FROM 藤井聡@京都大学大学院教授
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「美しい国」という言葉があります。
これは、第一次安倍内閣の折、総理が構想された国家ビジョンですが、その思いは、第二次安倍内閣にも引き継がれています。
政権発足後、安倍総理は国会での施政方針演説にて、「日本は瑞穂の国です」とお話された後、「息を飲むほど美しい棚田の風景」に言及され、伝統ある文化、美しい故郷を守り続ける決意を表明しておられます。
では、そんな美しい国、美しい故郷を守るという、総理の決意を本当に実現させるためには、どのようにすればよいのでしょうか。
。。。。丁度今、「大衆社会の処方箋」という社会哲学の本の最終のとりまとめをしているのですが、その最終章で引用した、小泉八雲(ラフカディオハーン)の一節が、この「美しい国」を守るための「条件」を考える上で、重要な示唆を与えるものではないか。。。。と感じましたので、少々長文ですが、ご紹介したいと思います。
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例えば,外国人の目で明治の日本を様々に描写した小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は,明治二十七年に出版した『知られぬ日本の面影』に収められた『おばあさんの話』の中に,そんな「大衆人からかけはなれた美しい人」の佇まいを描写している。
『今ではもう,いかなる民族も,私がこれから語るような人物を生み出すことは出来ないだろう。その女(ひと)は,私ども西洋世界の人間には想像もできないほど厳格な躾によって育まれた。
その理想とは,他人のためだけに働き,他人のためだけを思い,他人のためだけに生きる女,限りない愛情と限りなく無私の心を持ち,犠牲を厭わず,返礼を求めない,そんな女だ。しかし,何世代にもわたり幼い頃からあらゆる面で厳しく教え込むことにより,ついにそのあり得べからざる理想が現実のものとなった。
(略)女性というものが教育によってどれほど変わりうるかを見事に証(あかし)していた。こうした女性は声高に褒められることもなく,静かに愛され,見習われた。女性の鑑といっても人さまざまである。私はその中でも最も素朴な人,私の一番良く知る人のことを語りたい。
それは,やせた小柄な女性で,いつも黒い着物を着て,梅干しのように皺だらけの顔をしている。もう六十八歳になるが,髪はまだ烏の濡れ羽色──つまり日本人に典型的な濃い藍色をしている。歯は至って丈夫で,若い娘のように白くて美しい。そして,まるで子供のように明るく住んだ鋭い瞳をしている。その上,足腰も達者で,一里や二里なら平気で歩いて,神社やお寺の祭礼にでかけてゆき,孫達の喜びそうなおみやげを買ってくる。(略)
今も昔もおばあさんは一日中,絶えず人の世話を焼いている。冬でも夏でも朝一番に日の出とともに目を覚ます。奉公人を起こし,子供達に着物を着せ,朝食の支度を指図し,ご先祖様へのお供え物を按配する。(略)
肉親以外の者が家を訪ねてきても,おばあさんの姿を見かけることは,まずない。たとえそれが血筋の者でもおばあさんは腰を下ろして話し込んだりしない。そんなふにうに仕事を怠けていてはお天道様に申し訳ないと思っているのだ。だからおばあさんと話したかったら,子供の世話,衣服や蚕や菜園の手入れ,食事の支度などをしている最中を選ばなくてはならない。来客のもてなしはすべておばあさんが取り仕切っているのに,その存在は伝説のように人伝てにしか知ることができない。(略)
小さい頃からおばあさんをよく知る老人達は,おばあさんが人を悪く言うのを聞いた事がないと断言する。でもおばあさんはとても辛い目にあってきた──たくさんの武家が金貸しに騙されて潰されていった時代にはおばあさんも随分ひどい仕打ちを受けた。
その上,多くの愛する者たちと死に別れた。しかしその苦しみも悲しみも,おばあさんは決して人に漏らさない。怒りを露わにすることは一度もない。世の悪行についておばあさんはお釈迦様と同じように考える──それは迷いであり無知であり愚かなのだから,怒るよりも憐れんでやらなくてはいけないと。おばあさんの心には憎しみのつけいる隙もない。
