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2013年9月17日

【藤井聡】世知辛い世の中の一端

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授

先日、ある地方都市(人口30万人程度)にて講演をした折りのこと。

当方の内閣官房参与の担当名称は、「防災減災ニューディール」なのですが、この日は、地方の経済界の方からの講演依頼ということで、防災減災や強靭化についてのお話ではなく、ニューディールについて、すなわち、デフレ脱却のための「アベノミクス」のお話を根掘り葉掘りと2時間ほどお話差し上げました。

その冒頭で、「デフレ」という問題そのものについてお話差し上げようと思い、その背景含め、基礎的なお話を差し上げていたのですが、その基礎的情報の一つとして、

「実は、日本には、デフレの方が、インフレよりも望ましい
と思っている人達は、
日本の経済界、金融界にはたくさんおられて、
かつ、そういう人達は、一般の庶民よりも、
圧倒的に強い影響力を持っておられるのです」

という事を申し上げました。

ところが、今ひとつ、信じられない。。。。と言うような雰囲気でしたので、ひょっとして、皆さんご存じないのかも。。。。と思い、

「・・・・と言う様なデフレが好きな方々が、
都会にはたくさんおられるのが、実際なのですが、
ご存じだった方、挙手、願えますでしょうか?」

と御願いしたところ、挙手された方は「皆無」でした。

ひょっとして、皆さん恥ずかしがり屋さんで挙手されないのかと思い念のため、

「ご存じで無かった方、挙手願えますか?」

とお願いしたところ、実に全員が挙手されました!

————————————————————

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————————————————————

・・・当方、「防災減災」だけでなく「ニューディール」の経済政策に関しても、実に様々な方々と意見交換を(特にここ最近は)行って参りましたが、そんな中で、内需拡大を通したデフレ脱却、という、当方の担当である「ニューディール」的なお話について金融関係、経済界関係の方々と意見交換をしておりますと、ついつい「論争」的に議論してしまうことがあります。

なぜかと言いますと、そんな時に彼等から、

「いやぁ、藤井さんとは意見が食い違うけど、結局、僕は
『実は』、デフレの方がいいとおもってるんですよ。
それが、僕と藤井さんとの違いなんですよねぇ」

なんて言われることが、ホントにしばしばあるからなのです(!)

最初の頃は、「この人、ふざけてるのか!?」などと思っておりましたが、彼等は、大まじめにそう信じておられることは、その内よく分かって参りました。

よくよく考えれば、等の論理では、確かに「デフレ」の方が嬉しいんだな、という事がよく見えて参ります。

そもそも、彼等は皆、大量の金融資産を持っていたりする資本家、あるいは、そうした資本家から直接間接にやとわれている方々で、したがって、

『実体経済での経済活動を通して、所得を得る必要が「無い」』

という共通の条件を満たした人達です。

しかも彼等は、
『金融資産を大量に持っており、デフレで貨幣価値が上がれば上がる程に、「得」をする』
という理由を持っていたり、
『デフレで労働単価が下がれば、企業収益が上がる事を通して「得」をする』
という様な理由を持っているわけです。

つまり、こうした理由から、少なくとも彼等「だけ」は、デフレが進めば進むほどに「得」をするという訳です。

もちろん、デフレが悪化すれば、失業、倒産、自殺増、国内産業の衰退/供給力の低下、財政悪化、国力の毀損、日本国家の外交プレゼンスの凋落といった、あらゆる社会問題が噴出するわけですが、結局は、彼等はそんな事は眼中にないのです。

なぜ、眼中にないのか、と言えば、「悪意の塊だから」というよりも、むしろ、「知ってしまうと気まずい思いをするので、知ってしまう機会を意図的に拒絶する」なんてややこしい精神的メカニズムを長年駆動させている内に、徐々に、完璧に眼中からデフレの問題が消え去ってしまう。。。。ということが実態のようです(これは古典的な社会心理学理論で言うところの、いわゆる「認知的不協和理論」ってやつですね)。

もちろん、そんな風に完璧に「デフレの問題を眼中から消し去るの術!」なんてものを体得するには(多くの場合)、結構な年月が必要ですから、「デフレがいいんだよ」なんて事を、自信満々で、どちらかと言えば「ドヤ顔」でおっしゃる方は、えてして若者ではなく、長年業界で「苦労」された方が多いわけです。

・・・・

なんていう、常識では考えられない、というか、常識で考えれば、「この人、精神的な異常をきたしているのか!?」なんて言う風に思えてきてしまうような方々が、都会のある場所にはホントにたくさんおられるのですが。。。。よくよく考えれば、普通の真っ当な常識で生活しておられる方にしてみれば、そんな輩が、群れをなしてこのお天道様の下を跋扈してるなんて、ちょっと信じられない話ですよね。

だから、当方の様に「そんなのが当たり前にいるのが、今のニッポンなんだ」なんて感覚になってしまうこのニッポンって、ホントに異常としか言い様のないお話ですが・・・・事実なんですから、仕方ありませんよね(苦笑)。

・・・・

ということで、好むと好まざるとに関わらず、「デフレを脱却しよう!」とするなら、それを阻止しようとする「動機」を、どなたが、どういう風に持っておられるのか。。。。ということについては、冷静に、具体的に把握しておくことが重要となるのではないかと思います。

ということで、今週は、(ご存じの方々にとっては、当たり前のことかもしれませんが 苦笑)、世知辛い世の中の、一端を、ご紹介差し上げた次第であります。

では、また来週!

