アーカイブス

2012年12月19日

【東田剛】「反動」勝利の意味

FROM 東田剛

12月16日の衆院選は、これまでとは違う画期的な特徴が二つありました。

第一に、選挙の争点が絞られなかったということです。

これまで、郵政選挙や政権選択選挙など、シングル・イッシュウを巡って白黒をつける選挙ばかりでした。

シングル・イッシュウ選挙は、マスコミ好みの選挙です。分かりやすいので、「民意はこれだ!」と言いやすいからです。また、有権者が希望する政策を選ぶという、素朴な民主主義の理解にも合致しています。

今回も、当初は、マスコミは、消費税、TPP、原発を争点としようとしました。自民党はこれらの争点について最後まで白黒をはっきりさせなかったばかりか、マスコミが想定外の脱デフレや財政金融政策を争点にぶちあげました。これで、シングル・イッシュウ選挙を狙っていたマスコミ、民主党、第三極は、面食らった感があります。

しかし、そもそも、シングル・イッシュウで選挙をしようとすること自体が、おかしいのです。

例えば、民主党と日本維新の会は、内部で意見がばらばらでした。みんなの党は、消費税と原発は反対だがTPPは賛成、日本未来の会は全部反対です。
これに対して、国民の中は、私のように、消費税とTPPは反対だが、原発は賛成という人もいるだろうし、消費税は賛成だが、TPPと原発は反対という人だっているでしょう。

世の中は複雑なので、シングル・イッシュウで片付けられません。また、国民の価値観は多様です。したがって、有権者は、政策ではなく、政党や政治家が信頼に足るか否かで判断するしかないのですが、それでいいのです。

第二に、より画期的だったのは、「日本を取り戻す」をスローガンに掲げた政党が大勝したことです。

政治家のスローガンとは、耳に心地よいものでなければなりませんが、これまで掲げられたのは決まって「日本を変える」でした。

かつて、自民党政権に対する文句は、「自民党では、誰がやっても日本は変わらない」というものでした。今回の選挙でも、民主党の野田代表は、「時計の針を戻してはならない」と主張し、橋下市長は「日本を根っこから変える」「維新」を叫びました。日本未来の党に至っては、党名からして「未来」ですから、日本の過去を否定したいというのがよく分かります。

ところが自民党は「日本を変える」ではなく、その逆の「日本を取り戻す」とぶちあげたのです。これは普通に考えると、「改革」ではなく、「反動」を宣言したということです。しかも大勝ちしてしまいました。

これは、かなり凄い話です。「保守」どころではありません。「反動」ですよ。何で誰も問題視しないのか、不思議なくらいです。

戦後日本において、「改革」ではなく「反動」を、「未来」ではなく「過去」を掲げて勝利した政党が、かつてあったでしょうか。

この選挙が示したものは、一般に考えられている以上に大きなものかもしれませんねえ。

勝った自民党自身もその意味が分かっていないのではないでしょうか。

PS
なぜ、官僚たちは「反逆」を始めたのか?
なぜ、外国を使って日本を変えようとしたがるのか?
そのカラクリを知りたいなら、こちらをクリック!
http://amzn.to/UPCohv

PPS
この本もお薦めです。

中野剛志『レジーム・チェンジ』
http://amzn.to/OTfVek

関連記事

アーカイブス

【三橋貴明】安倍政権が「移民受入政権」であるという現実

アーカイブス

【三橋貴明】R・K・A

アーカイブス

【藤井聡】日本経済は3年以内に「どん底」に落ちる ~日本経済2020年危機論~

アーカイブス

【浅野久美】トパーズ色の香気が漂う

アーカイブス

【古谷経衡】新自由主義の未来

【東田剛】「反動」勝利の意味への2件のコメント

  1. コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

  2. 志向分裂郎 より

     改革を掲げてきた極致的継承者といえる橋下氏も、新しいものを嗜好してきた日本人そのものが創り上げてきた究極の日本人だとすると、今までは、和/洋、和が分子に置かれてしまってきていた気がします。 であったから、洋/和、和を分母に置き戻す意識が高まってきたのでしょうか。と思いました。 なんとも抽象的極まりないコメント。素人(の脳神経回路)なので、お許しください。

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です

名前

メールアドレス

ウェブサイト

コメント

メルマガ会員登録はこちら

まだデータがありません。

月間ランキング

  1. 1

    1

    【藤井聡】我々はこの選挙結果を受けて、「消費増税」に対して如...

  2. 2

    2

    【藤井聡】MMT理解のコツ(実践編):「政府が貨幣の供給者だ...

  3. 3

    3

    【室伏謙一】「大きな政府」はダメで、「小さな政府」を目指すべ...

  4. 4

    4

    【小浜逸郎】MMTの正しさ、リフレ派の誤り、誤解のひどさ

  5. 5

    5

    【三橋貴明】ジョンソン新首相とバックストップ条項

MORE

最新記事

  1. 日本経済

    【小浜逸郎】MMTの服用を拒否する〇〇病患者を診断する...

  2. 日本経済

    【藤井聡】MMT理解のコツ(理論編):「政府が貨幣の供...

  3. 日本経済

    【室伏謙一】シェアリングエコノミーなるもののお寒い実態...

  4. 日本経済

    【三橋貴明】国家の店じまい

  5. 日本経済

    【三橋貴明】MMTの新たなレンズ

  6. 日本経済

    【施 光恒】カジノと大麻と緊縮主義

  7. 日本経済

    【藤井聡】オリラジ中田のナイスプレー。令和の政策転換(...

  8. メディア

    日本経済

    【小浜逸郎】MMTの服用を拒否する〇〇病患者を診断する...

  9. 政治

    日本経済

    【三橋貴明】アベ・ショック

  10. アメリカ

    政治

    【三橋貴明】主流派はなぜケインズに勝利したのか

MORE

タグクラウド