超絶に虫の良いとしか言いようがない「願望」が(宮崎駿級の超人気作詞家を通して)具現化されてしまった歌詞なのだ、と言うことができるわけです!

ちなみに。。。。この手の分析は、直ぐに「作家本人はそんな事考えちゃいないよ!!」なんてツッコミがありますが、まさにその通り。大衆の願望を、無意識のうちに読み取って、その大衆の願望がどんなモノかをとりたてて意識、分析しないうちに表現出来てしまうところが、超人気アーティストになれる「コツ」なんですね。ああおぞましい。。。。でもまぁ、そもそも、こんな事まともに解釈しはじめたら、おぞましくって出来なくなっちゃいますよね。
ってことで、このポップソングは、大衆の潜在意識が投影されたものにしか過ぎません。ですから、(念のために書いておきますが 笑)この作詞家が、そんなおぞましい幼児虐待を推奨しようとして書いたものでは無いのは明白です。ですから、この歌詞の驚くべきおぞましさに気付いちゃった方々は、是非、この作詞家を責めるというよりは、こういうおぞましい歌詞を作詞家に書かせてしまった大衆のおぞましき潜在意識をこそ、責めていただければと。。。。思います(笑)。

とはいえ、人気ソングになっちゃえば(ポニョと同様に)そういう潜在意識が強化されてしまう人々が大量に増えてしまう可能性もあるわけで。。。。で、そういう潜在意識が強化されてしまえば、その潜在意識を実際の行動に移してしまう(=幼児を虐待しちゃう)人も出てきかねないわけで。。。。何とも辛い話です。。。。

例えば、超絶に大衆的で幼稚な夫婦が、初めて子供を宿し、この歌を聴いて、お互いにほほえみあって、自分のおなかをさすりながら、

妻「そうかぁ。。。この子は、私たちの味方になるために、私たちを助けるために、私たちのところにやってくるんだよね。。。。うれしい!はやく生まれないかなぁ!!!」

夫「そうだよ、そうだよ。この子は、僕たちを助けるミッションを帯びてやってくるんだから。この子が生まれれば、何もかもうまくいくよ。」

なんてやって、実際に生まれたら夜中にぐずるは、電車にのったら泣くわで、全く思い通りにならず、結局、

妻・夫「はなしが違うじゃねぇかぁぁぁっっ!!」

といって、ぶち切れて虐待しはじめる。。。。。なんて夫婦が、この世に一組も生じない事を、心から祈念したいと思います。
#ってことで、この記事は、そうならないための、ささやかな「ワクチン」でありました(笑)

では!

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【藤井聡】幼児虐待の潜在意識への6件のコメント

  1. turbo より

    これは親から子に向けられた歌というより、子から親に向けられた歌だと思いました。成人式のニュースを見ていても新成人の人たちが、親に対する感謝の心を素直に口にしていたので、この歌も子供が親に感謝の気持ちを向けたものだと思いました。

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  2. poti より

    僕は、この話を聞いてゼウスになりたいと思った彼のように奔放に生きられるなら、それはそれは心地よいだろうそんな寝言は置いといて、仮に親殺しのポップカルチャーが流行り始めたら一体全体どうするつもりなんだろね、この国はネタには全く困らないし。例えば振り込め詐欺、たとえばニート、フリーターetr取るべき題材には全くもって困らない

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  3. kuppo2007 より

    最近、守るものと守られるものが逆さになったような感覚を持って降りましたが事実、歌の中にもそのような意識形成がなされる怨念がこめられておりましたか・・・昔、西洋のとある戦時中、ガス室で大人子供みな虐殺された時、大人が子供を足蹴にして上部にある空気を吸って助かろうとしたと聞きました。事実かどうか分かりませんがとてもおぞましいと思いました。そんな中、日本では、伝説ではあります。石川五右衛門という盗賊がおり、結局捕まって釜茹での刑に子供と共に処せられたと言う話があります。この時、五右衛門は、強がって良い湯加減だと言いながら、自分の子供が熱さにかなわず泣き出したら、子供をぐわぁーと抱え上げ自らを熱しながらも子供を救おうとしたと言う話です。日本人には子供を命がけで守る大人と言うものがストンと腑に落ちるのだと思います。ちなみにプロレスのくだりはグレイシーしか分かりませんでした・・・

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  4. しきしま より

    「子供を愛さない親などいない」という言葉がありますが、それは嘘です。「親を愛さない子供などいない」が真実です。子供は親に愛されないと生きていけませんから、どんなひどい親であってもギリギリまで親を愛そうとする。その結果、無残にも殺されてしまうこともある。切ないものですね。問題の歌はそういうシビアな現実をシュガーコーティングしてしまう、オソロシイ歌と言えるのかもしれませんね。ところで「popstar」は厳密に言えば「ポピュラー音楽界のスター」という意味なのだと思いますが、藤井先生の解釈もアリなのかもしれません。

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  5. nanashi より

    宮崎駿はあまり好きではないが、転生輪廻なあ。やっぱりこっちのほうがメイクセンスかなあ。釈迦も生まれると七歩あるいて天上天下唯我独尊って言ったそうだし、イエスも馬小屋で生まれると三博士が礼拝に来たっていうし。しかし、オイデプスやアジャセというのもあるから藤井さんの解釈もまんざらではないな。

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  6. かずまき より

    「物語の背後にある潜在意識」を分析する観点で知らなかった事実があかるみになるということは私も理解しています。しかし、藤井先生はちょっといじりすぎだと思います。Yu-minはスピリチュアル系の転生輪廻観を歌にしたのだと思います。歌の主人公は再びこの世に生まれようとしている生命です。自分の意思で今度生まれる両親を選ぶそうです。あるいは、仏教用語でカルマ(業:ごう)でひきよせられるともいいます。あるいは心の周波数(愛?)が一致した行き先にうまれるともいいます。両親とその子供は、お互いに自分たちの心の在り方を修正するためにもっともふさわしい相手と親子になる約束をしていたのだともいいます。そういったスピリチュアル系の転生輪廻観をポップな感覚で世に広めたいという趣旨の歌だと感じました。

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