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【藤井聡】世知辛い世の中の一端への6件のコメント

  1. 青汁一杯 より

    ですよねえ。昨秋の選挙結果から彼ら「デフレ派」は勢力を失い、デフレ脱却へ向け「リフレ派」と「ケインズ派」の戦いになると思っていたのですが。多国籍企業、国際金融あたりはほぼデフレ派といっていいでしょう。つまり財界の中心に座するお歴々はデフレ派なのです。ご指摘のとおり、彼らにとってはデフレのほうが好都合だからです。彼らときたらもう死んだかと思いきや、選挙後みるみるゾンビのごとく息を吹き返し、いまやリフレ派と最大勢力を争うという展開。対してわたしが期待したケインズ派は隅に追いやられてしまっているようです。こうなった原因の一つは、その言行から果たしてほんとにデフレ脱却に取り組む気があるのか疑問に思えてくる安倍内閣にもあるでしょう。>「知ってしまうと気まずい思いをするので、知ってしまう機会を意図的に拒絶する」なんてややこしい精神的メカニズムを長年駆動これ以前わたしも駆動していました。いろんなことに思い悩むことになるであろうことが直感的に分かるので意図的に、あるいが無意識に想念を封じてしまうんですよね。これの駆動を停止し、想念と対峙するには勇気が必要でした。正直、ある程度お歳を召した方は死ぬまで駆動させるのではないでしょうか。駆動を停止させた途端、自分のこれまでの長い人生を否定することになりかねないですから。それは嫌だと想念から逃げおおせるためますます高速回転で駆動させる、そんな心中かと。

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  2. button より

     2010年の上念司_ひろゆきの対談動画でひろゆき氏が「僕はデフレのほうがいいんですよね」と言っていたのを思い出しました。近視眼的に、合理的に、利己的に考えれば確かにそういう結論に至るのは分かります。ですが、少し長期的に、視野を広く考えられればデフレの恐ろしさを理解できるはずなのです。少なくとも日本以外の人々にはそれが理解されているように思います。 日本の危機の根底にあるものは、やはり、知識人、マスコミ、国民の不真面目さにあるように思えてなりません。

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  3. 古事記 より

    藤井先生に被害が無く何よりです。(被害に遭われた方はお見舞い申し上げます)渡月橋での水害は申し訳御座いませんが、本来起こりうる場所の被害です昔は増水時にもっと被害が大きく発生する場所です、申し訳ございませんが、あの場所で地下室まで作られている建物まで有る事に驚きました。日本人はこの30年近くで随分と異常なお花畑思考に陥っている事を災害の度に感じます。そして異口同音に『まさか自身がこんな目に遭うとは思わずがっくりしている』そして多くが『公や加害者に怒りを向けて反省と観念を忘れ保証を求める行動に走り出す』平常時の問題提起に耳を傾けずに、自業自得の言葉も知らず。自身は蚊帳の外で同情している振りをする多くの日本人。こんな人々が国土強靭化に耳を傾けず推進者の利益誘導を疑う姿に呆れます、藤井先生の隠れた思い(アホか!もっと全体の事を考えろよ!)や苛立ちを汲み取る事は出来るのか?と思います。公の位についてからのコメントには以前より随分と気を使っておられますが方向性と計画を早く立ち上げ、一度は本音を怒りをぶちまけて頂きたいものです。最後に一つお願いが有ります。 リスク分散のインフラ整備と機能移転を行って東京一極集中はお止め下さい、取り返しのつかない打撃を被ります。局部的被害を被った神戸の街は未だに以前の状態に戻っておりません。幸か不幸か阪神淡路と一昨年の和歌山水害の経験者ですので大変危惧しております。(日本の多くのダムは堆積物で貯水力がかなり減少しております。調査が必要です)日本国の為に若者の為に 藤井先生には宜しくお願い致します。

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  4. poti より

    自分で言うのも何ですが、国民経済の生き血を啜る吸血鬼みたいな連中ですのでニンニクや十字架、白木の杭で武装するように理論、理屈、理念を固め勤勉さと真面目さ、ナショナリズムとプラグマティズムという陽光でもって打ち払わなければです

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  5. poti より

    以前から戦後日本の体制側に抱いていた疑念が確信に変わりました。罵り言葉は山のように浮かんできますが、それは置いといて単なる認知的不協和ならば、ニートに働けというように彼らの嫌がる事をしつこくしつこく続けていく事が大切ですね。というかこの精神性、殆ど根っこの部分ではニートのそれと変わりません。経済的な上っ面の繁栄はソドムとゴモラでも見ているような気分がします。どー考えても長続きしそうにない……

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  6. ひろ より

    現下の日本でデフレを肯定的に評価するというのは、困窮して死にゆく他人の需要を奪ったり、次世代に需要を「与えない」ことで、自分だけはラクをしている、という状況を善しとしているわけですから、人の生き血をすする悪魔そのもの、エレン・イェーガー風にいうなら「たまたま人と格好が似ているだけの害獣」ですね。

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