(略)私はおばあさんがこれから先,少なくとも五万年くらいの間は生まれ変わってこない様な気がする。この人を作りあげた社会の条件はとうの昔に消え去っている。そして次に来る新しい世の中では,どのみち,この様な人は生きていけないだろうから。』
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小泉八雲が最後に言及した、この人を作りあげた「社会の条件」こそが、美しい国をつくるために、「国家」が整えなければならないものであるに違いありません。
しかし小泉八雲は、そんな社会の条件は「とうの昔に消え去っている」と論じ、そして、「次に来る新しい世の中では,どのみち,この様な人は生きていけない」と断じています。
残念ながら、筆者もまた、この小泉八雲の意見に強く賛同しています。それは、老女に象徴される「日本の面影」を残すためには「社会の条件」を整えなければならない一方、その社会の条件は、黒船来航と共にやってきた、西洋発の「グローバル資本主義」によって解体せられていったという「歴史」を「知っているから」です。
しかし……もちろん、まだ、この平成の御代においても、「日本の面影」は残存しています。だからこそ、安倍総理がかつてビジョンに掲げられた「美しい国」をつくりあげる好機を、平成日本人は未だ持っていると言い得るわけです。
そんな「日本の面影」を守るために、私たちには、そして日本国政府には、一体何ができるのでしょうか。
……本日から、「成長戦略実行国会」が始まります。
そこで議論される「成長戦略」は、小泉八雲が一人の小さな老女を通して描写した「日本の面影」を、僅かなりとも守らんとする「条件」を整えるものなのでしょうか、それともそんな「条件」を解体せしめて行くだけのものとなるのでしょうか……
「美しい国」という総理の言葉に魂を宿し得ることができるか否かは、その一点にかかっていると言って過言ではないでしょう。
もしも「美しい国」を希求される国民がおられるとするなら、私たちの未来に甚大なる影響をおよぼす国会の先生方の真摯な議論に、是非とも、注視してまいりましょう。
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そんな小さな老女が生き残る「科学的条件」にご関心の方がおられたら、十年前に出版した筆者の処女作、一度、じっくりご覧になってみてください。
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そんな議論を一度、じっくり「聞いてみたい」、という方は、是非、ご参加下さい。
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【藤井聡】「美しい国」の条件への7件のコメント
2013年10月15日 5:29 AM
毎日、日本のために尽くして下さり本当にありがとうございます。最近、リフレ派(新自由主義者)による下劣なケインズ派叩きで色々と目が覚めた者です。。どうか先生の国土強靭化が実現されますように。成長戦略は新自由主義化などではなく、麻生さん型のものになりますように。そして何としてもTPP断固阻止を祈っています。
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2013年10月15日 9:33 PM
私は今の日本人は、かつての日本人を目指すべきと考えています。父母に感謝し、友人知人を大切にし、自己研鑽を怠らず、公の為に尽くす。それが当たり前の道であってもらいたい。
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2013年10月16日 2:59 AM
今日の安倍総理の国会演説を聞いて正直寒気がしました。もう頭が弱いのか確信犯的に保守を表面だけ演じていたのかどちらかわかりません。ただし安倍総理を叩くことが問題の解決になるとはとても思えません。安倍総理の言う改革とやらを実行してしまった場合どんな害をなすのか国民の9割以上は理解(想像)していないのが問題なのでしょう。せめて自分に出来ることは周りの人に教えてあげることぐらい。本を読むという人には藤井さんや中野さんの本を配ってます。国民の意識が変わらないと世論もまともになりようがないのだから。
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2013年10月16日 6:40 PM
