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FROM 三橋貴明
【今週のNewsピックアップ】
●Japan Steps Out
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11450161396.html
●続 Japan Steps Out
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11450817164.html
アメリカのノーベル経済学者であるポール・クルーグマンが、アベノミクスを絶賛しています。この「アベノミクス」という言葉は、恐らく読者の皆さんが考えている以上に意味があるのです(ネーミング自体に)。何しろ、現在の世界を混乱に陥らせている(特に、各国で失業率を高めている)新古典派経済学に基づく政策が初めて主要国で大々的に行われたのが、まさに80年代の「レーガノミクス」だったためでございます。
新古典派経済学に基づく社会実験は、チリのピノチェトによるクーデター以降、主に発展途上国などで実施されてきました。主要国で次々に新古典派による実験的政策が推進され始めたのは、レーガン政権期のアメリカからなのです。特に、レーガン政権時代に本格的に始まった「金融産業の規制緩和」は、グローバル・マネーを生み出し、リーマン・ショックに至るまで世界で荒れ狂いました(今も暴れていますが)。
アメリカはオバマ政権が始まって以降、何とかこの「金融の暴走」を抑えようと、ボルカー・ルールの設定などのチャレンジに乗り出しましたが、金融産業の反発により巧くいっていません。
レーガノミクス以降、世界の経済学の主流派は「小さな政府が素晴らしい」と主張する新古典派経済学者たちで占められていきました。結果的に、失業率が上昇しても「それは、自然失業率だよ」「失業者は自発的失業者だよ」「失業者が雇用されないのは、企業の解雇規制が厳しいからだ。解雇しやすくすれば、失業率はむしろ下がるよ」「失業率が高いのは職種のミスマッチがあるためだ」などと、的外れな提言ばかりが新古典派経済学者たちから出され、「政府による雇用創出」という(以前は)普通の政策が顧みられなくなりました。
「いや、バブルが崩壊して需要が縮小している以上、政府による雇用創出は必要だろ」
と言った日には、主流派経済学者たちから「ケインズは死んだ!」「ケインズは古い!」「お前は社会主義者だ」などと、抽象的な批判の嵐を浴びることになり、学者たちは次第にケインズ的な政策を口にできない状況になっていきました。
ところが、アメリカの不動産バブルとリーマンショックが状況を一変させます。リーマンショック後のアメリカは、金融緩和をしても、あるいはインフレ率が健全な水準を取り戻してさえ、失業率を下げられない事態になりました。
先日、アメリカのバーナンキFRB議長が「失業率6.5%」という目標を提示しましたが、金融政策のみで達成できるとは思いません。
まあ、失業率6.5%は別に低い失業率ではありませんが、それでも困難でしょう。中央銀行は、発行した通貨が「何に使われるのか?」についてまでをも左右することはできないのです。
そして、中央銀行が発行した通貨が「雇用創出」に使われなければ、当たり前ですが失業率は改善しません。
オーソドックスな新古典派経済学者たちは、
「いや、中央銀行が発行したカネの使い道は市場に決めさせればいい。カネが向かった先に雇用が生まれる」
と言うでしょうが、先物取引にどれだけ巨額のマネーが流れ込んだところで、アメリカの失業率改善には役に立たないでしょう。たった一人のトレーダーが100億円の所得を稼いだとしても、生まれる雇用は一人分だけなのです。この100億円を「製造業」「建設業」に使ったと考えたら、一体、どれほどの規模の雇用が生まれるでしょうか。上手くいけば1000人規模ではないでしょうか。
というわけで、クルーグマンは「中央銀行が発行した通貨を、政府が借りて雇用が生まれるように使え」と主張していたわけです。「三橋が言っていたのと同じじゃないか!」と思われたかも知れませんが、それはそうです。環境が同じである以上、ソリューション(解決策)が似通って当然でしょう。
もっとも、上記のクルーグマンのコラムを国内で報道したマスコミは皆無というわけではないのですが、やはり少数でした。さらに、クルーグマンが「財政出動」の重要性を強調している部分に着目した報道は、一つもありませんでした。
現実には、金融施策と同時に財政政策を実施するアベノミクスは「歴史を変える」可能性があるポリシーミックスであり、レーガノミクスの「次の時代の経済政策の主流」となり得るものです。無論、クルーグマンはそれを理解した上で「アベノミクス」を称賛しているのだと思います。
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【三橋貴明】絶賛されていますへの1件のコメント
2013年1月22日 8:11 PM
おはようございます、三橋様。クルーグマン氏のこの記事は「極東ブログ」さんでいち早く取り上げられていました。この方の見方は三橋さんに負けないくらい鋭い洞察力がありますが、政治には少し懐疑的です。西田昌司氏も税調幹事になられ頼もしい限りですが、西部ゼミで「私は本当は増税に賛成です。」と仰られて、やはり立場が違ってくると言うことも違うものだなとため息。所得税・住民税・環境税・復興税そして消費税。いつのまにかたくさん税金が摂られています。自民党は軽減税に反対しており、8%に消費税をあげる前にこれら全ての税金をもう一度見直して、理にかなった税にしていただけないのでしょうか。皆がアベノミクスで救われるにはすごく時間がかかりそうですから。
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