From 施 光恒(せ・てるひさ)@九州大学
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おっはようございま〜す(^_^)/
寒くなってきましたね〜。私も、寒さのせいかめずらしく風邪を引きました。頭が、ぼーっとしておりますので、今日はゆるい話題を。
先月末に、毎年恒例となった「ゆるキャラグランプリ」の2013年度の投票結果が発表されました。今年の栄えあるグランプリは、栃木県佐野市のゆるキャラ「さのまる」だったそうですね。
http://sanomaru225.com/
このゆるキャラグランプリ、年々エントリー数が増えているそうです。
2010年のエントリー数は169体で投票数は24万票だったのが、翌2011年は349エントリーで333万票でした。昨年2012年は、エントリーが865体で投票数は659万票。そして今年は、エントリー数1580体で投票総数は1743万票だったそうです!
なぜこんなにゆるキャラが跋扈するのでしょうか。
本メルマガの私の前回の記事でも触れましたが、日本人の「心のかたち」から説明できるように感じます。
一つは、日本人は、相手の気持ちや感情のありかたを非常に重視するという点と関係があるのかなあと思います。
前回、日本の子育てや教育の仕方は「内在型」モデル、対してアメリカは「外材型」モデルとして分類できるという話を紹介しました。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2013/11/29/se-27/
「内在型」の日本では子どもを躾ける際に、内面に注意を払うように促し、自他の気持ちや感情、罪悪感などに訴えかける手法をとりがちです。また他者の気持ちを敏感に感じ取る「思いやり」を重視し、それを育むことを目指します。
他方、「外在型」が優勢なアメリカでは、気持ちや感情などの内面ではなく、権威、あるいはルールや合理的な結果などの外面的な事柄に訴えかける子育てを好みます。
日本の子育ては、気持ちや感情に敏感な人を育もうとします。この場合の配慮すべき「気持ち」や「感情」の持ち主は、人間だけには限定されません。たとえば動植物の気持ちや感情も敏感に感じとる心を育てようとします。
一例をあげると小学校で使われている道徳の副読本には、次のような可愛らしい話がでています。(文部科学省発行の道徳教育の副読本「心のノート」(小学校3,4年生向け 平成21年改訂版)より)
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/02/23/1302316_22.pdf
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「3年生になったとき、クラスのみんなで菊をそだてることになりました。
わたしは、菊をだいじに、だいじに育てました。
秋が近づいたとき、菊の花はつぼみをつけました。
ある夜、ねむっているとき、風が強くふきました。
つぎの朝、学校に行くと、菊のくきが1本折れていました。
わたしは、むねがきゅんとなりました。そして、自分がけがをしたときのことを思い出しました。あのとき、お母さんがきずの手あてをしてくれたので、いたみがいっぺんにひいていきました。
わたしは、菊にそっと話しかけてみました。
「いたいだろうね。すぐによくなるからね。」
わたしは、ティッシュペーパーで、そっとほうたいをしました。
菊のつぼみは、ひとこともへんじをしませんでしたが、しゃんと空にむかって、生き生きしはじめたようでした」。
***
動植物の気持ちや感情だけではありません。
モノの心も感じとるのが日本の道徳だともいえるでしょう。
たとえば神社やお寺などで行われる伝統的な日本の行事には、裁縫で使った針に感謝を表す「針供養」や、包丁に感謝する「包丁供養」などがあります。同様に現代では、「メガネ供養」をしているところもあるようです。
他者の気持ちや感情を敏感に察知する日本人の心のあり方は、動植物やモノの気持ちや感情まで感じとろうとするようになるのだと思います。
そうだとすれば、動植物やモノになぞらえたものが多い、ゆるキャラがたくさん生まれてくるのも合点がいく気がします。
ゆるキャラ大発生のもう一つの理由は、これも前回のメルマガで触れたことに関係しますが、「頭ごなしに命令されることが嫌いな日本人の性質」によるところも大きいのかなと思います。
