FROM 東田剛
12月16日の衆院選は、これまでとは違う画期的な特徴が二つありました。
第一に、選挙の争点が絞られなかったということです。
これまで、郵政選挙や政権選択選挙など、シングル・イッシュウを巡って白黒をつける選挙ばかりでした。
シングル・イッシュウ選挙は、マスコミ好みの選挙です。分かりやすいので、「民意はこれだ!」と言いやすいからです。また、有権者が希望する政策を選ぶという、素朴な民主主義の理解にも合致しています。
今回も、当初は、マスコミは、消費税、TPP、原発を争点としようとしました。自民党はこれらの争点について最後まで白黒をはっきりさせなかったばかりか、マスコミが想定外の脱デフレや財政金融政策を争点にぶちあげました。これで、シングル・イッシュウ選挙を狙っていたマスコミ、民主党、第三極は、面食らった感があります。
しかし、そもそも、シングル・イッシュウで選挙をしようとすること自体が、おかしいのです。
例えば、民主党と日本維新の会は、内部で意見がばらばらでした。みんなの党は、消費税と原発は反対だがTPPは賛成、日本未来の会は全部反対です。
これに対して、国民の中は、私のように、消費税とTPPは反対だが、原発は賛成という人もいるだろうし、消費税は賛成だが、TPPと原発は反対という人だっているでしょう。
世の中は複雑なので、シングル・イッシュウで片付けられません。また、国民の価値観は多様です。したがって、有権者は、政策ではなく、政党や政治家が信頼に足るか否かで判断するしかないのですが、それでいいのです。
第二に、より画期的だったのは、「日本を取り戻す」をスローガンに掲げた政党が大勝したことです。
政治家のスローガンとは、耳に心地よいものでなければなりませんが、これまで掲げられたのは決まって「日本を変える」でした。
かつて、自民党政権に対する文句は、「自民党では、誰がやっても日本は変わらない」というものでした。今回の選挙でも、民主党の野田代表は、「時計の針を戻してはならない」と主張し、橋下市長は「日本を根っこから変える」「維新」を叫びました。日本未来の党に至っては、党名からして「未来」ですから、日本の過去を否定したいというのがよく分かります。
ところが自民党は「日本を変える」ではなく、その逆の「日本を取り戻す」とぶちあげたのです。これは普通に考えると、「改革」ではなく、「反動」を宣言したということです。しかも大勝ちしてしまいました。
これは、かなり凄い話です。「保守」どころではありません。「反動」ですよ。何で誰も問題視しないのか、不思議なくらいです。
戦後日本において、「改革」ではなく「反動」を、「未来」ではなく「過去」を掲げて勝利した政党が、かつてあったでしょうか。
この選挙が示したものは、一般に考えられている以上に大きなものかもしれませんねえ。
勝った自民党自身もその意味が分かっていないのではないでしょうか。
PS
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【東田剛】「反動」勝利の意味への2件のコメント
2012年12月19日 4:56 PM
「官僚の反逆」買いました。
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2012年12月19日 8:16 PM
改革を掲げてきた極致的継承者といえる橋下氏も、新しいものを嗜好してきた日本人そのものが創り上げてきた究極の日本人だとすると、今までは、和/洋、和が分子に置かれてしまってきていた気がします。 であったから、洋/和、和を分母に置き戻す意識が高まってきたのでしょうか。と思いました。 なんとも抽象的極まりないコメント。素人(の脳神経回路)なので、お許しください。
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