政治

2018年9月26日

【藤井聡】国土強靱化2.0:「財政」でなく「安心」のための防災を。さもなければ国民がさらに死ぬのです。

From 藤井聡@内閣官房参与(京都大学大学院教授)

自民党総裁選で、
安倍総理が三選を果たしました。

安倍総理は三選目の内閣の抱負として、
憲法改正やデフレ完全脱却などを掲げていますが、
「いの一番」に主張したのが「国土強靱化」

これはもちろん、この夏の、
度重なる地震や台風の激甚被害を受けてのもの。

総理は、総裁選の翌日に
「重要インフラの緊急点検に関する関係閣僚会議」
を開催し、次のように閣議決定しました。

「総力を挙げて重要インフラの
強靱化のための対策を講じる・・・
防災・減災・国土強靱化のための緊急対策を
3年集中で講じ、
安心できる強靱な日本をつくりあげてまいります。」

https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201809/21tenken_kaigi.html

要するに、
「三年集中でインフラ投資を行い、本当に日本を強靱化する」
と宣言したわけです。

―――実を言いますと、
これは極めて「画期的」な閣議決定です。

行政的な視点から言うならこれはいわば、
「国土強靱化のコペルニクス的大転換」であり、
国土強靭化はこれから
「国土強靱化2.0」に生まれ変わる事になります。

なぜなら、これまでの国土強靱化の事業「量」は、
「財政規律」に基づいて調整されていましたが、
これでようやく(少なくともこれからの三年は)
「国民の命を守る」ために調整される
(という当然の)話になった
からです。

「えっ、今までそうでなかったの!?」
と驚かれるかもしれませんが、
残念ながらこれは真実です。

以下、解説差し上げます。

・・・

まず、この点を理解するために重要なのは、
一体何を、強靱化行政の目標に定するのかという点。

この目標の置き方によって、
本当に国土強靱化で「安心できる国」になるのか否か
が決まります。

この時、理論的には、次の2種類の目標があり得ます。

「財政」を規準とする投資目標 (以下、財政ベース目標
「安心」を規準とする投資目標 (以下、安心ベース目標

財政ベース目標とはつまり、
「オカネが○円しかないから、これでできることをやろう」
というもので、安心ベース目標とは、
「安心を得るためには、これが必要だから、これをやろう」
というものです。

言うまでも無く、
財政ベース目標では「安心」は得られません
当たり前ですが、
(総理がおっしゃる)「安心できる強靱な日本」
するためには、「安心ベース目標」が絶対に必要です。

しかし・・・

誠に残念ながらこれまでの国土強靭化行政は、
「安心ベース目標」でなく、
「財政べース目標」で進められてきたのです。

その仕組みはこうです。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokudo_kyoujinka/kihon.html

まず、政府は、国土強靱化基本計画を立てます。

ここには、強靱化のために必要な
事業の「方針」が記載されます。

そして、毎年の概算要求の段階で、
その年々の「財政規律」の範囲の中で、
毎年毎年の国土強靱化事業「量」が確定されます。
(これが、国土強靱化アクションプランと呼ばれるものです)

つまり、これまでの「国土強靱化行政」では
財政規律は守られるが、
そのかわり(超長期的将来はさておけば)、
「安心できる強靱な日本」を「作れない」
という行政プロセス
が設計されてしまっていたのです。

具体的に言うなら、
政府・財務省が掲げるプライマリー・バランス規律が、
国民の安心よりも優先されてきた
のであり、
これが、これまでの国土強靱化行政の
「真実の姿」だったわけです。

しかし、今回の閣議決定は、
これまでの「財政ベース目標」ではなく、
本当に国民の生命と財産を守るための
「安心ベース目標」へと、
国土強靱化行政を「転換」させる
ものです。

何と言っても、今回の閣議決定は、
「財政規律との整合性」を「点検」するのではなく、
「インフラそのものの強靭性」を「点検」するものだからです!

詳しく解説するなら、
そもそも、これまでの国土強靱化行政では、
「政府の行政の取組」をチェックする(脆弱性評価)
という事になっていたのですが、
「インフラそのものの強靭性/脆弱性」をチェックする
ということにはなっていなかったのです!