邦訳されてはいないのですが、アメリカで出版された日本のゆるキャラについての興味深い本があります。
M・アルト、H・ヨダ『ハロー、プリーズ──日本から来たとても親切で超カワイイゆるキャラたち』(クロニクル社、2007年)(Alt, M., and Yoda, H., Hello, Please!: Very Helpful Super Kawaii Characters from Japan (San Francisco: Chronicle Books, 2007)
http://www.amazon.co.jp/Hello-Please-Helpful-Kawaii-Characters/dp/0811856747
アメリカ人の視点から日本のゆるキャラ文化を好意的に紹介した本です。(「『ゆるキャラ』という言葉を作ったのはイラストレーターのみうらじゅん氏だ」という基礎知識も押さえてあります。)
この本の裏表紙には次のように書いてあります。
「日本には、一生懸命説明したり、教えたり、癒したりしてくれる可愛いマスコットやゆるキャラがいっぱいいるよ。本書のなかで、ゆるキャラたちに会おう!」
また本書の冒頭は、こう始まっています。
「日本は、可愛いキャラクターのパラダイスである。ハローキティやポケモンは、商業的人気はもちろん国際的なスターの地位まで獲得している。
だがキティやポケモンは、日本列島に住み、あらゆる日常の営みのなかで、人々を静かに導いている無数の可愛らしいマスコットやゆるキャラのうちの最も有名なものにすぎない。こうした勤勉で可愛いゆるキャラを「働くゆるキャラ」と呼ぶことにしよう。
日本には、働くゆるキャラは、いたるところにいる。道路標識や納税申告書、製品の説明書、郵便局、街角のお店やスーパーマーケットなどにいる。また医者や歯医者の診療室の棚に飾られたり、パトカーの横に描かれていたり、消防自動車に描かれていて燃えさかる火事に消防士と一緒に飛び込んでいったりする。薬局のパンフレットで、人体の循環器系や肝臓、心臓、大腸の働きを説明していたりもする…」。
私もそうですが、日本人はあまり「働くゆるキャラ」なるものを意識しないと思います。ですがアメリカの人の目からは、日本の各種のゆるキャラやマスコットは、けなげに働いているように見えるようです。
この本は、日本人の日常生活のなかにあふれている「働くゆるキャラ」に焦点を当てています。警視庁のゆるキャラの「ピーポ君」や、消防庁の「キュータ」、明るい選挙推進協会の「選挙のめいすいくん」などが取り上げられています。または、電気製品などの説明書にでてくるような名もなきキャラクターたちも紹介されています。
警視庁のピーポ君が「戸締り用心!」と言っていたり、「選挙のめいすいくん」が「投票に行こうね!」と呼びかけたり、電気製品の説明書のキャラクターが「こういう使い方はダメだよ!」と注意したりしていることは、この本の著者には、「ゆるキャラ、しっかり働いとるなあ」と映るようです。面白いですね。
確かに、言われてみれば、ゆるキャラ、なかなか働き者が多いですよね。自治体が作成するゆるキャラは、町の行事の案内をしたり、ゴミの分別の仕方の説明に駆り出されたりしていることが多いように感じます。メジャーになったくまモンも、熊本県の「営業部長」ですし。
日本にはなぜこんなに「働くゆるキャラ」が多いのかといえば、日本人は他者から頭ごなしに命令されるのを好まないからなんじゃないかと思います。
(実際、前回紹介した心理学者・東洋(あずま・ひろし)氏の著書によれば、日本の学校の教科書には、アメリカのように読者である児童に対して「〜しなさい」と命令形で書いている文章は少なく、「〜してみよう」「〜について調べよう」などの勧誘の文章がほとんどだそうです。そこにも、「頭ごなし」に言われることを嫌う日本人の特徴が出ていると思います)。
例えば、地方自治体が住民に対して、「ごみの分別は丁寧に!」とただ伝えるだけではちょっと角が立つ感じがします。反発を感じる人もでてくるかもしれません。ですが、自治体のけなげな「働くゆるキャラ」が「ゴミはちゃんと分けてね!」みたいに言うのであれば、なんとなくいうことを聞かなきゃという気になります。「このかわいいゆるキャラくんが頼んでいるんだから、言っているとおりにするか」みたいな感じです。
指示を伝える側も、伝えられる側も、気持ちよくコミュニケーションしたいので、「頭ごなし」が嫌いな日本社会では、「働くゆるキャラ」が必要になるんじゃないかと思います。