「美しい国」 それは、安倍政権がこれまで行ってきたこと (特に大きかったのが、参議院選を控えた状態で、地方票を失う危険を冒し、党内に240人以上いた反対派をまんまと騙してたうえでなお「強欲な資本主義」におもねることを決断したTPP交渉参加)を考慮すれば、藤井先生や水島社長など、安倍総理を信じ、安倍政権樹立に尽力した人々に向けた、お情け程度のご機嫌取りでしかないでしょう。 安倍晋三の本質は「裏切者」であります。内閣参与としてはお辛いでしょうが、腹をくくってこの残酷な現実を認め、戦う時ではないでしょうか。 先生の御著書、「正直者はなぜ得をするのか」には、裏切者は滅びるしかない と過去の事例、理論的考察を含めながら非常に分かりやすく説明されていました。 チベットでは、中国人民解放軍を引き入れた内通者が真っ先に人民解放軍に粛清される といった例もあり、まさに「裏切者が滅びるのは歴史の必然」 です。 そして、安倍晋三という男の本質を見誤り、我々の「大切なもの」が守れなかったとしても、裏切者がのうのうと生き延びるなどあり得ないことを示すため、必ず安倍晋三を潰さねばなりません。
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2013年10月17日 4:34 PM
「美しい国」「日本の面影」というイメージをリアルに連想できるのは、或る地域出身あるいは或る世代以上の人々だと思っています。具体的には(極端な例になりますが)「地方出身の中年以上」だと思っています。この人たちの有史(生まれてから現在まで)の中には「美しい日本の風景と人々」というイメージがあるかもしれませんが、「都市の生活が長い若年層」の人たちの有史でこれをイメージすることは難しいかなと個人的には思います。これら若年層の一部は、自分の経験から・家族から聞いたり・文章を読んだり・映画を観たりすることで「美しい日本」をイメージきるかもしれませんが、リアリティは希薄にならざるをえないかと思います(なので誇大妄想に走ることも)。いまの若年層は核家族・都市生活・いじめ・多様な価値・就職・失業不安・将来不安・未婚などのサバイバルの中で育ってきたため、「美しい」よりも「損得」のリアリストが多いのではないかと感じています(90年代以降は中年以上もこの傾向が)。ですので、第一次安倍政権の「美しい国」というメッセージは国民に広く支持されなかったと思っています(このときはメディアのネガキャンもありました)。ところが第二次安倍政権(今年です)では「経済が一丁目一番地」というメッセージを発信し、多くの国民から支持を得ました(このときは民主党の凋落もありました)。そんなわけで、当世は「美しい国」よりも「明日の生活・自分の損得」が多くの国民の心にズシーンと響くのではないかと思っています。藤井先生は百も承知のことかもしれませんが、ただなんとなく、上記のようなことを考えました。さみしいよね。
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2013年10月18日 6:24 AM
「成長戦略」・・・・。いやな予感しかしないwwww
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2013年10月19日 5:05 AM
その日本を美しい佇まいにしておくために国が国民に甘えてることに気付いてない。国民はお母ちゃんでも奥さんでもないのです。安倍さんも日本が立ち直ることをよく思っていないアメリカとか一部の富裕層のためにデフレを継続するドイツとか破たん寸前の中国とかあと国内の敵とか消費税を上げないと国土強靭化をお流れにしようとする奴らとかいっぱいいるだろうけど、安倍さんに期待してる国民や外からフォローしてる中野さんや西田さんたちの信頼を失う方がもっと損失が大きくないでしょうか。国内が弱いから外国に攻め込まれる。国民をバカにしてるわりに負担が大きいのは甘えとしか考えられません。橋下がなぜ崩れてきたのか。バカなせいもあるけど大阪の市民の信頼を勝ち取ってないからですよ。海外の経済学者の引用は結構ですがまさに日本には日本に当てはまる経済論があるはず。ぜひ中野さんや柴山さんや言志に登場されてる方々でそれを作り上げてください。三橋さんはまた国政に出るご予定でもあるのですか。期待しています。
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