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2012年10月3日

【東田剛】アメリカの論争

FROM 東田剛

先月13日にFRB(米連邦準備理事会)が発表したQE3
(量的緩和第三弾)は、住宅ローン担保証券を月額400億ドル
買い入れ、インフレが抑制されている限り、労働市場の見通しが
大幅に改善するまで資産を買い入れ続けるというものです。

これについては、FRBの要人の間でも論争になっているようです。
なかなか勉強になるので、簡単にまとめてみました。

例えば、エバンス・シカゴ連銀総裁は、QE3を強く支持しています。
ピアナルト・クリーブランド連銀総裁もQE3を擁護しましたが、
「金融政策と雇用創出との関係は単純なものではない」と述べ、
景気回復には米国の財政問題や欧州危機の解決が必要だと
指摘しています。

ウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁も賛成派です。
ただし、金融刺激策は実体経済に効果が浸透するまでに
時間がかかるので、完全雇用の実現を待たずに利上げを
開始すべきだとも指摘しています。

他方、フィッシャー・ダラス連銀総裁は、
QE3はインフレ期待を高める結果をもたらしただけで、
雇用増にはつながらないと批判しています。

ブラード・セントルイス連銀総裁は、失業率を金融政策の数値目標
にすることに反対しています。

プロッサー・フィラデルフィア総裁も、ブラード氏同様、雇用は
技術や教育、税率などにも左右されるので、インフレ率と同様に
雇用水準の目標を定めるべきではないとしています。

また、資産購入が景気回復や雇用増に実質的な効果がある
という考え方を広めることは、金融当局の信頼性をリスクに
さらすとも警告しています。

この論争のポイントは、雇用と金融政策の関係をどうみるか、
にあります。

さて、誰が正しいと思いますか?

私自身は、「QE3は必要だが、それだけでは雇用増は無理なので、
雇用水準を金融政策の目標にするのはやめた方がよい」
という立場が正しいように思います。

例えば、金融緩和によって、資産市場や製品市場の物価が
上がるのだとしましょう。しかし、雇用(特に正規雇用)は、
そんなに弾力的に反応しないので、すぐには上がりません。

従って、例えば資産価格は上がっているのに、失業率は高いまま
という状態になることもあり得ます。

したがって、もし、完全雇用を達成するまで量的緩和を
続けるとなると、資産市場が加熱してバブルになる恐れが
あるように思われます。

それに、現下の経済情勢では、金融政策だけでは、景気回復や
雇用増を実現できないでしょう。企業も家計も、先行きの
不透明感から、負債の削減と手元資金の確保に努めている中では、
マネーをばらまいても、誰も使いません。

しかも、事実上のゼロ金利状態となった今では、
金融政策が効く余地は非常に狭まっています。

金融政策は、インフレ退治には有効ですが、デフレ脱却の効果は乏しい。
金融政策の効果は、インフレとデフレで、非対称なのです。
喩えるならば、ひげ剃りでは、ひげは剃れても、
髪を増やすことはできない。

バーナンキ議長を見ていると、そんな気がしてならないのですが、
皆さんは、どう思われますでしょうか?

PS
東田剛とは無関係ですが、中野剛志さんの評論集
『反官反民:中野剛志評論集』が発売中です。
とても良い本なので、ご一読を。ちょっと分厚いですが、
読み出したら止まりません。
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【東田剛】アメリカの論争への2件のコメント

  1. rxtype より

    ここには、はじめてコメントいたします。typexrといいます。長文失礼します。 御存知の通り、デフレ、流動性の罠の状態では、金利を0%以下にできないので、そういう意味での金融緩和は効きません。言い換えれば、マイナス金利にすれば効くということです。日銀はもうやることがないというのは間違いで、実際には、日銀がFRBのQE1,QE2と同じように長期国債などを(市場から)大量に買い取れば、金融緩和は可能です。今までの日銀は残存期間が短い短期の国債しか買い取っていませんでした。短期国債だけ買い取るというのは金融緩和としては意味不明です。その上、買取金利も制限をかけていた。そのために札割れを起こしていました。最近、ようやくFRBの後を追って、長期国債の買取も少し増やす&買取金利の制限を撤廃するといっていますが、本気かどうかも怪しいです。また、ETFやREITなどもごく少ない額買っていますが、同時に通貨を吸い取ったりして、日銀は本気で金融緩和をする気が無いように見えます。日銀がアリバイ作りのためにやっているとさえ言われています。リーマン・ショック後のFRBと比べると、日銀のサボタージュぶりは一目瞭然です。http://www.world401.com/data_yougo/qe1qe2.htmlノーベル経済学賞のクルーグマン教授、同スティグリッツ教授、日本人で最もノーベル経済学賞に近いと言われる浜田宏一イエール大学教授なども、日銀の問題を指摘しています。政府が公共事業を減らしたことは当然、大問題ですが、それと同じくらい日銀の問題は重要です。なぜなら、公共事業を減らしたことは政府支出による公的な需要を削ってしまうことですが、同様に民間の需要が増えないのは日銀が本気で金融緩和をやっていないからです(流動性の罠、実質金利の問題)。政府の借金が増えたのも日銀のせいです。要は、日銀が国債を買い取って、政府が公共事業をする。これが重要だと私は考えています。そうしないと、国債発行すると、国債を売り出した時点で、民間のマネーを吸い取ってしまうからです。それに、国債は将来償還しなければならなず、将来の公的需要を先食いするだけだからです。日銀が国債を買い取れば、金利の支払いは不要ですし(国庫納付金)、一時的にも民間のマネーを吸い取ることがない。このような理由で日銀の問題は非常に重要だと思っています。ただし、金融緩和だけだと、キャリー・トレードのような形で、お金が海外に流出してしまいます。そのために、日本国内でちゃんと回るように、その意味でも政府による公共事業が必要。また、当然、今後の成長のため、安心安全のためにもインフラ整備は重要だと思います。国土強靱化10年で200兆円というのは素晴らしく、私も大賛成ですが、日本のデフレギャップは非常に少なく見積もっても年間20兆円以上あります。財政支出だけでデフレ脱却は難しいです。ですから、公的需要だけに頼るのではなく民間需要も喚起させる必要があると思います。財政出動(国土強靱化) vs 金融緩和 (リフレ)という構図は違うと思います。財政出動(国土強靱化) + 金融緩和 (リフレ:日銀法改正) というのが正解だと思っています。いかがでしょうか。

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