そんな中、今回の閣議決定は、
点検対象を「行政施策」から「インフラ」に転換
させたのです。

しかも、必要なレベルの「安心」を確保するために、
20年でも100年でもなく、
「3年」という期限を設けています。

したがって、今回の閣議決定に従うなら、
「財政規律」を一旦脇におきつつ
純粋に、「脆弱性」「強靭性」という
「技術的規準」に基づいて、
国内のインフラ全てをチェックし、
ひたすらに、国民の安全・安心を高める
努力を速やかに(3年以内に)進めれば良い、

という体制にシフトすることになるのです。

これこそ、筆者が「2011年の3月」から、
一貫して主張し続けてきた、あるべき強靱化行政です。

ここに辿り着くまでに五年以上の歳月と、
熊本や大阪や北海道の大地震と、
西日本豪雨や台風21号という
繰り返す激甚被害によるたくさんの犠牲者が
必要だったのかと思うと―――慚愧の念に堪えません。

しかし、当然楽観はできません。

「インフラチェック」をする際に、
財政規律に「配慮」ないしは、
それを主張する人物や組織を「忖度」
するようなことがあれば、
また、元の木阿弥になるからです。

そして、そうなる可能性は、
極めて濃厚に存在する、と言わねばなりません。

しかし、言うまでもありませんが、
インフラチェックはただただ、
「もうこれ以上、国民を死なせない、
これ以上、国民の財産を失わせない、
来たるべき大災害による亡国を回避すべし―――」
という願いのみに基づかなければなりません。

財政の問題は、その「後」に考えればよいのであって、
さもなければ、来たるべく大災害で、
さらに多くの国民が死んでいくという、
最悪の悪夢が訪れることは避けられないのです。

ついては、
日本政府の各省庁の官僚・関係者、
そして(一般国民を含む)政治に関わるの皆様には是非とも
今回の閣議決定に基づいて、総理がおっしゃる
「安心できる強靱な日本」
を作るために一体何が必要なのかを真摯に考え、
(多様な形の)「公務員」としての「良心」の下、
粛々と国民のために必要な事業とは一体何なのかを
明らかにして頂きたいと思います。

繰り返しますがさもなければ、
さらに多くの国民が死ぬことになるのです―――。

追伸:
「緊縮」が国民を殺める―――この問題は日本だけではありません。
この問題を日欧で徹底討論すべくこの度、
「反緊縮」と「フレグジット(EU離脱)」を提唱している
フランス大統領候補の一人フランソワ・アスリノ氏と、
評論家の中野剛志氏や柴山桂太氏をお迎えし、
京都で国際シンポジウムを、
アスリノ氏の来日にあわせて急遽開催することとなりました。
一人でも多くの日本国民の参加を、お待ちしています。

※申し込み:https://the-criterion.jp/beyond_global_capitalism2/
※背景解説:https://the-criterion.jp/mail-magazine/m20180924/

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【藤井聡】国土強靱化2.0:「財政」でなく「安心」のための防災を。さもなければ国民がさらに死ぬのです。への3件のコメント

  1. たかゆき より

    生かさず 殺さず

    そして徐々に 体力を消耗させる。。。

    敗戦国の 民が何人死のうと 知ったことか、、

    それが ポチと飼い主の お考え(たぶん)

    ポチの舌は何枚あるのか しら ね。。

    小生 ポチには もう騙されません ♪

    返信

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  2. m より

    もちろん宣言しないよりする方が良いのは確かですが、あの日銀の達成できなければ辞める宣言すらうやむやになっているのが日本の空気ですからね。昔から責任の所在が無きに等しい上にこの国民の無関心度合いですからどうなんでしょう。総裁選も地上波は進次郎の映像ばかり露出してて何なのこの国?って感じでしたしね。虚しくなってきますが一貫して正しい主張をされている方もいるわけでここで折れてはいけないんでしょうね。

    返信

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  3. ぬこ より

    藤井先生のおっしゃる大きな視点で国土軸を見るという戦略的発想までも、汚番犬さまのアメに丸投げですから、この国は。
    政治家や官僚等のエリートは、自衛隊に入れないと解らないのでは無いでしょうか?
    左翼大学が最高学府なんて怖すぎる。
    アメも大学はにたようなものらしいですけど、軍隊が素晴らしい教育システムがあるんでしょうね。
    他国に対しては、テロ創ったり(ビンラディンとブッシュ一家や、マケインとISバグダディの蜜月とか(笑))戦争やったりと、
    とんでも国家ですけど、
    一貫して自国の国益追求してる処は、凄い国ですよね。

    でも、アメの反ウォール街や退役軍人上がりのリベラルの人に言わせると、
    [株式会社]米国は、英王室スイスやバチカンの為にあるから、結局、アメリカだって植民地だし、撃たれるイラクの人達と、戦死する米国民に、一体、なんの違いがあるんだ??、と言うことみたいですけど。

    最近、思うのですが、中国だから悪、米国だから正義ではなく、
    中国にも米国にも、日本の敵も居れば、味方(少なくとも利害が一致する人達)も居るんですよね。

    エリート中のエリートで留学経験のある藤井先生な百も承知なんでしょうけど。
    僕なんて、房総の場末の酒場で、ジャップジャップ言う欧米人からの質の悪い情報がソースですから(笑)

    返信

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