この『ハロー、プリーズ』というアメリカのゆるキャラ本には、ゆるキャラが栄える文化的説明も簡潔ですが展開されており、なかなか面白いです。
仏教の非実体主義的(関係主義的)世界観と、神道のアニミズム的世界観の折衷によって育まれた日本文化の特質があるなどと説明しています。
また、小豆洗い(あずきあらい)や目目連(もくもくれん)などの伝統的な妖怪は、現代のゆるキャラの祖先に当たるのではないかなどとも論じています。
そうかもしれません。日本人の想像力の性質は、外国人から見れば時代を経てもあまり変わっていないのかもしれませんね。
先月、埼玉県の羽生市で開催された「ゆるキャラさみっと」には、376体ものゆるキャラが集合し、世界記録を達成したそうです。
http://www.city.hanyu.lg.jp/kurashi/madoguchi/character/02_culture/02_kankou/yuruchara/yuruchara.html
「ゆるキャラさみっと」でのゆるキャラが集合した上記のリンク先の写真と、下記の島根県の広聴広報課のHPにある「出雲の大社八百萬神どうけ遊び図」という絵、ちょっとだけですが似ている感じもします。出雲に全国の八百万の神が集まってくる「神在月」(旧暦の10月)の光景を描いたという絵です。
http://www.pref.shimane.lg.jp/kochokoho/esque/2012/85/01.html
日本人の精神の中身は、そのときどきの時代状況に応じて移り変わり、進歩したり、劣化したりするのだと思いますが、「心のかたち」自体は長い年月を経たとしてもあまり変わらないのかなと感じます。
いつもながら長々と失礼しました。寒いですから、どうぞ風邪など引かないようにお過ごしください。
<(_ _)>
PS
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日本のよさについてはこちらでも書いてます…
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【施 光恒】ゆるキャラの秘密への3件のコメント
2013年12月13日 10:04 PM
施先生の政治に限らない幅広い見識、毎回敬服している次第です。 日本人は「頭ごなし」に言われることを嫌う。このことを皆が共有しているからこそ、指示を下す側もその内容や言い方を常に気にする。お互いが配慮し合う好循環が生まれているのかなと思います。 日本の先生は学生と一緒になって真剣に課題に向き合ったり、あるいは学生同士の議論を調整したりする役割を積極的に担います。絶妙のタイミングで、知的な解説やヒントの提供をするので、尊敬されるのだと思います。 また次回も期待しております。
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2013年12月14日 2:23 PM
You-Tubeにて猫動画を観ておりマウスと、英語コメントにて、「どうして日本人の録る猫はこんなにキュートなのかしらん?」ちうコメントがある事に気づきます。仰る様に、動植物の気持ちにまで敏感に察知する日本人の特性が、これまたヌコらの飼い主への愛情を上手く捉えているちう事なのでせうか?ちなみに小生、妖怪コケカキイキイが、シナ大陸で猛威をふるって欲しいと、切に願う者にござりマウス。
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2013年12月14日 8:58 PM
ゆるキャラ…ゆるマガ…ゆる学説…ゆる施…!ぅわぁーっ…許してくんな施ぇーっ!なぁーんちゃって。すみません。思わずつまらねぇことば書き込んでしやいやした、先生(筆者の方が歳喰っちゃってますが、一応生国が同じみたいなもんで)。映画で言えば最初の掴みってヤツですね(この文言に中身なんぞ全くネェですがね)。 ふと。過ります。七年後の東京オリンピックは、以前の様に世界情勢?の為に延期、の繰り返しの世界にならぬよう、ゆるキャラさんに総動員していただき(名付けて“働くゆるキャラ”)なんとかならないものか…と。 なんともかんとも救いようもない七年の眠りの夢の中の曖昧模糊支離滅裂無思想なコメンテーター蝉おじさんでした。
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